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サイン会に行く 後編
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私の名前は坂上涼子28歳。独身で弁護士をやっている。
私は今、混乱している。
私の大好きな恋愛小説「チューリップと薔薇」の作者の甲斐かおる先生のサイン会に来たはずがプロレスラーの握手会の様だった。
状況が理解できない。立ち尽くしていると私のすぐ横を小柄な女性が走り抜けて行く。
その女性は覆面レスラーに詰め寄ると
「ちょっとあんた、本当に甲斐かおる先生なの!?」
と、怒鳴りつける。その女性は自分の倍近くある筋肉隆々の覆面レスラーに臆する事なく睨みつけている。
覆面レスラーは顔こそ見えないが困惑した様子で
「はい、自分が甲斐かおるっす。本業はプロレスラーですが、チューリップと薔薇は自分の体験談っす」
それを聞いた女性は血走った目をして
「私は、、私はこんな覆面レスラーの体験談で胸をときめかせていたというのかー!」
と叫びながら覆面レスラーに掴みかかろうとした。
チューリップと薔薇を愛した同朋が道を踏み外そうとしている。これは止めないとまずい。
私はその女性の肩を掴み声をかける。
「あなたの気持ちはよく分かるわ。でもここは抑えて」
振り返った女性は私の顔を見ると
「お前は悪徳女弁護士じゃないか。何でここにいるんだ?」
と言った。
私は後退りした。
こんな所で知り合いに会うなんて。しかもこんな人に、、
彼女は田神春子。刑事だ。優秀な弁護士である私を目の敵にしている。性格はガサツですぐに手が出るタイプだ。彼女がチューリップと薔薇の愛読者だったとは意外だ。
「うっ、私も甲斐かおる先生のサイン会に来て、、田神刑事もチューリップと薔薇が好きなんですね」
~~
回想
裁判官の
「弁護人からの~」
と発言を遮る様に傍聴席から
「ヘイヘイヘイ!弁護士ビビってるー!」
とヤジを飛ばしいる女性がいる。田神春子だ。
裁判長は木槌をトントン叩きながら言う。
「傍聴人は静粛に。裁判は草野球ではありません」
~~
私に悪徳女弁護士というあだ名を付けたのもこの人だ。苦手なんだよなぁ、この人。
甲斐かおる先生が自称ストーカーだった事、そして田神春子と鉢合わせた事。私の中で処理が追いつかない。これが全て夢だったらいいのに。
するとまた私の脳の中の恋愛を司る部位が警告を発している。彼女を連れて逃げろ!そして全て忘れろ!
確かに!!
私はハンドバッグからスタンガンを取り出すと田神春子の首筋に当てる。田神春子は体がビン!と伸びたかと思うとそのまま気を失って倒れる。
私は田神春子の着ているジャケットの襟を掴むと走って会場を出る。田神春子は想像以上に軽かった。
公園のベンチに寝かせていた田神春子が目を覚まし起き上がる。
「あれ?私は何でこんな所に居るんだ?お前は悪徳弁護士!」
「何も覚えていないんですか?」
「うーん、朝家を出た所までは覚えてる。あれ?家を出てどこに行こうとしたんだっけ?」
「田神刑事、あなたはそこの曲がり角で私とぶつかって倒れたんです。頭を打って気を失ったので私がベンチへ運びました」
「そうか、悪かったな。ぶつかった上に助けてもらったみたいで、、どうもありがとう」
田神春子は照れ臭そうに話していた。
どうやら田神春子は甲斐かおる先生の事を全く覚えていないらしい。羨ましい。私も全て忘れたい。
その後、田神春子からお礼をしたいと言われファミレスへ行く事になった。田神春子とはガサツで恐い人というイメージだったが意外と素直で義理堅い人なのかもと思った。
ファミレスではチューリップと薔薇の話で二人は盛り上がった。
田神春子はブンブン腕を振り回しながら嬉しそうに話す。
「それでね、それでね、100本に薔薇の棘を全て抜いてプレゼントした所にキュンキュンしたのよ。キャー!」
私も笑顔で
「わかります、わかります」
そしてチューリップと薔薇トークは日付けが変わるまで続いた。
私は今、混乱している。
私の大好きな恋愛小説「チューリップと薔薇」の作者の甲斐かおる先生のサイン会に来たはずがプロレスラーの握手会の様だった。
状況が理解できない。立ち尽くしていると私のすぐ横を小柄な女性が走り抜けて行く。
その女性は覆面レスラーに詰め寄ると
「ちょっとあんた、本当に甲斐かおる先生なの!?」
と、怒鳴りつける。その女性は自分の倍近くある筋肉隆々の覆面レスラーに臆する事なく睨みつけている。
覆面レスラーは顔こそ見えないが困惑した様子で
「はい、自分が甲斐かおるっす。本業はプロレスラーですが、チューリップと薔薇は自分の体験談っす」
それを聞いた女性は血走った目をして
「私は、、私はこんな覆面レスラーの体験談で胸をときめかせていたというのかー!」
と叫びながら覆面レスラーに掴みかかろうとした。
チューリップと薔薇を愛した同朋が道を踏み外そうとしている。これは止めないとまずい。
私はその女性の肩を掴み声をかける。
「あなたの気持ちはよく分かるわ。でもここは抑えて」
振り返った女性は私の顔を見ると
「お前は悪徳女弁護士じゃないか。何でここにいるんだ?」
と言った。
私は後退りした。
こんな所で知り合いに会うなんて。しかもこんな人に、、
彼女は田神春子。刑事だ。優秀な弁護士である私を目の敵にしている。性格はガサツですぐに手が出るタイプだ。彼女がチューリップと薔薇の愛読者だったとは意外だ。
「うっ、私も甲斐かおる先生のサイン会に来て、、田神刑事もチューリップと薔薇が好きなんですね」
~~
回想
裁判官の
「弁護人からの~」
と発言を遮る様に傍聴席から
「ヘイヘイヘイ!弁護士ビビってるー!」
とヤジを飛ばしいる女性がいる。田神春子だ。
裁判長は木槌をトントン叩きながら言う。
「傍聴人は静粛に。裁判は草野球ではありません」
~~
私に悪徳女弁護士というあだ名を付けたのもこの人だ。苦手なんだよなぁ、この人。
甲斐かおる先生が自称ストーカーだった事、そして田神春子と鉢合わせた事。私の中で処理が追いつかない。これが全て夢だったらいいのに。
するとまた私の脳の中の恋愛を司る部位が警告を発している。彼女を連れて逃げろ!そして全て忘れろ!
確かに!!
私はハンドバッグからスタンガンを取り出すと田神春子の首筋に当てる。田神春子は体がビン!と伸びたかと思うとそのまま気を失って倒れる。
私は田神春子の着ているジャケットの襟を掴むと走って会場を出る。田神春子は想像以上に軽かった。
公園のベンチに寝かせていた田神春子が目を覚まし起き上がる。
「あれ?私は何でこんな所に居るんだ?お前は悪徳弁護士!」
「何も覚えていないんですか?」
「うーん、朝家を出た所までは覚えてる。あれ?家を出てどこに行こうとしたんだっけ?」
「田神刑事、あなたはそこの曲がり角で私とぶつかって倒れたんです。頭を打って気を失ったので私がベンチへ運びました」
「そうか、悪かったな。ぶつかった上に助けてもらったみたいで、、どうもありがとう」
田神春子は照れ臭そうに話していた。
どうやら田神春子は甲斐かおる先生の事を全く覚えていないらしい。羨ましい。私も全て忘れたい。
その後、田神春子からお礼をしたいと言われファミレスへ行く事になった。田神春子とはガサツで恐い人というイメージだったが意外と素直で義理堅い人なのかもと思った。
ファミレスではチューリップと薔薇の話で二人は盛り上がった。
田神春子はブンブン腕を振り回しながら嬉しそうに話す。
「それでね、それでね、100本に薔薇の棘を全て抜いてプレゼントした所にキュンキュンしたのよ。キャー!」
私も笑顔で
「わかります、わかります」
そしてチューリップと薔薇トークは日付けが変わるまで続いた。
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