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第五話 過去
しおりを挟むヤマトさんとフレアさんが執務室で話し始めてから30分以上経つのですが、未だに帰って来ません。
「なんでこんなに時間がかかってるんですかね?ギルドの登録ってもっと早く終わりましたよね?」
「う~ん?そうねぇ、確かに時間がかかってるわね。でも仕方がないんじゃない?よくわからない負け方してるから原因が気になるのよ」
「それにしてもかかり過ぎですよ!実際の戦闘時間よりも長いですよ」
「そうねぇ~まあ、あの子は少し特殊な子みたいだから色々聞きたい事があるのよ、きっと」
「私、見て来ます!」
「そう?じゃあついでにフレアから今日の報告書貰っておいて!早く提出してくれないと私いつまでたっても仕事できないから」
「もう!なんで今まで適当に返事してたのにここぞとばかりにまともな返事を返すんですか!」
「お仕事だから♪」
「都合のいい時ばっかり仕事を言い訳にして!」
「事実だもん♪」
「もう勝手にしてください!そんなんだからいつまで経っても彼氏が出来ないんですよ!それじゃあ私は見に言って来ますね!」
「・・・関係ないもん!!」
本当は早く仕事がしたいんじゃなくて、早く帰りたいだけのくせに!
どうせ家で待ってる人も居ないくせに!
そんな事を心の中で愚痴りながら私は執務室に向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コンコン
「ルナです!なかなか帰ってこないんで様子を見に来ましたー!お話終わりましたか~?」
「ああ、ルナか、入っていいぞ」
「はい!失礼します」
「どうです?話しは終わりましたか?・・・って!何ですかこの部屋は?!黒焦げじゃないですか!!」
私がドアを開けるとそこには部屋のありとあらゆる場所が焦げていた。
中にはおそらく提出する予定であっただろう報告書も半分が焼けていた。
「一体何をしていたんですか?!これ、マリアさん見たらすごい怒りますよ!」
報告書を提出するよう催促してこいと頼む人だ、間違いなくこの状態を見たら怒るだろう。
仮にマリアさんが怒らなくても、私なら怒ります。
「これはな~、ヤマトに魔法を教えてたらこうなってた」
「こうなってた・・・って、ここで魔法を使ったんですか?」
「おう、使わせたぞ!」
「試してみるのが一番かな?って思って試した」
「そんで、気付いたらこうなってた」
「「だから私は(俺は)悪くない」」
「考えれば普通にわかるでしょうが!!」
その後マリアさんが様子見に来たのだが、二人がどうなったのかを私は知らない。
ただ一つ私が言えることは、
マリアさんに笑顔で「ホールに戻ってなさい」と言われた時の顔を思い出すと今でも身震いが止まらないという事だ。
良かった・・・私のあの発言で怒らせなくて。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「う~ん・・・ここどこだ?」
確か・・フレアさんに基本的な魔法の使い方を教えて貰ってそれで・・ダメだ、思い出せない。
でも何でだろう?
その先の事を思い出そうとすると身体中が痛むんだよな~
「あ!ようやく目が覚めましたね!ヤマトさん」
「ああ、ルナか、早速で悪いんだけど、ここどこ?」
「ここは私の家です!」
「へぇ~、そうなんだ~」
「って、いつの間に?!」
「もう!大変だったんですよ!氷漬けのヤマトさん運ぶの!」
氷漬け?
ああ、思い出したぞ。
確かマリアさんに怒られたんだ
それでフレアさんと罪のなすりつけ合いをしてたら
すごい冷たい声で「一回死ね」って言われて氷漬けにされたんだ。
生きてるかな~?フレアさん
「というか、いいのか?ルナ」
「はい?何がです?」
「俺なんかが住まわせて貰って」
「ああ、その事ですか、全然平気ですよ!むしろ大歓迎です」
「うちは無駄に大きいですし、何せ今は私ともう一人の住人しか居ませんので」
今は二人だけ?
なんか事情がありそうだな。
追求するのはやめておくか・・
コンコン
「失礼します、ルナ様」
「夕食の支度ができましたがいかがなさいますか?・・・あら?お目覚めになったのですね」
「ああ、おかげさまで。」
「そうですか、それは良かったです。私はリリアと申します。」
「ああ、俺はカンザキ・ヤマトだよろしく」
「ええ、よろしくお願いします」
「それで、如何なさいます?」
「もう少ししたら夕食にするわ」
「かしこまりました。それではお待ちしております」
そう言い、リリアは部屋を去っていく。
随分と淡々とした娘だな。
「さっきの彼女がもう一人の住人なんです、少し無愛想ですが、いい娘何で仲良くしてあげてください」
「ああ、そうするよ」
その後夕食を食べたのだが、またこの料理が実に美味しかった。
地球の洋食と味があまり変わらず、おっかなびっくり食べるなんてことはなかった。
食事の後、ルナは用事があるとの事で自室に戻って行ったので、俺は家の中を探索することにした。
そして、探索の最中俺はあるものを見つけた。
「これは・・・肖像画ってやつだよな・・・」
おそらく夫婦であろう二人に頭を撫でられている少女が描かれていた。
その夫婦の顔からは優しさが、その少女の顔からは嬉しさと言った感情が伺えた。
この絵に描かれている少女ってもしかして・・・
「その絵に描かれているのはルナ様とそのご両親ですよ」
「うおっ!?って・・・リリアか、いつから後ろに?」
「食堂から出てすぐです」
「まじかよ、全然気づかなかった」
「気配を悟られないようにするのはメイドになるための必要条件なので」
それはメイドじゃなくて暗殺者だよ。
「そういえば、一つ気になることがあるんだけど・・」
「ああ、ルナ様のご両親のことですね」
「そうなんだけど・・なんでわかったの?」
「メイドだからです」
万能だなメイドさんは!
「まあ、そんな事はどうでもいいんです」
「ルナ様の事です、おそらく話されていないのでしょう」
「ああ、何も聞いてない」
こちらから追求することもしなかったけど
「そうですよね・・・では、私からお話しましょう」
「え?いいのか?ルナが話したがらない事なんだろ?」
「まあ、確かに抵抗がありますが、ここで暮らす以上は知らなくてはならない事だと私は思います」
「なので、私は話します」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あれは一年前の事でした。
その日の空は晴れ渡り雲ひとつない天気だったことを今でも覚えています。
そう、雲ひとつなかったんですよ・・・
なので私は洗濯物を干しに外に出たんです。
その当時、私は洗濯物の担当でした。
あの時屋敷には確か三十人くらいの従者がいたと思います。
なので、洗濯物を干すだけでも大体半日はかかってましたね。
そして私が洗濯物を干している時でした、
あの日の異変が起きたのは・・・
空は突如黒い雲で覆われ、とても強い風が吹き、
その様子は嵐と呼ぶにふさわしいものだったと思います。
私はすぐに干していた洗濯物を取り込もうとしました。
そんな時でした、ルナ様のお父様に伝令が入ったのは
その内容はこの嵐に関することでした、
『直ちに魔物を討伐せよ』
そう、この嵐は自然災害では無く、魔物によるものだったのです。
伝令を聞き、ルナ様のお父様とお母様は直ちに出発しました。
ルナ様のお母様もこの辺りでは腕の立つ魔法使いでしたから、共に招集を受けたのでしょう。
ここから先の話は人から聞いた話なので詳しくは知りますがお話ししますと、
その嵐の魔物は招集を受けた者達が束になって向かっても歯が立たなかったそうです。
招集を受けた者達は四十人、
その方々は皆、ギルドの中でも腕利きの方ばかりだったそうです。
打つ手のなくなった彼らは撤退することにしたそうです。
しかし、それではピークスの住人が助からないと、
ルナ様のお父様とお母様は『私達が囮になるから早く住人に避難するよう伝えろ』と、言い残し、嵐の魔物と戦い続けたそうです。
ここから先の話は私も知っています。
私達の避難が終わった頃でした。
遠くの空に光の柱が見えました。
そして、その光の柱を中心に空から黒い雲は消え去り、強く吹いていた風も止みました。
『マリンナイト家が倒してくれたんだ!』
『騎士様が町を救ってくれたんだ!』
私達が避難していた場所ではそのような歓声ばかりが上がっていました。
しかし、町を救った英雄の二人が戻ってくることはありませんでした・・・
ルナ様のご両親はピークスを守る為に自らを犠牲にしたのです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「これがルナ様のご両親の話です」
まさか・・・そんなことがあったなんて・・・
一年前って、最近の話じゃないか。
まだ、傷も癒えていないはずなのに・・・
それに比べて俺は・・・
「これが私がヤマト様に話しておきたかった事です」
「これを聞いてどうこうしろという訳ではありませんが出来ればルナ様の助けになって欲しいのです」
「私もルナ様の助けになりたいのですが・・・やはり従者の手前・・・ルナ様が私に弱音を吐く事は無いのですよ」
確かに立場上、弱音は吐けないのかもな・・・
確かにそれは無理して強がってるのかもしれない。
そんな状態は決して良い状態とは言えない・・
でもな・・・
「ふん、そんな事願い下げだね!」
「そうですよね・・・突然こんな事聞かされて・・・はい、わかりました。とはなりませんよね・・・」
「ああそうさ!こんな重い事いきなり話されて誰が了承するか!」
「それにな、こういう事はお願いされてする事でも無ければ、お願いする事でも無いんだよ!」
「こういう事は誰かにしてあげたいって思う気持ちが大事なんだろ!?なのに誰かに促されて行動に移すんじゃその気持ちだっていつかは義務感に変わっちまうだろ!」
「はい・・・」
「だから、俺はな!自分の意思で自分の友達を助けるんだよ!決してリリアに促されたわけでもなくな!」
「?!ヤマト様・・・」
「それに、ルナにはこっちに来てから色々迷惑かけてるしな!」
「ふふふ・・・・確かにそうですね♪」
その時のリリアの顔はメイドとしての作られた笑顔ではなく、
一人の親友としての笑顔が浮かんでいた。
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