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ティアナ独白2

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 わたしはティアナ。

 覚えているかしら? まあ、忘れていても構わないわ。

 使徒様のお世話をするハイエルフのひとり。それで充分よ。

 いつもは使徒様の畑の管理を任されているわ。

 わたしたちが作る作物は、使徒様が口にされる物だから責任重大な仕事なのよ。

 額に汗して収穫した作物を使徒様に素晴らしいお料理に仕上げていただけるのですけれど、その味たるや⋯⋯ああ⋯⋯。

 そんなわたしですが、今は森チームのアチュチュさんを指揮官とするメンバーと一緒に使徒様に助けを求めてきた人たちの街へ向かっています。

 しかし、弱すぎる!

 普段から狩りをしている森チームに敵わないのはまあ仕方ないでしょう。

 しかし畑で日々害虫と戦っているわたしよりも弱いとは⋯⋯。

 本当によく無事に辿り着けたものだと感心しますね。

 ほら、そこ⋯⋯擬態している首吊りの木ハングドツリーですよ。

 捕まったら最後、死ぬまで吊られるので注意してください。

 まったく、この程度の魔物の知識は常識でしょうに⋯⋯。

 ああ、その草は鉄切り草です。触れないように⋯⋯遅かったようですね。デイジーさん、回復お願いします。

 あまりにも頻繁に怪我をするので大精霊のデイジーさんもさすがにお疲れのようですね。

 そろそろお昼ご飯で休憩にしましょうか。

 わたしがお腹が空いたからではないので勘違いしないように。

 アチュチュさんの許可も頂けたのでお弁当を広げましょう。

 なんと、わたしたちの出発に合わせて使徒様がお弁当を拵えてくださいました。

 初日はおにぎり。塩味が絶妙ですし、梅干しも酸っぱいですが疲れが取れましたわね。

 創造神さまのお屋敷にほんの少しだけあったとっておきのお米というものを使っているそうですわ。

 2日目はサンドイッチ。全部火を通した食材を使っているので痛む心配もありませんでした。もちろん美味。

 3日目はなんと、おうどんです。デイジーさんにお湯を出して貰って茹でたあと、水筒に用意してあったダシをかけていただきました。

 はじめて使徒様にお会いした時からおうどんの大ファンなの。

 麺をすする音も味のうち。ハイエルフの中でわたしが一番上手に食べられるのが自慢なの。

 ミーアさんの護衛の冒険者はまだまだね。食べるのに苦労していたみたい。もっとツルツルとすするのです!

 そして今日。最後のお弁当は、焼きおにぎりの冷ダシ茶漬け。

 焼きおにぎりはさすがに固くなってしまっていますが、器に入れ、ダシをかけてつき崩します。そこにシムルグのササミを乗せ、ネギを散らして梅干しを乗せたら完成よ。

 優しい味に疲れも吹っ飛んだわ。

 でも、困ったわね。

 森を抜けるまであと3日。帰りのことも考えると最短でも10日以上は使徒様のご飯が食べられないということに⋯⋯。

 よし、急ぎましょう!

 あなたたち、ウィップとパイチェに乗りなさい。そうすれば2日で街まで着くでしょう。

 ⋯⋯なぜ乗らないのですか?

 男性はともかく、女性なら2人乗りでも大丈夫ですよ?

 デスパンサーも使徒様のご飯⋯⋯ではなく、頼みを早く解決するためなら乗せてくれますから。

 怖い? 大丈夫です。 あなたたちだって早く街に早く着いたほうがいいでしょう?

 ええい、グズグズしない! わたしだって最初はほんのちょーっと怖かったですが、今はもふもふできるくらいになったのですよ?

 急ぎましょう!

 おいしいものは待っていてはくれないのですから。
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