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第六章 学園編 ──白銀の婚約者──
第254話 side.ザキ・チーム② ──密林の皇子──
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周囲の空気が、ふと重くなった。
ざわり、と。
風でも獣でもない揺れが、四人を囲む森全体を震わせる。
葉擦れの音が、同時に止んだ。
その直後だった。
幹が軋み、枝が不自然な角度で折れ曲がり、根が地面を突き破って隆起する。
森を構成していた“木々そのもの”が、ゆっくりと意思を持つかのように立ち上がっていく。
節くれだった幹は腕となり、枝は指となり、裂けた樹皮の奥から、空洞の口のような闇が覗く。
トレント──いや、魔物という言葉では収まりきらない、歪んだ木の魔人たちが、円を描くように四人を取り囲んでいた。
「何やこれ」
ザキが、糸目をさらに細めて呟く。
冗談めいた口調ではあるが、腰は自然と低く、視線は周囲を一瞬たりとも逃さない。
「ダンジョン産の魔物いうヤツか?」
軽く言ってはみたものの、肌に刺さる殺気が、否定を突きつけてくる。
その背後で、ロールがそっと右手を上げ、包帯で覆われた目元を押さえた。
まるで“何かを直視した”かのように、ほんの一瞬、呼吸が止まる。
「……いえ」
静かな声だった。
「違います……これは……」
言葉の続きを探す間にも、森は動く。
爬虫類系亜人のギュスターヴは、背中に背負っていた金棒に手を伸ばす。
棘の生えた直方体のそれを、片手でぶん、と一振り。空気が唸りを上げ、重量の違いをはっきりと主張する。
そのまま、肩に担ぎ直した。
「……面倒な相手ダ」
低く、苛立ちを含んだ声。
一方で、最も緊張感のない男は、相変わらずだった。
ディオニスは酒瓶を傾け、喉を鳴らして一口飲む。
琥珀色の液体を舌で転がしながら、鼻で笑う。
「──魔物じゃねぇな。こりゃ」
瓶を下ろし、四方を見渡す。
「誰かの“スキル”効果だ。間違いねぇ」
その言葉が落ちた瞬間、答え合わせのように、木の魔人たちが一斉に動いた。
不気味な軋み声とともに、巨大な腕が振り下ろされ、枝が槍のように伸びる。
地面を抉り、空気を裂き、四人へと殺到する。
「けったいなスキルやな」
ザキは、肩をすくめるように言った。
「植物操る系か?」
その声と同時に、腰の愛刀──"羽々斬"が、音もなく抜かれる。
刃が光った、次の瞬間にはもう、斬撃は終わっていた。
踏み込みも、溜めもない。
ただ、一線。
目にも止まらぬ居合の一閃。
チン、と、乾いた音を立てて、ザキは刀を鞘に収める。
次の瞬間だった。
ザキを囲んでいた木の魔人たちが、同時に静止し、
遅れて──粉雪のように、砕け散った。
幹も、枝も、根も。
まるで最初から“そこにあったはずの存在”が、否定されたかのように。
「……」
ディオニスが一瞬だけ目を細め、ロールは何も言わずに息を吐く。
だが、終わりではない。
さらに奥から、より巨大な木人が現れた。
人の二倍、三倍はあろうかという体躯。
その重みで、地面が沈む。
「──だとしてモ」
ギュスターヴが前に出る。
「この規模の攻撃……学生一人が行える規模とは、思えないガ……」
言い終わるより早く、金棒が振るわれた。
片手。それだけで十分だった。
凄まじいパワーの横薙ぎが、木人の胴を捉える。
パァン、と、乾いた破裂音。
上半身が、弾け飛ぶ。
だが──中から現れたものに、ギュスターヴの瞳が細くなる。
崩れた木の内部。
臍のあたりに絡め取られるように、気を失った学生がいた。
人の形をしたまま、皮膚には木の幹が張り付き、蔓が血管のように絡みついている。
魔力が、じわじわと吸い上げられているのが、見て取れた。
「……」
ギュスターヴは、舌打ちを噛み殺す。
「これハ……ヒトを核に、動いているのカ……?」
吐き捨てるような声。
嫌悪が、隠しきれない。
その背後で、ロールが再び、包帯の上から目元を押さえた。
「──見つけました」
静かな声が、戦場に落ちる。
「術師は……あそこです」
彼女の指が示した先。
森の奥、ひときわ太く、古びた大樹。
その上部の幹が、蠢いた。
軋み、裂け、開く。
中は空洞だった。
まるで玉座のために穿たれたかのような空間。
そこに、男はいた。
褐色の肌。
柔らかく垂れた目元。
黒く、ゆるやかなウェーブのかかった髪。
異国の王子を思わせる美貌。
その胸で、参加者のネームプレートが淡く光っている。
男は、木のウロの中に作られた玉座に腰掛け、肘置きに肩肘をつきながら、楽しそうに笑った。
「──ほう」
余裕たっぷりの声音。
「余の存在に気付くとは……なかなかの術師ではないか。女」
視線は、明確にロールへ向けられている。
ザキは、剣の柄に手を置いたまま、ちらりとロールを見る。
「誰や?あの偉そうなボン」
ロールは、淡々と答えた。
「──彼は、ザラハドール連邦からの留学生。
同連邦南東部、小国ジュナザール皇国の皇子……ザイード・ジュナザーン」
さらに、静かに続ける。
「“金の超星”ラグナ、“銀の新星”アルドに続く……」
その言葉が、空気を変えた。
「第三の優勝候補として、名高い術師です」
森が、ざわりと鳴る。
その中心で、ザイード・ジュナザーンは、満足げに微笑んでいた。
◇◆◇
大樹の玉座に腰掛けた男──ザイード・ジュナザーンは、ロールの言葉を聞いた瞬間、わずかに顔を歪めた。
その変化は一瞬だったが、確かな不快の色を帯びていた。
「──余が、“第三の優勝候補”だと……?」
低く、ねっとりとした声音。
甘美さの裏に、鋭い棘が潜む。
「無礼な」
ザイードは鼻で笑い、視線を遠くへ投げる。
「“金の超星”“銀の新星”……あの様な者どもに……高貴なる余が、劣る道理などありはせぬ」
言葉の一つ一つに、選民思想が染みついている。
自分が頂点であることを疑ったことすらない者の声音だった。
その様子を見て、ザキは露骨に嫌そうな顔をした。
「うわぁ……」
眉をひそめ、肩をすくめる。
「またタカビー系のヤツやん。ラグナとキャラ被ってへん? 嫌いやわー、君ぃみたいなタイプ……」
遠慮の欠片もない感想。
だが、その軽口の裏では、周囲を取り囲む“巨樹人”の動きから一瞬も意識を離していない。
その空気を、ディオニスがぶち壊す。
「……で?」
酒瓶を軽く振りながら、間延びした声を出す。
「その皇子サマが、俺らに何の用だい?
酒でも奢ってくれるってんなら歓迎するぜ?」
完全に場違いな軽口。
だが、ザイードはむしろ興味深そうに片眉を上げた。
「──酒、か?」
顎に手を当て、少し考える素振り。
「余の配下になれば、浴びる程飲んでもまだ尽きぬ程の酒が飲めるが、どうだ?」
その言葉に、ディオニスの目が一瞬、きらりと光った。
「──えっ、マジで?」
明らかに心が揺れた声。
だが、その直後。
「敵の甘言に騙されるナ。真面目にやレ」
ギュスターヴの低く鋭い一言が、横から突き刺さる。
「な、なーんて!」
ディオニスは慌てて笑い、手を振る。
「冗談に決まってるだろぉ!?
ちょっと言ってみただけだって!」
だが、ザイードはその様子を見て、愉快そうに笑った。
「ふふ……」
そして、ゆっくりと上体を起こす。
「余の目的は一つだ」
森の空気が、わずかに張り詰める。
「“統覇戦”を勝ち抜き、“勅命権”を得る。
そして、エルディナ王国に──
ジュナザーン皇国と“対等な国交”を結ばせる事」
誇示するような声音。
それは野心であり、同時に国家の意思でもあった。
「この“ダンジョン・サバイバル”は、そのための足がかりに過ぎぬ」
そして、ザイードの視線が、真っ直ぐにザキを射抜く。
「前回編入試験、第二位……ザキよ。
お主を、我が軍門の末席に加えてやろう」
木の玉座の上から、見下ろすように言い放つ。
「光栄に思うがよい」
その瞬間。
ザキは、完全に言葉を失った。
数秒、ぽかんとしたままザイードを見つめ──
次に、ゆっくりとロールの方を振り返る。
「……聞いた?」
半ば呆然とした声。
「ロールちゃん、何言うてんの、この人?
偉そうにも程があるやろ。ラグナより酷いやん」
ロールは一瞬、言葉に詰まり、視線を彷徨わせる。
「……私に言われましても……」
困り切った、心底どうしようもないという声音だった。
ザキは、ため息を一つ吐き、再びザイードへ視線を戻す。
周囲の巨樹人の動きを警戒しながら、口を開いた。
「ほんで、ザイード皇子サマは。
俺らを仲間にして、このダンジョン・サバイバルを勝ち抜こうって腹なんやな?」
だが、返ってきたのは、冷笑だった。
「──“俺ら”? 違うな」
ザイードの目が、冷たく細まる。
「余が欲するのは、優れたスキルを持つ者のみ。弱卒は要らぬ」
そして、指を一本、軽く振る。
「そこな酔っ払いと、トカゲ擬き。
それに……その醜女は」
ロールへ向けられたその言葉に、空気が一段冷える。
「余の“巨樹人”の苗床となってもらう。死亡せず、プレートさえ失わねば、失格にはならんからのう」
まるで家畜を選別するかのような口ぶり。
その言葉を聞き、ギュスターヴの脳裏に、先ほどの光景が蘇る。
木人の内部から現れた、意識を失った学生の姿。
「──キサマ……」
低く、怒気を孕んだ声。
「他の挑戦者ヲ、スキルで“巨樹人”とらやに変えテ、戦力を増やしているのカ……?」
ザイードは、満足げに鼻を鳴らした。
「ふふん……」
胸を張り、玉座に深く腰掛け直す。
「余は密林の王、ザイード・ジュナザーン。
余のスキル、“豊穣神の加護”は、植物を支配する力」
語る言葉は、まるで教義のようだ。
「人の生は植物と共にある。緑豊かな地には文明が芽生え、作物が育たぬ地では人は息絶える」
ゆっくりと、言い聞かせるように。
「それを支配する余は、人を支配するに相応しい。クズスキルしか持たぬ者でも──」
一拍。
「我が“豊穣神の加護”にて“巨樹人”と化せば、余の強力な駒になれる」
肘をつき、足を組む。
「栄誉なことだとは、思わぬか?」
その言葉を聞きながら、ディオニスは心底どうでもよさそうに呟いた。
「なるほどねぇ……まずは他の挑戦者を倒さずに、自分の駒にして戦力にしてるってわけか」
ゴソゴソとマジックバッグを探り、新しい酒瓶を取り出す。
「いけ好かねえな」
ザイードは、それを“凡夫の戯言”とでも言うように笑った。
「凡夫に、余の高尚な思考は計り知れぬであろうよ」
そして、再びザキを見る。
「ザキよ。貴様は、余の下で働くに相応しい力を持つ事を、先日の試験で示した」
ゆっくりと、威圧するように。
「余の軍門に下れ。悪いようにはせぬ」
ザキは、糸目をさらに細めた。
「──そうやなぁ」
口調は軽い。
だが、剣の柄に添えられた指に、確かな殺気が宿る。
「どうしたもんかなぁ……」
その瞬間。
すっと、冷たい指先が、ザキの手に触れた。
ロールだった。
「……落ち着いてください」
静かで、よく通る声。
「戦闘の様子は、外の観客席に放映されています。
──貴方の力は……まだ見せるべきではありません」
その一言で、ザキの中の熱が、すっと引いた。
「……」
一瞬の沈黙。
そして、ザキはニッと笑い直した。
「ありがとな、ロールちゃん。頭、冷えたわ」
ロールは、慌てたように顔を背ける。
「そ、そんなお礼なんて言われても……!
何も嬉しくありません!」
少し声が上ずる。
「私は“氷の心”を持つ女ですから!」
だが、その耳元が、わずかに赤くなっているのを、
ザキは見逃さなかった。
◇◆◇
ディオニスは、その一連のやり取りを、どこか遠いものを見るような目で眺めていた。
酒瓶を傾け、喉を鳴らしながら一息つく。
そして、はぁーっと、腹の底から息を吐いた。
「……しゃーねぇな」
肩を落とし、ぼそりと呟く。
「正直、動きたかねぇんだが……ここは、な」
次の瞬間。
彼はぐいっと、横に立っていたギュスターヴの肩を抱き寄せた。
「ナッ……!?」
鱗のきしむ音と共に、ギュスターヴの身体が強張る。
「おい、離セ!」
振り払おうと腕を突き出すが、ディオニスの腕は岩のように重い。
酔っているはずの力ではなかった。
ディオニスは気にも留めず、にやりと歯を見せる。
「俺ら二人でよ。アイツの事、やっちまおうぜ?」
その一言に、ギュスターヴの瞳が鋭く細まる。
「……ハァ!? 何故、俺がそんな事ヲ……!?」
吐き捨てるような反論。
だが、ディオニスは肩をすくめ、軽い調子で続けた。
「いいじゃねぇか、別に。
俺ら二人……いや、ロールも入れて三人か?」
指を折りながら、楽しそうに数える。
「“クズスキル”だの何だのって、好き放題バカにされてんだぜ?」
その言葉に、ギュスターヴの喉が小さく鳴った。
「一丁さ。“優勝候補”の皇子サマの鼻、へし折ってやろうぜ」
ディオニスは笑う。
酔漢のそれではない。
獣のように、ぎらりとした笑みだった。
「ラグナとやり合う前の、予行演習ってことでよ」
ギュスターヴは、しばし黙り込んだ。
視線の先では、巨樹人たちが、軋む音を立てながら四人を包囲している。
枝の先端が、槍のように鋭く尖り、殺気を孕んで揺れていた。
やがて、ギュスターヴは小さく息を吐く。
「……キサマに、乗る訳では無いガ」
低く、しかしはっきりと。
「侮られっぱなしというのハ、性に合わン。
ここハ……降りかかる火の粉を払うとしよウ」
そう言って、背中の金棒を掴む。
棘の付いた直方体の鉄塊が、重々しい音を立てて地面から浮かび上がる。
片手で構えたその姿は、まるで要塞の門番のようだった。
その様子を、木の玉座から見下ろしていたザイードは、鼻で笑う。
「愚かな……」
唇を歪め、冷たい声を落とす。
「クズスキル持ちの下民が、抗うか」
そして、玉座の肘掛けに軽く手を置いた。
「ならば良い。貴様らも、“巨樹人”の苗床となるがよい」
その言葉と同時に。
ザイードの座していた大樹の幹が、ぐにゃりと蠢いた。
ウロの穴が、まるで生き物の口のように閉じていく。
次の瞬間には、ザイードの姿は完全に消え、深い緑の闇へと溶け込んだ。
──ドン。
──ドドン。
地鳴りのような音が、四方から響く。
ジャングルの奥。
地面を突き破るように、二十数体の“巨樹人”が次々と立ち上がった。
人型を模した木の魔人。
枝葉は鞭のように蠢き、樹皮の隙間から不気味な魔力の光が滲んでいる。
同時に。
何十本もの枝が、一斉に槍となって放たれた。
空気を裂く音。
四人へ向かって、死の雨が降り注ぐ。
「……チッ」
ギュスターヴが一歩踏み出す。
次の瞬間。
金棒が唸りを上げて振るわれた。
ゴォン──ッ!!
衝撃波が走り、枝の槍は空中で次々と弾け飛ぶ。
破裂音と共に、木片が雨のように散った。
「遅イ」
短く吐き捨てる。
金棒は止まらない。
振るうたび、槍は砕け、巨樹人の腕が吹き飛び、胴が裂ける。
その背後で、ディオニスは酒瓶を掲げていた。
「さて……」
親指で、ボンっと瓶の口をへし折る。
ガラスの破片がきらりと光り、地面に落ちる。
そのまま、喉を鳴らして酒を流し込んだ。
「……染みるねぇ」
そして、低く、祈るように呟く。
「『酒神に三つの顔あり。
笑うは宴、吼えるは狂。』」
一拍。
「『──そして黙するは、裁きなり』」
その瞬間だった。
ディオニスの身体から、凄まじい魔力が噴き上がる。
酒気と共に立ち昇るそれは、炎のようであり、嵐のようでもあった。
足元の草木が、一斉に伏せる。
空気が、重く、粘つく。
ディオニスは、もう一口酒をあおり、ふらりと前に出る。
足取りは覚束ない。
だが、その背中から放たれる圧は、巨樹人すら一瞬、動きを止めさせた。
「酒は友、酒は刃。」
にやりと笑い、目を細める。
「さぁ……やるかぁ」
酔漢のように、しかし確かに“戦士”として。
ディオニスは、迫り来る“巨樹人”の群れの前に立った。
その瞬間、ジャングルの空気が──
完全に、戦場のそれへと変わった。
ざわり、と。
風でも獣でもない揺れが、四人を囲む森全体を震わせる。
葉擦れの音が、同時に止んだ。
その直後だった。
幹が軋み、枝が不自然な角度で折れ曲がり、根が地面を突き破って隆起する。
森を構成していた“木々そのもの”が、ゆっくりと意思を持つかのように立ち上がっていく。
節くれだった幹は腕となり、枝は指となり、裂けた樹皮の奥から、空洞の口のような闇が覗く。
トレント──いや、魔物という言葉では収まりきらない、歪んだ木の魔人たちが、円を描くように四人を取り囲んでいた。
「何やこれ」
ザキが、糸目をさらに細めて呟く。
冗談めいた口調ではあるが、腰は自然と低く、視線は周囲を一瞬たりとも逃さない。
「ダンジョン産の魔物いうヤツか?」
軽く言ってはみたものの、肌に刺さる殺気が、否定を突きつけてくる。
その背後で、ロールがそっと右手を上げ、包帯で覆われた目元を押さえた。
まるで“何かを直視した”かのように、ほんの一瞬、呼吸が止まる。
「……いえ」
静かな声だった。
「違います……これは……」
言葉の続きを探す間にも、森は動く。
爬虫類系亜人のギュスターヴは、背中に背負っていた金棒に手を伸ばす。
棘の生えた直方体のそれを、片手でぶん、と一振り。空気が唸りを上げ、重量の違いをはっきりと主張する。
そのまま、肩に担ぎ直した。
「……面倒な相手ダ」
低く、苛立ちを含んだ声。
一方で、最も緊張感のない男は、相変わらずだった。
ディオニスは酒瓶を傾け、喉を鳴らして一口飲む。
琥珀色の液体を舌で転がしながら、鼻で笑う。
「──魔物じゃねぇな。こりゃ」
瓶を下ろし、四方を見渡す。
「誰かの“スキル”効果だ。間違いねぇ」
その言葉が落ちた瞬間、答え合わせのように、木の魔人たちが一斉に動いた。
不気味な軋み声とともに、巨大な腕が振り下ろされ、枝が槍のように伸びる。
地面を抉り、空気を裂き、四人へと殺到する。
「けったいなスキルやな」
ザキは、肩をすくめるように言った。
「植物操る系か?」
その声と同時に、腰の愛刀──"羽々斬"が、音もなく抜かれる。
刃が光った、次の瞬間にはもう、斬撃は終わっていた。
踏み込みも、溜めもない。
ただ、一線。
目にも止まらぬ居合の一閃。
チン、と、乾いた音を立てて、ザキは刀を鞘に収める。
次の瞬間だった。
ザキを囲んでいた木の魔人たちが、同時に静止し、
遅れて──粉雪のように、砕け散った。
幹も、枝も、根も。
まるで最初から“そこにあったはずの存在”が、否定されたかのように。
「……」
ディオニスが一瞬だけ目を細め、ロールは何も言わずに息を吐く。
だが、終わりではない。
さらに奥から、より巨大な木人が現れた。
人の二倍、三倍はあろうかという体躯。
その重みで、地面が沈む。
「──だとしてモ」
ギュスターヴが前に出る。
「この規模の攻撃……学生一人が行える規模とは、思えないガ……」
言い終わるより早く、金棒が振るわれた。
片手。それだけで十分だった。
凄まじいパワーの横薙ぎが、木人の胴を捉える。
パァン、と、乾いた破裂音。
上半身が、弾け飛ぶ。
だが──中から現れたものに、ギュスターヴの瞳が細くなる。
崩れた木の内部。
臍のあたりに絡め取られるように、気を失った学生がいた。
人の形をしたまま、皮膚には木の幹が張り付き、蔓が血管のように絡みついている。
魔力が、じわじわと吸い上げられているのが、見て取れた。
「……」
ギュスターヴは、舌打ちを噛み殺す。
「これハ……ヒトを核に、動いているのカ……?」
吐き捨てるような声。
嫌悪が、隠しきれない。
その背後で、ロールが再び、包帯の上から目元を押さえた。
「──見つけました」
静かな声が、戦場に落ちる。
「術師は……あそこです」
彼女の指が示した先。
森の奥、ひときわ太く、古びた大樹。
その上部の幹が、蠢いた。
軋み、裂け、開く。
中は空洞だった。
まるで玉座のために穿たれたかのような空間。
そこに、男はいた。
褐色の肌。
柔らかく垂れた目元。
黒く、ゆるやかなウェーブのかかった髪。
異国の王子を思わせる美貌。
その胸で、参加者のネームプレートが淡く光っている。
男は、木のウロの中に作られた玉座に腰掛け、肘置きに肩肘をつきながら、楽しそうに笑った。
「──ほう」
余裕たっぷりの声音。
「余の存在に気付くとは……なかなかの術師ではないか。女」
視線は、明確にロールへ向けられている。
ザキは、剣の柄に手を置いたまま、ちらりとロールを見る。
「誰や?あの偉そうなボン」
ロールは、淡々と答えた。
「──彼は、ザラハドール連邦からの留学生。
同連邦南東部、小国ジュナザール皇国の皇子……ザイード・ジュナザーン」
さらに、静かに続ける。
「“金の超星”ラグナ、“銀の新星”アルドに続く……」
その言葉が、空気を変えた。
「第三の優勝候補として、名高い術師です」
森が、ざわりと鳴る。
その中心で、ザイード・ジュナザーンは、満足げに微笑んでいた。
◇◆◇
大樹の玉座に腰掛けた男──ザイード・ジュナザーンは、ロールの言葉を聞いた瞬間、わずかに顔を歪めた。
その変化は一瞬だったが、確かな不快の色を帯びていた。
「──余が、“第三の優勝候補”だと……?」
低く、ねっとりとした声音。
甘美さの裏に、鋭い棘が潜む。
「無礼な」
ザイードは鼻で笑い、視線を遠くへ投げる。
「“金の超星”“銀の新星”……あの様な者どもに……高貴なる余が、劣る道理などありはせぬ」
言葉の一つ一つに、選民思想が染みついている。
自分が頂点であることを疑ったことすらない者の声音だった。
その様子を見て、ザキは露骨に嫌そうな顔をした。
「うわぁ……」
眉をひそめ、肩をすくめる。
「またタカビー系のヤツやん。ラグナとキャラ被ってへん? 嫌いやわー、君ぃみたいなタイプ……」
遠慮の欠片もない感想。
だが、その軽口の裏では、周囲を取り囲む“巨樹人”の動きから一瞬も意識を離していない。
その空気を、ディオニスがぶち壊す。
「……で?」
酒瓶を軽く振りながら、間延びした声を出す。
「その皇子サマが、俺らに何の用だい?
酒でも奢ってくれるってんなら歓迎するぜ?」
完全に場違いな軽口。
だが、ザイードはむしろ興味深そうに片眉を上げた。
「──酒、か?」
顎に手を当て、少し考える素振り。
「余の配下になれば、浴びる程飲んでもまだ尽きぬ程の酒が飲めるが、どうだ?」
その言葉に、ディオニスの目が一瞬、きらりと光った。
「──えっ、マジで?」
明らかに心が揺れた声。
だが、その直後。
「敵の甘言に騙されるナ。真面目にやレ」
ギュスターヴの低く鋭い一言が、横から突き刺さる。
「な、なーんて!」
ディオニスは慌てて笑い、手を振る。
「冗談に決まってるだろぉ!?
ちょっと言ってみただけだって!」
だが、ザイードはその様子を見て、愉快そうに笑った。
「ふふ……」
そして、ゆっくりと上体を起こす。
「余の目的は一つだ」
森の空気が、わずかに張り詰める。
「“統覇戦”を勝ち抜き、“勅命権”を得る。
そして、エルディナ王国に──
ジュナザーン皇国と“対等な国交”を結ばせる事」
誇示するような声音。
それは野心であり、同時に国家の意思でもあった。
「この“ダンジョン・サバイバル”は、そのための足がかりに過ぎぬ」
そして、ザイードの視線が、真っ直ぐにザキを射抜く。
「前回編入試験、第二位……ザキよ。
お主を、我が軍門の末席に加えてやろう」
木の玉座の上から、見下ろすように言い放つ。
「光栄に思うがよい」
その瞬間。
ザキは、完全に言葉を失った。
数秒、ぽかんとしたままザイードを見つめ──
次に、ゆっくりとロールの方を振り返る。
「……聞いた?」
半ば呆然とした声。
「ロールちゃん、何言うてんの、この人?
偉そうにも程があるやろ。ラグナより酷いやん」
ロールは一瞬、言葉に詰まり、視線を彷徨わせる。
「……私に言われましても……」
困り切った、心底どうしようもないという声音だった。
ザキは、ため息を一つ吐き、再びザイードへ視線を戻す。
周囲の巨樹人の動きを警戒しながら、口を開いた。
「ほんで、ザイード皇子サマは。
俺らを仲間にして、このダンジョン・サバイバルを勝ち抜こうって腹なんやな?」
だが、返ってきたのは、冷笑だった。
「──“俺ら”? 違うな」
ザイードの目が、冷たく細まる。
「余が欲するのは、優れたスキルを持つ者のみ。弱卒は要らぬ」
そして、指を一本、軽く振る。
「そこな酔っ払いと、トカゲ擬き。
それに……その醜女は」
ロールへ向けられたその言葉に、空気が一段冷える。
「余の“巨樹人”の苗床となってもらう。死亡せず、プレートさえ失わねば、失格にはならんからのう」
まるで家畜を選別するかのような口ぶり。
その言葉を聞き、ギュスターヴの脳裏に、先ほどの光景が蘇る。
木人の内部から現れた、意識を失った学生の姿。
「──キサマ……」
低く、怒気を孕んだ声。
「他の挑戦者ヲ、スキルで“巨樹人”とらやに変えテ、戦力を増やしているのカ……?」
ザイードは、満足げに鼻を鳴らした。
「ふふん……」
胸を張り、玉座に深く腰掛け直す。
「余は密林の王、ザイード・ジュナザーン。
余のスキル、“豊穣神の加護”は、植物を支配する力」
語る言葉は、まるで教義のようだ。
「人の生は植物と共にある。緑豊かな地には文明が芽生え、作物が育たぬ地では人は息絶える」
ゆっくりと、言い聞かせるように。
「それを支配する余は、人を支配するに相応しい。クズスキルしか持たぬ者でも──」
一拍。
「我が“豊穣神の加護”にて“巨樹人”と化せば、余の強力な駒になれる」
肘をつき、足を組む。
「栄誉なことだとは、思わぬか?」
その言葉を聞きながら、ディオニスは心底どうでもよさそうに呟いた。
「なるほどねぇ……まずは他の挑戦者を倒さずに、自分の駒にして戦力にしてるってわけか」
ゴソゴソとマジックバッグを探り、新しい酒瓶を取り出す。
「いけ好かねえな」
ザイードは、それを“凡夫の戯言”とでも言うように笑った。
「凡夫に、余の高尚な思考は計り知れぬであろうよ」
そして、再びザキを見る。
「ザキよ。貴様は、余の下で働くに相応しい力を持つ事を、先日の試験で示した」
ゆっくりと、威圧するように。
「余の軍門に下れ。悪いようにはせぬ」
ザキは、糸目をさらに細めた。
「──そうやなぁ」
口調は軽い。
だが、剣の柄に添えられた指に、確かな殺気が宿る。
「どうしたもんかなぁ……」
その瞬間。
すっと、冷たい指先が、ザキの手に触れた。
ロールだった。
「……落ち着いてください」
静かで、よく通る声。
「戦闘の様子は、外の観客席に放映されています。
──貴方の力は……まだ見せるべきではありません」
その一言で、ザキの中の熱が、すっと引いた。
「……」
一瞬の沈黙。
そして、ザキはニッと笑い直した。
「ありがとな、ロールちゃん。頭、冷えたわ」
ロールは、慌てたように顔を背ける。
「そ、そんなお礼なんて言われても……!
何も嬉しくありません!」
少し声が上ずる。
「私は“氷の心”を持つ女ですから!」
だが、その耳元が、わずかに赤くなっているのを、
ザキは見逃さなかった。
◇◆◇
ディオニスは、その一連のやり取りを、どこか遠いものを見るような目で眺めていた。
酒瓶を傾け、喉を鳴らしながら一息つく。
そして、はぁーっと、腹の底から息を吐いた。
「……しゃーねぇな」
肩を落とし、ぼそりと呟く。
「正直、動きたかねぇんだが……ここは、な」
次の瞬間。
彼はぐいっと、横に立っていたギュスターヴの肩を抱き寄せた。
「ナッ……!?」
鱗のきしむ音と共に、ギュスターヴの身体が強張る。
「おい、離セ!」
振り払おうと腕を突き出すが、ディオニスの腕は岩のように重い。
酔っているはずの力ではなかった。
ディオニスは気にも留めず、にやりと歯を見せる。
「俺ら二人でよ。アイツの事、やっちまおうぜ?」
その一言に、ギュスターヴの瞳が鋭く細まる。
「……ハァ!? 何故、俺がそんな事ヲ……!?」
吐き捨てるような反論。
だが、ディオニスは肩をすくめ、軽い調子で続けた。
「いいじゃねぇか、別に。
俺ら二人……いや、ロールも入れて三人か?」
指を折りながら、楽しそうに数える。
「“クズスキル”だの何だのって、好き放題バカにされてんだぜ?」
その言葉に、ギュスターヴの喉が小さく鳴った。
「一丁さ。“優勝候補”の皇子サマの鼻、へし折ってやろうぜ」
ディオニスは笑う。
酔漢のそれではない。
獣のように、ぎらりとした笑みだった。
「ラグナとやり合う前の、予行演習ってことでよ」
ギュスターヴは、しばし黙り込んだ。
視線の先では、巨樹人たちが、軋む音を立てながら四人を包囲している。
枝の先端が、槍のように鋭く尖り、殺気を孕んで揺れていた。
やがて、ギュスターヴは小さく息を吐く。
「……キサマに、乗る訳では無いガ」
低く、しかしはっきりと。
「侮られっぱなしというのハ、性に合わン。
ここハ……降りかかる火の粉を払うとしよウ」
そう言って、背中の金棒を掴む。
棘の付いた直方体の鉄塊が、重々しい音を立てて地面から浮かび上がる。
片手で構えたその姿は、まるで要塞の門番のようだった。
その様子を、木の玉座から見下ろしていたザイードは、鼻で笑う。
「愚かな……」
唇を歪め、冷たい声を落とす。
「クズスキル持ちの下民が、抗うか」
そして、玉座の肘掛けに軽く手を置いた。
「ならば良い。貴様らも、“巨樹人”の苗床となるがよい」
その言葉と同時に。
ザイードの座していた大樹の幹が、ぐにゃりと蠢いた。
ウロの穴が、まるで生き物の口のように閉じていく。
次の瞬間には、ザイードの姿は完全に消え、深い緑の闇へと溶け込んだ。
──ドン。
──ドドン。
地鳴りのような音が、四方から響く。
ジャングルの奥。
地面を突き破るように、二十数体の“巨樹人”が次々と立ち上がった。
人型を模した木の魔人。
枝葉は鞭のように蠢き、樹皮の隙間から不気味な魔力の光が滲んでいる。
同時に。
何十本もの枝が、一斉に槍となって放たれた。
空気を裂く音。
四人へ向かって、死の雨が降り注ぐ。
「……チッ」
ギュスターヴが一歩踏み出す。
次の瞬間。
金棒が唸りを上げて振るわれた。
ゴォン──ッ!!
衝撃波が走り、枝の槍は空中で次々と弾け飛ぶ。
破裂音と共に、木片が雨のように散った。
「遅イ」
短く吐き捨てる。
金棒は止まらない。
振るうたび、槍は砕け、巨樹人の腕が吹き飛び、胴が裂ける。
その背後で、ディオニスは酒瓶を掲げていた。
「さて……」
親指で、ボンっと瓶の口をへし折る。
ガラスの破片がきらりと光り、地面に落ちる。
そのまま、喉を鳴らして酒を流し込んだ。
「……染みるねぇ」
そして、低く、祈るように呟く。
「『酒神に三つの顔あり。
笑うは宴、吼えるは狂。』」
一拍。
「『──そして黙するは、裁きなり』」
その瞬間だった。
ディオニスの身体から、凄まじい魔力が噴き上がる。
酒気と共に立ち昇るそれは、炎のようであり、嵐のようでもあった。
足元の草木が、一斉に伏せる。
空気が、重く、粘つく。
ディオニスは、もう一口酒をあおり、ふらりと前に出る。
足取りは覚束ない。
だが、その背中から放たれる圧は、巨樹人すら一瞬、動きを止めさせた。
「酒は友、酒は刃。」
にやりと笑い、目を細める。
「さぁ……やるかぁ」
酔漢のように、しかし確かに“戦士”として。
ディオニスは、迫り来る“巨樹人”の群れの前に立った。
その瞬間、ジャングルの空気が──
完全に、戦場のそれへと変わった。
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