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 ―――――第1部―――――

■2話「“男女”なら、気付かれたんだろうな。」①

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2話



【凪碧視点】





 9月下旬の夜。


そろそろシャワーを浴びようかと
思っていたとき。


電話が、かかってきた。



俺は、画面に表示された名前を見て。




少し、心臓が、速くなりつつ。


そうっと、通話ボタンを、タップする。




「……も、…もしもし…?」



『あ、あっくん?今大丈夫?』



そうして、耳に直接、

電話を通した

良太の声が、入ってきて。


思わず、首筋が震えた。




「……ああ。大丈夫だ。
 …どうした?」



『訊き忘れてたことがあって…。



 再来週の月曜の祝日って、空いてる?』




 その言葉に、
 心臓が、小さく、揺れ。




「……空いてる。」



ぽそりと、答えた。





『その日、部活なくてさ。


 ……良かったら、

  どっか、行かない?』




 くすぐったい、優しい声に。

 心臓が、揺れながら。



「…………い……いい…けど…。」



小さい声を、ケータイへ投げると。


クスッ…と微かな笑いが、聞こえ。



『…ありがとう。』


囁かな声が、返ってくる。





『行きたい場所ある?』




そう、言われて。


少し、
色々なことを、頭に浮かべて。



「……じゃあ、



 …………俺ん家で…なんか…したい。」




 つぶやいた。






『…うん。わかった。
 また、近くなったら色々話そうね。』





良太は、穏やかに、返し。







 それから、
俺達は少し、たわいのない会話をして。


電話を終えた。








そうして。


俺は、


カレンダーに、目をやって。




…その、約束した日の

 前日は、





 ……良太の、誕生日だ、


ということを、確認した。



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