1 / 4
第1話 それは最初で最後の別れ
しおりを挟む
人は出会い、そして別れる。それは突然のことかもしれないし、ずっと前からわかってたことかもしれない。
「私とあなたが別れるのはこれで二回目、だね。前は私から、そして今回は――――」
でも今回は、君から。
君が私から離れていってしまう番。未練を断ち切った人はここに残り続けることが出来ないから。ルールだから、仕方ないよね。
君の姿が真っ白な空気に溶けて消えていく。ここからいなくなって生まれ変わって、私とは違う人と幸せになって。そう考えるとちょっとだけ悲しいけどさ。
悲しいけど、君が幸せになってくれるならそれでも良いかなって思ってしまう。そんな私が確かにいる。
「うん。そろそろお仕事に戻らないと。じゃないとみんなに迷惑がかかっちゃうもんね」
頬を伝う熱い液体を拭い、私はまた歩き出す。真っ白な地面には足跡の一つすら残っていなくて、彼がいた形跡も綺麗さっぱりなくなっていて。
私はただ前だけを向いていて。
「迷える魂を輪廻の輪に乗せて、新しい命が生まれるための準備をして。輪廻から外れちゃった私達には救いなんてないんだよね」
背中から生えている純白の翼を目一杯広げて地面を蹴る。数本の羽をその場に残しながら、私はいるべき場所へと帰っていく。
「じゃあね。真っ白な私に色を塗ってくれたあなた。次は寄り道なんかしないで、そのまま行ってくれると嬉しいな」
二度と会うことは無いと知っているから。もう、私が知っている君が消えちゃって、君が私のことを綺麗さっぱり忘れちゃうって知ってるから。
ここは『天国』と呼ばれる場所。
迷える魂が行き着く先。
そこには迷子を送り届ける『天使』と呼ばれる人達がいて。
たったそれだけの、出会いと別れのお話。
「私とあなたが別れるのはこれで二回目、だね。前は私から、そして今回は――――」
でも今回は、君から。
君が私から離れていってしまう番。未練を断ち切った人はここに残り続けることが出来ないから。ルールだから、仕方ないよね。
君の姿が真っ白な空気に溶けて消えていく。ここからいなくなって生まれ変わって、私とは違う人と幸せになって。そう考えるとちょっとだけ悲しいけどさ。
悲しいけど、君が幸せになってくれるならそれでも良いかなって思ってしまう。そんな私が確かにいる。
「うん。そろそろお仕事に戻らないと。じゃないとみんなに迷惑がかかっちゃうもんね」
頬を伝う熱い液体を拭い、私はまた歩き出す。真っ白な地面には足跡の一つすら残っていなくて、彼がいた形跡も綺麗さっぱりなくなっていて。
私はただ前だけを向いていて。
「迷える魂を輪廻の輪に乗せて、新しい命が生まれるための準備をして。輪廻から外れちゃった私達には救いなんてないんだよね」
背中から生えている純白の翼を目一杯広げて地面を蹴る。数本の羽をその場に残しながら、私はいるべき場所へと帰っていく。
「じゃあね。真っ白な私に色を塗ってくれたあなた。次は寄り道なんかしないで、そのまま行ってくれると嬉しいな」
二度と会うことは無いと知っているから。もう、私が知っている君が消えちゃって、君が私のことを綺麗さっぱり忘れちゃうって知ってるから。
ここは『天国』と呼ばれる場所。
迷える魂が行き着く先。
そこには迷子を送り届ける『天使』と呼ばれる人達がいて。
たったそれだけの、出会いと別れのお話。
0
あなたにおすすめの小説
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
聖女じゃない私の奇跡
あんど もあ
ファンタジー
田舎の農家に生まれた平民のクレアは、少しだけ聖魔法が使える。あくまでもほんの少し。
だが、その魔法で蝗害を防いだ事から「聖女ではないか」と王都から調査が来ることに。
「私は聖女じゃありません!」と言っても聞いてもらえず…。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる