僕が”僕”じゃなかったら

パれっと

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 ―――――承【2】―――――

7話「王子の隣は、普通は“女”なんだね。」⑩

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「凪~!」

 すると、
良太との話を終えたのか、
直己が、俺へ顔を向けた。


「頑張れよ、シンデレラ!
 主役とか大変そうだけど…
 俺、手伝えることあったら
 手伝うからな!」

純真な笑顔で喋り。

「ずっと出番あるもんな~シンデレラ。
 セリフとか、めちゃめちゃ多いよな。
 だから、凪が『やる』って言ったときは、
 すげーな!って思ったぜ!」

キラキラした目を向けてくる。

「直己は、王子の付き人役だったよね。」

司が、鞄を肩にかけながら、席を立った。

「ああ。
 だから後半にちょっとしか
 出番ないんだけどな。」

「いやいや。
 ガラスの靴を持って歩き回るのは、
 重大な役割だよ。」

「おお!
 そう言われてみたら確かに!
 …よし!
 じゃあ俺は本番まで、
 靴を持つ角度の研究しとくぜ!」

「うん、頑張れ。
 …じゃあ凪。良太。またね。」

「じゃあなー!」

「うん、バイバイ。」

「…じゃあな。」

なんだか緩い会話をして、
司と直己は、教室を出た。



 そして、
良太が、こちらを振り返り、


「…ねえ、あっくん、
 やっぱり他の役に替えてもらおうよ。」

また同じセリフを言ってきた。


「…良太うるさい。
 次それ言ったら、
 明日のお前の弁当のおかず
 全部食うぞ。
 白米だけにしてやるぞ。」

「……なにその地味に嫌なやつ…。」


良太は、
諦めたように息をつき、
帰り支度を始めた。



その様子を、眺めながら。


「…良太、
 ……そういう漫画、好きなんだな。」

ぼそりと、口に出す。


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