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 ―――――第4部―――――

7話「君が、離れないために。」⑫ー捕ー

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 その数日後の、火曜日の放課後。


良太と一緒に帰ってきて、
住宅敷地内の駐輪場から、
棟へ歩いている途中。



「今日さ、
 あっくんと、やりたいことがあるんだ。」


穏やかに、良太が言い。


「それで、1回、


  俺ん家、寄ってもいい?」



何の気もなしに、

そう、言葉を向けてきて。



俺は
目をそらし、


首を、
縦に、動かした。














 そして、

 良太の家の前に、着き。




「ちょっと、待っててもらっていい?」



俯いたまま、
良太の声を、耳に入れ。




「………家で……
 何か…するんじゃ…ないのか…?」



そっと、口に出すと。




「うん。物取るだけだから。」


良太がそう、優しい声で答えて。




自分は、

体の縛りが、緩んだように、感じ。



小さく、顔を上げ。

良太の目を見て、頷いた。












 それから、
家のドアの前に立って待ち、

ちょっとすると、ドアが開いて。


良太が、


2つの、グローブ袋を手にして、
出て来た。




「お待たせ。」


そして、穏やかに言いながら、


青色のクラゲが光る鍵で、
ドアを閉める。



俺は、それに、目を奪われつつ。




「……グローブ?」


小さく尋ねると、

良太がこちらを振り向いて、頷き。



「久しぶりに、
 一緒にキャッチボールしようよ。」



楽しそうに、笑いかけてきた。


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