僕が”僕”じゃなかったら

パれっと

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 ―――――承【1】―――――

4話「だからこれは、“デート”じゃないね。」⑨

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良太はそれに気付き、
振り返って。

「あっくん?」

不思議そうに見てきて。



「…良太は。」

ぽつりと、




「……ゴールデンウィーク、

 …暇な日…あるのか…?」



 俺は、良太へ、
 小さな声を、向けた。




「え?」

良太は、
目を丸くしてから、

斜め上の方を見て、

「…えっと…
 最後ら辺は、暇かな。」

答えた。


俺は、
顔を、横に向けて。

「……じゃ、
 …じゃあ……」


心臓が、

また、速くなりながら、





 「……一緒に、

  …どっか…
   ……行かない…か…?」



 小さく、
 言った。





「…うん、いいよ。
 他に誰誘う?
 中学の友達誘ってみる?」


前から、
良太の、明るい声が、聞こえて。


止めていた足を、
踏み出し。


「あ、それか司とか、高校の…
「…たまには。」

目の前に、良太のブレザーが映り、

足を止め、

見上げて。




 「………2人だけで、

   …いい…だろ……。」



 いつもより、
 近くで、

 良太と、目を合わせた。



 良太の茶色い瞳が、

 近くに、映って。


 心臓が、

 どんどん、
 揺れて、いって。

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