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 ―――――第1部―――――

1話「この関係って、何?」⑨

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その声に、顔を上げると。

滝の視線は、前のドアへ向いており。

そこには、他クラスの男子が数人いた。


すると、彼らと目が合って。


そうしたら、
彼らはそそくさと、教室を出て行った。




「…またって、何がだ?」


尋ねると、
滝は、顔を向けてきて。




「凪を見に来る奴。」



淡々と、
そう、言い切り。



俺は、その言葉に
思わず、動きが止まってしまう。



「ああ…
 昨日から、休み時間とか
 色んな人が来てるよな。
 朝は3年の先輩とかも来てたぜ。」

直己が、頷いた。


「…なんで?」


「凪のシンデレラ見て、
 来たって感じっぽいな。」

滝が、淡々と答えて。



俺が、思わず、
滝や直己の顔を、ジッと見ていると。


「まあ…でも
 みんな、凪のことを見たら、
 諦めて帰ってるみたいだから…
 心配することはないと思うけど…。」

司が、爽やかな表情を
少し崩して、俺を見た。


「諦める?」


「みんな、凪の格好見て、
 男かよーって言って帰ってるな。」

滝がまた、淡々と答えた。


「かわいい女子だと思ってたのに、
 かわいそうだよなー。
 凪も罪な奴やのう。」

「…うるさい。」

将人がニヤニヤ言うので、睨んでおき。


「てかそれ言ったら、


 良太だってそうだよな。
 知らない女子に声かけられてるし。」




その、将人のイキイキした声に。



また

動きが、止まってしまった。








「遠野も劇効果だな。」


「…ああ…いや、
 そんな大したものじゃないけど…。」



良太は、きまりが悪そうに喋って。



「昨日昼休みに
 アドレス訊かれてたんだぜーこいつ!」


将人がからかうように、直己に言い。


「マジか!すげーな!」

目をキラキラさせて、直己が良太を見た。



「いや、別に教えなかったし…」


「タイプじゃなかったのか?」


「というか…知らない人に
 理由もなく教えないよ。」



良太が、滝に話し。



 そこで。


 俺へ、目を向けて。




俺は、


つい、

目を、そらした。


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