除介師

しいな

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除霊師

こんばんは、除介師です(3)

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「...そういえば、そういった不可解な事柄を扱っている方を知っててね、除介師・・・って言うんだけど」
「じょかいし?」

その瞬間、冷ややかな視線と空気感が雅隆に走ったが本人は会話を続ける。
除介師...ありとあらゆる悪霊心あくろうしんを払い、その後を介護する者。身を犠牲にする事もしばしば。

「まぁ、陰陽師みたいな感じかな
ちょっと違うのは陰陽師は陰陽五行思想に基づいた陰陽術を使う訳だけど、
除介師は人が元から持っている資質を能力として変換させることが出来る
資質 つまり、身体能力を向上させた後、潜在能力を数多ある中の滅しの力にする...らしいよ」
「わかった様な分からない様な?」

充分詳しい説明をしておきながら、僕も詳しくはないんだごめんねと笑みを浮かべた。
少女は頬を染め、大丈夫と一言。雅隆は少し申し訳なさそうな顔をし、少女に問いかける。

「ただ、名は通ってなくとも除介師も仕事だからね
相談して、除介師の領分だとなると、依頼に成立してしまう
依頼料、結構掛かってしまうよ」
「因みにどれくらい...」
「この事案を除介師が出なくてはならないと仮定するならば、そうだな...
もう報道もされてるし、50万と言ったところかな」

少女は声を荒げてしまう。その筈だ一介の学生が持っている金額ではない。
親に言えば娘の安全を第一に考え、払える金額かも知れないが、除介師は有名ではない。
詐欺だと思われても仕方ない為、頼れはしないだろう。

「諦めます...害があるわけじゃないし
気持ち悪いだけだから」
「害なすよ、このままだと」
「え?」
「葉月」

静止混りの雅隆の言葉を遮り、横から腕を伸ばす。
課題を終えたのかいつの間にかキッチンに入り少女にお茶を出す葉月。
出されたお茶はカモミールの香りが漂っていた。

「どうゆう事ですか?」
「今は害が無くても、それが大きくなるにつれ害を及ぼす可能性が出るって話」
「そんな!じゃあ一体どうしたら!」
「一旦お茶を飲んで落ち着こうか...
葉月の入れたお茶は絶品だよ」

やや納得はいっていないが、頷き一口お茶を含み少女。
少し顔が和らいだ様に感じ取れる。
よく見ると目の下には隈が出来ており、顔色も気疲れのせいかあまり良くはない様だった。
葉月は二、三言交わしただけで不眠気味だと気付き、リラックス効果のあるカモミールティーを選んだのだ。

「流石うちの看板娘」
「煩い」
「あの、これ凄く美味しいです
あとホッとする味がします」

少し元気を取り戻したか、安心した様な顔をしている。
お茶の傍らには長方形の胡麻が入っているお菓子が置かれた。
少女は不思議そうに尋ねた。

「パステリというギリシャのお菓子ですよ
蜂蜜が使われてて栄養価の高いお菓子です」
「食べてもいいんですか?」
「ええどうぞ」

少女は一口つまみ、頬が緩んだ。
やはり女の子だ、甘い物を食べる顔にはあどけない笑みが綻ぶ。
雅隆は間を置いて提案する事にした。
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