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第六章 学園編 ──白銀の婚約者──
第229話 リュナ一行 vs. 謎の黒影
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夕暮れのルセリア中央広場に、ひときわ不気味な“影”が立っていた。
日没の赤が差し込む中で、その存在は異様なほど黒く染まっている。まるで世界の色を奪われたように、輪郭の全てが塗りつぶされ、顔も体も黒い“穴”と化した人型。
ただ一つ──胸元の蛇の紋様だけが白く、脈動するたび、生き物のように蠢いていた。
「な、何ですかッ!? アイツは!? 都会ってのは、街中であんな化け物まで出るんですかッ!?」
グェルの声が裏返る。
覆面──猫マスクの奥で光る瞳は、フェンリルの本能そのものに怯えの色を帯びていた。
フレキはその足元で身を低くし、背筋をピンと伸ばして警戒している。
ミニチュアダックスの小さな体のまま、金色の瞳だけが鋭く敵を射抜いていた。
「どうかな……少なくとも、以前ボク達が来た時には、こんな魔物は出なかったけどね」
その声は震えてはいない。
だが、毛が少し逆立っているのがリュナには分かった。
蒼龍がゆっくりと扇を開く。
青髪が夕陽を反射し、ゆらめく炎のように揺れた。
「……今、人間が妖魔に変じたわよねぇ? コレって、『こっちの世界』じゃよくある事なのぉ?」
リュナは黒マスクを指で軽く押さえながら鼻を鳴らす。
「いーや?少なくとも、あーしはあんま見た事も聞いた事もねーかも」
気軽さを装っているが、目の奥は鋭い。
リュナの“野生”が、あの黒いモノを“ただの魔物”とは判断していなかった。
次の瞬間──
「……ッ」
黒い魔物が、ギギギ……と関節を逆に折るような動きをしながら、近くにいた逃げ遅れの猫耳亜人の子どもへと向かって歩き始めた。
不自然な足取り。
人間の歩行でも、獣の動きでもない。
まるで“別の何か”が、中から人形を操っているような──。
リュナは小さく舌打ちする。
(ここは王都ルセリアのど真ん中。エルディナ王国上層部には、あーしの事を狙ってるヤツもいるはず……あんま“咆哮”を乱発ブッパするのは、後々ちとメンディーな事になるかもな)
ならば──。
チラッと横目でグェルを見る。
瞬間、グェルの目が「ギラリ」と光った。
まるで主の心を読み取った忠犬のように。
「御意ですッ!! リュナ様!!」
地を蹴る音と同時に、彼の体が黒い影のように走り出す。
猫耳亜人の子どもの前にドンッと立ちはだかった。
しかし──
「ひっ……!!?」
守られたはずの子どもは、
目の前に現れた“猫マスクのむきむき男”に恐怖し、涙を浮かべてバタバタと逃げていく。
グェルは「えっ!?」と一瞬困惑したが、すぐに真剣な表情に戻る。
脚を左右に揺らす。
重心を低く、軽く、流動的に──ジークンドーの歩法、ペンデュラム・シャッフル。
「ボクが相手だッ!!」
右手右足を前に。
見事なオンガードの構え。
黒い人型は、ゆらりと頭を振り上げ──
そのまま全力の頭突きを繰り出してきた。
グェルは吠える。
「ワンォラッッ!!」
獣のような気迫と共に、右のショートアッパーを叩き込む。
──ズガァァアアアンッ!!
轟音が空気を裂いた。
足元の石畳がビキビキッと亀裂を走らせる。
グェルの背筋が一瞬で総毛立つ。
(な……なんだ、このパワーは……ッ!?)
リュナも、蒼龍も目を見開いた。
「嘘ぉ!? フェンリル王族のグェルちゃんが……パワー負けした!?」
「マジかよ……」
衝撃で弾き飛ばされ、グェルは地面を転がりながら受け身を取る。
「気をつけてくださいッ!!
コイツ……とんでもないパワーですッ……!
下手すると、リュナ様級の……!」
叫んだその時──
黒い魔物の腰元に、スーッ、と黒い日本刀のような“形”が現れた。
元の材質が分からない。
ただ“闇を切り取って刀の形にした”ような、そんな武器。
フレキの耳がぴんっと立った。
「グェル、危ないっ!!──『ワン』ッ!!」
フレキの吠え声が爆ぜ、音波がグェルの体を弾き飛ばす。
その瞬間──
シャキィィンッ!!
グェルが立っていた位置のすぐ後の街灯が、八連の斬撃を浴びたように細切れになり、金属片が空に散った。
グェルは背筋を凍らせながら呟く。
「い……居合い……!?な……なんだ、この異常な剣速……ッ!?」
黒い魔物は、まったく”踏み込み”のモーションがなかった。
間合いも、気配も、気迫も、何も感じない。
ただ、斬られていた。
リュナはそれを見て、黒マスクを親指で軽くずらす。
「こりゃ、あーしも観戦キメ込んでる場合じゃねーっぽいっすね」
目が笑っていない。
まるで“本能”が「狩れ」と告げていた。
リュナが一歩踏み出した瞬間、空気が変わった。
◇◆◇
蒼く沈みゆく夕陽の残光が、ルセリアの広場を赤金に染める。
その光の中で、黒い人型の魔物はなおもギギギ……と、骨の軋みとも機械のノイズともつかない異音を立て続けていた。
リュナは足元のフレキが、何かを小声で呟きながら魔力を集め始めたのに気づいた。
その“息の整い方”──。
あのちっこい体でありながら、魔術式のリズムが完璧に揃っているのが分かる。
(さすがフレキっち。分かってるっすね。
なら、あーしも遠慮なく前に出れるわけだ)
黒マスクの下でギザ歯をチラリと見せ、リュナは蒼龍の肩を軽くひじで小突いた。
「蒼っち。あーしとグェルがフォワード出っから、援護よろ!」
「任せなさぁいっ!」
蒼龍は素早く扇を構え直し、袖を揺らして一歩下がった。
彼女の背から立ち上る魔力が夕焼けに溶け込み、夜の訪れをほんの少し早くする。
リュナの脚が地を蹴る。
ドンッと石畳が沈む音とともに、彼女の体がしなるように跳び上がった。
空気を切り裂きながら身体を捻る。
黒いミニスカボディコンが空気の流れに沿って張り付き、脚線美が弧を描く。
「ぉりゃあッ!!」
ローリングソバットの軌道が夕陽に煌めく。
──その一瞬。
黒い魔物はまったく違う方向を向いていたはずなのに、
“次の瞬間には”
頭を振り上げ、正確無比なタイミングで頭突きが飛んできていた。
ゴガァァン!!
蹴りと頭突きが衝突し、火花が散るように魔力が弾けた。
広場の石畳が一斉に振動し、周囲の影が波のように揺れる。
空中で体勢を整えながら、リュナは舌打ちする。
「このパワー……フツーじゃねーっしょ、明らかに」
竜の勘が、全身で警報を鳴らしていた。
黒い魔物はすぐに腰へと手を伸ばした。
そこには、さっきまで存在しなかった“黒い刀の形”。
リュナは眉をひそめる。
(またソレかよ……)
次の瞬間、背面の黒銀の紋様がうねり、
リュナの背中から“二本の黒竜腕”がズルッと伸び出た。
竜の鱗がきらりと光を跳ね返す。
その冷たい金属の光沢は、彼女の魔力が生む“第二の爪牙”。
リュナは体勢をひねり、二本の竜腕でガードを固めた。
同時に──
蒼龍の魔力がふわりと花開く。
「宝貝──"五火七風扇"!」
蒼龍は扇を、まるで舞うように振る。
その姿は戦場に咲く夜の花のようで、美しく、妖しく、そして強い。
「──“地烈の舞”っ!!」
バキバキバキィィッ!!
魔物の足元から、岩のスパイクが一斉に突き上がる。
黒い魔物はギギギ……と不自然に体を折り曲げ、それを避けようとして一瞬バランスを崩す。
しかし、そのままの姿勢で、居合い抜き。
シュバァァッ!!
見えない八連撃の刃が空間を裂き、
リュナの竜腕をほんの少し掠めた。
チャリッ……!
黒銀の鱗にかすかに傷が走り、光を反射する。
一瞬、リュナの瞳孔が収縮する。
(あーしの鱗に傷を付けた……!?
こりゃー、いよいよもってフツーの魔物じゃあないっすね……)
腹立たしさと同時に、警戒心が跳ね上がる。
グェルが叫ぶ。
「コイツ……強力ですが、攻撃は"頭突き"と"居合い抜き"の二パターンしか無いみたいですねッ!!」
その分析は正しい──
しかし、この魔物はただ“パターンが少ない”のではなく、一撃の質が異常に高すぎるのだ。
だからこそ、次の動きは最悪だった。
黒い魔物がリュナへ向けて、
ゆっくりと右手の“人差し指”を向けた。
カチリ。
関節の奥で何かがはまったような音。
次の瞬間、指先に魔力が収束し始めた。
キィィィィィィン……!!
空気が震える。
音というより“軋む光”。
リュナの表情がわずかに険しくなる。
「おっと……これは、ちとマジーかも……!?」
竜腕を前へ──
魔力を一点集中で流し込む。
蒼龍の声が震えた。
「やばっ……アレはマズいんじゃないのぉ──!?」
黒い魔物の指先から光が放たれた。
──核撃魔法。
ズドゴォォォォォオン!!
空が裂けるほどの光線が一直線にリュナへ襲いかかる。
「なッ!? こ、この魔力……リュナ様ッ!!」
グェルの悲鳴にも似た声が響く。
しかしリュナは、二本の竜腕を前に突き出し──
その前にいつの間にか、十二枚の札が円を描くように浮かんでいた。
蒼龍が叫ぶ。
「“落魂の舞”!!」
十二の光が札から放たれ、核撃魔法に衝突する。
青白い火花が幾重にも弾け、空気が震動し、
魔力の風圧が広場の木々を一斉に揺らした。
だが、相殺しきれない。
蒼龍の額に汗。
フレキの背が逆立つ。
リュナは口元で笑った。
「蒼っち、ナイスアシスト!」
そして、竜腕にさらに力を込める。
「よいしょおーーっ!!」
バレーのレシーブのように、
竜腕の下から光をすくい上げ──
ドゴォォォォォン!!
核撃魔法の光は真上へと弾き飛ばされ、
夜空に向かって一直線に消えていった。
「街中でそんな魔法ブッパするとか、アホかよ?」
黒マスクの下で、リュナの目は冷えていた。
その直後。
フレキが跳び上がって叫ぶ。
「“神獣結界”!!」
金色の光が、地面から天へと巨大なドーム状に広がり、広場全体を覆い尽くす。
空気の密度が変わる。
魔力が閉じ込められ、人払いの波動が街の喧騒を押し返す。
フレキは息をハッハッハッと弾ませながら振り返る。
「魔力遮断と人払いの結界を張りましたっ!
リュナさん、本気出しちゃって大丈夫ですっ!」
リュナは黒マスクの下でニッと笑う。
「流石、フレキっち!」
そして──
獲物を見据える獣のように、黒い魔物へ向き直る。
「兄さん達との待ち合わせまで時間ねーし、
悪ぃーけど、さっさとキメさせてもらうっすよ」
黒マスクの端についた“ギザ歯笑顔”のマークに、指で軽く触れる。
その声は、静かで、低くて、妙に落ち着いていて──
「“竜神器”、解放……」
空気が震えた。
◇◆◇
リュナの指先が黒マスクの端を撫でる。
その動きと同時に、空気が“沈む”ような圧が広場に広がった。
「──"黒縄叫喚竜姫"。」
その名を口にした瞬間、
黒マスクの縁から、黒銀の魔力が噴流のように噴き上がった。
バシュウゥッ!!
黒い稲光のように迸る魔力が彼女の全身を包み、
瞬きする間に装束が変わった。
黒銀の鎧──
レオタードのように密着しながらも、
竜の骨と鱗を思わせる流線形の装甲。
左右には前よりも太く、恐ろしくしなやかな“四本腕”。
鱗は鏡のように光を跳ね返し、黒銀のラインが彼女の肉体を妖しく縁取っていた。
蒼龍が思わず息を呑む。
グェルは喉を鳴らして、呟いた。
「こ……これが、リュナ様の、新たな……姿……ッ!」
その声には畏敬と興奮が混ざっている。
リュナは軽く肩を回し、
黒銀の鱗がシャラ……と柔らかい金属音を奏でるのを確かめてから、
普段通りの調子で言った。
「んじゃ、一気にキメっか」
黒い魔物へとスタスタ歩き出す。
その歩幅には余裕すら漂っていた。
魔物は動いた。
ギギギ……と不自然に軋むような音を立て、
腰の刀に手をかけ──
──居合い抜き、八連。
シュババババババババッ!!
空間が裂け、夕闇が断ち切られる。
斬撃は見えないはずなのに、耳が痛むほどの衝撃音が遅れて響く。
だが──
リュナの左側の二本の竜腕が広がった。
ギャギャギャギャギャッ!!
八連撃すべてを受け止める。
黒銀の鱗に火花が散り、魔物の刃の圧が竜腕を押す。しかしリュナは、指一本ぶれなかった。
右側の竜腕──
掌が魔物に向かって、パッと開かれた。
その掌には“口”がついていた。
ギザ歯がニイッと笑い、
ふたつの掌の口が、ちぐはぐに喋る。
『動くな~』
『吹き飛べ~』
指揮をとるかのような、軽い、しかし絶対の命令。
一瞬。
魔物の全身が“ピタ”と止まった。
次の瞬間──
ドンッ!!!!
街灯が揺れ、周囲の空気が爆ぜる。
黒い魔物は、巨大な衝撃波に殴られたように吹き飛んだ。
石畳が陥没し、舞い上がった粉塵が風に散る。
リュナは細く息を吐いた。
(なんだ? コイツの手応え……
“咆哮”の響きが悪ぃっすね。
まるで、“魂”が空っぽみたいな……)
何かが噛み合っていない。
何かが抜け落ちている。
そんな“欠落”の感触があった。
魔物は遠くで転がりながら立ち上がると、
またしても、人差し指をリュナへと向けた。
蒼龍が叫ぶ。
「リュナちゃん!気をつけて!!」
しかしリュナは、左手の一本を軽く上げて──
OKサイン。
「だーいじょぶ。問題ナッシング」
四本の腕が前へ伸びる。
黒銀の鱗が光を吸い込み、掌の口が同時に開いた。
魔物の指先が輝く。
キィィィィィィィィン!!
核撃魔法。
間違いなく、人間が扱ってはいけない魔力量。
蒼龍は思わず扇を握りしめ、
フレキは耳を伏せ、
グェルは唾を飲み込んだ。
リュナはただ、掌の口に力を込める。
黒い魔物が撃った光の奔流が、
一直線にリュナへ迫る。
ズドゴァァァァァアアアアア!!!
光が世界を塗りつぶす──瞬間。
四つの掌の口が、同時に囁いた。
『『散れ~』』
音すらなかった。
核撃魔法の光は、触れた瞬間に粒子となり、
花びらが散るよりも静かに、
空気の中に霧散していった。
グェルは目を見開く。
「す……凄いッ……!!」
蒼龍も扇を振りながら叫ぶ。
「いっけぇぇーー!リュナちゃーん!!」
リュナは一歩。
もう一歩、と距離を詰める。
軽い歩幅なのに、距離が一瞬で消える。
四本の腕が広がる。
右上、右下、左上、左下──
十字を描くように完璧な軌道。
竜の咆哮にも似た魔力がほとばしる。
「"娑伽羅竜爪"ッ!!」
ズバァァァァッ!!
黒い魔物の身体を、四本の刃が十字に裂いた。
黒い影が千切れ、形を保てなくなる。
魔物はヨロリと膝をつき、
胸元の“白い蛇の紋様”だけが、
生き物のように蠢いていた。
その白蛇はゆっくりと首をもたげ、
魔物の身体へと巻きつき──
ギュルルルルッ!!
渦を巻く。
黒い影の肉体がねじれ、細い紐状に圧縮されていく。そして──
フッ。
虚空に吸い込まれるように消滅した。
その瞬間。
リュナは目を瞬いた。
「……あれ?
あーし、なんで“竜神器”発動してんすか?」
蒼龍も扇を見て、首をかしげる。
「あ、あれぇ? アタシも……なんで“五火七風扇”解放してるのぉ?」
グェルは周囲をキョロキョロ。
「リ、リュナ様……?あれ?ボク、今、何して……?」
フレキは周囲を見渡し、
「ボクの結界……? な……なんでこんなもの、張ったんだろ……?」
四人とも“戦闘の記憶”そのものがごっそり抜け落ちている。
さっきまでの緊迫感も、魔物の咆哮も、
核撃魔法の光も──
まるで、最初から存在しなかったかのように。
リュナは首をコキッと鳴らし、手を叩いた。
「ま、いっか!
そろそろ兄さん達との待ち合わせの時間っしょ。
三人とも、急ぐっすよ!」
蒼龍はぽかんとしつつ、
「はぁーい……?」
グェルは慌てて荷物を拾い直し、
「り、リュナ様、蒼龍さん、待ってくださーい!!」
フレキもトコトコとその後を追う。
夕暮れの街に、
四人の足音だけが軽く響き──
さっきまでそこにいたはずの“異形の気配”だけが、
完全に消えていた。
日没の赤が差し込む中で、その存在は異様なほど黒く染まっている。まるで世界の色を奪われたように、輪郭の全てが塗りつぶされ、顔も体も黒い“穴”と化した人型。
ただ一つ──胸元の蛇の紋様だけが白く、脈動するたび、生き物のように蠢いていた。
「な、何ですかッ!? アイツは!? 都会ってのは、街中であんな化け物まで出るんですかッ!?」
グェルの声が裏返る。
覆面──猫マスクの奥で光る瞳は、フェンリルの本能そのものに怯えの色を帯びていた。
フレキはその足元で身を低くし、背筋をピンと伸ばして警戒している。
ミニチュアダックスの小さな体のまま、金色の瞳だけが鋭く敵を射抜いていた。
「どうかな……少なくとも、以前ボク達が来た時には、こんな魔物は出なかったけどね」
その声は震えてはいない。
だが、毛が少し逆立っているのがリュナには分かった。
蒼龍がゆっくりと扇を開く。
青髪が夕陽を反射し、ゆらめく炎のように揺れた。
「……今、人間が妖魔に変じたわよねぇ? コレって、『こっちの世界』じゃよくある事なのぉ?」
リュナは黒マスクを指で軽く押さえながら鼻を鳴らす。
「いーや?少なくとも、あーしはあんま見た事も聞いた事もねーかも」
気軽さを装っているが、目の奥は鋭い。
リュナの“野生”が、あの黒いモノを“ただの魔物”とは判断していなかった。
次の瞬間──
「……ッ」
黒い魔物が、ギギギ……と関節を逆に折るような動きをしながら、近くにいた逃げ遅れの猫耳亜人の子どもへと向かって歩き始めた。
不自然な足取り。
人間の歩行でも、獣の動きでもない。
まるで“別の何か”が、中から人形を操っているような──。
リュナは小さく舌打ちする。
(ここは王都ルセリアのど真ん中。エルディナ王国上層部には、あーしの事を狙ってるヤツもいるはず……あんま“咆哮”を乱発ブッパするのは、後々ちとメンディーな事になるかもな)
ならば──。
チラッと横目でグェルを見る。
瞬間、グェルの目が「ギラリ」と光った。
まるで主の心を読み取った忠犬のように。
「御意ですッ!! リュナ様!!」
地を蹴る音と同時に、彼の体が黒い影のように走り出す。
猫耳亜人の子どもの前にドンッと立ちはだかった。
しかし──
「ひっ……!!?」
守られたはずの子どもは、
目の前に現れた“猫マスクのむきむき男”に恐怖し、涙を浮かべてバタバタと逃げていく。
グェルは「えっ!?」と一瞬困惑したが、すぐに真剣な表情に戻る。
脚を左右に揺らす。
重心を低く、軽く、流動的に──ジークンドーの歩法、ペンデュラム・シャッフル。
「ボクが相手だッ!!」
右手右足を前に。
見事なオンガードの構え。
黒い人型は、ゆらりと頭を振り上げ──
そのまま全力の頭突きを繰り出してきた。
グェルは吠える。
「ワンォラッッ!!」
獣のような気迫と共に、右のショートアッパーを叩き込む。
──ズガァァアアアンッ!!
轟音が空気を裂いた。
足元の石畳がビキビキッと亀裂を走らせる。
グェルの背筋が一瞬で総毛立つ。
(な……なんだ、このパワーは……ッ!?)
リュナも、蒼龍も目を見開いた。
「嘘ぉ!? フェンリル王族のグェルちゃんが……パワー負けした!?」
「マジかよ……」
衝撃で弾き飛ばされ、グェルは地面を転がりながら受け身を取る。
「気をつけてくださいッ!!
コイツ……とんでもないパワーですッ……!
下手すると、リュナ様級の……!」
叫んだその時──
黒い魔物の腰元に、スーッ、と黒い日本刀のような“形”が現れた。
元の材質が分からない。
ただ“闇を切り取って刀の形にした”ような、そんな武器。
フレキの耳がぴんっと立った。
「グェル、危ないっ!!──『ワン』ッ!!」
フレキの吠え声が爆ぜ、音波がグェルの体を弾き飛ばす。
その瞬間──
シャキィィンッ!!
グェルが立っていた位置のすぐ後の街灯が、八連の斬撃を浴びたように細切れになり、金属片が空に散った。
グェルは背筋を凍らせながら呟く。
「い……居合い……!?な……なんだ、この異常な剣速……ッ!?」
黒い魔物は、まったく”踏み込み”のモーションがなかった。
間合いも、気配も、気迫も、何も感じない。
ただ、斬られていた。
リュナはそれを見て、黒マスクを親指で軽くずらす。
「こりゃ、あーしも観戦キメ込んでる場合じゃねーっぽいっすね」
目が笑っていない。
まるで“本能”が「狩れ」と告げていた。
リュナが一歩踏み出した瞬間、空気が変わった。
◇◆◇
蒼く沈みゆく夕陽の残光が、ルセリアの広場を赤金に染める。
その光の中で、黒い人型の魔物はなおもギギギ……と、骨の軋みとも機械のノイズともつかない異音を立て続けていた。
リュナは足元のフレキが、何かを小声で呟きながら魔力を集め始めたのに気づいた。
その“息の整い方”──。
あのちっこい体でありながら、魔術式のリズムが完璧に揃っているのが分かる。
(さすがフレキっち。分かってるっすね。
なら、あーしも遠慮なく前に出れるわけだ)
黒マスクの下でギザ歯をチラリと見せ、リュナは蒼龍の肩を軽くひじで小突いた。
「蒼っち。あーしとグェルがフォワード出っから、援護よろ!」
「任せなさぁいっ!」
蒼龍は素早く扇を構え直し、袖を揺らして一歩下がった。
彼女の背から立ち上る魔力が夕焼けに溶け込み、夜の訪れをほんの少し早くする。
リュナの脚が地を蹴る。
ドンッと石畳が沈む音とともに、彼女の体がしなるように跳び上がった。
空気を切り裂きながら身体を捻る。
黒いミニスカボディコンが空気の流れに沿って張り付き、脚線美が弧を描く。
「ぉりゃあッ!!」
ローリングソバットの軌道が夕陽に煌めく。
──その一瞬。
黒い魔物はまったく違う方向を向いていたはずなのに、
“次の瞬間には”
頭を振り上げ、正確無比なタイミングで頭突きが飛んできていた。
ゴガァァン!!
蹴りと頭突きが衝突し、火花が散るように魔力が弾けた。
広場の石畳が一斉に振動し、周囲の影が波のように揺れる。
空中で体勢を整えながら、リュナは舌打ちする。
「このパワー……フツーじゃねーっしょ、明らかに」
竜の勘が、全身で警報を鳴らしていた。
黒い魔物はすぐに腰へと手を伸ばした。
そこには、さっきまで存在しなかった“黒い刀の形”。
リュナは眉をひそめる。
(またソレかよ……)
次の瞬間、背面の黒銀の紋様がうねり、
リュナの背中から“二本の黒竜腕”がズルッと伸び出た。
竜の鱗がきらりと光を跳ね返す。
その冷たい金属の光沢は、彼女の魔力が生む“第二の爪牙”。
リュナは体勢をひねり、二本の竜腕でガードを固めた。
同時に──
蒼龍の魔力がふわりと花開く。
「宝貝──"五火七風扇"!」
蒼龍は扇を、まるで舞うように振る。
その姿は戦場に咲く夜の花のようで、美しく、妖しく、そして強い。
「──“地烈の舞”っ!!」
バキバキバキィィッ!!
魔物の足元から、岩のスパイクが一斉に突き上がる。
黒い魔物はギギギ……と不自然に体を折り曲げ、それを避けようとして一瞬バランスを崩す。
しかし、そのままの姿勢で、居合い抜き。
シュバァァッ!!
見えない八連撃の刃が空間を裂き、
リュナの竜腕をほんの少し掠めた。
チャリッ……!
黒銀の鱗にかすかに傷が走り、光を反射する。
一瞬、リュナの瞳孔が収縮する。
(あーしの鱗に傷を付けた……!?
こりゃー、いよいよもってフツーの魔物じゃあないっすね……)
腹立たしさと同時に、警戒心が跳ね上がる。
グェルが叫ぶ。
「コイツ……強力ですが、攻撃は"頭突き"と"居合い抜き"の二パターンしか無いみたいですねッ!!」
その分析は正しい──
しかし、この魔物はただ“パターンが少ない”のではなく、一撃の質が異常に高すぎるのだ。
だからこそ、次の動きは最悪だった。
黒い魔物がリュナへ向けて、
ゆっくりと右手の“人差し指”を向けた。
カチリ。
関節の奥で何かがはまったような音。
次の瞬間、指先に魔力が収束し始めた。
キィィィィィィン……!!
空気が震える。
音というより“軋む光”。
リュナの表情がわずかに険しくなる。
「おっと……これは、ちとマジーかも……!?」
竜腕を前へ──
魔力を一点集中で流し込む。
蒼龍の声が震えた。
「やばっ……アレはマズいんじゃないのぉ──!?」
黒い魔物の指先から光が放たれた。
──核撃魔法。
ズドゴォォォォォオン!!
空が裂けるほどの光線が一直線にリュナへ襲いかかる。
「なッ!? こ、この魔力……リュナ様ッ!!」
グェルの悲鳴にも似た声が響く。
しかしリュナは、二本の竜腕を前に突き出し──
その前にいつの間にか、十二枚の札が円を描くように浮かんでいた。
蒼龍が叫ぶ。
「“落魂の舞”!!」
十二の光が札から放たれ、核撃魔法に衝突する。
青白い火花が幾重にも弾け、空気が震動し、
魔力の風圧が広場の木々を一斉に揺らした。
だが、相殺しきれない。
蒼龍の額に汗。
フレキの背が逆立つ。
リュナは口元で笑った。
「蒼っち、ナイスアシスト!」
そして、竜腕にさらに力を込める。
「よいしょおーーっ!!」
バレーのレシーブのように、
竜腕の下から光をすくい上げ──
ドゴォォォォォン!!
核撃魔法の光は真上へと弾き飛ばされ、
夜空に向かって一直線に消えていった。
「街中でそんな魔法ブッパするとか、アホかよ?」
黒マスクの下で、リュナの目は冷えていた。
その直後。
フレキが跳び上がって叫ぶ。
「“神獣結界”!!」
金色の光が、地面から天へと巨大なドーム状に広がり、広場全体を覆い尽くす。
空気の密度が変わる。
魔力が閉じ込められ、人払いの波動が街の喧騒を押し返す。
フレキは息をハッハッハッと弾ませながら振り返る。
「魔力遮断と人払いの結界を張りましたっ!
リュナさん、本気出しちゃって大丈夫ですっ!」
リュナは黒マスクの下でニッと笑う。
「流石、フレキっち!」
そして──
獲物を見据える獣のように、黒い魔物へ向き直る。
「兄さん達との待ち合わせまで時間ねーし、
悪ぃーけど、さっさとキメさせてもらうっすよ」
黒マスクの端についた“ギザ歯笑顔”のマークに、指で軽く触れる。
その声は、静かで、低くて、妙に落ち着いていて──
「“竜神器”、解放……」
空気が震えた。
◇◆◇
リュナの指先が黒マスクの端を撫でる。
その動きと同時に、空気が“沈む”ような圧が広場に広がった。
「──"黒縄叫喚竜姫"。」
その名を口にした瞬間、
黒マスクの縁から、黒銀の魔力が噴流のように噴き上がった。
バシュウゥッ!!
黒い稲光のように迸る魔力が彼女の全身を包み、
瞬きする間に装束が変わった。
黒銀の鎧──
レオタードのように密着しながらも、
竜の骨と鱗を思わせる流線形の装甲。
左右には前よりも太く、恐ろしくしなやかな“四本腕”。
鱗は鏡のように光を跳ね返し、黒銀のラインが彼女の肉体を妖しく縁取っていた。
蒼龍が思わず息を呑む。
グェルは喉を鳴らして、呟いた。
「こ……これが、リュナ様の、新たな……姿……ッ!」
その声には畏敬と興奮が混ざっている。
リュナは軽く肩を回し、
黒銀の鱗がシャラ……と柔らかい金属音を奏でるのを確かめてから、
普段通りの調子で言った。
「んじゃ、一気にキメっか」
黒い魔物へとスタスタ歩き出す。
その歩幅には余裕すら漂っていた。
魔物は動いた。
ギギギ……と不自然に軋むような音を立て、
腰の刀に手をかけ──
──居合い抜き、八連。
シュババババババババッ!!
空間が裂け、夕闇が断ち切られる。
斬撃は見えないはずなのに、耳が痛むほどの衝撃音が遅れて響く。
だが──
リュナの左側の二本の竜腕が広がった。
ギャギャギャギャギャッ!!
八連撃すべてを受け止める。
黒銀の鱗に火花が散り、魔物の刃の圧が竜腕を押す。しかしリュナは、指一本ぶれなかった。
右側の竜腕──
掌が魔物に向かって、パッと開かれた。
その掌には“口”がついていた。
ギザ歯がニイッと笑い、
ふたつの掌の口が、ちぐはぐに喋る。
『動くな~』
『吹き飛べ~』
指揮をとるかのような、軽い、しかし絶対の命令。
一瞬。
魔物の全身が“ピタ”と止まった。
次の瞬間──
ドンッ!!!!
街灯が揺れ、周囲の空気が爆ぜる。
黒い魔物は、巨大な衝撃波に殴られたように吹き飛んだ。
石畳が陥没し、舞い上がった粉塵が風に散る。
リュナは細く息を吐いた。
(なんだ? コイツの手応え……
“咆哮”の響きが悪ぃっすね。
まるで、“魂”が空っぽみたいな……)
何かが噛み合っていない。
何かが抜け落ちている。
そんな“欠落”の感触があった。
魔物は遠くで転がりながら立ち上がると、
またしても、人差し指をリュナへと向けた。
蒼龍が叫ぶ。
「リュナちゃん!気をつけて!!」
しかしリュナは、左手の一本を軽く上げて──
OKサイン。
「だーいじょぶ。問題ナッシング」
四本の腕が前へ伸びる。
黒銀の鱗が光を吸い込み、掌の口が同時に開いた。
魔物の指先が輝く。
キィィィィィィィィン!!
核撃魔法。
間違いなく、人間が扱ってはいけない魔力量。
蒼龍は思わず扇を握りしめ、
フレキは耳を伏せ、
グェルは唾を飲み込んだ。
リュナはただ、掌の口に力を込める。
黒い魔物が撃った光の奔流が、
一直線にリュナへ迫る。
ズドゴァァァァァアアアアア!!!
光が世界を塗りつぶす──瞬間。
四つの掌の口が、同時に囁いた。
『『散れ~』』
音すらなかった。
核撃魔法の光は、触れた瞬間に粒子となり、
花びらが散るよりも静かに、
空気の中に霧散していった。
グェルは目を見開く。
「す……凄いッ……!!」
蒼龍も扇を振りながら叫ぶ。
「いっけぇぇーー!リュナちゃーん!!」
リュナは一歩。
もう一歩、と距離を詰める。
軽い歩幅なのに、距離が一瞬で消える。
四本の腕が広がる。
右上、右下、左上、左下──
十字を描くように完璧な軌道。
竜の咆哮にも似た魔力がほとばしる。
「"娑伽羅竜爪"ッ!!」
ズバァァァァッ!!
黒い魔物の身体を、四本の刃が十字に裂いた。
黒い影が千切れ、形を保てなくなる。
魔物はヨロリと膝をつき、
胸元の“白い蛇の紋様”だけが、
生き物のように蠢いていた。
その白蛇はゆっくりと首をもたげ、
魔物の身体へと巻きつき──
ギュルルルルッ!!
渦を巻く。
黒い影の肉体がねじれ、細い紐状に圧縮されていく。そして──
フッ。
虚空に吸い込まれるように消滅した。
その瞬間。
リュナは目を瞬いた。
「……あれ?
あーし、なんで“竜神器”発動してんすか?」
蒼龍も扇を見て、首をかしげる。
「あ、あれぇ? アタシも……なんで“五火七風扇”解放してるのぉ?」
グェルは周囲をキョロキョロ。
「リ、リュナ様……?あれ?ボク、今、何して……?」
フレキは周囲を見渡し、
「ボクの結界……? な……なんでこんなもの、張ったんだろ……?」
四人とも“戦闘の記憶”そのものがごっそり抜け落ちている。
さっきまでの緊迫感も、魔物の咆哮も、
核撃魔法の光も──
まるで、最初から存在しなかったかのように。
リュナは首をコキッと鳴らし、手を叩いた。
「ま、いっか!
そろそろ兄さん達との待ち合わせの時間っしょ。
三人とも、急ぐっすよ!」
蒼龍はぽかんとしつつ、
「はぁーい……?」
グェルは慌てて荷物を拾い直し、
「り、リュナ様、蒼龍さん、待ってくださーい!!」
フレキもトコトコとその後を追う。
夕暮れの街に、
四人の足音だけが軽く響き──
さっきまでそこにいたはずの“異形の気配”だけが、
完全に消えていた。
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