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第六章 学園編 ──白銀の婚約者──
第300話 慰労会と、それぞれの誇り
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ルセリア中央大学の中心部にそびえ立つ、巨大建造物──セントラル・プラザ。
通称、センプラ。
白亜の外壁と金の装飾をまとったその姿は、遠目に見れば宮殿のようであり、近づけば近代的なドーム施設の機能美を備えているという、奇妙な調和を見せていた。
その内部、大ホール。
高い天井には幾重ものシャンデリアが吊るされ、宝石のような光を散らしている。
壁面には中世風の紋章旗が掲げられているが、その足元には魔導式の照明装置が埋め込まれ、淡く青白い光を放っていた。
クラシック音楽と魔導拡張音響が融合した旋律が流れ、ホールには華やかな笑い声とグラスの触れ合う音が響いている。
予選会の慰労会開始まで、あと僅か。
会場には予選会に参加した学生たち、その父兄である貴族たち、さらに他国からの要人までが集まり、色とりどりのドレスと正装が波のように揺れていた。
そんな中、会場の一角。
比較的人の流れが穏やかなソファーエリアで、四人と一匹が固まって立っている。
ブリジット・ノエリア。
その隣にビビアーナ・ロカ。
そしてブリジットの胸に抱かれたミニチュアダックス姿のフレキ。
関係者パスを首から下げ、黒マスクを顎まで下ろしたリュナ。
ビビアーナは明らかに落ち着きがなかった。
視線が右へ、左へ、また右へ。
肩が小刻みに揺れ、手はドレスの裾をぎゅっと掴んでいる。
リュナがストローをくわえたまま、横目でそれを見た。
「ビビっち、どした?めちゃ目ぇ泳いでね?」
軽い。
あまりにも軽い。
ウェルカムドリンクの琥珀色の液体を吸い上げながら、まるで近所のコンビニ前で立ち話でもしているような口調だ。
ビビアーナはハッと振り向き、両手を胸元でぶんぶん振った。
「ハーーー! リュナお姉さま! ビビちゃん、こういうパーティの場みたいなの、苦手なのよねぇ……!」
声が一段階高い。
緊張で喉が乾いているのが、遠目にも分かる。
周囲では貴族たちが優雅に談笑し、魔法具を身に着けた外交官らしき人物が深刻な表情で囁き合っている。
その視線が、時折こちらへ向く。
ビビアーナの背筋がピンと伸びる。
リュナは「マ?」と短く返し、空になったグラスをくいっと傾ける。
「これ、予選会のイローカイってヤツなんしょ? ビビっち、予選会で大活躍してたんだし、主役としてドードーとしてりゃいっしょ。」
そう言いながら、近くを歩いていたボーイを指で軽く呼び止める。
「あ、サーセン。これ、おかわり貰えるっすか~?あと何か軽く摘むモンも!ASAPで!」
自然体。
あまりにも自然体。
その姿を見て、ビビアーナはごくりと唾を飲んだ。
(さ、流石、リュナお姉さま……! 予選会に出てもいない無関係者なのに、めちゃくちゃ堂々としてる……! 大物なのねぇ……!)
尊敬の眼差しがきらりと光る。
ブリジットは小さく笑いながらリュナの袖を引いた。
「リュナちゃんリュナちゃん。たぶん、この後沢山料理とか出てくるから、慌てなくていいと思うよ?」
リュナは目を丸くし、ぱあっと顔を輝かせた。
「マジっすか?楽しみ~!ま、兄さんの料理には勝てないと思うっすけど!」
そう言ってどかっとソファーに腰掛け、足を組む。
その姿は完全に“招待客”というより“主催者側”の余裕だった。
ブリジットは「あはは……」と苦笑する。
その時だった。
人混みの向こうから、ひときわ明るい声が響く。
「あっ、いたいたぁ~!ブリジットちゃん、リュナちゃ~ん!」
そのすぐ後ろから、やや焦った声。
「ま、待ってください!蒼龍さんッ!荷物が邪魔でッ……!」
視線が一斉にそちらへ向く。
人波をかき分けるように現れたのは、艶やかな青髪を揺らす美女──蒼龍。
首には関係者パス。
その後ろで両手に買い物袋を抱え、ムキムキのスーツ姿に猫の覆面を被ったグェルが必死についてくる。
ブリジットの顔がぱっと明るくなる。
「あっ!蒼龍さーん!」
大きく手を振る。
腕の中のフレキも尻尾をぶんぶん振りながら声を上げた。
「グェル!こっちだよっ!」
リュナはソファーに深く腰掛けたまま、片手をひらひら振る。
「蒼っち、おっつー。グェルも。」
軽い一言。温度差がすごい。
そして──
蒼龍の姿を視界に入れた瞬間、ビビアーナの身体がビクンと跳ねた。
「ハーーー!!また新たなオリエンタル美女が現れたのねぇ!!」
背筋が一直線に伸びる。
目がきらきらと輝く。
蒼龍の放つ、異国的な気品と柔らかな笑顔。
優雅でありながら距離感が近い、独特の存在感。
ビビアーナは思わず両手を胸元に当て、まるで新しい魔獣でも発見したかのような驚きで固まった。
豪奢なホールの中。
煌びやかな光と、軽やかな笑い声の中で、フォルティアの仲間たちと、新たな顔ぶれが合流する。
慰労会の幕開け前。
賑やかで、どこか温かな空気が、その一角だけ少しだけ濃くなったのだった。
◇◆◇
蒼龍は人波を抜けるや否や、ぱっと視線をビビアーナに留めた。
次の瞬間、その瞳がきらきらと輝く。
「あぁ~っ!!」
高い声が弾ける。
「アナタ、予選会でブリジットちゃんと激戦を繰り広げてた、ビビアーナちゃんじゃないのぉ~!! きゃ~っ!本物!かわいいっ!」
言うが早いか、蒼龍は迷いなくビビアーナの両手を掴み、ぎゅっと握った。
距離が近い。近すぎる。
ビビアーナの肩がビクンと跳ねる。
「ハーーー!?な、何なのかねぇ!?この距離感の近いキレイなお姉さんは!?ドキドキしちゃうのねぇ!」
顔がみるみる赤く染まる。
蒼龍はそんな反応もお構いなしに、ビビアーナの手をぶんぶん振る。
「だってだって!アタシ、会場で見てたのよぉ~!あの戦い!凄かったわよぉ~!仙人同士の戦いでも、なかなかあんなハイレベルなのはそうそう見ないわぁ~!」
目が本気だ。
冗談ではない。
観戦者としてではなく、純粋な“憧れ”の眼差しだった。
ブリジットが小首を傾げる。
「蒼龍さん、あたしとビビアーナさんの戦い、見てたの?」
「もちろんよぉ~!」
蒼龍は即答する。
「ブリジットちゃんも凄かったけど、アタシ、ビビアーナちゃんの戦い方にすっかり惚れちゃったの!あんなに泥臭くて、あんなに真っ直ぐで……アタシ、すっかりファンになっちゃったの!アナタの!」
そう言って、もう一度ぎゅっと手を握り直す。
その手は温かく、力強く──迷いがない。
ビビアーナは、ふと自分の手を見る。
豆だらけの、荒れた手。
魔獣を従え、鞭を握り、何度も転び、何度も立ち上がってきた証。
それを、こんなに嬉しそうに握ってくれる人がいる。
その事実に、胸の奥がじんわりと温かくなった。
「……し、仕方ないのねぇ!」
わざとらしく胸を張る。
「ファンは大事にしなきゃならないものねぇ!よろしくねぇ、蒼龍さん!」
今度は自分から、ぎゅっと握り返す。
その笑顔は、ほんの少しだけ照れを含んでいた。
蒼龍は「きゃ~っ!」と小さく歓声を上げる。
その横で、買い物袋を抱えたまま立ち尽くしている大柄な影。
ビビアーナの視線が、ゆっくりとそちらへ移る。
猫の覆面。スーツ越しにも分かる筋肉の隆起。
両腕にずっしりとした紙袋。
「──で、こっちの猫マスクのムキムキマッチョメンは何なのかねぇ?」
怪訝な目。
ブリジットがにこっと笑う。
「あ、紹介するね!グェルくん!フォルティアの“わんわん開拓団”のリーダーをやってくれてるんだよ!」
「そして、ボクの弟ですっ!」
腕の中のフレキが、ハッハッと嬉しそうに息を弾ませながら、さらりと言う。
一瞬、空気が止まった。
ビビアーナの身体がビクーン!と震える。
「弟!? このムキムキマッチョメンが、小型犬の!?!?」
叫びながら、フレキを見る。
次に、ゆっくりとグェルへ視線を戻す。
グェルは無言で立っている。
覆面越しでも分かる、ちょっと申し訳なさそうな雰囲気。
ビビアーナは、じり、と一歩近づく。
「……ちょっと、確認させてもらうのねぇ。」
猫マスクの裾に指をかける。
グェルは抵抗しない。
そのまま、ぺらり。
覆面が持ち上がる。
ブルン。
そこから現れたのは、つぶらな瞳のパグ顔。
きょとんとした表情。
完全に無害。
筋肉とのギャップが凄まじい。
ビビアーナは無言のまま、マスクを元に戻す。
ぺらり。
静かに。
そして、くるっとブリジットの方を向く。
数秒、考える。
真剣に。とても真剣に。
「……犬種が違くないかねぇ?」
絞り出すような声。
フレキが首を傾げる。
「犬種?」
本気で分かっていない顔。
蒼龍は口元を押さえながら、くすくすと笑う。
(ツッコミどころが多過ぎて、何からツッコめばいいか思考が渋滞しちゃってるわねぇ~)
会場の喧騒の中、その一角だけが妙に賑やかだ。
緊張で強張っていたビビアーナの肩は、いつの間にか少しだけ下がっている。
笑いがこぼれる。
ツッコミが飛ぶ。
パグが無言で袋を持つ。
煌びやかなホールの中心からは少し外れた場所。
だがそこには、確かな温度があった。
戦いの緊張も、貴族社会の圧も。
この瞬間だけは、どこか遠くに追いやられていた。
◇◆◇
慰労会の開始時刻が近づくにつれ、大ホールの空気はさらに濃くなっていった。
扉が開くたびに、新たな客が流れ込み、色とりどりのドレスと正装が波のように広がる。
グラスの触れ合う澄んだ音、低く抑えられた貴族たちの談笑、遠くで奏でられる弦楽器の旋律が重なり合い、豪奢な空間を満たしていく。
ソファー席では、リュナと蒼龍が並んで座り、グェルは律儀に紙袋を足元にまとめ、フレキはブリジットの腕から降りてクッションの上で丸まっている。
その周囲に、じわじわと視線が集まり始めた。
「お、おい……あそこにいるの、ラグナ殿下と予選会同立一位の、ブリジット・ノエリア嬢じゃないか……!?」
「ほ、本当だ……!うわー、本物、めちゃくちゃ可愛い……っ!!」
「あの胴の長い従魔もいる……間違いないよ……!」
ひそひそ声が、風のように伝播していく。
ブリジットは気づき、ぴくりと肩を震わせた。
視線が合うたび、小さく会釈をし、ぎこちなく手を振り返す。
頬がみるみる赤く染まっていく。
その様子を横目で見て、ビビアーナはくすりと笑った。
「ブリジット、もっと堂々とするのねぇ。」
ぽん、と背中を軽く叩く。
「アンタは予選会一位通過者なのよ。胸を張って堂々としてればいいのねぇ!」
ブリジットは困ったように笑う。
「そ、そうかな……?でも、あたし、なかなかこういう扱いって慣れなくって。えへへ。」
指先で髪をかき、照れたように視線を落とす。
ビビアーナは腕を組み、ふん、と鼻を鳴らす。
「シャンとするのねぇ!ブリジットは、このアタシに勝って、予選会一位通過を勝ち取ったのよねぇ!」
わざとらしく胸を張る。
「それは、とってもとっても、凄いことなのねぇ!胸を張って、誇っていいのよ!」
その言葉には、からかいではなく、本心からの称賛が込められていた。
ブリジットは少し目を丸くし、それから柔らかく微笑む。
「……うん!ありがと、ビビアーナさん!」
その笑顔を見て、ビビアーナの口元も緩む。
だが、ふと。
その笑顔が、ほんの少しだけ曇った。
視線が床に落ちる。
「それよりも……本当にヤバいのは、実はビビちゃんなのよねぇ……」
声のトーンが下がる。
ブリジットは首を傾げる。
「えっ?なんで?」
ビビアーナは肩を落とし、ずーん、と沈み込む。
「ビビちゃんはねぇ……“統覇戦”の予選会に出るにあたって……故郷のパパとママに、大分フカしちゃってたのよねぇ……」
視線が遠くを見る。
「『予選会通過なんて、余裕なのよねぇ!パパとママは、泥舟に乗ったつもりで、ビビちゃんの予選通過の吉報を待っておけばいいのねぇ!』って……バチクソイキっちゃってたのよねぇー……」
最後は自分で自分を殴りたいような声だった。
ブリジットは苦笑しつつも、真剣に聞く。
「そ、そうなんだね。」
ビビアーナは慌てて顔を上げる。
「いや!ブリジットを責めてる訳じゃないのねぇ!アタシが予選を敗退したのは、アタシの力が足りなかったからなのねぇ!」
ぐっと拳を握る。
「ただ……パパとママをガッカリさせてしまうだろうと思うと……それが、ちょっとだけツラいのねぇ……」
その横顔は、いつもの強気なビビアーナではなく、どこか年相応の少女だった。
ブリジットは、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
(ビビアーナさんも……お父さん、お母さんの期待に応えたいって思ってるんだ……)
自分と重なる。
自分もまた、家族に認められたいと願っている。
その時だった。
「──ビビアーナ?」
低く、落ち着いた声。
二人は同時に振り向く。
人波の向こうに、堂々とした佇まいの中年の夫婦が立っていた。
洗練された装い。
しかし、その視線は柔らかい。
ビビアーナの顔が青ざめる。
「パ……パパ……ママ……!? ロカ領からわざわざ来てたのねぇ……?」
両親はゆっくりと近づいてくる。
足取りに迷いはない。
ブリジットの背筋にも緊張が走る。
ビビアーナは視線を逸らし、声を震わせる。
「パパ、ママ……あ、アタシは……」
その言葉は、最後まで続かなかった。
がしっ。
両親が、同時にビビアーナを抱きしめた。
「えっ!?」
戸惑いの声。
だが、その抱擁は強く、温かい。
父が静かに言う。
「──実はな。私たちは、予選会も会場で見ていたんだ。」
母が続ける。
「要領が悪く、一人では何も出来ない子だと思っていたのに……いつの間にか、あんなに沢山の強力な魔獣を従えて……伝説の魔獣フェンリルまで……」
声が少し震えている。
ビビアーナの目に、じわりと涙が滲む。
「で、でも……アタシ、あれだけフカシておきながら、予選会で負けちゃったのねぇ……ごめんなさい、パパ、ママ……ガッカリさせちゃったのねぇ……」
小さく震える声。
父は首を振る。
「いいんだ……お前は、頑張ってたじゃないか。一位通過のブリジット様に、あれだけ肉薄するほどに。」
母が背中を優しくさする。
「私たちは……アナタの事を、ちゃんと見ていなかったのね……。」
その視線が、ブリジットへ向く。
ブリジットはすぐにぺこりと頭を下げる。
両親は微笑む。
「ありがとうございます、ブリジット様。娘と、仲良くしてくださって。」
ブリジットは首を振り、穏やかに応える。
「いいえ、私の方こそ……ビビアーナさんみたいな素敵な方と友人になれて、幸せです!」
その言葉に、ビビアーナの肩が震える。
父が静かに言う。
「──すまなかった、ビビアーナ。私達は、お前の力を……いや、お前の努力を、ちゃんと見てやれていなかった。」
母が頷く。
「あなたは……私達の、誇りよ。」
ぽろり、と涙が零れ落ちる。
「パパ……ママ……」
ビビアーナは、ぎゅっと抱きしめ返した。
豪奢なホールの一角で、小さな家族の再会が静かに輝く。
ソファーから、リュナがにやりと笑い、蒼龍は目を細め、グェルは黙って頷き、フレキは嬉しそうに尻尾を振る。
ブリジットは、その光景を優しく見つめる。
(ビビアーナさん……よかったね。)
ふと、壁の時計を見る。
開始時刻が迫っている。
胸の奥で、小さな決意が芽生える。
(あたしも……頑張らなきゃだよね……!)
もうすぐ、自分の両親もここへ来る。
逃げずに、向き合おう。
豪華なシャンデリアの光の下で、少女は静かに背筋を伸ばした。
通称、センプラ。
白亜の外壁と金の装飾をまとったその姿は、遠目に見れば宮殿のようであり、近づけば近代的なドーム施設の機能美を備えているという、奇妙な調和を見せていた。
その内部、大ホール。
高い天井には幾重ものシャンデリアが吊るされ、宝石のような光を散らしている。
壁面には中世風の紋章旗が掲げられているが、その足元には魔導式の照明装置が埋め込まれ、淡く青白い光を放っていた。
クラシック音楽と魔導拡張音響が融合した旋律が流れ、ホールには華やかな笑い声とグラスの触れ合う音が響いている。
予選会の慰労会開始まで、あと僅か。
会場には予選会に参加した学生たち、その父兄である貴族たち、さらに他国からの要人までが集まり、色とりどりのドレスと正装が波のように揺れていた。
そんな中、会場の一角。
比較的人の流れが穏やかなソファーエリアで、四人と一匹が固まって立っている。
ブリジット・ノエリア。
その隣にビビアーナ・ロカ。
そしてブリジットの胸に抱かれたミニチュアダックス姿のフレキ。
関係者パスを首から下げ、黒マスクを顎まで下ろしたリュナ。
ビビアーナは明らかに落ち着きがなかった。
視線が右へ、左へ、また右へ。
肩が小刻みに揺れ、手はドレスの裾をぎゅっと掴んでいる。
リュナがストローをくわえたまま、横目でそれを見た。
「ビビっち、どした?めちゃ目ぇ泳いでね?」
軽い。
あまりにも軽い。
ウェルカムドリンクの琥珀色の液体を吸い上げながら、まるで近所のコンビニ前で立ち話でもしているような口調だ。
ビビアーナはハッと振り向き、両手を胸元でぶんぶん振った。
「ハーーー! リュナお姉さま! ビビちゃん、こういうパーティの場みたいなの、苦手なのよねぇ……!」
声が一段階高い。
緊張で喉が乾いているのが、遠目にも分かる。
周囲では貴族たちが優雅に談笑し、魔法具を身に着けた外交官らしき人物が深刻な表情で囁き合っている。
その視線が、時折こちらへ向く。
ビビアーナの背筋がピンと伸びる。
リュナは「マ?」と短く返し、空になったグラスをくいっと傾ける。
「これ、予選会のイローカイってヤツなんしょ? ビビっち、予選会で大活躍してたんだし、主役としてドードーとしてりゃいっしょ。」
そう言いながら、近くを歩いていたボーイを指で軽く呼び止める。
「あ、サーセン。これ、おかわり貰えるっすか~?あと何か軽く摘むモンも!ASAPで!」
自然体。
あまりにも自然体。
その姿を見て、ビビアーナはごくりと唾を飲んだ。
(さ、流石、リュナお姉さま……! 予選会に出てもいない無関係者なのに、めちゃくちゃ堂々としてる……! 大物なのねぇ……!)
尊敬の眼差しがきらりと光る。
ブリジットは小さく笑いながらリュナの袖を引いた。
「リュナちゃんリュナちゃん。たぶん、この後沢山料理とか出てくるから、慌てなくていいと思うよ?」
リュナは目を丸くし、ぱあっと顔を輝かせた。
「マジっすか?楽しみ~!ま、兄さんの料理には勝てないと思うっすけど!」
そう言ってどかっとソファーに腰掛け、足を組む。
その姿は完全に“招待客”というより“主催者側”の余裕だった。
ブリジットは「あはは……」と苦笑する。
その時だった。
人混みの向こうから、ひときわ明るい声が響く。
「あっ、いたいたぁ~!ブリジットちゃん、リュナちゃ~ん!」
そのすぐ後ろから、やや焦った声。
「ま、待ってください!蒼龍さんッ!荷物が邪魔でッ……!」
視線が一斉にそちらへ向く。
人波をかき分けるように現れたのは、艶やかな青髪を揺らす美女──蒼龍。
首には関係者パス。
その後ろで両手に買い物袋を抱え、ムキムキのスーツ姿に猫の覆面を被ったグェルが必死についてくる。
ブリジットの顔がぱっと明るくなる。
「あっ!蒼龍さーん!」
大きく手を振る。
腕の中のフレキも尻尾をぶんぶん振りながら声を上げた。
「グェル!こっちだよっ!」
リュナはソファーに深く腰掛けたまま、片手をひらひら振る。
「蒼っち、おっつー。グェルも。」
軽い一言。温度差がすごい。
そして──
蒼龍の姿を視界に入れた瞬間、ビビアーナの身体がビクンと跳ねた。
「ハーーー!!また新たなオリエンタル美女が現れたのねぇ!!」
背筋が一直線に伸びる。
目がきらきらと輝く。
蒼龍の放つ、異国的な気品と柔らかな笑顔。
優雅でありながら距離感が近い、独特の存在感。
ビビアーナは思わず両手を胸元に当て、まるで新しい魔獣でも発見したかのような驚きで固まった。
豪奢なホールの中。
煌びやかな光と、軽やかな笑い声の中で、フォルティアの仲間たちと、新たな顔ぶれが合流する。
慰労会の幕開け前。
賑やかで、どこか温かな空気が、その一角だけ少しだけ濃くなったのだった。
◇◆◇
蒼龍は人波を抜けるや否や、ぱっと視線をビビアーナに留めた。
次の瞬間、その瞳がきらきらと輝く。
「あぁ~っ!!」
高い声が弾ける。
「アナタ、予選会でブリジットちゃんと激戦を繰り広げてた、ビビアーナちゃんじゃないのぉ~!! きゃ~っ!本物!かわいいっ!」
言うが早いか、蒼龍は迷いなくビビアーナの両手を掴み、ぎゅっと握った。
距離が近い。近すぎる。
ビビアーナの肩がビクンと跳ねる。
「ハーーー!?な、何なのかねぇ!?この距離感の近いキレイなお姉さんは!?ドキドキしちゃうのねぇ!」
顔がみるみる赤く染まる。
蒼龍はそんな反応もお構いなしに、ビビアーナの手をぶんぶん振る。
「だってだって!アタシ、会場で見てたのよぉ~!あの戦い!凄かったわよぉ~!仙人同士の戦いでも、なかなかあんなハイレベルなのはそうそう見ないわぁ~!」
目が本気だ。
冗談ではない。
観戦者としてではなく、純粋な“憧れ”の眼差しだった。
ブリジットが小首を傾げる。
「蒼龍さん、あたしとビビアーナさんの戦い、見てたの?」
「もちろんよぉ~!」
蒼龍は即答する。
「ブリジットちゃんも凄かったけど、アタシ、ビビアーナちゃんの戦い方にすっかり惚れちゃったの!あんなに泥臭くて、あんなに真っ直ぐで……アタシ、すっかりファンになっちゃったの!アナタの!」
そう言って、もう一度ぎゅっと手を握り直す。
その手は温かく、力強く──迷いがない。
ビビアーナは、ふと自分の手を見る。
豆だらけの、荒れた手。
魔獣を従え、鞭を握り、何度も転び、何度も立ち上がってきた証。
それを、こんなに嬉しそうに握ってくれる人がいる。
その事実に、胸の奥がじんわりと温かくなった。
「……し、仕方ないのねぇ!」
わざとらしく胸を張る。
「ファンは大事にしなきゃならないものねぇ!よろしくねぇ、蒼龍さん!」
今度は自分から、ぎゅっと握り返す。
その笑顔は、ほんの少しだけ照れを含んでいた。
蒼龍は「きゃ~っ!」と小さく歓声を上げる。
その横で、買い物袋を抱えたまま立ち尽くしている大柄な影。
ビビアーナの視線が、ゆっくりとそちらへ移る。
猫の覆面。スーツ越しにも分かる筋肉の隆起。
両腕にずっしりとした紙袋。
「──で、こっちの猫マスクのムキムキマッチョメンは何なのかねぇ?」
怪訝な目。
ブリジットがにこっと笑う。
「あ、紹介するね!グェルくん!フォルティアの“わんわん開拓団”のリーダーをやってくれてるんだよ!」
「そして、ボクの弟ですっ!」
腕の中のフレキが、ハッハッと嬉しそうに息を弾ませながら、さらりと言う。
一瞬、空気が止まった。
ビビアーナの身体がビクーン!と震える。
「弟!? このムキムキマッチョメンが、小型犬の!?!?」
叫びながら、フレキを見る。
次に、ゆっくりとグェルへ視線を戻す。
グェルは無言で立っている。
覆面越しでも分かる、ちょっと申し訳なさそうな雰囲気。
ビビアーナは、じり、と一歩近づく。
「……ちょっと、確認させてもらうのねぇ。」
猫マスクの裾に指をかける。
グェルは抵抗しない。
そのまま、ぺらり。
覆面が持ち上がる。
ブルン。
そこから現れたのは、つぶらな瞳のパグ顔。
きょとんとした表情。
完全に無害。
筋肉とのギャップが凄まじい。
ビビアーナは無言のまま、マスクを元に戻す。
ぺらり。
静かに。
そして、くるっとブリジットの方を向く。
数秒、考える。
真剣に。とても真剣に。
「……犬種が違くないかねぇ?」
絞り出すような声。
フレキが首を傾げる。
「犬種?」
本気で分かっていない顔。
蒼龍は口元を押さえながら、くすくすと笑う。
(ツッコミどころが多過ぎて、何からツッコめばいいか思考が渋滞しちゃってるわねぇ~)
会場の喧騒の中、その一角だけが妙に賑やかだ。
緊張で強張っていたビビアーナの肩は、いつの間にか少しだけ下がっている。
笑いがこぼれる。
ツッコミが飛ぶ。
パグが無言で袋を持つ。
煌びやかなホールの中心からは少し外れた場所。
だがそこには、確かな温度があった。
戦いの緊張も、貴族社会の圧も。
この瞬間だけは、どこか遠くに追いやられていた。
◇◆◇
慰労会の開始時刻が近づくにつれ、大ホールの空気はさらに濃くなっていった。
扉が開くたびに、新たな客が流れ込み、色とりどりのドレスと正装が波のように広がる。
グラスの触れ合う澄んだ音、低く抑えられた貴族たちの談笑、遠くで奏でられる弦楽器の旋律が重なり合い、豪奢な空間を満たしていく。
ソファー席では、リュナと蒼龍が並んで座り、グェルは律儀に紙袋を足元にまとめ、フレキはブリジットの腕から降りてクッションの上で丸まっている。
その周囲に、じわじわと視線が集まり始めた。
「お、おい……あそこにいるの、ラグナ殿下と予選会同立一位の、ブリジット・ノエリア嬢じゃないか……!?」
「ほ、本当だ……!うわー、本物、めちゃくちゃ可愛い……っ!!」
「あの胴の長い従魔もいる……間違いないよ……!」
ひそひそ声が、風のように伝播していく。
ブリジットは気づき、ぴくりと肩を震わせた。
視線が合うたび、小さく会釈をし、ぎこちなく手を振り返す。
頬がみるみる赤く染まっていく。
その様子を横目で見て、ビビアーナはくすりと笑った。
「ブリジット、もっと堂々とするのねぇ。」
ぽん、と背中を軽く叩く。
「アンタは予選会一位通過者なのよ。胸を張って堂々としてればいいのねぇ!」
ブリジットは困ったように笑う。
「そ、そうかな……?でも、あたし、なかなかこういう扱いって慣れなくって。えへへ。」
指先で髪をかき、照れたように視線を落とす。
ビビアーナは腕を組み、ふん、と鼻を鳴らす。
「シャンとするのねぇ!ブリジットは、このアタシに勝って、予選会一位通過を勝ち取ったのよねぇ!」
わざとらしく胸を張る。
「それは、とってもとっても、凄いことなのねぇ!胸を張って、誇っていいのよ!」
その言葉には、からかいではなく、本心からの称賛が込められていた。
ブリジットは少し目を丸くし、それから柔らかく微笑む。
「……うん!ありがと、ビビアーナさん!」
その笑顔を見て、ビビアーナの口元も緩む。
だが、ふと。
その笑顔が、ほんの少しだけ曇った。
視線が床に落ちる。
「それよりも……本当にヤバいのは、実はビビちゃんなのよねぇ……」
声のトーンが下がる。
ブリジットは首を傾げる。
「えっ?なんで?」
ビビアーナは肩を落とし、ずーん、と沈み込む。
「ビビちゃんはねぇ……“統覇戦”の予選会に出るにあたって……故郷のパパとママに、大分フカしちゃってたのよねぇ……」
視線が遠くを見る。
「『予選会通過なんて、余裕なのよねぇ!パパとママは、泥舟に乗ったつもりで、ビビちゃんの予選通過の吉報を待っておけばいいのねぇ!』って……バチクソイキっちゃってたのよねぇー……」
最後は自分で自分を殴りたいような声だった。
ブリジットは苦笑しつつも、真剣に聞く。
「そ、そうなんだね。」
ビビアーナは慌てて顔を上げる。
「いや!ブリジットを責めてる訳じゃないのねぇ!アタシが予選を敗退したのは、アタシの力が足りなかったからなのねぇ!」
ぐっと拳を握る。
「ただ……パパとママをガッカリさせてしまうだろうと思うと……それが、ちょっとだけツラいのねぇ……」
その横顔は、いつもの強気なビビアーナではなく、どこか年相応の少女だった。
ブリジットは、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
(ビビアーナさんも……お父さん、お母さんの期待に応えたいって思ってるんだ……)
自分と重なる。
自分もまた、家族に認められたいと願っている。
その時だった。
「──ビビアーナ?」
低く、落ち着いた声。
二人は同時に振り向く。
人波の向こうに、堂々とした佇まいの中年の夫婦が立っていた。
洗練された装い。
しかし、その視線は柔らかい。
ビビアーナの顔が青ざめる。
「パ……パパ……ママ……!? ロカ領からわざわざ来てたのねぇ……?」
両親はゆっくりと近づいてくる。
足取りに迷いはない。
ブリジットの背筋にも緊張が走る。
ビビアーナは視線を逸らし、声を震わせる。
「パパ、ママ……あ、アタシは……」
その言葉は、最後まで続かなかった。
がしっ。
両親が、同時にビビアーナを抱きしめた。
「えっ!?」
戸惑いの声。
だが、その抱擁は強く、温かい。
父が静かに言う。
「──実はな。私たちは、予選会も会場で見ていたんだ。」
母が続ける。
「要領が悪く、一人では何も出来ない子だと思っていたのに……いつの間にか、あんなに沢山の強力な魔獣を従えて……伝説の魔獣フェンリルまで……」
声が少し震えている。
ビビアーナの目に、じわりと涙が滲む。
「で、でも……アタシ、あれだけフカシておきながら、予選会で負けちゃったのねぇ……ごめんなさい、パパ、ママ……ガッカリさせちゃったのねぇ……」
小さく震える声。
父は首を振る。
「いいんだ……お前は、頑張ってたじゃないか。一位通過のブリジット様に、あれだけ肉薄するほどに。」
母が背中を優しくさする。
「私たちは……アナタの事を、ちゃんと見ていなかったのね……。」
その視線が、ブリジットへ向く。
ブリジットはすぐにぺこりと頭を下げる。
両親は微笑む。
「ありがとうございます、ブリジット様。娘と、仲良くしてくださって。」
ブリジットは首を振り、穏やかに応える。
「いいえ、私の方こそ……ビビアーナさんみたいな素敵な方と友人になれて、幸せです!」
その言葉に、ビビアーナの肩が震える。
父が静かに言う。
「──すまなかった、ビビアーナ。私達は、お前の力を……いや、お前の努力を、ちゃんと見てやれていなかった。」
母が頷く。
「あなたは……私達の、誇りよ。」
ぽろり、と涙が零れ落ちる。
「パパ……ママ……」
ビビアーナは、ぎゅっと抱きしめ返した。
豪奢なホールの一角で、小さな家族の再会が静かに輝く。
ソファーから、リュナがにやりと笑い、蒼龍は目を細め、グェルは黙って頷き、フレキは嬉しそうに尻尾を振る。
ブリジットは、その光景を優しく見つめる。
(ビビアーナさん……よかったね。)
ふと、壁の時計を見る。
開始時刻が迫っている。
胸の奥で、小さな決意が芽生える。
(あたしも……頑張らなきゃだよね……!)
もうすぐ、自分の両親もここへ来る。
逃げずに、向き合おう。
豪華なシャンデリアの光の下で、少女は静かに背筋を伸ばした。
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