僕が”僕”じゃなかったら

パれっと

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 ―――――結―――――

10話「君への気持ちは、“恋”じゃない。」㉗

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 学校の業間休みに、
みんなでドッジボールをしていたとき。

その途中。

あっくんがつまづいて、
地面に、膝をつくのが見えた。





「あっくん!だいじょうぶ?」


慌てて駆け寄ると、

あっくんは、頷いて。

スッと立ち上がり、
膝をパッパッとはたいた。


「これぐらい平気だ。」


そう
なんてことないように答えたけど、

膝は砂まみれで、
少し血が滲んでいた。



「いたそうだよ…。
 水道にあらいに行こ?」

「平気だって。
 それより、ボールこっち来そうだぞ。」


あっくんは、
敵チームの子がボールを持っているのを
指さして。

ドッジを続けようとしていて。


「だめだよ。バイキン入っちゃうよ。」


俺はいつものように、

あっくんの手を握って。

引っ張って、水道へ向かった。









 そのまま歩いていて。



なんか静かだなと思って。

振り向くと、


あっくんが少し、
落ち着かなそうな顔をしていた。



「どうしたの?やっぱいたい?」


心配になって、顔を覗き込んだら。

あっくんは、




目をそらして。





「……べつに。」





ぶっきらぼうに、つぶやいた。



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