sandwich

水市 宇和香

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substitute

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 ドアノブの回る音で目が覚めた。
 暗い室内。扉を開けた主が一直線にベッドのなかへ潜り込もうとする気配を感じ、僕はたまらず声を発した。
「臭い」
「あぁ? ……優士、起きてたのか」
 その言葉に時計を見れば、午前四時。皐月はどうやら朝帰りだったらしい。そのせいか。女物の香水の匂いが、やたらと鼻をつく。
「起きてたんじゃなくて、今、起こされたんだよ」
 こんな夜中でも足音など気にも留めない皐月にそう返しながら、それよりも、と続ける。
「すごく臭いんだけど。それで寝る気?」
「うるせーな、ったく。明日にでもシーツ洗えばいいじゃねえか」
「誰が洗うの。というか、臭いが気になって眠れないよ」
「こまけーんだよ」
 苛立った様子で、皐月はボクサーパンツ一枚になるとベッドのなかに入ってきた。そして、ぐっすり眠るシローを、抱き枕代わりに腕のなかへおさめる。けだるそうに、しかし、絡める両腕はきつく結ばれている。性的な意図はなく、ただ寄り添うような――いや、しがみつくといったほうが、気持ち的には近いかもしれない。
「女とヤッた後だからシローに触れられるんだろーが。そうじゃなきゃ、とっくにシローのこと、抱きつぶしてんぜ」
 以前皐月が言った言葉だ。
 それは僕にもよくわかる。他で性欲を発散しておかないと、いつシローを襲ってもおかしくないくらい僕たちは我慢している。ただ、直前まで抱いていた誰かの残り香があるうちに、シローに触れられる神経は僕にはわからない。
(まったく、本能的だよね皐月は)
 シャワーを浴びてから戻って来たって、時間的にはたいして変わらないのに。それすらもどかしいというふうに、シローを抱き寄せる彼に苦笑する。
(明日、シローには風呂に入ってもらおう。皐月はシーツの洗濯)
 睡眠欲に負けて、この場は譲るけれど。僕の独占欲も大概だから、ベッドやシローからどこかの女の臭いがするなんて許容できない。皐月だって勝手だから、朝になったらシローへ移った臭いに顔をしかめるんだろうし。
 そんな想像をしながら、僕もシローのほうにごろりと体を傾ければ、皐月と目があった。
「臭いどーこー言うけどよ、おまえだってヤッてること自体は一緒だろ? つか、最近俺より増えてね?」
「まあ、そうなんだけど」
 シローはもちろん皐月にも、わざわざ報告なんてしていない。それに、僕は形跡を残さないよう帰宅しているはずなのに、なぜだか彼には、ことごとくばれている。そういうところも本能的だ。
 しかし、何より僕らは似ているから、きっと。
「そろそろ我慢の限界かな、って思ってるよ」
 そう呟けばうっそり笑って返す皐月に、やっぱり同じ気持ちなんだなと理解する。
 早く、シロー、君だけが欲しいよ。
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