133 / 249
第五章 魔導帝国ベルゼリア編
第131話 まあ、ギリいけるんじゃない?
しおりを挟む
影山くんが、最後の一画をゆっくりと引き、ペン先を紙から離した。
インクが紙面にじわりと滲み、その小さな黒が広がるのを、全員が息を呑んで見つめていた。
静かすぎる。耳の奥で自分の鼓動だけが妙に響く。
俺の胸の奥で、じわじわと熱がこもっていく。
怒りだ──だが、炎みたいに爆ぜるものじゃない。
もっと深く、鉛のように重く、静かに積もっていく怒り。
……紅龍。そいつが、そんな酷いことをしてる悪党。
視線を横にやると、ブリジットちゃんが両手で口元を覆い、震える瞳で紙を凝視していた。
その青色は、いつもの澄んだ輝きを失い、波打つ湖面のように揺れている。
指先がわずかに震え、その小刻みな動きが、彼女の衝撃の深さを物語っていた。
リュナちゃんは、細めた瞳でじっと文字を追っている。
表情は無。喜びも怒りも押し殺したような静けさ──けれど、その奥で研ぎ澄まされた刃のような感情が光っているのが、なぜか分かる。
机の向こう側。
ヴァレンが、低く唸るように「……バカな……!」と吐き出し、分厚い掌を机に叩きつけた。
鈍く響く衝撃音が室内の空気を震わせ、紙面のインクが小さく波打つ。
影山くんは、そんな空気を切り裂くように、震える指で新たな文字を走らせた。
《これが、俺が見た紅龍の真の目的です》
ペンの動きは速くも力強くもない。だが、その筆圧は、迷いなく紙を押し込んでいた。
低い唸り声が、俺の足元の方から聞こえた。
フレキくん──今はミニチュアダックスの姿──が、耳を伏せ、歯を剥き出しにしている。
小さな体なのに、その声音は鋭く苦い。
「スキルを奪うために……スキルを育てさせるなんて……っ!」
牙の間から漏れる吐息が、床に落ちるほど熱を帯びていた。
ベルザリオンくんも、重々しい仕草で腕を組み、顎に手をやる。
「それでは……あの戦士達……影山殿の友人がたは……」
続きを口にする前に、視線を落とし、言葉を飲み込んだ。
そして、静かに腕を組んだまま、マイネさんが口を開く。
「妾の"我欲制縄"の効果が及ばぬ手駒として利用し、機が熟せば育ったスキルを奪い取る……まさに、一石二鳥という訳じゃな」
声は淡々。表情はほとんど動かない。
その冷ややかな現実主義が、逆に底知れない怖さを感じさせた。
「マイネさん……! そんな言い方……!」
ブリジットが、震えを抑えられないまま声を荒げる。
しかし影山くんは、彼女を制するようにすぐにペンをカカカッと音を立てて動かした。
《いや、いいんです! ブリジットさん!》
《洗脳されてたとは言え、あいつらがマイネさんのスレヴェルドを襲撃したのは事実ですし……》
《……あいつらのせいで、マイネさんの配下のま…》
何かを書きかけた影山くんの手が止まり、ぐしゃぐしゃと書き直す。
《……配下の方々の生命も失われたんです》
──"魔物"と書きそうになって、思い止まったんだね。影山くん、いい子だな。
《……それでも、俺は、あいつらを助けたい》
ペンを置いたその手は、微かに汗ばんでいるように見えた。
俺もブリジットちゃんも、フレキくんまでもが、自然とマイネへ視線を向けていた。
無言の「頼む」という眼差し──重みのある沈黙が、その場を支配する。
マイネさんは、しばし表情を動かさずにその視線を受け止め……ムッと唇を結び、視線を逸らした。
そして、はーっと長い息を吐き出す。
「……分かっておる。妾とて、こんな話を聞いた上で、こやつらを一方的に責めようとは思わぬ」
「……ベルゼリアと妾の間には浅からぬ因縁もある。いい機会じゃ。決着をつけるとしよう」
ふふんと鼻を鳴らす声は、どこか愉悦すら混じっていた。
「失われた配下の生命も、なぁに、気にするな。」
貸していた本に汚れを付けられた程度の口調であっけらかんと言うマイネさん。
いや、さすがに気にするでしょそれは。
マイネさんは得意げな口調で続ける。
「"我欲制縄さえ取り戻せば、いくらでも“取り立てて”やるわ」
意味深な笑み。俺と影山くんは、同時に「?」と首を傾げる。
その横で、ヴァレンが、姿の見えない影山くんの方に向かって口を開いた。
「影山クン。この女、“強欲の魔王”マイネ・アグリッパは、キミが思うより遥かに強かだ。コイツが大丈夫って言うなら、大丈夫だと思っていい」
……その言葉に、影山くんの指先から、ほんのわずかに緊張が抜けた。
◇◆◇
ヴァレンが椅子の背にもたれ、長い脚を組み替えながら、低く落とすように言葉を吐き出した。
「……問題は、“紅龍”だ」
いつもは軽薄そうな色を帯びた声に、今日はわずかな鋼の響きが混じっている。
「ヤツが“分身”や“変身”のスキルを得たとなると、相当厄介だな」
節の太い指先が、机の縁を一定のリズムでコツコツと叩く。その音がやけに耳につく。
「ただでさえ俺ら“大罪魔王”と同格の力を持つ紅龍が、“分身”で三人に増えたとなると……」
そこで言葉を切り、こちらを見据えた。
わざわざ首を動かさず、視線だけを送ってくる──それだけで、何を言いたいのかは十分伝わる。
……あー、そう来るよな。
視線を横にずらせば、リュナちゃんもベルザリオンくんも同じ目をしていた。
期待、そして「お前しかいない」という無言の圧。
まあ、分かってたけどさ。
「……ブリジットちゃん。話があるんだけど、いいかな?」
声をかけると、彼女は小さく瞬きをしてから、すっと背筋を伸ばした。
その青い瞳が真っ直ぐに俺を射抜く。
「今まで黙っててごめんなんだけど……薄々気づいてたかもしれないけど……」
「うん、アルドくん。ちゃんと聞くから、話して」
真剣さと信頼が混じった声色に、思わず喉がつまる。
……うわ、これ、想像以上に言いにくい。
いざとなると、土壇場で、ビビってしまうわ!
横を見ると、リュナちゃんが「おっ!? ついに正体明かすっすか!?」とでも言いたげな顔で前のめりになっている。
が──直前で、俺の口は違う言葉を選んだ。
「じ、実は、俺……テイマーで錬金術師なだけじゃなくて……ケンカもめっちゃ強いんだ……!!」
声は妙に裏返り気味。
嘘じゃない。けど、本当に大事な部分は、まだ伏せた。
リュナちゃんの視線が、一瞬で冷ややかなジト目に変わる。
ヴァレンは苦笑を隠しもせず「はは……」と肩を揺らした。
対してブリジットちゃんは──口元に微笑を浮かべ、穏やかに言った。
「うん、何となくだけど、知ってたよ」
「いつも魔獣のお肉を狩ってきてくれるし、さっきも佐川くんと鬼塚くん、あっさり倒しちゃってたもんね」
……そりゃそうだよな。冷静に考えればバレバレだよね。
「……アルドくんは、どうして強いことを隠したかったの?」
少し首を傾げながらの問いかけ。
俺は数秒考え、言葉を選ぶ。
「……“強い”なんて、ただの個性の一つでしかないよ。強いやつが偉いなんて思ってないし」
「それに、俺、戦うこと自体あんまり好きじゃないんだ」
弱い者いじめみたいになっちゃうからね──心の中でそう付け足す。
そしてもう一つ、ずっと胸の奥に引っかかっていたことを吐き出す。
「……それに……ビビってたんだと思う」
「ビビってた? 何に?」
ブリジットちゃんの声は、驚きよりもむしろ優しさを増していた。
「自分を見せることを。強すぎる姿を見せたら、みんなに怖がられたり……ブリジットちゃんに、嫌われちゃうんじゃないかって」
これも、嘘偽り無い本心だ。
俺は、怖いんだと思う。自分が、他の皆とは違う存在だって事を、知られることが。
俯いたまま言葉を終えると、椅子がきしむ音がして、彼女が立ち上がった。
次の瞬間、両頬を両手で包み込まれる。温かい掌の感触と、意外なほどの力強さ。
ぐいっと顔を引き寄せられ、視界いっぱいにブリジットちゃんの瞳が映る。
「もうっ! 怒るよ!」
「……アルドくんがどんな姿を見せたって、あたしがアルドくんを怖がったり、嫌いになったりするわけないでしょ!!」
その瞳は真剣で、少し潤んでいて――けれど、芯は揺らがない。
「……あたしは、どんなアルドくんでも、信じるよ。だから、自分の思う通りに力を使って! アルドくん!」
笑顔と共に投げかけられた言葉が、胸の奥を熱く染める。
(ブリジットちゃん……もしかして、俺の正体にも気づいてる?)
そんな考えがよぎるが、今は口にしない。
代わりに、自分の頬をパンと叩いて気合を入れる。
「ありがとう、ブリジットちゃん!」
ニカっと笑い、深く息を吸う。
「よし、腹決まった。影山くん、マイネさん、安心して。」
「その“紅龍”とかいうクソ野郎は──俺が、ぶちのめすから」
◇◆◇
影山くんが、驚きと焦りをないまぜにした表情でペンを握り直す。紙の上を、細かく震える筆先が走った。
《で、でも……紅龍の強さは本物です。アルドさんが強いのは分かってますけど…!》
書き終えると同時に、こちらを見上げる。その目には、警告と心配の色が濃く滲んでいた。
俺は肩をすくめ、苦笑を浮かべる。
「ああ、地下道での魔導機兵戦も、さっきの佐川くんと鬼塚くんの件も見てたんだよね」
口調は軽いが、視線は真っ直ぐだ。
「安心して。こんなこと言うとイキってるみたいで嫌なんだけど……」
「──あれ、全然本気出してないから」
その言葉に、影山くんの瞳が見開かれる。ペン先が紙から離れ、力なく宙を彷徨った。
その横で、マイネが組んでいた腕をほどき、椅子から少し身を乗り出す。
「道三郎よ。紅龍の力は本物じゃぞ」
低く落ちる声に、場の空気がわずかに重くなる。
「それが分身体を作り襲いかかってくるとなると……そうじゃな……」
赤い瞳が鋭く細められた。
「そこなヴァレン・グランツが三人に増えて襲いかかってくるも同然ぞ。お主、勝算はあるのかえ?」
俺は視線をヴァレンに向ける。
長身の魔王は薄ら笑いを浮かべ、顎をわずかにしゃくってうんうんと頷いてみせた。
"遠慮はいらねぇ、正直に言え"
──そんな無言のジェスチャー。
「ヴァレンが三人か……」
「まあ、ギリいけるんじゃない?」
口角を上げてそう答えると、ヴァレンは喉の奥で笑った。
「ククク……言ってくれるぜ」
「いや、兄さんなら楽勝っしょ。ヴァレンの三匹や四匹くらい」
リュナちゃんが当然のように割り込み、場の緊張を軽く吹き飛ばす。
「おい!?」とヴァレンがすかさずツッコみ、数秒だけ笑いが広がった。
だが、マイネさんはにやりと唇を吊り上げ、俺の方へ身体を寄せてくる。
「豪気なことじゃ。やはり、妾の元に欲しいぞ、道三郎」
間近で感じる香と熱。距離が近すぎて、思わず背筋がこわばる。
すると、隣からぐいっと手首を引かれた。
「ダメっ! いくらマイネさんでも、アルドくんはあげられないからねっ!」
ブリジットちゃんの顔は真剣そのもの。
……これ、絶対ヤキモチじゃない!?
胸の奥で密かにガッツポーズ。
だが、マイネさんはふと視線を感じた様子で、ベルザリオンくんがじっと二人のやり取りを見つめていることに気づく。
「ち、違うぞベル!? 欲しいというのは人材としてであって、決して男としてという意味では……!」
慌てて両手を振るマイネさんに、ベルザリオンくんは目を輝かせて告げた。
「いえ……私も、スレヴェルドに道三郎殿が来てくださるというのなら、異存はありません!」
「えっ!?」と固まるマイネさん。
こっちは全然ヤキモチ妬いてなさそう!
その様子を、ヴァレンは腕を組んで満足げに頷きながら眺めている――完全にラブコメ観戦モードだ。
影山くんはその流れを呆然と見ていたが、俺は軽く笑みを浮かべ、彼の方へ向き直った。
拳を軽く握り、真っ直ぐ言い放つ。
「大丈夫! 俺、絶対負けないから!」
「食べられちゃったお友達の魂ってヤツも、吐き出させてみせるよ。腹パンで!」
その言葉に、影山くんの目がじわりと潤む。ペンを置き、ゆっくりと深く頭を下げた。
その背中から、言葉以上の感謝と決意が、確かに伝わってきた。
───────────────────
魔都スレヴェルドの中心。
その心臓部に突き立つかのように、黒曜石と黄金を編み上げた螺旋の塔がそびえていた。
アグリッパ・スパイラル。
幾重にも巻き上がる外壁は龍の鱗を思わせ、夜の帳に包まれた今も、魔力の灯が無数の星のように瞬いている。
重厚な扉が音もなく開くと、外気を押しのけるようにして、将軍"紅龍"がゆっくりと中へ踏み入った。
硬質な靴音が、白大理石の床に鋭く響く。
その背後には濃い緋色のマントが揺れ、彼の歩みに合わせてまるで生き物のようにうねった。
エントランスの中央で待っていたのは、銀糸のような髪を波打たせる一人の女。
白磁の肌、氷を思わせる紫紺の瞳──魔導帝国の上級魔導官、フラム・クレイドル。
背後に立つ数体の魔導機兵が、無言の威圧を空間に満たしていた。
「……オルディノスの五人、“喰って”しまわれたそうですね」
フラムの声は冷ややかだったが、その奥には抑えきれぬ苛立ちが潜む。
「本国からの指示があるまで待てと、あれほど申し上げたのに……」
紅龍は口角をゆっくりと吊り上げ、低く笑う。
「……飢えた獣が、馳走を前に座して待つと思うか?」
その言葉は、飢餓を愉しむ獰猛な捕食者のものだった。
フラムは一つ、深い吐息を漏らす。
だが紅龍はすぐに笑みを引き、表情を鋭く引き締めた。
「“門の確保”組も、“討伐組”も、共に失敗したそうだのう」
「ええ……」
フラムの声は苦味を含む。
「先程、帰還石による帰還が確認されました。召喚者達は皆、今はリビング・フロアで待機しています」
紅龍は顎に指を添え、ゆっくりと考え込む仕草を見せた。
「……童達の中には“神器”に至る者もおったというに。取り逃がした魔王の側近の男が相当の使い手だったか…… フォルティアの魔竜の力が想定以上だったか…… はたまた──」
「……大丈夫なのでしょうか?」
フラムの眉がわずかに寄る。
「召喚者達、特に佐川・鬼塚の二名は相当な強さまで育っていました。また、一条率いるチームの連携もかなりの練度に達していたはず。」
「……その両チームとも任務に失敗したとなると、何か想定外の要素があったのかも……」
その瞬間、背後の魔導機兵の一体が機械音声で告げた。
『報告。“強欲の魔王”マイネ・アグリッパの協力者の一人に、別の大罪魔王――“色欲の魔王”ヴァレン・グランツの姿が確認されたとの情報があります』
「何ですって!?」
フラムの声が鋭く跳ねる。
だが紅龍の反応は別種のものだった。
目をギンと見開き、唇に獰猛な笑みを刻む。
「ヴァレン・グランツ……! あやつが関与しておったか……!」
「──好都合よ。」
低く響くその声には、狩人の歓喜が混じっていた。
「何時ぞやは決着が有耶無耶のままに終わってしもうたが……今度こそ、儂が喰ろうてやるわ……!」
そして心の奥底で、彼は別の算段を巡らせる。
(……奴を相手にするとなれば、念には念を入れておくとするか)
(幸い、果実も実りつつある様だからのう)
(そろそろ、ハサミを入れる頃合いだろうて)
緋色の瞳に、ぞっとするほど冷たい光が灯った。
インクが紙面にじわりと滲み、その小さな黒が広がるのを、全員が息を呑んで見つめていた。
静かすぎる。耳の奥で自分の鼓動だけが妙に響く。
俺の胸の奥で、じわじわと熱がこもっていく。
怒りだ──だが、炎みたいに爆ぜるものじゃない。
もっと深く、鉛のように重く、静かに積もっていく怒り。
……紅龍。そいつが、そんな酷いことをしてる悪党。
視線を横にやると、ブリジットちゃんが両手で口元を覆い、震える瞳で紙を凝視していた。
その青色は、いつもの澄んだ輝きを失い、波打つ湖面のように揺れている。
指先がわずかに震え、その小刻みな動きが、彼女の衝撃の深さを物語っていた。
リュナちゃんは、細めた瞳でじっと文字を追っている。
表情は無。喜びも怒りも押し殺したような静けさ──けれど、その奥で研ぎ澄まされた刃のような感情が光っているのが、なぜか分かる。
机の向こう側。
ヴァレンが、低く唸るように「……バカな……!」と吐き出し、分厚い掌を机に叩きつけた。
鈍く響く衝撃音が室内の空気を震わせ、紙面のインクが小さく波打つ。
影山くんは、そんな空気を切り裂くように、震える指で新たな文字を走らせた。
《これが、俺が見た紅龍の真の目的です》
ペンの動きは速くも力強くもない。だが、その筆圧は、迷いなく紙を押し込んでいた。
低い唸り声が、俺の足元の方から聞こえた。
フレキくん──今はミニチュアダックスの姿──が、耳を伏せ、歯を剥き出しにしている。
小さな体なのに、その声音は鋭く苦い。
「スキルを奪うために……スキルを育てさせるなんて……っ!」
牙の間から漏れる吐息が、床に落ちるほど熱を帯びていた。
ベルザリオンくんも、重々しい仕草で腕を組み、顎に手をやる。
「それでは……あの戦士達……影山殿の友人がたは……」
続きを口にする前に、視線を落とし、言葉を飲み込んだ。
そして、静かに腕を組んだまま、マイネさんが口を開く。
「妾の"我欲制縄"の効果が及ばぬ手駒として利用し、機が熟せば育ったスキルを奪い取る……まさに、一石二鳥という訳じゃな」
声は淡々。表情はほとんど動かない。
その冷ややかな現実主義が、逆に底知れない怖さを感じさせた。
「マイネさん……! そんな言い方……!」
ブリジットが、震えを抑えられないまま声を荒げる。
しかし影山くんは、彼女を制するようにすぐにペンをカカカッと音を立てて動かした。
《いや、いいんです! ブリジットさん!》
《洗脳されてたとは言え、あいつらがマイネさんのスレヴェルドを襲撃したのは事実ですし……》
《……あいつらのせいで、マイネさんの配下のま…》
何かを書きかけた影山くんの手が止まり、ぐしゃぐしゃと書き直す。
《……配下の方々の生命も失われたんです》
──"魔物"と書きそうになって、思い止まったんだね。影山くん、いい子だな。
《……それでも、俺は、あいつらを助けたい》
ペンを置いたその手は、微かに汗ばんでいるように見えた。
俺もブリジットちゃんも、フレキくんまでもが、自然とマイネへ視線を向けていた。
無言の「頼む」という眼差し──重みのある沈黙が、その場を支配する。
マイネさんは、しばし表情を動かさずにその視線を受け止め……ムッと唇を結び、視線を逸らした。
そして、はーっと長い息を吐き出す。
「……分かっておる。妾とて、こんな話を聞いた上で、こやつらを一方的に責めようとは思わぬ」
「……ベルゼリアと妾の間には浅からぬ因縁もある。いい機会じゃ。決着をつけるとしよう」
ふふんと鼻を鳴らす声は、どこか愉悦すら混じっていた。
「失われた配下の生命も、なぁに、気にするな。」
貸していた本に汚れを付けられた程度の口調であっけらかんと言うマイネさん。
いや、さすがに気にするでしょそれは。
マイネさんは得意げな口調で続ける。
「"我欲制縄さえ取り戻せば、いくらでも“取り立てて”やるわ」
意味深な笑み。俺と影山くんは、同時に「?」と首を傾げる。
その横で、ヴァレンが、姿の見えない影山くんの方に向かって口を開いた。
「影山クン。この女、“強欲の魔王”マイネ・アグリッパは、キミが思うより遥かに強かだ。コイツが大丈夫って言うなら、大丈夫だと思っていい」
……その言葉に、影山くんの指先から、ほんのわずかに緊張が抜けた。
◇◆◇
ヴァレンが椅子の背にもたれ、長い脚を組み替えながら、低く落とすように言葉を吐き出した。
「……問題は、“紅龍”だ」
いつもは軽薄そうな色を帯びた声に、今日はわずかな鋼の響きが混じっている。
「ヤツが“分身”や“変身”のスキルを得たとなると、相当厄介だな」
節の太い指先が、机の縁を一定のリズムでコツコツと叩く。その音がやけに耳につく。
「ただでさえ俺ら“大罪魔王”と同格の力を持つ紅龍が、“分身”で三人に増えたとなると……」
そこで言葉を切り、こちらを見据えた。
わざわざ首を動かさず、視線だけを送ってくる──それだけで、何を言いたいのかは十分伝わる。
……あー、そう来るよな。
視線を横にずらせば、リュナちゃんもベルザリオンくんも同じ目をしていた。
期待、そして「お前しかいない」という無言の圧。
まあ、分かってたけどさ。
「……ブリジットちゃん。話があるんだけど、いいかな?」
声をかけると、彼女は小さく瞬きをしてから、すっと背筋を伸ばした。
その青い瞳が真っ直ぐに俺を射抜く。
「今まで黙っててごめんなんだけど……薄々気づいてたかもしれないけど……」
「うん、アルドくん。ちゃんと聞くから、話して」
真剣さと信頼が混じった声色に、思わず喉がつまる。
……うわ、これ、想像以上に言いにくい。
いざとなると、土壇場で、ビビってしまうわ!
横を見ると、リュナちゃんが「おっ!? ついに正体明かすっすか!?」とでも言いたげな顔で前のめりになっている。
が──直前で、俺の口は違う言葉を選んだ。
「じ、実は、俺……テイマーで錬金術師なだけじゃなくて……ケンカもめっちゃ強いんだ……!!」
声は妙に裏返り気味。
嘘じゃない。けど、本当に大事な部分は、まだ伏せた。
リュナちゃんの視線が、一瞬で冷ややかなジト目に変わる。
ヴァレンは苦笑を隠しもせず「はは……」と肩を揺らした。
対してブリジットちゃんは──口元に微笑を浮かべ、穏やかに言った。
「うん、何となくだけど、知ってたよ」
「いつも魔獣のお肉を狩ってきてくれるし、さっきも佐川くんと鬼塚くん、あっさり倒しちゃってたもんね」
……そりゃそうだよな。冷静に考えればバレバレだよね。
「……アルドくんは、どうして強いことを隠したかったの?」
少し首を傾げながらの問いかけ。
俺は数秒考え、言葉を選ぶ。
「……“強い”なんて、ただの個性の一つでしかないよ。強いやつが偉いなんて思ってないし」
「それに、俺、戦うこと自体あんまり好きじゃないんだ」
弱い者いじめみたいになっちゃうからね──心の中でそう付け足す。
そしてもう一つ、ずっと胸の奥に引っかかっていたことを吐き出す。
「……それに……ビビってたんだと思う」
「ビビってた? 何に?」
ブリジットちゃんの声は、驚きよりもむしろ優しさを増していた。
「自分を見せることを。強すぎる姿を見せたら、みんなに怖がられたり……ブリジットちゃんに、嫌われちゃうんじゃないかって」
これも、嘘偽り無い本心だ。
俺は、怖いんだと思う。自分が、他の皆とは違う存在だって事を、知られることが。
俯いたまま言葉を終えると、椅子がきしむ音がして、彼女が立ち上がった。
次の瞬間、両頬を両手で包み込まれる。温かい掌の感触と、意外なほどの力強さ。
ぐいっと顔を引き寄せられ、視界いっぱいにブリジットちゃんの瞳が映る。
「もうっ! 怒るよ!」
「……アルドくんがどんな姿を見せたって、あたしがアルドくんを怖がったり、嫌いになったりするわけないでしょ!!」
その瞳は真剣で、少し潤んでいて――けれど、芯は揺らがない。
「……あたしは、どんなアルドくんでも、信じるよ。だから、自分の思う通りに力を使って! アルドくん!」
笑顔と共に投げかけられた言葉が、胸の奥を熱く染める。
(ブリジットちゃん……もしかして、俺の正体にも気づいてる?)
そんな考えがよぎるが、今は口にしない。
代わりに、自分の頬をパンと叩いて気合を入れる。
「ありがとう、ブリジットちゃん!」
ニカっと笑い、深く息を吸う。
「よし、腹決まった。影山くん、マイネさん、安心して。」
「その“紅龍”とかいうクソ野郎は──俺が、ぶちのめすから」
◇◆◇
影山くんが、驚きと焦りをないまぜにした表情でペンを握り直す。紙の上を、細かく震える筆先が走った。
《で、でも……紅龍の強さは本物です。アルドさんが強いのは分かってますけど…!》
書き終えると同時に、こちらを見上げる。その目には、警告と心配の色が濃く滲んでいた。
俺は肩をすくめ、苦笑を浮かべる。
「ああ、地下道での魔導機兵戦も、さっきの佐川くんと鬼塚くんの件も見てたんだよね」
口調は軽いが、視線は真っ直ぐだ。
「安心して。こんなこと言うとイキってるみたいで嫌なんだけど……」
「──あれ、全然本気出してないから」
その言葉に、影山くんの瞳が見開かれる。ペン先が紙から離れ、力なく宙を彷徨った。
その横で、マイネが組んでいた腕をほどき、椅子から少し身を乗り出す。
「道三郎よ。紅龍の力は本物じゃぞ」
低く落ちる声に、場の空気がわずかに重くなる。
「それが分身体を作り襲いかかってくるとなると……そうじゃな……」
赤い瞳が鋭く細められた。
「そこなヴァレン・グランツが三人に増えて襲いかかってくるも同然ぞ。お主、勝算はあるのかえ?」
俺は視線をヴァレンに向ける。
長身の魔王は薄ら笑いを浮かべ、顎をわずかにしゃくってうんうんと頷いてみせた。
"遠慮はいらねぇ、正直に言え"
──そんな無言のジェスチャー。
「ヴァレンが三人か……」
「まあ、ギリいけるんじゃない?」
口角を上げてそう答えると、ヴァレンは喉の奥で笑った。
「ククク……言ってくれるぜ」
「いや、兄さんなら楽勝っしょ。ヴァレンの三匹や四匹くらい」
リュナちゃんが当然のように割り込み、場の緊張を軽く吹き飛ばす。
「おい!?」とヴァレンがすかさずツッコみ、数秒だけ笑いが広がった。
だが、マイネさんはにやりと唇を吊り上げ、俺の方へ身体を寄せてくる。
「豪気なことじゃ。やはり、妾の元に欲しいぞ、道三郎」
間近で感じる香と熱。距離が近すぎて、思わず背筋がこわばる。
すると、隣からぐいっと手首を引かれた。
「ダメっ! いくらマイネさんでも、アルドくんはあげられないからねっ!」
ブリジットちゃんの顔は真剣そのもの。
……これ、絶対ヤキモチじゃない!?
胸の奥で密かにガッツポーズ。
だが、マイネさんはふと視線を感じた様子で、ベルザリオンくんがじっと二人のやり取りを見つめていることに気づく。
「ち、違うぞベル!? 欲しいというのは人材としてであって、決して男としてという意味では……!」
慌てて両手を振るマイネさんに、ベルザリオンくんは目を輝かせて告げた。
「いえ……私も、スレヴェルドに道三郎殿が来てくださるというのなら、異存はありません!」
「えっ!?」と固まるマイネさん。
こっちは全然ヤキモチ妬いてなさそう!
その様子を、ヴァレンは腕を組んで満足げに頷きながら眺めている――完全にラブコメ観戦モードだ。
影山くんはその流れを呆然と見ていたが、俺は軽く笑みを浮かべ、彼の方へ向き直った。
拳を軽く握り、真っ直ぐ言い放つ。
「大丈夫! 俺、絶対負けないから!」
「食べられちゃったお友達の魂ってヤツも、吐き出させてみせるよ。腹パンで!」
その言葉に、影山くんの目がじわりと潤む。ペンを置き、ゆっくりと深く頭を下げた。
その背中から、言葉以上の感謝と決意が、確かに伝わってきた。
───────────────────
魔都スレヴェルドの中心。
その心臓部に突き立つかのように、黒曜石と黄金を編み上げた螺旋の塔がそびえていた。
アグリッパ・スパイラル。
幾重にも巻き上がる外壁は龍の鱗を思わせ、夜の帳に包まれた今も、魔力の灯が無数の星のように瞬いている。
重厚な扉が音もなく開くと、外気を押しのけるようにして、将軍"紅龍"がゆっくりと中へ踏み入った。
硬質な靴音が、白大理石の床に鋭く響く。
その背後には濃い緋色のマントが揺れ、彼の歩みに合わせてまるで生き物のようにうねった。
エントランスの中央で待っていたのは、銀糸のような髪を波打たせる一人の女。
白磁の肌、氷を思わせる紫紺の瞳──魔導帝国の上級魔導官、フラム・クレイドル。
背後に立つ数体の魔導機兵が、無言の威圧を空間に満たしていた。
「……オルディノスの五人、“喰って”しまわれたそうですね」
フラムの声は冷ややかだったが、その奥には抑えきれぬ苛立ちが潜む。
「本国からの指示があるまで待てと、あれほど申し上げたのに……」
紅龍は口角をゆっくりと吊り上げ、低く笑う。
「……飢えた獣が、馳走を前に座して待つと思うか?」
その言葉は、飢餓を愉しむ獰猛な捕食者のものだった。
フラムは一つ、深い吐息を漏らす。
だが紅龍はすぐに笑みを引き、表情を鋭く引き締めた。
「“門の確保”組も、“討伐組”も、共に失敗したそうだのう」
「ええ……」
フラムの声は苦味を含む。
「先程、帰還石による帰還が確認されました。召喚者達は皆、今はリビング・フロアで待機しています」
紅龍は顎に指を添え、ゆっくりと考え込む仕草を見せた。
「……童達の中には“神器”に至る者もおったというに。取り逃がした魔王の側近の男が相当の使い手だったか…… フォルティアの魔竜の力が想定以上だったか…… はたまた──」
「……大丈夫なのでしょうか?」
フラムの眉がわずかに寄る。
「召喚者達、特に佐川・鬼塚の二名は相当な強さまで育っていました。また、一条率いるチームの連携もかなりの練度に達していたはず。」
「……その両チームとも任務に失敗したとなると、何か想定外の要素があったのかも……」
その瞬間、背後の魔導機兵の一体が機械音声で告げた。
『報告。“強欲の魔王”マイネ・アグリッパの協力者の一人に、別の大罪魔王――“色欲の魔王”ヴァレン・グランツの姿が確認されたとの情報があります』
「何ですって!?」
フラムの声が鋭く跳ねる。
だが紅龍の反応は別種のものだった。
目をギンと見開き、唇に獰猛な笑みを刻む。
「ヴァレン・グランツ……! あやつが関与しておったか……!」
「──好都合よ。」
低く響くその声には、狩人の歓喜が混じっていた。
「何時ぞやは決着が有耶無耶のままに終わってしもうたが……今度こそ、儂が喰ろうてやるわ……!」
そして心の奥底で、彼は別の算段を巡らせる。
(……奴を相手にするとなれば、念には念を入れておくとするか)
(幸い、果実も実りつつある様だからのう)
(そろそろ、ハサミを入れる頃合いだろうて)
緋色の瞳に、ぞっとするほど冷たい光が灯った。
95
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界をスキルブックと共に生きていく
大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い
☆ほしい
ファンタジー
過労とパワハラで心身ともに限界だった俺、佐伯湊(さえきみなと)は、ある日異世界に転移してしまった。神様から与えられたのは【万能造船】というユニークスキル。それは、設計図さえあれば、どんな船でも素材を消費して作り出せるという能力だった。
「もう誰にも縛られない、自由な生活を送るんだ」
そう決意した俺は、手始めに小さな川舟を作り、水上での生活をスタートさせる。前世の知識を活かして、この世界にはない調味料や保存食、便利な日用品を自作して港町で売ってみると、これがまさかの大当たり。
スキルで船をどんどん豪華客船並みに拡張し、快適な船上生活を送りながら、行く先々の港町で特産品を仕入れては別の町で売る。そんな気ままな水上交易を続けているうちに、俺の資産はいつの間にか小国の国家予算を軽く超えていた。
これは、社畜だった俺が、チートな船でのんびりスローライフを送りながら、世界一の商人になるまでの物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる