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初恋レモンサワー
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「何か面白い話してくださいよー」
「そうだねぇ。忘年会あるあるというか風物詩みたいなもんだよなぁ、これ。やれと言われて出来るものじゃ無いんだけどねぇ」
サークルというか、ちょっとした勉強会の忘年会。一年生は私だけで、あとは全員二年か三年。律儀にノンアルだけ飲む私と、やけにお酒の減りが早い先輩たち。
そんなに美味しいものなのだろうか、お酒って。頼もうかなと一瞬考えたが、どうなるかわからないからやめた。
そんな中で先輩は、レモンサワーを注文する。
「そうだ、あたしの初恋の話でもしようか」
「おっ、恋バナかねー? 青春じゃのー」
レモンサワーは甘酸っぱい初恋の味。なんつって。飲んだこと無いから知らないけど。
店員がグラスを持ってくるのと同時に、先輩は話し始める。
「一目見た時にさ、将来あいつの子ども作りたいなーと思ったわけよ、あたしは」
「ちょい待ち。何歳のときの話よ、それ」
「幼稚園の年中だから五歳くらいじゃね?」
「ストップ。なんで園児が子作りの話しとんねん。もーちょいなんかあんだろ。この人と一緒にお味噌汁飲みたいとか」
「じゃあそれでいいや。とにかく、そうなりたくて幼いあたしちゃんは考えたわけよ」
それでいいのか、初恋の理由。
「既成事実作ればよくね、と」
それでいいのか、幼稚園の恋愛。
先輩いわく、既成事実と言っても婚姻届に名前とか書いて役所に提出するくらいしかやってないとのことだ。
で、当然受理されなかったと。
「いやぁ、あの時は焦ったわ。十六にならないと結婚出来ませんって言われてさ」
「そりゃそうだ」
「逆に年齢以外は問題なかったのか」
「いや、問題しかなかったよ。保証人捕まらなかったし」
「そもそも保証人は捕まえるもんじゃないやろ」
「細かいことは気にしなーい。あっ、追加でカシオレー」
「んじゃこっちはカルーアミルクで」
「……普通のコーラお願いします」
「真面目だねー。あたしらが一年の時とかハメ外しまくってたもんなー」
「それなー」
ベシベシと背中を叩かれる。この先輩、確実に酔っていらっしゃる。
「おうおう、どこまで話したっけな」
「婚姻届が受理されなかったところ、です」
「あー、人生の絶頂まで話してたのね。りょ」
ポテトとかをつまみながら、彼女は再び語り始める。
「まーね、幼いあたしちゃんにはそこまでしか出来なかったって話よ。はっ、笑えるねぇ」
彼女は再びお酒を注文する。今度は、私の知らない名前のものを。他の先輩がそれ以上飲むのは駄目だと止めたが、彼女は聞く耳を持たなかった。
「待ち合わせしてた公園で知らない女に唇奪われて、女がみんな怖くなって、色々あって引っ越しちまったんだからよ」
あー失礼。これは笑い話じゃなくて、笑い飛ばしでもしないとどうにかなっちゃいそうな話だったね。
そう言うと、先輩は度数の高いお酒を一気に飲み干した。
「そうだねぇ。忘年会あるあるというか風物詩みたいなもんだよなぁ、これ。やれと言われて出来るものじゃ無いんだけどねぇ」
サークルというか、ちょっとした勉強会の忘年会。一年生は私だけで、あとは全員二年か三年。律儀にノンアルだけ飲む私と、やけにお酒の減りが早い先輩たち。
そんなに美味しいものなのだろうか、お酒って。頼もうかなと一瞬考えたが、どうなるかわからないからやめた。
そんな中で先輩は、レモンサワーを注文する。
「そうだ、あたしの初恋の話でもしようか」
「おっ、恋バナかねー? 青春じゃのー」
レモンサワーは甘酸っぱい初恋の味。なんつって。飲んだこと無いから知らないけど。
店員がグラスを持ってくるのと同時に、先輩は話し始める。
「一目見た時にさ、将来あいつの子ども作りたいなーと思ったわけよ、あたしは」
「ちょい待ち。何歳のときの話よ、それ」
「幼稚園の年中だから五歳くらいじゃね?」
「ストップ。なんで園児が子作りの話しとんねん。もーちょいなんかあんだろ。この人と一緒にお味噌汁飲みたいとか」
「じゃあそれでいいや。とにかく、そうなりたくて幼いあたしちゃんは考えたわけよ」
それでいいのか、初恋の理由。
「既成事実作ればよくね、と」
それでいいのか、幼稚園の恋愛。
先輩いわく、既成事実と言っても婚姻届に名前とか書いて役所に提出するくらいしかやってないとのことだ。
で、当然受理されなかったと。
「いやぁ、あの時は焦ったわ。十六にならないと結婚出来ませんって言われてさ」
「そりゃそうだ」
「逆に年齢以外は問題なかったのか」
「いや、問題しかなかったよ。保証人捕まらなかったし」
「そもそも保証人は捕まえるもんじゃないやろ」
「細かいことは気にしなーい。あっ、追加でカシオレー」
「んじゃこっちはカルーアミルクで」
「……普通のコーラお願いします」
「真面目だねー。あたしらが一年の時とかハメ外しまくってたもんなー」
「それなー」
ベシベシと背中を叩かれる。この先輩、確実に酔っていらっしゃる。
「おうおう、どこまで話したっけな」
「婚姻届が受理されなかったところ、です」
「あー、人生の絶頂まで話してたのね。りょ」
ポテトとかをつまみながら、彼女は再び語り始める。
「まーね、幼いあたしちゃんにはそこまでしか出来なかったって話よ。はっ、笑えるねぇ」
彼女は再びお酒を注文する。今度は、私の知らない名前のものを。他の先輩がそれ以上飲むのは駄目だと止めたが、彼女は聞く耳を持たなかった。
「待ち合わせしてた公園で知らない女に唇奪われて、女がみんな怖くなって、色々あって引っ越しちまったんだからよ」
あー失礼。これは笑い話じゃなくて、笑い飛ばしでもしないとどうにかなっちゃいそうな話だったね。
そう言うと、先輩は度数の高いお酒を一気に飲み干した。
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