竪琴の乙女

ライヒェル

文字の大きさ
62 / 78
九章

神の使い

しおりを挟む
「お願い。離さないで」
物静かな彼に不安を覚え、つい懇願するようにそう言うと、カスピアンは頷いてゆっくりと私を腕に抱き上げた。そのまま大きな天蓋付きのベッドまで来ると、私を抱いたまま身を横たえる。いつものように温かい胸の中に閉じ込められ、切ないような幸福感で胸が苦しくなった。懐かしい深緑色の目が、慈しみを込めて細められる。彼は、壊れ物に触るかのように私の髪を撫でて、静かな声で囁いた。
「愛している。何があろうとも、離しはしない」
その言葉にホッとすると同時に、やっと心が自由になった気がした。
いろいろと話す前に、一番大切な、お互いの気持ちを伝え合うことが出来た。もう、他に何も言わなくてもいいんじゃないかと思うくらい幸せな気持ちになって、自然と微笑みが溢れる。
カスピアンは優しい笑みを浮かべて私の目を見つめていたが、やがて、その表情が一瞬で固くなるのに気がつく。何かを恐れているように揺れる影が彼の目に浮かぶのを見て、私はそれがどうしてなのか分からず、再び不安に襲われた。
「カスピアン?」
心配になって彼の頰に触れる。その頬はまだ、薄っすらとした髭でざらついていた。
「なにか……」
何かまだ心配しているのかと聞こうとしたら、カスピアンは目を逸らし、私の首筋に顔を埋めた。私に顔を見られたくないほど深刻な問題を抱えているのかと動揺しながらも、訳が分からず、ただ彼の頭を抱き締める。
まさか、まだ何かサーシャのことだろうか。
実はあれは誤解じゃなかったなんて言い出すのかと不安になるが、もしそうだとしても、私はもう絶対に彼と離れるつもりはない。
彼の柔らかな栗色の巻き毛を撫で、不安で乱れる心を落ち着ける。
「セイラ」
耳元で聞こえた彼の掠れた声に頷く。
やっと何かを言うつもりだと察し、聞き落とさないように全神経を耳に向けた。
心臓が変なリズムで鼓動し、時折脈が飛ぶのを感じる。
しばらくの沈黙の後、彼は、私の肩を抱いている手に力をこめた。
「ルシアのもとで、おまえが……」
そこまで言いかけたカスピアンの言葉が途切れる。それ以上を言えないのか、もう、黙ってしまった。
ルシア王子。
その言葉に、ハッと目を見開く。
カスピアンがルシア王子のことを気にするとなると、理由はひとつしかない。
私とルシア王子の間に、何かがあったのか、ということだ。
きっと、答えを聞くのが怖いのだろう。
当然と言えば至極当然。
私が、彼とサーシャの関係を疑った時の心境と、まさに同じ状態。私は事実を確認する勇気がなく逃げ出した。
エヴァールでの日々を思い出し、罪悪感でいたたまれなくなる。
ルシア王子に抱きしめられたり、口づけされるのを、結果的には受け入れていた。
なぜ、そんな状態を甘んじていたのか?
精神的に普通の状態じゃなかった。
沈没しそうな船から助けてもらったという、難しい立場だった。
よって、やむを得ない状況だった。
……などと言い訳したところで、決して許されることじゃない。
しかも、酒に酔わされた挙げ句、上半身裸の状態を見られたなんて、口が裂けても言えない。
なんて馬鹿で愚かな私。
私が黙っているせいか、カスピアンも微動だにせず、まだ、私の首筋に顔を埋めたままだ。
早く安心させなければならない。
どのように説明し謝るべきか考えたが、いろいろ言うより、彼が一番危惧していることだけをはっきり伝え、余計な事は言わないほうがいいだろうとの結論に至る。逆の立場だったらと考えてみたら、そういう答えになった。カスピアンだって、酔いつぶれたのを介抱してくれていたサーシャと一緒に居た時、もしかしたら、抱きしめたり口づけくらいしていたかもしれない。でも、私はそんなこと、今更知りたいとは思わない。それ以上、深い関係になっていなかったのなら、もう十分だから。
私はカスピアンの肩に手を触れた。
「カスピアン?」
顔を上げさせようとしたが、動こうとしない。
もう一度肩を掴んで揺らしてみたが、頑固なまでに顔を上げようとしなかった。
この様子だと、多分、私の口から出る答えはきっと、聞きたくない内容だと恐れているのだろう。
だから、さっき、この質問をする前に、何があっても離さない、と言ってくれたのだと気がついた。彼は、もし私が、ルシア王子と深い関係を持ってしまっていたとしても、そんな私でも受け入れる心積もりなのだ。彼の言葉の真意を知り、その心の広さと愛の深さに、感涙が溢れた。
愛おしさに胸が熱くなって、私はぎゅっと彼の頭を胸に抱きしめた。
「カスピアン。私、何ひとつ、変わってない。心配するようなことは、なかったから」
はっきりそう言うと、ようやく彼が顔を上げた。
潤んだ苔色の目に光が戻っている。彼は目元をうっすらと赤く染めて私をじっと見つめた。そしてぎゅっと私を抱き締めて、しばらくそのまま動かなかった。
「心配かけて、本当にごめんなさい」
彼の顔を覗き込むと、彼はようやく安堵したように表情を緩め、深いため息を零した。
彼は優しい微笑みを浮かべると、労わるように、そっと私の頬に手を触れた。
「怖い思いをしたのではないか」
その質問にどう答えればいいのか分からず、じっと彼の目を見つめ返す。
あの夜の舟の中で押し倒された時は、流石にもうダメだと思った。あの時、危うく勢いに流されそうだった自分を思い返すとひやりとする。でも、こうして無事にエティグス王国を出ることに成功し、私の中では全て過去の事になったのか、今の私の心を占めているのは、彼と共に居る幸せだけだった。
「今はもう、貴方の事しか考えられない。助けてくれて、ありがとう」
素直な気持ちを口にすると、込み上げてくる感情に視界が揺れる。穏やかな微笑みを浮かべたカスピアンが、私の頬を引き寄せて、そっと唇を重ねた。あのヴォルガの河から助け出してくれた時のように、私の心を蝕む苦しみの全てを消していく優しい口づけに、身も心も溶けてしまいそうになる。繰り返される口づけが、徐々に激しさを増していく。燃えるように熱い唇を私の首筋に滑らせたカスピアンが、私の体をかき抱いた。
「おまえがもう、二度と戻らぬかと思い、気が狂いそうだった」
乱れた呼吸を震わせ、苦しみを吐き出したカスピアン。
「……何度も逃げ出しおって……」
苦痛を帯びた唸るような声に、胸がズキリと痛む。
紛れも無い事実に、返す言葉もない。
ずっと一緒にいると約束しておきながら、事実確認もせずに彼を疑い逃げ出した。私がいかに意気地なしか証明したようなものだ。しかも、中途半端な決意だったものだから、しばらくしたら後悔して、ラベロアに戻りたくなるという意志薄弱さ。今回、カスピアンの手助けがあったからよかったものの、彼なしでは、きっと今頃はもう、取り返しのつかないことになっていただろう。
「おまえを失うのが恐ろしい」
そう呟いたかと思うと、カスピアンは言葉を飲み込むように、呼吸を止め、押し黙った。なんと声をかければいいのかも分からず、彼の大きな背を抱きしめ、柔らかな栗色の巻き毛に指を絡ませる。
彼をこれほど苦しめてしまった事実は、一生忘れられないだろう。
私はもう二度と、彼の元を離れたりしない。彼を信じて、この世界で共に生きていくという決意はもう、決して揺るぎはしない。いつか、死が私達を分つことがあっても、魂はずっと寄り添い続けていきたい。
彼が私を世界一幸せにしてくれるように、私も心から、彼を幸せにしてあげたいと強く思った。
「セイラ」
囁くように私の名前を口にしたカスピアンと目が合う。熱を帯びて潤む目が私を捕らえる。彼は私の髪を手にすくい取り、そっと口づけを落とした。その手で私の頬に触れ、食い入るように私を見つめる。彼の目に浮かんだ情熱的な光に、何かが起きる予感がして、私は息を呑む。
「おまえが、欲しい」
はっきりと聞こえたその言葉に、心臓がドッキンと大きく跳ねた。
動揺を隠そうと思っても、一気に頬が熱くなっていくのを止められない。
以前彼が私に言った、おまえが欲しい、とは、違う意味だ。
頭に血が上って、沸騰しそうな気がした。
私を見下ろす彼の目は、赤面し狼狽えている私を優しく見守っている。突然だったから動揺したのは言うまでもないが、彼の言葉にどう答えるかなんて、考える必要もなかった。
私はドキドキと早鐘を打つ自分の心臓の音を聞きながら、両手を彼に伸ばしてその逞しい首に腕を絡めた。引き寄せられるように口づけを交わして、私はぎゅっと彼に抱きついた。
「私の全ては、とっくに貴方のものだから」
彼の耳にそう囁くと、彼はじっと私の目を見つめた。
きっと、私が恐れていないか、迷っていないかを見極めようとしているのだろう。彼がどれほど私を大切に思ってくれているか、痛いほどわかっている。
見つめられていると、更にドキドキして耳まで焼けるように熱くなってくる。そこまで照れている自分自身が、ものすごく恥ずかしくなってきた。私が怖がっているわけじゃなくて、単に緊張しているだけだと、どうにか伝えようと思い、私は黙って、彼の真っ白いシャツに手を伸ばした。
意思表示のつもりで、金色のボタンをひとつ、外す。ふたつ目のボタンを外しているうちに、緊張で手が震えてもう、次のボタンはうまく外せなくなってしまう。思う通りに動かない指に困り果て、ぎゅっと両手を握りしめてみた。
私が苦戦している様子を見守っていたカスピアンが静かな笑いを零すと、上体を起こし、一息にシャツを脱いだ。
突然目にした彼の半裸に、ドッキンと心臓が大きく跳ねる。
初めて見る訳じゃない。
ずっと前、正妃の間に忍び込んで添い寝していた彼が、上半身裸だった。
ヴォルガの河で、上半身裸でずぶ濡れの彼を見たこともあった。
けれど、こんな至近距離でしっかりと目にした事はない。
突然露になった逞しい体は、あまりにも強烈だった。小麦色に焼けた肌には所々傷跡があり、彫刻のようにくっきりと浮かび上がる筋肉が作る陰影はとても美しかった。けれど、私の目には刺激的すぎて、とても直視出来ず、思わず、両手で顔を覆ってしまう。
まだ午前中というこの明るさで、全てが鮮明に見えてしまうのも視覚的に辛い。
心臓が爆走して、頭がおかしくなりそうだ。
カスピアンは私の両手を掴みゆっくりと解くと、静かに私の名を口にした。
「セイラ」
呼吸もままならないほどに高揚する気持ちで、私を見下ろす彼の目を見る。エメラルドのように輝くその目は、とても幸せそうに細められていた。優しい微笑みを浮かべている彼を見つめているうちに、少しずつ緊張が和らいでいく。強ばっていた私の手が緩むと、カスピアンは指を絡めるようにして私の両手を体の左右に縫い付けた。
そして、ぴったり目を合わせたまま身を屈めたカスピアン。覆い被さるように彼の影が落ちて、その重みを上半身に感じると同時に、彼の体温に包まれた。
重ねられた唇も燃えるように熱かった。まるで、果てしない砂漠で辿り着いたオアシスの水を飲み干すような口づけに翻弄され、思考が停止してしまう。
もう、彼の事以外、何も考えられない。
今のこの瞬間を記憶に刻みつけたい。
頬と頬を合わせた彼が、熱いため息を漏らすのを感じる。
耳元で、私の名を囁いて、首筋から伝うように滑り落ちていく彼の唇が、まるで火のように熱かった。とてつもなく甘い夢を見ているような心地の中、カスピアンの手が私の腰に触れて、帯紐の結び目を掴んだのを感じた。ドキンとして彼を見上げようとした時、彼の背後に、何か動くものがあるのに気づく。視界の端に映り込んだものにハッとする。
「あっ」
驚いて声をあげると同時に、ベッドの隅にいたそれは、一瞬でカスピアンの背に飛び乗った。
カスピアンが目を大きく見開く。
そして、静かな空間に響く、遠慮がちな鳴き声。
『みゃぅ~』
私達は呆然としてお互いを見つめ合った。
カスピアンの肩からひょっこり覗いたふたつの目が、私をじっと見下ろした。
『にゃぁ~』
今度は、何やら言いた気に、主張を込めた鳴き声。
真っ白い猫。
金色の大きな瞳で私を見下ろした猫は、カスピアンの首にすりすりと頭をこすりつけると、音も無くベッドに飛び下りた。身動き出来ずに固まっている私達の間に入ると、くるりと方向転換し、私の胸の上に乗るとごろんとひっくり返る。そのまま、弓なりに四肢を伸ばした後、前足の肉球をカミカミし、悠然と毛繕いを始めた。
「猫が……」
私がぽつりと呟くと、カスピアンが、大きくため息をついて、どさりと隣に身を横たえた。そして、片手で目を覆い、参ったというように苦笑する。
「この離宮では、かなりの数の猫が自由に歩き回っている。なんでも、アンカールで猫は神聖な動物と見なされているらしい」
「そうだったの……」
ものすごく人懐っこい白猫は、ゴロゴロと喉を鳴らしながら甘えてくる。ふわふわの毛を撫でてやると、嬉しそうに目を細め、さらにゴロゴロと喉を鳴らす。
「まさか、猫の邪魔が入るとは」
肩肘をついたカスピアンが、私の腕の中でくつろぐ白猫を眺めてため息をついた。カスピアンの言葉を聞いたのか、白猫が首を持ち上げて彼をじっと眺め、長い尻尾の先っぽをピクピク動かす。ピンク色の鼻をひくひくさせ、金色の目を細め、我が物顔でくつろぐ猫。
眉をしかめて猫と睨み合っていたカスピアンが、やがて、くすりと笑いを零し、私を見た。
「こやつは、我を失いかけた私を止めたのだろう」
そう言うと、私の頬に口づけを落として、優しい微笑みを浮かべた。
「おまえを名実共に妃にするには、まず、神々の前で誓いを立てねばならぬ。神の教えに背いては、おまえを幸せには出来ないだろう」
「カスピアン……」
どこまでも真っすぐな彼の心と、彼の想いが嬉しくて、泣き出したいくらい胸がいっぱいになる。溢れるくらいの幸せに包まれて、笑顔が止まらなくなった。
「今宵はここに泊まるが、明朝には出発する。早々に帰国し、延期にした、軍事パレードと婚儀を執り行う準備をせねばならぬ」
その言葉に、私は大きく頷いた。
「早く、ラベロアに帰りたい」
逸る気持ちでそう言った途端、ぐぅ~と私のお腹が鳴り、驚いた猫が私の胸から飛び下りた。そのまま、勢い良く窓の方へ走り出し、姿を消す。
「もう……」
ひどいタイミングに赤面し、カスピアンに背を向け両手で顔を隠した。
久しぶりに彼に会って、ロマンチックな雰囲気に浸っているところに、空腹の知らせなんて!
ホッとして気が緩み過ぎたのかもしれない。
羞恥に耐えている私の後ろで、くすくすと笑いを漏らすカスピアン。
恥ずかしさに穴があったら入りたいと思いながらも、ようやく、本当の意味での幸福な日々が戻って来た事を神に感謝したのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...