sandwich

水市 宇和香

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feel

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 もっと上手に曲を伝えるにはどうしたらいいんだろう? そんなことを考えていたとき、庄司先輩にライブに誘われた。庄司先輩は大学でも軽音楽部に入っていて、そこのバンド何組かと一緒にライブをしようということだった。
 知らない人たち(しかも大学生!)とやることにすごく緊張したけど、暗いライブハウス、白い照明が当たるステージで飛び跳ねる先輩たちの姿を見て、来て良かったなあとしみじみ思う。
 だって、みんなすごくすごくうまいんだ。
 ドラムで言えば、十六連符とか僕にはまだ必死でやらないとできないことを簡単にやっていたりして個人の完成度はもちろん高いし、バンドとして合わせるところもばっちりだ。
 それに、どのバンドもギターやベースにエフェクターをたくさん使っているだけじゃなく、弾きかた・叩きかたで音作りにこだわっている。僕なんてまだまだだなってちょっとへこんだけど、そのぶん見習うべきところがいっぱいあって勉強になる。
 先輩たちの演奏が本物のバンドと遜色ないくらいの完コピ具合だったから観客の盛り上がりかたもお祭り騒ぎみたいなんだと思っていたけれど、一バンド目が終わって僕らがステージに立ったときも、お客さんの興奮は冷めなかった。
 今日見に来てるのは大学生の人が大半なのに、僕たちがやったオリジナル曲も全部知っていたかのように盛り上がってくれたんだ。ライブハウスが揺れているのを見たとき、本当に嬉しかった。
 お客さんたちが僕らの音を楽しく思って自然とノってくれる。それを見た僕らも楽しくなって、ライブハウスが一体になる。
「音楽ってすごいね」
「あ? いきなりどうしたんだよ」
 スタンディングスペースの端でステージを見ながら呟いた言葉に、皐月が反応してくれた。
「僕はあんまりライブに行ったことがなかったから、音楽がこんなにみんなと一つになれるものだって改めて知ってびっくりしたんだ。お祭りみたいで楽しいなって」
 普段おとなしい僕でさえ、この空間でははしゃぎたくなる力を持ってる。
「こんなバカ騒ぎのライブばっかでもねーけどな。騒ぐだけが音楽の聞きかたじゃないし。じっと聞いてるやつもいるし、ノリかたなんてそれぞれだろ」
「ま、一体感っつーのは間違っちゃねえけど」
 ぐしゃっと髪の毛をかき回される。
 そのときちょうど三バンド目が終わって幕が閉じた。明るくなった場内で、皐月の不遜な笑顔がよく見える。
 確かに皐月は、ノリノリで客を煽ったりモッシュをしたりするタイプじゃない。だけど、さっきまでステージに立っていたからTシャツも前髪も汗ばんでいて、全力で演奏していた――音楽を楽しんでたことはわかる。
(そっか、そうだよね)
 わかりやすく盛り上がってなくたって、みんな音楽を楽しんでるんだ。このあいだの新入生歓迎会のライブも、棒立ちでつまらなさそうだと思っていた女の子たちだって、もしかしたら楽しんでくれてたのかもしれない。だからこそ、最後は笑顔でアンコールを叫んでくれていたのかも。
 でも、今日ほど観客との一体感を感じられた日は初めてで――僕はこのとき、改めて音楽の素晴らしさ、ライブの楽しさを思い知ったんだ。
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