フードデリバリー配達員をやっていたら異世界に自由に行けるようになったので、日本からいろいろな物をデリバリーして大金持ちを目指します!

クレール・クール

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手品 前編

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 魔王がモルタを連れ去ってから2日後。

 日曜日の昼過ぎの銀座の歩行者天国に俺はいる。

 頭には似合わないマジックハット。手に持っているのはサエちゃんが昔使っていた魔法少女の杖。先端を回すと軽快な音楽が流れてくるくる回り出すやつだ。

 銀座にはいろいろな人がいて多少奇抜な格好をしているくらいでは目立たないが、俺はそんな姿プラスいつもの配達バッグという明らかにこの街に似つかわしくない姿のため、何もしていないのに注目度が高い。

 なぜそんなことになっているかというと、屋台のみんなに無理矢理休みを取らされたからだ。

 湖に水が満ちるまでにはまだしばらく日数がかかるから通常営業の再開はもう少し先になる。銀狐族の神通力もさすがにずっと使い続けるのはなかなかシンドイらしい。

 だったらここ数日のように炊き出しをと思ったんだけど働きすぎだから休んだほうがいいとポーシャに怒られたんだ。ポーシャだって同じくらい働いてる……といいかけたところで、資材だけ取られて追い出されてしまいました。ポーシャも女の子……いや、もう女性。怒らせるとヤバいというのが眼力からヒシヒシと伝わってきたよ。

 スマホの音量を最大限にあげて音楽をかける。曲名は【オリーブの髪飾り】。

 比較的年齢層が高い銀座だけあって、この曲を知ってる人も多いんだろう。何人かが足を止めてくれた。

 マジックハットを脱いで、おじぎをする。マジックショーのスタートだ。

 まずは、魔法少女の杖をリズミカルにくるくると回すと杖の先端から水が勢いよく飛び出しはじめる。

 あらよっととジャグリングを始めると、当然水がびしょ濡れになって俺はずぶ濡れになる。

 すると、背負った配達バッグからアシスタントのサエちゃんが元気に飛び出してきた。

 これには見ていた人も驚いたようで、拍手してくれる人もいた。なにしろ配達バッグは人が入れるような大きさじゃないからね。きっとどんなタネなのか頭の中はハテナだらけのはずだ。

 メイド服姿のサエちゃんは俺から杖を受け取ると、「ピーリカラルクープワプワポン」と謎の呪文を唱える。30歳くらいの観客の女性には呪文の意味が分かったらしく、プルルンの子の変身ポーズをしてたのが面白かった。

 サエちゃんが呪文を唱えると、回していないのに先端が光だして、そこからドライヤーのような温風が出始める。決して出たのは音符ではない。念のため。

 その温風で俺の濡れた服はあっというまに乾いた。

 サエちゃんにお礼を言おうとマジックハットを脱ぐと、その中には巨大な水の塊が。

 慌ててハットを被ると、巨大な水球が空中に飛んだまま残されている。

 今度はかなり大きな歓声が聞こえてきた。

 俺とサエちゃんが指でつついたりしても水球は壊れない。

 前例に座ってキラキラした目をしてる男の子を呼んで、水をつついてもらう。「冷たっ」と声をあげるけどやっぱり水球はそのままだ。

 配達バッグを水球の上に持ってきて3度叩く。

 すると、中から金魚がたくさん飛び出して水球の中に飛び込んでいった。

 男の子に金魚掬いのポイを渡して金魚を1匹掬ってもらうようにお願いする。

 男の子がポイを水球に刺すと、まるでゼリーでもスプーンで掬ったかのようにそこだけがプルルンと持ち上げられた。

 それを慎重に小袋の中に入れた途端、ゼリー状の水がもとの普通の液体に戻り、金魚も元気に泳ぎ始める。

 目の前で見たにも関わらず、何が起きたのか分からないのか目を大きく見開いてポカンとしている男の子。

「かわいい魔法使いの男の子に、拍手をお願いします!」

 そう言うと、いつの間にか集まっていた大観衆から盛大な拍手が沸き起こった。
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