僕が”僕”じゃなかったら

パれっと

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8話「かわいい子が、好きですか?」③

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山中は、ロングスカートの私服で、
髪の毛を下ろしていた。


「ああっ!!山中さん!私服だ!」

山中の姿を見つけ、将人が声を跳ね上げる。

「ゆうー!」

大原が気付いて手を振ると、
山中も、小さく手を振り返し、
小走りにこちらに来た。


「わぁ~
 芽衣かわいい~浴衣だ~。
 桐谷さんも、お久しぶりです。
 浴衣、かわいいね。」

「あ、ありがとう!
 えっと、山中さん…。」

「ふふっ。名前覚えててくれたんだ。
 ありがとう~。
 …もしかして、私が最後だったかな?」

「いや、まだ二条と前川が来てない。
 それにしても、5時ピッタだよ。
 すごいねー。」

「うん。
 進藤くんに話しかけられないように、
 なるべくギリギリを狙って来たんだ~。」

今日もゆるやかな山中が、
大原や小春と会話を始めた。


「ヤベー!!
 山中さんの私服、超可愛い!!」

「よかったねー。」

テンションが上がっている将人に、
良太が、棒読みに相槌を打ち。

 そのとき、
タッタッと足音を鳴らして、
直己が、駅から出てきた。

次いで、司も早足で出てくる。


「ごめん!電車遅れた!」

直己が申し訳なさそうな顔をして、
こちらに走ってきた。

「平気だよー。」

「大原は浴衣か~似合ってるな!
 あ、凪と中学同じの…。」

直己は、無邪気に大原を褒めてから、
小春を見る。

「こ、こんばんは。
 桐谷っていいます…。」

小春は人見知りをするタイプなので、
少し緊張しているように見えた。

「こんばんは!前川直己っていいます。
 あっ、こっちは二条司!よろしくな!」

「こんばんは。」

「あ、こんばんは…。」



「んじゃ、
 みんな揃ったし行こっか。」


大原が言い、


俺達は、
屋台の並ぶ通りへ、歩いていった。


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