僕が”僕”じゃなかったら

パれっと

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 ―――――結―――――

10話「君への気持ちは、“恋”じゃない。」(70)ー通ー

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 6時間目の体育が終わり。

更衣室へ行く前にトイレに寄ろうとしたら。

前に、
山中さんが歩いているのが見えて。


体操着のままで、
おまけに歩き方がぎこちなかったので、

俺は、気になって。

少し早足に近付いた。




「山中さん、どうしたの?」

「…あ、遠野くん。」


振り返った山中さんは、
どこか苦しそうに眉を寄せていた。


「ちょっと、足挫いちゃったみたいで。
 保健室行くところ。」


そう言われ、下へ目を向けると、

確かに足首が赤くなっていて、
右足を引きずるようにしていた。



「そうなんだ…痛そうだね…。」


見ていて辛そうで。

何か自分にできないかと考え。



「あ。
 じゃあ、俺の腕につかまってよ。」


俺は、山中さんの左側に立ち、
右腕を出した。


「何か支えがあった方が楽じゃない?」


「え?
 …でも、悪いよ。授業遅れちゃうよ?」


「まあ、次LHRだし、
 ちょっとぐらい大丈夫だよ。」


「…じゃあ、
 お言葉に甘えて。ありがとね。」


山中さんはおっとりと微笑んで、
俺の腕を掴み。


俺は小さく、足を踏み出した。


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