sandwich

水市 宇和香

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gate

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 けっこーでかいライブハウス。
 芸能事務所の人間も来ることがあるってのは噂で聞いてたけど、まさか初めてここでライブしたその日に声かけられるとは思わなかった。
「ちょっと、時間ある?」
 ライブハウスに不釣り合いなスーツ、毛先をぐるぐるに巻いて、ケバい感じの五十代近いオバサン。ライブスタッフじゃないだろーなってのはわかったから、何言われんのか薄々予想はついていた。
 ライブハウスの後方で、簡易テーブルを囲みながらしばらくどーでもいいような話をしていたら、スーツ姿の冴えないオニイサンがドリンクを四つ抱えてやって来る。
「社長、遅くなりました。すみません」
 ペコペコ謝りながら俺らの前に買ってきたそれを置いて、社長と呼ばれたおばさんの後ろに立つ。
「ああ、彼は秘書の佐藤。紹介が遅くなったけど、アタシはこういうものよ」
 差し出された名刺には、聞いたことない芸能事務所と社長の名前が書いてあった。
「単刀直入に言うわ。アナタたちアタシのとこでデビューしない?」
(ふーん)
 五バンド中、俺らの出番は二番目だった。まだ三バンド残ってるのに――しかも俺らは他のバンドに比べて飛び抜けてうまいわけでもない――もうスカウトに来るってのは、きっと演奏技術を評価されてのことじゃないんだろう。こうして話してても、この人たいしてバンドに詳しい感じしねえし。
 ストローをくわえながら、チラッとシローに目線をやる。
 俺らがこの夏休み、毎日のようにバイトとスタジオ練に明け暮れたのは、シローが俺らの引退を寂しいと漏らしたからだ。「だったらもっと続けようぜ」と言って、スタジオで知り合ったバンドを集め、こうしてライブをやることになった。そのためにはライブハウスを貸し切る金が必要で、練習以外の時間はバイトにあてた。
(今回、シローはなんて言うんだろうな)
 芸能界にびびるか? でも、勉強第一でうるせえ親父を黙らせるには、現在進行形でプロだっつー実績があったほうがいーんじゃねえの? つーか、このシャチョーさんが俺らをどうやって売り出す気でいるかコイツ気づいてんのか? 気づいてねえなら黙っとくのも手だな。後戻りできないころに気づいて後悔すればいい。俺らを巻きこんじまったって、罪悪感でいっぱいになればいい。
 シローを丸め込む算段は山ほど出てくる。
 俺らの引退を先延ばしにして、バンドを継続させたときもそうだ――でも今回のメジャーデビューは、それ以上にシローを縛る枷になるだろう。
 シローのためにやってやるんだ。そんなニュアンスでシローを追い詰めてゆく。
「今すぐ返事が欲しいとは思ってないわ。ちょっとでも興味があったら連絡してちょうだい」
 社長から手渡された名刺をじっと見つめるシロー越しに、おそらく同じことを考えてるだろう優士と視線を交わして歪に笑った。
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