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第19話 浴場実験! 魔力の流れが可視化される!
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王宮の浴場——そこは広々とした石造りの湯殿で、壁には蒸気を逃がすための小さな窓があり、仄かに外の月明かりが差し込んでいる。
浴槽は天然温泉を利用しているらしく、常に湯が満ち溢れ、心地よい湯気が立ち込めていた。
「はぁぁ~……やっぱ風呂って最高だな……」
湯浴み着に着替え、肩までしっかり湯に浸かった
九条迅は、久しぶりの入浴に思わず天井を見上げた。
「確かにのう……。こうしてゆっくり湯に浸かるのは久しぶりじゃ……」
隣ではロドリゲス・ヴァルディオスが満足そうに目を閉じ、長い白髪を後ろへ流しながら湯に身を預けている。
「……って、呑気に風呂を堪能してる場合じゃねぇな」
浴場の隅には、"魔力発光入浴剤"の入った小さな瓶が置かれていた。迅が慎重にそれを手に取り——
「よし、じゃあ入れるぞ」
「うむ、いざ実験じゃ」
湯の中に"魔力発光入浴剤《アークバス・フォーミュラ》"を数滴垂らした。
すると——
「おぉ……っ!」
湯が淡い青白い光を帯び、さざ波のように広がる。
一瞬、温泉全体が魔力の波を受け取ったように、じわじわと発光し始めた。
そして——
「これ……よく見えるじゃねぇか……!」
迅が自分の腕を動かすと、まるで水流のように魔力の粒子がふわりと湯の中に広がっていくのが見えた。
青白い光の粒が、まるで煙のようにふわりふわりと揺れ、腕の動きに沿って流れていく。
「……ほほう、これは……」
ロドリゲスも驚きの声を上げ、自分の手をゆっくりと持ち上げた。
すると、彼の周囲にも魔力の光の粒が波紋のように揺れながら広がる。
「よし……完全に魔力の流れが可視化された……!」
魔法士たちの間では、「魔力は流れを持つ」と言われていたが、それを実際に目で見た者はいなかった。
それが今、科学と魔法の融合によって、初めて目に見える形になったのだ。
「この技術が発展すれば……魔力の流れを視覚的にコントロールする手助けになるかもしれんのう」
ロドリゲスが興奮気味に言う。
「……ん? ちょっと待てよ?」
迅はしばらく自分の魔力の流れを眺めていたが、ふと別の点に気がついた。
「ロドリゲスのじいさん、さっきまで普通に湯に浸かってたよな?」
「む? それがどうかしたか?」
「じいさんの魔力の流れ……めちゃくちゃ落ち着いてるぞ」
「……ほほう?」
ロドリゲスが自分の周囲を改めて見てみると、確かに魔力の光の揺らぎがほとんどなく、ゆったりと穏やかに流れている。
「じいさん……もしかして、めっちゃリラックスしてる?」
「そりゃあ、風呂じゃからな……気持ちよくなって当然じゃろう?」
「……いや、それだよ!!」
迅は突然、目を輝かせながらロドリゲスの肩を叩いた。
「魔力って心臓の拍動に連動してるだけじゃなくて、呼吸のリズムにも関係してるんじゃねぇか!?」
「な、なるほど……」
「ほら、じいさん今、めっちゃ深呼吸してるだろ? だから魔力の流れも穏やかになってるんじゃねぇのか?」
ロドリゲスは試しに息を止めてみた。すると、魔力の光がほんの少し揺らぎ始める。
逆に、ゆっくりと深呼吸すると、光が再び滑らかに流れ出した。
「……むぅ、確かに」
「つまりだな——」
迅は湯船の縁に肘をつきながら、ニヤリと笑った。
「呼吸に合わせて意図的に魔力を動かすことで、魔力制御のトレーニングができるってことだ!」
「なるほど……それは画期的な発想じゃのう……!」
こうして、迅は新たな魔力制御の可能性に気付いたのだった。
一方——
浴場の外、待合室にて。
「……まったく、どれだけ長湯するつもりなのよ……」
リディア・アークライトは、腕を組んで不機嫌そうに足を組み直す。
浴場の扉越しに、風呂の中から楽しそうな声が聞こえてくる。
「おい、これすげぇ発見じゃねぇか!?」
「魔力制御の新しい可能性じゃな!」
「ははっ、やっぱり科学的に考えれば——」
そんなやり取りを耳にしながら、リディアは思わず唇を尖らせる。
(……いいわね、楽しそうで)
もともと、実験のために浴場を使うのは迅のアイデアだったし、彼が先に入るのは当然だ。
けれど——
(私もこの研究に協力してるのに……なんで私だけ待ってるの?)
ちょっとだけ、胸がモヤモヤする。
それが何の感情なのかは、自分でもよく分からなかった。
(別に、私は気にしてないわよ。全然、気にしてないわよ……!)
そう言い聞かせるが、待たされる時間が長くなるほどにイライラが募っていく。
(……でも、だからって一緒に入るなんてありえないし……!)
さすがに、そんな無茶なことはできない。
けれど、このまま待ち続けるのも我慢ならなかった。
「……もう我慢ならないわ!」
バンッ!!
勢いよく浴場の戸を開けると、湯気の向こうにぼんやりと見える迅とロドリゲス。
「いつまで入ってるの!? わたしも実験するんだから、早く出なさい!!」
「ええええっ!? いきなり!? 何怒ってんだ!?」
風呂の中の迅が泡だらけの頭で振り返る。
「……む? もうそんな時間か?」
ロドリゲスはゆったりと湯から上がり、頭にタオルを巻いて立ち上がる。
「わかった、わかった、今出るから! 」
迅も慌てて頭の泡を洗い落とし、駆け足で脱衣室へ向かう。
「怖ぁ………何キレてんの、あいつ………?
俺らそんな怒られるような事した?」
「知らんわ……」
風呂から出る二人を見ながら、リディアは「ふんっ」と頬を膨らませた。
(……別に、寂しかったわけじゃないんだからね)
こうして、いよいよリディアの番となる——!
浴槽は天然温泉を利用しているらしく、常に湯が満ち溢れ、心地よい湯気が立ち込めていた。
「はぁぁ~……やっぱ風呂って最高だな……」
湯浴み着に着替え、肩までしっかり湯に浸かった
九条迅は、久しぶりの入浴に思わず天井を見上げた。
「確かにのう……。こうしてゆっくり湯に浸かるのは久しぶりじゃ……」
隣ではロドリゲス・ヴァルディオスが満足そうに目を閉じ、長い白髪を後ろへ流しながら湯に身を預けている。
「……って、呑気に風呂を堪能してる場合じゃねぇな」
浴場の隅には、"魔力発光入浴剤"の入った小さな瓶が置かれていた。迅が慎重にそれを手に取り——
「よし、じゃあ入れるぞ」
「うむ、いざ実験じゃ」
湯の中に"魔力発光入浴剤《アークバス・フォーミュラ》"を数滴垂らした。
すると——
「おぉ……っ!」
湯が淡い青白い光を帯び、さざ波のように広がる。
一瞬、温泉全体が魔力の波を受け取ったように、じわじわと発光し始めた。
そして——
「これ……よく見えるじゃねぇか……!」
迅が自分の腕を動かすと、まるで水流のように魔力の粒子がふわりと湯の中に広がっていくのが見えた。
青白い光の粒が、まるで煙のようにふわりふわりと揺れ、腕の動きに沿って流れていく。
「……ほほう、これは……」
ロドリゲスも驚きの声を上げ、自分の手をゆっくりと持ち上げた。
すると、彼の周囲にも魔力の光の粒が波紋のように揺れながら広がる。
「よし……完全に魔力の流れが可視化された……!」
魔法士たちの間では、「魔力は流れを持つ」と言われていたが、それを実際に目で見た者はいなかった。
それが今、科学と魔法の融合によって、初めて目に見える形になったのだ。
「この技術が発展すれば……魔力の流れを視覚的にコントロールする手助けになるかもしれんのう」
ロドリゲスが興奮気味に言う。
「……ん? ちょっと待てよ?」
迅はしばらく自分の魔力の流れを眺めていたが、ふと別の点に気がついた。
「ロドリゲスのじいさん、さっきまで普通に湯に浸かってたよな?」
「む? それがどうかしたか?」
「じいさんの魔力の流れ……めちゃくちゃ落ち着いてるぞ」
「……ほほう?」
ロドリゲスが自分の周囲を改めて見てみると、確かに魔力の光の揺らぎがほとんどなく、ゆったりと穏やかに流れている。
「じいさん……もしかして、めっちゃリラックスしてる?」
「そりゃあ、風呂じゃからな……気持ちよくなって当然じゃろう?」
「……いや、それだよ!!」
迅は突然、目を輝かせながらロドリゲスの肩を叩いた。
「魔力って心臓の拍動に連動してるだけじゃなくて、呼吸のリズムにも関係してるんじゃねぇか!?」
「な、なるほど……」
「ほら、じいさん今、めっちゃ深呼吸してるだろ? だから魔力の流れも穏やかになってるんじゃねぇのか?」
ロドリゲスは試しに息を止めてみた。すると、魔力の光がほんの少し揺らぎ始める。
逆に、ゆっくりと深呼吸すると、光が再び滑らかに流れ出した。
「……むぅ、確かに」
「つまりだな——」
迅は湯船の縁に肘をつきながら、ニヤリと笑った。
「呼吸に合わせて意図的に魔力を動かすことで、魔力制御のトレーニングができるってことだ!」
「なるほど……それは画期的な発想じゃのう……!」
こうして、迅は新たな魔力制御の可能性に気付いたのだった。
一方——
浴場の外、待合室にて。
「……まったく、どれだけ長湯するつもりなのよ……」
リディア・アークライトは、腕を組んで不機嫌そうに足を組み直す。
浴場の扉越しに、風呂の中から楽しそうな声が聞こえてくる。
「おい、これすげぇ発見じゃねぇか!?」
「魔力制御の新しい可能性じゃな!」
「ははっ、やっぱり科学的に考えれば——」
そんなやり取りを耳にしながら、リディアは思わず唇を尖らせる。
(……いいわね、楽しそうで)
もともと、実験のために浴場を使うのは迅のアイデアだったし、彼が先に入るのは当然だ。
けれど——
(私もこの研究に協力してるのに……なんで私だけ待ってるの?)
ちょっとだけ、胸がモヤモヤする。
それが何の感情なのかは、自分でもよく分からなかった。
(別に、私は気にしてないわよ。全然、気にしてないわよ……!)
そう言い聞かせるが、待たされる時間が長くなるほどにイライラが募っていく。
(……でも、だからって一緒に入るなんてありえないし……!)
さすがに、そんな無茶なことはできない。
けれど、このまま待ち続けるのも我慢ならなかった。
「……もう我慢ならないわ!」
バンッ!!
勢いよく浴場の戸を開けると、湯気の向こうにぼんやりと見える迅とロドリゲス。
「いつまで入ってるの!? わたしも実験するんだから、早く出なさい!!」
「ええええっ!? いきなり!? 何怒ってんだ!?」
風呂の中の迅が泡だらけの頭で振り返る。
「……む? もうそんな時間か?」
ロドリゲスはゆったりと湯から上がり、頭にタオルを巻いて立ち上がる。
「わかった、わかった、今出るから! 」
迅も慌てて頭の泡を洗い落とし、駆け足で脱衣室へ向かう。
「怖ぁ………何キレてんの、あいつ………?
俺らそんな怒られるような事した?」
「知らんわ……」
風呂から出る二人を見ながら、リディアは「ふんっ」と頬を膨らませた。
(……別に、寂しかったわけじゃないんだからね)
こうして、いよいよリディアの番となる——!
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