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 ―――――第3部―――――

5話「自分とじゃ、異質だ。」㉒

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 そうして、通路を歩いていき。
次の場所に入ると。


暗い中、

ピンクや、緑や、赤や、青で光る、
色とりどりの円柱の水槽で、


 ひときわ光を放って流れている、
 円いものが、瞳に広がった。




それに、思わず、
水槽に触れて、中を覗き込んで。


円いものが、

大きくなったり、
小さくなったりしながら、
水槽の色に合わせた光を放ち。

細い足を垂らして、
ゆらゆらと、流れる姿を、

瞳に、焼き付ける。





「これが、クラゲだよ。」


そうしていると、
耳元に、良太の声が聞こえて。


「………



  ……すごい……。」



自然と、言葉が、口に出てきた。




「…すごいね、良太。
 すごい……綺麗だね。」


話しながら振り向くと、
良太は、目が合ってから、

嬉しそうに、目を細めた。


「…うん、すごいね。」


「ね、あっちも見に行こ。」


指をさして言うと、
良太は、笑って頷いて。




 そして。


そのまま、一緒に、
ゆっくりと、クラゲを見て回った。
















 次のゾーンでは、
水槽の中に、
オレンジや黄色のラインの入った
カラフルな魚が、たくさん泳いでいた。



「良太、ここは?」

「ここは、世界の海のコーナーだって。」

「そうなんだ…。
 あ、この魚アニメで見たことある。
 初めて本物見た…。

 ……かわいいね、良太。」


指をさしながら顔を向けると、
良太は、笑って頷いた。


「あ…良太、これすごい。
 カラフルでトゲがいっぱいある…。
 サンゴ礁だって。」

「そうなんだ。」

「うん。
 …綺麗だね、良太。」

「そうだね。」





そうやって、
水槽の中を見て、歩いていって。



ずっと、隣に、


優しい、良太の声を、感じていた。



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