不仲の同期が私の婚活を邪魔しにきた件について!

みなつき菫

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「お付き合いなどは、されていないのです、よね……?」

 一応、状況確認のために尋ねると、人のいい鶴岡さんは私の不躾な質問にしょんぼり肩を落としながらも、真面目に答えてくれた。

「俺の片想いなんです、部下なのもあってアプローチは出来ずなかなか……」

 部下なら確かにアプローチはしにくい。 
「そうですか」と頷く。
 
「でも、社長令嬢なのに、すごく気さくで頑張り屋で、気付いたら目が離せなくて。本当に素敵な女性なんですよ――」

 よほどその女性が好きなようで、彼女の魅力を自ら教えてくれた。

 社長令嬢……。

『向坂陵介社長、噂通りカッコいいし、優しいのよ~!』

 入社当時、美希が興奮気味に話していたのを思い出す。
 向坂インターナショナルの社長は、目鼻立ちのはっきりした端整な顔立ちのイケメンらしく、その美容部員の奥様もまたモデルのような美人なのだとか……。
 娘さんも、さぞかし素敵な人なのだろう。
 
 誠実で肩書きもありイケメンだけれど、少し親しみやす過ぎる鶴岡さんの恋がうまくいくかは別の話として――
 
「そろそろ時間ですね――」

 鶴岡さんの声に頷き立ち上がる。
 受付開始時間が迫っていた。

 私も鶴岡さんも各々参加者に紛れて受付を済ませ、開場に入る。 
 続々と参加者がやってきて、出入り口は人だかりができた。
 
 主催側を代表して美希が挨拶し、イベントがはじまる。
 
 はじめは確か、プロフィールカードを参考に、テーブルをローテーションしながら会話を深めるんだったよね……?

 そう思いながら受付でもらったプロフィールカードを首に下げ、テーブル席に向かおうとしたときだった。

「神山……っ!」

 勢いのある声とともに、ぐんっ! とよく後ろから肩を引かれた。
 バランスを崩した私の身体を、私よりも大きくてがっしりした身体が受け止めた。
 
 ――え……?
 
 視線が絡み合い、その姿に驚いて目を瞬いた。

「新……? どうして、ここに――」

 至近距離で視線が絡み、思わず息を呑む。

「どうしてじゃない。俺の話、最後まで聞かないで電話切っただろう」

 ……話?

 理解が追いつかない私を置き去りに、新は苛立ったように息を吐いた。

「説明はあとだ。今はここを出るぞ。婚活なんて、俺が許さない」

 有無を言わせぬ声に、心臓が跳ねる。
 次の瞬間、視界が大きく揺れた。

「きゃあ!」

 しゃがみこんだ新に足元を掬い上げられ、気づけば腕の中。
 いわゆる――お姫様抱っこ!

 会場内から注目を浴び、頬が一気に熱くなる。

「ちょっ、おろしてよ! なんなの、いきなり! だいたい仕事なのになんでここにいるのよ! それも関係者しか入れないのに――」

 抗議の声を気にせず、新は動き出した。もちろん注目を浴びていることも気にしていない。
 
「お前が勘違いして電話を切っただけで、今日ははじめからこの時間に帰宅予定だったんだ。ここには、お前の友達らしき女性に入れてもらったんだよ」

 新は淡々と私の疑問に答えながら、出入り口に進んでいく。

「は、はあ……!?」

 ――意味が分からない! 美希が!? どういうことよ!
 
 出口付近にいた美希に助けを求めようとして、視線を走らせる。
 けれど彼女は、ひらりと軽く手を振り、楽しそうに笑うだけだった。

 ――はあ!? ちょっと……止めてよ……!

 逃げ場のない現実を理解した瞬間、視界の先で扉が開く。
  私はそのまま、新の腕の中で―― パーティ会場の外へ連れ出されていた。


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