僕が”僕”じゃなかったら

パれっと

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 ―――――結―――――

10話「君への気持ちは、“恋”じゃない。」②ー幼ー

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 年中くらいのことだった。



幼稚園の頃。

俺は、
何かある度に、すぐ泣いていて。



あのときも、

同じ組の友達に、
ちょっときつい感じのことを言われて、

泣いていた。

















「…りょうちゃん、

 だいじょうぶ?

 ……なかないで。」





泣いているとき。


あっくんはいつも、
心配そうに、俺を見て。



小さい手で、

いっぱい、

俺の頭を、撫でてくれた。




俺は、

その手が、


嬉しくて。


ほっとして。


涙が、もっと出てきた。









「…やっぱり、
 せんせいに、いいにいこ?」



あっくんが、小さく首をかしげて
言った。




「……いいよ…だいじょうぶ……。」





…別に、
大したことじゃない。

ただ、
自分が、泣き虫なだけだ。


そう思って、
俺は、大ごとにしたくなくて。

首を横に振った。





そうしたら。


あっくんは、




 キュ…と


 俺の手を、

 優しく、握って。





「…でも、
 りょうちゃん、


 …すごく、

  かなしいでしょ?」






 まるで

 自分のことのように、

 悲しそうな顔をした。






「…ぼくも、

 いっしょに、いくから…

 だいじょうぶだよ。」



 そう、

 優しく言って。





 また、


 俺の頭を、

 優しく、撫でて。





 そうして。






 手を繋いで、


 先生の所まで、


 一緒に、行ってくれた。










…俺は、

 そのことが



 すごく、

 …嬉しかった。









あっくんは


いつも、





 その手を、


 俺のために、使ってくれて。




 俺の気持ちを、わかってくれて。






…あっくんが、
いたいのいたいのとんでけを、
してくれたときも。



あっくんが、

恥ずかしそうにしながら、



 俺のために、

 何かをしてくれたことが、


 本当に、嬉しくて。





…そんな


 優しいあっくんが、



 俺は、




 …大好きだった。



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