悪役令嬢は、面倒事が大嫌い！

目の見えない少女と従者

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「嘘！メイドのメアリーと？」


「ええ、そうなのですよ。あの新人の。最近のメイドの間ではその話題ばかりなのです」


　

やはり、軽薄そうな笑みを浮かべたジェシカは、声をワントーン上げて楽しそうに話す。それに比例したように、アリッサも声を張り上げて、先ほどよりは楽しそうな表情を浮かべた。



「メイドの間ではその話ばかりしていて、メアリーも商家の娘でありますから、平民として花嫁修業の様なものに来ているらしいのです。いま平民の金持ちの間でははやっているのですよ。貴族のメイドとして働くのが。その流行にのったうちの一人なのですわ。だから、まあ、こうは言っちゃいけないのかもしれませんが正直真っ当に働こうとしている人間よりは、やる気も仕事もできないですがね。ですからもっぱらメイドたちの中では、メアリーがこういう、愛人契約を結ぶためにやってきたという人間も言うぐらいですから」



「なるほどね。そういう風には見えないけど」



「そうだからですわ。だからこそ、純粋そうなお嬢さんがって話になるんですよ。使用人の中でも、エレイン様の婚約者とメアリーが密会を重ねているのを見かけたある人もいるくらいで」



「それは結構な頻度で目撃されてるの？」



「ええ。密会ですから一目を忍んでるはずなのですが。それでも目撃されているということでございますから、私の予想ではもうかなり会ってるのではないかなと思いますわ」



「それについて、エレインは何も言わないの？」



アリッサは何かを思い出そうとするかのように首を傾げ視線を右上へ流す。



「いいえ、何も。それに、エレイン様は関心すらなさそうでしたわ。自身の婚約者なのに」



「ええ、エレインが」



「はい。エレイン様は毎日を自分のペースで生きることに必死そうに見えましたから。婚約者様に対しては特に好意などは持っていなさそうというよりかは、むしろ関心すらないように思えました。二人の関係は、ビジネス上の関係というように思えます。」



「でも、よくいらっしゃってたんでしょう？」



「ええ、それも含めてビジネス上の関係と言いますか、仮面を被ったような関係でした。今思うと、そうですね。そう思えます」


「そうなの？」


「ええ。私がお話しできますのはこれくらいでしょうか。」



「ありがとう、とても参考になったわ」



そう言うとジェシカは一礼すると、レイを伴ってリネン室を出ていった。