僕が”僕”じゃなかったら

パれっと

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 ―――――承【1】―――――

5話「君は、知らない。」⑳

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 歩いているとき、

良太の歩幅は、
いつもより狭くて。
歩く速さも、ゆっくりで。

合わせて歩いていたら、
俺達より後ろを歩く
クラスメイトに、抜かされていった。







 階段を下りて、2階に着き。
そのまま生物室へ向かおうと、足を踏み出す。



 すると、

 何も持っていない
 右手の、
 袖を、引かれた。



「…こっち。」

後ろを振り向くと、
良太が、左手で、袖を引いていて。

そのまま、俺を引いて、
階段を下り始める。


「え…良太…」


俺は、
引かれている手に、力を入れ。


けど、
それよりも、良太の力の方が
強くて。


そのまま、
引っ張られていった。





でも、


良太の歩幅は、
変わらず、
ゆっくりだった。


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