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しおりを挟む会場を出たあと、新はそのままエレベーターに向かった。
扉が閉まり、静かな箱の中にふたりきりになる。
そこでようやく、私は我に返った。
「ちょっと……! 降ろして……!」
腕の中でもがくと、新は深く息をついて、しゃがんでくれる。
サクラの私がいなくなってイベントが気がかりだったが、今はそれどころではない。
美希のあの様子を見る限りどうにかなるだろう。
私は、そのまま新と向かい合って、勢いのままに尋ねた。
「いきなり、なに……? 仕事が終わったのはわかったけど、なんで、ここにきたの……? しかもイベント中なのに、連れ出すとか――」
何もかもが分からない。場所も時間も何も伝えていないのに、どうしてここにいるとわかったのか。そして、何のためにここに来たのか。
「もとはといえば、神山が俺の電話を最後まで聞かなかったからだろう」
まるで私のせいのような言い方に、即座に切り返した。
「私ちゃんと質問に答えたよ?」
今夜の予定の話でしょう? と、 新の考えていることが全く分からなくてムキになると、ちょうどエレベーターが目的の階到着したらしい。
扉が開くと、間接照明に照らされた静かなラウンジフロアだった。
新はひとまず私を、扉の外へ促しながら観念したように口にする。
「――そうじゃない。俺は……あの日、今夜お前を食事に誘うつもりだったんだよ」
「え……?」
予想もしていなかった言葉に、人気のないフロアに出たところで思わず足が止まる。
「さっきも言ったが、ここに来たのだって、お前が婚活パーティに行くって聞いたからで、神山の婚活を阻止するためだ」
――……しょ、しょくじ? 阻止って……
聞くところによると、新は私に電話を切られたあと、私が婚活パーティに行くと聞いて、本日都内で開催予定の婚活事業について調べたらしい。
しかし、本日はクリスマス。こういったイベントは多かったらしい。
だが、途中、私が向坂インターナショナルに友達が勤務していると言っていたことを思いだし、今日のイベントにたどり着いたようだ。
そこから急いで仕事を片付け、私を連れ戻すために、ここまでやって来たと言う。
そして、入り口にいた美希に熱心に理由を話したところ、はじめは驚いていたものの、すぐに快く入れてもらえたのだと続けた。
おそらく美希のあの様子だと、新が私が話していた例の同期であると気づいたのだろう。内心ニヤニヤしているに違いない。
想定外だらけのことに、私は思わず目を見開いた。
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