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事件

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 オーク丼に野牛丼、日替わりの鶏丼の昼営業も、夜中の焼き肉屋の営業もどちらも順風満帆。

 お客さんのリピート率も抜群に高いようで、なんでも他の町の冒険者ギルドではマジリハまでの護衛依頼の奪い合いが熾烈なんだそう。

 町から町を回る商人たちがいろいろな場所でウチの話を広めているらしいから新規のお客さんも途絶えることはない。

 最近では貴族のお客さんも増えすぎて、見晴らしのいい場所に専用スペースを用意した。賑やかな冒険者たちと近い席でも今までは大丈夫だったけどこれからもうまくいくとは限らないもんね。

 アルフォンスさんに頼んでオルシャー家で働く本職のメイドさんたちに特訓してもらった精鋭従業員たちが基本的に彼、彼女らの接客にあたる。

 接客主任のサエちゃんはもちろん、副店長のポーシャももちろん特訓は合格したんだけど2人は基本的には一般のお客さんたちの相手をしてもらうことが多い。

 特別なメイド服をきた2人の人気はとても高く、彼女たちがいないとうるさい人も多いんだよね。

 もっともサエちゃんもポーシャもコミュ力は抜群に高いから適当にうまくあしらっているみたい。もちろんウチではお触りなんかは言語道断。元冒険者の従業員が目を光らせてくれているからお酒を提供しているわりにはセクハラ的なものも少ない。

 それでも中にはやっぱり頭の残念なお客さんがいるのも事実。そういう人は元冒険者の従業員に拘束されたあと、冒険者ギルドのギルドマスターに引き渡されてきつーいお仕置きが課されるらしい。なんでも、うちの屋台はオルシャー家御用達ということになっているらしく、そこの従業員に手を出すのは余程のバカだけなんだとギルドマスターが教えてくれたよ。

 そんなある日のこと。

「な、なにがあったんだ?」

 昼の営業に備えて早めに屋台に向かったオレたちの目に飛び込んできたのは、泥の塊や、何匹もの魚。中にはまだ生きているのか跳ねている魚もいる。

 テーブル、屋台、保管庫を兼ねているテントなど、どこもかしこも泥や汚水で汚されていてとても営業できるような状態じゃない。

「たーくん、ど、どうしようか?」

 珍しくサエちゃんもオロオロ慌てた様子を見せている。

「とりあえず、掃除するしかないか。ポーシャ、悪いけど遅番の人たちで手伝ってくれそうな人がいたら呼んできてくれないかな。それから、アルフォンスさん……じゃなくてもいいけど伯爵家と商業ギルド、冒険者ギルドそれぞれに報告も頼むよ」

「わかりました!」

「それからみそらはポーシャの護衛、クリスは水魔法で汚れを洗い流すのを手伝ってくれるかな」

「よろしくね、みそらちゃん」

「キュアー」

「キュルル」

 みんな、それぞれ動き始める。

 それにしても、いったい誰がどうしてこんなことを……
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