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#33 3つのお願い(皮肉なオチ)
しおりを挟むとある一流企業に勤める祐太郎は、大学時代のサークルの後輩である美咲に、一方的に好意を寄せていた。
ただ、美咲は祐太郎のことを、先輩としては尊敬できても男としては見ることができず、付き合う気にはなれなかった。
むしろ、毎朝毎晩懲りずに送ってくるあいさつメールや、ことあるごとに送られてくる花束、しつこいデートの誘いなどに少々うんざりしていた。
ある日祐太郎は、美咲にこう詰め寄った。
「ねえ、俺はどうしたら美咲に好かれるのかな?」
すると美咲はこう答えた。
「そうねえ、今から言う3つのお願いを全部叶えてくれたら考えてあげてもいいわよ」
「もちろん叶えるよ! 美咲のためだったら俺なんだってするよ!」
「じゃあ1つめのお願い、前から欲しかったティファニーのポーチ、これちょうだい」
おもむろにカタログを広げ指差したそれは、シャンゼリゼ通りに面したセレクトショップにしか売っていない限定モデルだった。
祐太郎は早速有休を取り、パリへ飛んだ。
「わーい、ありがとう! じゃあ次のお願いは、毎日美味しいお寿司が食べたい」
祐太郎は早速、板前の出張サービスを行っている寿司屋に電話を掛け、美咲の家の中に特設の厨房をこさえ、そこで毎日寿司を握らせた。
「ありがとう! じゃあ最後のお願いは……」
「最後のお願いは?」
祐太郎は息を飲んだ。
「最後のお願いは……もう2度と私に関わらないで! 顔も見たくないし、電話もメールもしてこないで!」
それから祐太郎が美咲の前に姿を表すことは、2度となかった。
さんざん利用したあげく振られたため、さすがの彼も嫌気がさしたのだった。
というわけではなく、彼としては、なんと相思相愛になるために……。
愛とは、一方的に押し付けるものではないと、痛感したので、たとえ二度と会えないのだとしても。
愛のためだけに。
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