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 ―――――第3部―――――

■4話「異性だったら、そうなるよね。」①

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【凪碧視点】




 11月下旬の、平日の夜。


食器を洗っていると、
ピンポーンと、インターホンが鳴った。




「あ、良太くんかな?」

ダイニングで本を読んでいた
母さんが反応して、玄関の方を見る。



「…母さん、俺出る。」


俺は、手に付いた泡を水で流しつつ、
母さんに声をかけて。



開いていたダイニングの
ドアを閉めて、玄関へ向かった。















「…フーアーユー?」

「…えっ!?…あ、アイム遠野良太…。」

 ドアに向かって喋りかけると、
驚いたような良太の声が返ってきて、
俺はチェーンを外して、ドアを開ける。


「ビックリした~。
 あっくんが英語話すの、初めて聞いた。」

そうすると、
おかしそうに笑う、良太の顔が見えた。


「…まあ……最近…
 英語…割と……好きだし…。」

顔をそらして、ぽそっと言い。


「…それで…今日は…どうしたんだ。」


尋ねると、良太は
手に持っていた本を、軽く上げた。


「母さんが借りてた本、返しに来た。」

「…ああ。わざわざ悪い。」


手を伸ばして、その本の端を掴み。



 そうすると、本が引かれ。

そのまま、良太の顔が、
耳に、近付いてきて。



「…っていうのは、口実で。

 本当は、
 あっくんと、話したかったんだ。」


 ぽそぽそと、囁かれる。



その感覚に、

なんだか、体が熱くなってきて。

また、顔をそらしてしまった。



「……ちょっとだけ…
 待ってもらって…いいか?」


「あ、うん。」



俺は、良太の答えを聞いてから、
ドアを閉め。

本を持ってダイニングへ戻った。


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