真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一

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第六章 学園編 ──白銀の婚約者──

第268話 ブリジット vs.ビビアーナ③ ──フェンリル王の実力──

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灰色の床を、小さな影が駆けた。



「えーいっ!!」



フレキは甲高い声を張り上げながら、
チャッチャッチャッ、と軽快な足音を響かせて走る。
短い脚がせわしなく回転し、爪がコンクリートを弾く音が、戦場にはあまりにも場違いなほど可愛らしい。
その背中は低く、胴は長く、尻尾はふわふわと揺れている。

──どう見ても、子犬。



(──やはり、どう見ても子犬……!!)



カフェラッテは低く唸りながら、その小さな影を見下ろしていた。
巨体から放たれる威圧感が、周囲の空気を重く沈ませる。



(いかに強力な魔力を持っていようが……この大きさでは、話にならぬ)



巨大な顎が、ゆっくりと開いていく。

ガパァッ──。

それは最早、獣の口というよりも、洞穴だった。
喉奥まで続く暗闇と、剣のように鋭い牙がずらりと並ぶ。



一飲ひとのみにしてしまえば、それまでよ)



フレキは、その闇へと一直線に走り込んだ。
距離が、急速に縮まる。次の瞬間。

──キュピーンッ!!

フレキの瞳が、稲妻のように輝いた。
それは恐怖の光ではない。
逃げ場を探す焦りでもない。
研ぎ澄まされ、覚悟を宿した“意志”の光だった。

フレキは、地面を蹴った。
子犬の身体が、あり得ない角度と速度で跳躍する。
小さな影が、空を裂く。



「……っ!?」



カフェラッテの背筋を、冷たい感覚が走った。
理屈ではなく、本能が告げる危険信号。



(な、何だ……!?)



フレキは、“避ける”どころか、
自ら進んで、口の中へ飛び込もうとしていた。
ゾクッ、と全身の毛が逆立つ。



「チッ……!」



カフェラッテは咄嗟に顎を閉じた。

ガチンッ──!

鋭い音が響き、空気を噛む。
その刹那、フレキの身体は軌道を変え、口腔の縁を掠めるように翻った。

ふわりと、宙で一回転し──
スタッ、と、まるで散歩の途中で立ち止まるかのように、軽やかに着地する。

フレキは振り返り、
ハッハッハッと口で息をしながら、にこりと笑った。



「……勘がいいですねっ」



その無邪気な一言に、カフェラッテの瞳が細くなる。



『貴様……今、何をしようとした……ッ!?』



低く、重い声。怒りと警戒が混じった咆哮。
張り詰めた空気の中、観戦していたジュラ姉が、思わずごくりと喉を鳴らした。



「今のフレキきゅんの動き……あれはッ……」



指を立て、やや引きつった笑みで言い切る。



強欲四天王ウチのヴァルフィスを倒した時の……『小さいまま、わざと相手に飲み込まれて──体内で巨大化して、内側から爆散させる奥義』ねッ……!」



一瞬の沈黙。次の瞬間。



『「「今の、そんな怖い事しようとしてたの!?!?」」』



カフェラッテとビビアーナ、そして思わず巻き込まれた鬼塚まで、完璧に声を揃えてツッコんだ。

その横で。



「さっすが、フレキくん!抜け目ないねっ!」



ブリジットだけが、きらきらした瞳で無邪気に拍手している。



『……笑い事ではないわッ!!』



カフェラッテは牙を剥き、怒りを露わにした。



『クッ……!!なれば、我が爪にて切り刻んでくれるッッ!!』



巨体が跳ね上がる。
床が震え、空気が裂ける。
雷の魔力が爪へと集中し、
青白い稲妻が、バチバチと空気を焦がす音を立てた。



「──今こそ!」



フレキは一歩も引かず、声を張り上げる。



「父上と!グェルと!ヴァレンさんとの修行の成果を──見せる時っ!!」



黄金の魔力が、フレキの脚部へと一気に集束する。
小さな身体の内側で、膨大な力が唸りを上げた。
次の瞬間。

ダンッ!!
爆ぜるような音とともに、フレキの姿が──消えた。



『何ッ!?』



カフェラッテの爪が、空を切る。その刹那。

ズバァッ──!

鋭い感触が走った。



『グオォッッ!?』



巨体の側面に、一筋の切り傷。
遅れて、鮮血が噴き出し、宙に散る。



『い、いつの間に……!?そして、ヤツは何処だッ!?』



カフェラッテは慌てて首を巡らせ、周囲を見渡す。
その背後。高くそびえる四角柱の上。
そこに、小さな影が、ちょこんと立っていた。



「ここですよ、カフェラッテさん!」



フレキは尻尾をふりふり揺らしながら、
ハッハッハッと楽しげに息をしている。



「な、何だ……!?今のフレキくんのスピード……!?」



鬼塚は、呆然と呟いた。
ジュラ姉は腕を組み、満足げに頷く。



「フレキきゅんは、スキル“縮小”で小型化しても、元のフェンリルのパワーを、まったく損なわないらしいわッ」



そして、指を鳴らす。



「つまり──あの小さな身体に、伝説の魔獣の“エンジン”が、そのまま積まれてるって事……あのくらいのスピードは、当然でしょうねッ!」



鬼塚は、乾いた笑いを漏らした。



「……そりゃ、確かにやべぇな……」



小さな身体。だが、その一歩一歩が──
伝説を塗り替える速度を、確かに孕んでいた。



 ◇◆◇



フレキは、四角柱の上にちょこんと立ったまま、下にいるカフェラッテを見下ろした。

小さな身体。
だが、その瞳には、一切の迷いがない。



「では……」



ハッハッハッと軽く息をしながら、前脚に力を込める。



「どんどん、いきますよっ!!」



次の瞬間──
フレキの姿が、弾けた。

ダンッ!!

柱を蹴った音が炸裂し、黄金の残像が宙を走る。
フレキは一直線に向かうのではなく、壁、柱、床──
あらゆる面を踏み台にし、跳ね、弾み、反射する。

まるで──
制御不能なスーパーボール。



『なっ……!?』



カフェラッテの視界が、追いつかない。

右かと思えば、左。
上だと思った瞬間、背後。
視界の端を、黄金の閃光が掠めては消える。



『クソッ!!』



カフェラッテは歯を食いしばる。



『なれば、攻撃範囲を広げるだけの事よッ!!』



巨体が地を踏み鳴らし、雷の魔力が全身に走る。
爪、尾、ひげ──
至る所から稲妻が迸り、空間そのものを薙ぎ払うように雷撃が放たれた。
轟音。閃光。雷が、柱を削り、床を焦がす。
だが、フレキは止まらない。



「わっ、ほっ、はいっ!」



黄金の小さな影が、雷撃の隙間を縫うように跳ねる。
壁に触れては方向転換し、柱を踏んでは軌道を変え、まるで“踊っている”かのように、攻撃の網をすり抜けていく。

そして──



「”子犬円舞曲プロキオン・ワルツ”!!」



軽やかな声と共に、フレキが一気に踏み込んだ。

ザシュッ!!

爪が、カフェラッテの脚を裂く。



『グアァッ!?』



血が噴き出す。
だが、それは一撃では終わらない。
フレキは着地する前に壁を蹴り、
反動で宙を返し──

ザンッ!!バンッ!!ズバッ!!

側面、肩、首元。
爪牙による打撃を与えては、即座に離脱。
柱に当たって跳ね返り、角度を変え、再び突っ込む。

攻撃。離脱。反射。再突入。

それは、舞踏だった。
黄金のスーパーボールが、巨大なフェンリルを中心に円を描き、無数の斬撃を刻んでいく。



『グアァァッ!?』



カフェラッテはよろめき、足を踏み外しそうになる。
身体のあちこちから、血が噴き出していた。



(フェンリルである我が……こんな、小動物相手に……ッ!?)



怒りと困惑。
だが、すぐに思考が切り替わる。



(……いや、違う……!こやつは──)



雷撃を放つ手を止め、カフェラッテは低く唸った。



『……貴様ッ……!その小さき姿は、仮の姿かッ!!』



血の滴る口で、一喝する。



『正体を見せろッ!!』



その声に、フレキの動きが止まった。
最後に一度、柱を蹴り、
ふわり、と中央に着地する。
黄金の魔力が、ゆっくりと収束していく。

フレキは、静かに息を整え──
穏やかな声音で答えた。



「──そうですねっ」



尻尾を一度、軽く振る。



「これから、真剣勝負をする相手には……真の姿を見せるのが、礼儀というものでしょう……」

「ではっ!」



──ボワンッ!!

音と共に、黄金の魔力が膨張する。
小さな身体が、ぐん、と引き延ばされるように成長し、骨格が変わり、筋肉が盛り上がり、毛並みが風に揺れる。

次の瞬間、そこに立っていたのは──

全長五メートル級。
だが、フォルムは変わらない。

──巨大な、ダックスフンド。

胴は長く、脚は短め。
しかし、その身体から放たれる魔力と威圧感は、紛れもなく“神獣”。

フレキは胸を張り、きりっとした顔で宣言する。



「見ての通り……ボクも、貴方と同じ── フェンリルです!」




沈黙。数秒──いや、永遠にも感じられる間が、場を支配する。

次の瞬間。



『「お前の様なフェンリルがいるかッ!?」』



ビビアーナとカフェラッテの声が、完全に重なった。



「胴が長すぎるのねぇ!!」


『その姿で我らフェンリル同族を名乗るなッ!!』



即座に。



「「えぇっ!?!?」」



フレキと、ついでに横で見ていたブリジットまで、声を揃えて叫ぶ。

二人──いや、一人と一匹は、同時にガビーン!と効果音が付きそうなほどショックを受けた表情になる。



「そ、そんな……!ボクのどこがフェンリルらしくないって言うんですかっ……!?」



ハッハッハッと口で呼吸しながら、興奮気味に抗議の声を上げるフレキ。
その様子を見ながら、鬼塚はこめかみを押さえ、内心で深く頷いた。



(……まあ、そりゃそう言われるよな……)



ダンジョンの空気は、再び張り詰める。

だが同時に──
どこか、どうしようもなくズレた戦いが、
次の段階へ進もうとしていた。



 ◇◆◇



ビビアーナは、荒く乱れた呼吸のまま、奥歯をぎり、と噛み締めた。

視界に焼き付いて離れない光景がある。

黄金の残像。
雷鳴と共に衝突する、二体のフェンリル。
そして──

常識という言葉を、根こそぎ裏切る
あの、あり得ないほどに長い“胴”。



(……ふざけてるのねぇ……)



喉の奥から、熱を帯びた息が漏れる。



「……ハーーー!!」



甲高く、しかし腹の底から叩きつけるような叫びが、ダンジョンの空間を震わせた。
反響した声が、灰色の壁に何重にもぶつかり、戻ってくる。



「もういい!!これ以上──」



ビビアーナは、鞭を握る手に、これ以上ないほど力を込めた。指の関節が白くなる。



「アンタ達のペースには、付き合ってられないのねぇ!!」



怒り。焦り。そして、自分でも認めたくない“追い詰められている”という感覚。



「どっちみち……」



唇を歪め、目を見開く。



「アタシとカフェラッテちゃんで……アンタ達全員を、やっつけられなきゃ──アタシ達の、負けなのよねぇ!!」



叫びと同時に、身体が動いた。
ビビアーナは地を蹴る。
それは、軽やかさとは程遠い。
だが、迷いは一切なかった。
ドンッ、と重たい音を立てて、彼女の身体が宙を切り──次の瞬間、カフェラッテの背へと叩きつけるように着地する。



「いくよ……カフェラッテちゃん!」



短く、鋭い声。
鞭を高く掲げ、喉を裂くように叫んだ。



「”人狼一体ロボ・プリンセシータ”……ッ!!」



その瞬間だった。

ズズズ……ッ。

生理的嫌悪を誘う、不快な音が、空間にゆっくりと広がる。

ビビアーナの下半身が──
まるで粘土か、溶けかけた蝋のように、
カフェラッテの背中へと沈み込んでいく。
肉体と肉体の境界が、曖昧になる。

皮膚が。筋肉が。骨格の感覚すらも。
互いの存在を侵食し合い、溶け合っていく。



(……いい……これでいい……)



やがて。
完全に融合が終わった時。

そこにあったのは──
巨大なフェンリルの背中から、
鞭を握ったビビアーナの上半身が“生えている”という、異様極まりない光景だった。

異形。歪。だが、圧倒的。



「はわわっ!?」



思わず、ブリジットが声を上げる。
目を丸くし、言葉が追いつかない。



「び、ビビアーナさんが……カフェラッテちゃんと、合体したよっ!?」



その隣で。
巨大なダックスフンドの姿をしたフレキが、純粋な驚嘆を込めて口を開く。



「す、凄いですっ!ビビアーナさんが……カフェラッテさんの背中にできた、人面瘡じんめんそみたいになってます!」


「クルァ!!」



ビビアーナの怒声が、爆発した。



「誰がフェンリルの背中にできた人面瘡じんめんそなんだねぇ!?言葉を選ばっしゃい!!」



鞭を振り回しながら、顔を真っ赤にする。
額には、うっすらと青筋が浮かんでいた。



「そんな余裕ぶっこいてられるのも……ここまでだねぇ!!」



目が、異様な光を帯びる。



「”魔獣姫ドマドルビア“の奥の手で……!」



声が、跳ね上がる。
興奮。高揚。そして、理性の縁を踏み越えた、陶酔。



「アタシとカフェラッテちゃんが……合ッッ!!体ッッ!!したからには……」



言葉一つ一つに、力を込めて。



「アンタ達も、敵じゃないのよねぇ!!」



ビビアーナは、鞭を天へと振り上げた。



「”災厄禍裂鞭ラティーゴ・デル・デザストレ“ッッ!!」



その叫びに応えるように──



『ウオォォーーーン!!』



カフェラッテの遠吠えが、空気を震わせる。
雷が、呼ばれる。
嵐が、目を覚ます。
咆哮を合図に、青白い稲妻が渦を巻き、
空間そのものが、怒りを帯び始める。

ビビアーナの鞭が、嵐のように振るわれる。
鞭の軌跡に、雷が絡みつき──

轟ッッ!!

雷鳴と暴風が一体となった、“災害”が発生した。
柱が、削り取られる。壁が、砕け散る。
内壁が、紙屑のように引き裂かれ、宙を舞う。

まるで、このダンジョンの一角だけが、
天変地異に見舞われたかのようだった。
その光景を前に。



「これは……」



ブリジットは、額に汗を浮かべ、息を呑む。



「凄い攻撃だねっ……!」



畏怖と驚嘆が入り混じった声。
嵐の中心で、二体分の意思を宿した“魔獣姫”が、
確かな殺意をもって、こちらを睨み据えていた。

その隣で、フレキは騒然としたダンジョンの中心を、まっすぐに見据えていた。

黄金の魔力が渦を巻き、雷と嵐が荒れ狂うその向こう。
ビビアーナとカフェラッテが融合した“魔獣姫”が、圧倒的な存在感で立ちはだかっている。

だが──
フレキの瞳に、怯えはなかった。
あるのは、静かで、確かな決意。



「……こうなったら……」



低く、しかしはっきりとした声。



「僕たちも、訓練で身につけた“アレ”をやりましょうっ!ブリジットさん!」



ちらりと横を見る。
呼ばれたブリジットは、一瞬だけ唇を噛んだ。
嵐の音が、雷鳴が、迷いを急かす。
だが次の瞬間、彼女は顔を上げた。
その瞳には、もう揺らぎはない。



「うん!」



短く、力強く。



「これで……決めよう!」



その瞬間だった。
ブリジットの額に、異変が起こる。
ニョキニョキ、と音を立てるように──
銀色に輝く二本のツノが、ゆっくりと、しかし確実に伸びていく。

金属のような光沢。
神性を帯びた、冷たい輝き。

真祖竜の加護を受けた証。

その姿を目にした者たちが、息を呑む中、
フレキは一歩前へと踏み出した。



「……“神獣化”と……“縮小”……」

声は低く、儀式の詠唱のよう。
一拍、間を置く。その間に、空気が張り詰める。



「同時発動!!」



──ボワンッ!!

空間が、歪んだ。
視界が揺れ、重力の感覚が狂う。
フレキの身体が、光に包まれ─け
次の瞬間。

五メートル級の巨大ダックスフンド、その姿は保ったまま。
だが。

胴だけが──
あり得ない速度で、あり得ない長さへと引き伸ばされていく。

十メートル。
十五メートル。
二十メートル。

伸びる。伸びる。なおも、伸びる。
あまりにも、胴長すぎる。
自然界の理を、完全に無視したフォルム。



「おわッ!?!?」



思わず鬼塚が悲鳴を上げた。



「な、なんだよアレッ!!」



ビビアーナとカフェラッテですら、動揺を隠せなかった。



「な、何なのねぇ……!?その……その、化け物は……!?」



雷を纏った巨躯が、わずかに後ずさる。
その視線の先で、フレキは堂々と胸を張った。
長大な胴体が、ゆったりと宙に浮かび、たわむ。



「これこそ、ボクの“縮小型神獣モード”!」



ややエコーのかかった声には、一切の迷いがない。



「そのあまりの力の大きさに、恐怖を感じるのも──無理はありませんっ!」



自信満々に、言い切る。



(……そういう意味で恐怖を感じてる訳じゃねぇんじゃねえかな)



鬼塚は、心の中でそっとツッコミを入れた。
その瞬間。



「それぇーーっ!!」



ブリジットの掛け声が、嵐を切り裂く。
彼女は地を蹴り、ドンッ!と音を立てて、超胴長フレキの背へと飛び乗った。
着地は完璧。

同時に──

フレキの身体が、螺旋を描くように持ち上がる。
うねる。しなる。
長大な胴が、まるで意思を持つかのように宙を泳ぐ。
その姿は、まさしく東洋の龍。
空中を漂い、舞い、空間を支配する。

その背に跨り、ハンマーを肩に担ぐブリジット。
銀のツノを持つ少女と、異形の神獣。
その光景に、ジュラ姉は思わず息を呑んだ。



「マッ……!なんて、神々しい姿……ッ!」



目を潤ませ、呟く。



「まるで……神話の、1ページを見ているみたい……」



だが、その隣で。
鬼塚は、額を伝う冷や汗を拭った。



(……日本昔ばなしのオープニングみてぇだ……)



一方、マテオは、ガクガクと膝を震わせ、言葉も出せず、ただ呆然とその光景を見上げていた。
そんな中、ビビアーナは、はっと我に返る。



「……ハーーー!!」



怒声と共に、鞭を振り上げる。



「アタシとカフェラッテちゃんが……そんな得体の知れない化け物になんか──」



歯を食いしばり、叫ぶ。



「負けるはずがないのねぇ!!」


『その通りだッ!行くぞッ!!』



カフェラッテの咆哮が、雷を呼ぶ。



「いくのよッ!!カフェラッテちゃん!!」



ビビアーナが叫ぶ。
雷と嵐が、再び激しく渦を巻く。
破壊の嵐。災厄の咆哮。

その真正面。

フレキの背に跨ったブリジットは、
ハンマーを高く掲げた。
風に煽られ、髪が舞う。
瞳は、まっすぐ前を射抜いている。



「決着をつけよう!ビビアーナさんっ!!」



ブリジットは、力強く言い切る。



二つの“神話もどき”。
災厄と神獣。雷と龍。

ダンジョンという閉ざされた舞台で──
今まさに、正面衝突しようとしていた。
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