10月2日、8時15分の遭遇(前編)

ライヒェル

文字の大きさ
3 / 31
最初の一週間

舞い降りたテントウ虫

しおりを挟む
「すごーくお腹いっぱいになった!」
私はカチカチに膨れ上がった胃のあたりをさすりながら、カーキ色のL字型ソファに腰掛けた。
蓮美ちゃんの手作り料理はこれが初めてではない。
ロサンゼルスでシェアハウスに住んでいた時も、彼女が遊びに来た時に食事を作ってくれたことがある。その時は、親子丼と味噌汁という、海外に住む者に取っては涙が出るくらい嬉しいメニューだった。ものすごく感動したので今でもそのことを鮮明に覚えている。同じシェアハウスに居た、スペイン人のエリザベスが、さやインゲンを残したことまで、まるで昨日のことのようにはっきりと思い出せる。
今晩、蓮美ちゃんが作ってくれたのは、典型的なドイツ家庭料理だった。
タマネギやベーコンの炒めたものが入っているポテトサラダ。
なんでも冷凍保存していたチキンスープのブイヨンを混ぜてあるとのことで、ふっくら、しっとりとして、私が作るバターやマヨネーズたっぷりのポテトサラダとは全く違うものだった。
ゴロゴロしたポテトの欠片に、刻まれたピクルス、ディルというハーブも散りばめられ、ゆで卵の輪切りに真っ赤なトマトも添えられた様子は、もはやポテトサラダと呼ぶにはおしゃれ過ぎる一品。
そして、ボイルされたフランクフルトソーセージ!ほかほかと湯気のたつお湯のなかから、それを取り出しプレートに置いて、マスタードとケチャップでいただいた。
「なんだか忙しくて、手のこんだものとか作れなくってごめんね」
蓮美ちゃんがマグカップのコーヒーを運んで来てくれた。
「全然!ものすごく美味しかったし、ドイツの家庭料理って、こんな感じなんだなってわかって嬉しいよ!ポテトサラダ、いくら食べてもまだ食べれるってくらい美味しかったし!」
「うん、そうかもね。ちょこっとオリーブオイルを足しただけだから、重くない感じ?」
「そうそう!ポテトサラダって聞くと、どっしりと重いイメージだったから、目から鱗だよ。私も、帰国したら、ブイヨンを使って作ってみる」
熱々のコーヒーに口を付けていると、リビングのドアの所にペーターがリリカちゃんを抱っこしてこちらを覗いた。ペーターの腕の中のリリカちゃんはもう、とろんとした目で指しゃぶりをしている。
「そろそろ、寝かしつけるから」
「よろしく、ペーター」
蓮美ちゃんがそう言って手を振る。
ペーターが何やら子守り歌みたいなものを口ずさみながら、廊下の向こうへ消えて行った。
「子煩悩でいいパパだね!」
私は微笑ましく思って蓮美ちゃんを見た。
彼女は、後ろでひとつにまとめていた髪をほどきながら、大きく欠伸をした。
「共働きだったら、当然のことだけどね。夜中にまだ数回起きるのよ。だからリリカの寝かしつけだけは絶対に彼にやってもらってるの。そうでもしないと、私もストレスで耐えられないし」
「夜中に起きるって、泣いて起きるの?」
「うーん、そうでもないんだけど、寝ぼけてるって感じかな。放っておいたらまた自分で寝るんだろうけど、私はどうしても目が覚めちゃうから」
「母性本能?」
「多分ね。熱があるのかとか、オムツが気持ち悪いのか、とかやっぱり気になって、リリカが起きるたびにチェックしちゃう。ちょっと神経質すぎるって、ベーターは言うんだけど、自動的に目が覚めちゃうものはどうしようもないんだから」
「確かに。子供がいるって、責任があることだからね」
もう一度、大きな欠伸をした蓮美ちゃん。
昔より痩せているけれど、目の下にくまがあるわけでもなく、以前よりエネルギッシュな気がする。育児と仕事の両立は大変なはずだけど、フル回転でこなせるくらい一生懸命生きているから、こんなに明るく元気なんだろう。
時計を見ると、もう9時になっていた。
明日も平日で、蓮美ちゃんは仕事がある。
「そろそろアパートに戻るよ。明日も仕事でしょ?また週末にでもゆっくり話せるし」
そう言って立ち上がろうとしたら、蓮美ちゃんが手で私を制した。
「まぁ、もうちょっと平気だって。ペーターもあと30分くらいは来ないし、せっかく二人になったんだし」
「そう?蓮美ちゃんがそう言うなら、もうちょっとだけ」
私は笑ってソファに座り直した。
とても居心地のよいアパートだ。
決して大きくはないけれど、適度に物が散らばっていて、生活感があるこのリビングルーム。床にころがる白いポニーのぬいぐるみ、カラフルな布絵本などもまるでインテリアの一部のようだ。
フラットスクリーンテレビの前に並べられた家族の写真も、無機質な家電を温かみのあるものに変えてしまう。
「それで、今回こんなところまで来た理由って、ただの気分転換だけ?」
蓮美ちゃんがコーヒーのマグカップをテーブルに置いた。
世話好きな蓮美ちゃんらしいセリフだ。
私が何をしたくてここまで来たのかを確認して、出来る限りのことをしようと思っているに違いない。
私は笑いながら首を振った。
「ほんとに、気分転換だけだよ。また、仕事辞めたいなーって思い始めちゃったから、だったら転職活動したほうがいいのか考えようと思って。でも、東京に居ると忙しくて、考えがまとまらなくって」
「あー、それは言えてるね。1人で考える暇がない生活って、結構、危険よね」
「危険ってまで言う?」
大袈裟だなと思ってそう言うと、蓮美ちゃんはダークブラウンの縁取りのメガネをはずして、それもテーブルに置いた。メガネを取ると、今トレンディドラマで人気の女優さんに似た、アジアンビューティの蓮美ちゃん。前みたいにメガネじゃなくて、コンタクトを入れたらいいのに、その暇がないからと、リリカちゃんが誕生して以来、ずっとメガネらしい。
「危険に決まってるじゃない!だって、一回しかない人生、どうやって駒を進めるか自分でよく考えないと、周りに流されて思いも寄らないエンディングに辿り着きかねないじゃないの。自分で考えて先へ進めば、最終的に、人生しくじったなーと思っても、後悔はないと思うのよね」
「駒ねー……確かに、このままだと、はっと気がついたらアラフォーになりそうな気はしてる」
「あんたは、そこに気がついているだけマシ」
蓮美ちゃんはウンウン、と大きく頷いた。
「私も、東に西にと短期間に移動する羽目になったけど、少なくとも自分で決断した道だからね。昨年、リリカが生まれた直後に、ペーターが失業した時はさすがに発狂しそうになったけど、だからと言って、彼と結婚したことを後悔はしなかったよ」
「え、失業してたの?」
それは初耳だ。びっくりしていると、蓮美ちゃんは苦笑しながら頷き、少し声を低くして説明する。
「会社が倒産したから、ある日突然、職なしよ。生まれたばかりの赤ん坊を抱えて、大して貯金もないのに、どうなるんだろうって不安になったけど、まぁ、なるようにしかならないなと腹をくくったの。結局、半年後にまた仕事を見つけたから生き延びているけど、ほんと、人生、いつなにが起こるかわかんないわよ。あれは、いい試練だった」
「でも、仕事が見つかってよかったね!蓮美ちゃんも、よく持ちこたえたじゃない?私だったら、逃げ出してたかも……でも、子供がいたらそうはいかないかな」
「うん、子供がいると、運命共同体って感じが強くなって、そう簡単に旦那を捨てられないね。それに、リリカが居たから耐えられたのかも」
蓮実ちゃんは、あはははと明るく笑った。
苦労さえこうやって笑い飛ばせる彼女は、やっぱり強い。自立している大人の女性だ。
感心して尊敬の眼差しを向けていると、蓮美ちゃんがぴたりと笑うのを止めた。
「理央、彼氏は?」
「あ、彼氏?えー、そうだね、半年以上、いない」
「えー、どうしたのよ。確か、正月開けに付き合い始めたんじゃなかった?」
「うん、でも、バレンタインの時になんだかゲンメツしちゃって、別れちゃった」
「たった2ヶ月も続かないの?ゲンメツって、なんかあったわけ?」
「ううん、逆」
「逆?」
目を丸くしている蓮美ちゃんに、その時のことをどうやって説明しようかしばし、腕組みをして考えてみた。原因が単純すぎて、逆に説明しにくい。
「普通にさ……普通に、バレンタインの日に、イタリアンレストランで食事して、彼がプレゼントくれて」
「プレゼント?」
「うん、ペンダント。トパーズの」
「トパーズ?」
「そう。で、急に冷めた感じ」
「は?」
蓮美ちゃんが目を丸くして私の顔を見つめた。
その、驚きの視線を浴びて、ものすごく気まずくなる。
確かに、傍目から見て、私は最低な女だろう。
バレンタインの夜に、お洒落なイタリアンで食事をして、トパーズのペンダントをプレゼントされて、直後に別れる女。
「……何が気に入らなかったわけ?」
釈然としない様子の蓮美ちゃん。
私は、呆れられてしまうだろう思いつつ、正直にその理由を説明した。
「奇麗なペンダントだったよ。オレンジイエローでキラキラして、ゴールドチェーンとも馴染んで。でも、トパーズって、宝石言葉が……友情、友愛とか」
「えっ、あんた、そんな石言葉なんかでまさか」
蓮美ちゃんが驚愕したように口をあんぐりと開けて私を見た。
「わかってるよ、バカだなぁって。でも、なんでこの石を選んだんだろうって、疑問に思い始めたら止まらなくなって」
「男が、石言葉なんか知ってるわけないじゃん!」
少し怒ったような顔で蓮美ちゃんが私を睨んだ。この反応はもうすでに、他の女友達から受けているので慣れてはいるが、流石に長い付き合いの蓮美ちゃんに睨まれると結構応える。蓮美ちゃんが憮然とした様子で腕組みをした。
「理央はもともと、髪が茶色っぽいから、オレンジとかブラウン、イエロートーンのものが似合うじゃない?だから、彼もそう思って、トパーズを選んでくれたんじゃないの?あんた、付き合って間もないバレンタインデーに、そんな高価なプレゼントくれる男、そうそう居ないわよ?!」
「まぁ、そうかもだけど、、、でも、冷めてしまったものは、どうしようもないでしょ。自分の気持ちを偽って付き合うなんて、相手にも失礼だし」
「身も蓋もない言い方!正直者もここまでくると泣けてくるレベルね」
大きく溜め息をついた後、蓮美ちゃんは諦めたように苦笑いした。
「そんな男、もったいないなーと思うけど、たかが石の種類で冷めてしまうってことは、ま、残念ながら、それだけの相手だったと思わずにはいられないかもね……」
「さすが、蓮美ちゃん。わかってくれて、嬉しい」
ほっとして笑顔で彼女を見たが、彼女は難しい顔でじっと私を見つめた。
「理央って、名前だけじゃなくて、どこか女らしさに欠けてるよね」
「えー……」
何を言い出すんだ、とムッとしていると、蓮美ちゃんは真剣な目で、私を上から下までチェックした。
品定めされている感じで居心地が悪く、思わず肩を潜めてしまう私。
やがて、蓮美ちゃんが困ったように眉を潜めた。
「見た目、だ、け、は完全に女ね。外見は、ひいき目なしで、ランク的には、中の上」
「はぁっ?」
「ただし、その性格が、普通と違う。いや、普通っていうのは曖昧すぎるか。言ってみれば、男を思いやる優しさが、欠けている」
「うわ、そこまで断定するの?!」
あまりの言われようにさすがにショックを受けた。
「蓮美ちゃん?私だって、思いやり、あるよ!何を根拠に、そんなこと言うの?」
「あんたが、友情に厚いことは知ってる。でも、相手が男だと、違う」
女性としての基本的なところを否定されたような気がして動揺した。
蓮美ちゃんはうろたえている私をじーっと見つめ、悲哀に満ちた表情を浮かべて、小さく溜め息をついた。
「ロサンゼルスでも同じだった。日本の実家の老犬が死んだからって落ち込んでいる理央に、犬くらいで落ち込むなって、映画に連れ出そうとした彼氏を、その場でフった話があったよね」
「あ、あれは、だって、たかが犬、みたいな言い方されて、なんて冷たい人だろうとショックを受けて」
「そこが、あんたの思い込みってやつ」
「思い込み?」
「彼はきっと、なんとか理由をつけて理央を励まして、外へ気分転換へ連れ出そうとしてそういう言い方をしたと思うんだよね。その、心遣いを察することもなく、その場で別れるってことが、心が狭いっていうか。しかも、別れるにも、もっとましな方法がありそうなのに、あんたの場合は、その瞬間に実行するという、思いやりや優しさに欠けた行動に走る」
「……」
「別の彼氏が、試験に落第して落ち込んでいる時も、なにかしてやればいいって分っていながらも、放置。言い訳は、どうやって励ませばいいのかわからないから」
「……だって、変な事言って逆効果だったら」
「相手が明らかに弱っている時に、彼が強がって、俺は全然平気だ、と言ったら、理央は、あっそう、とそのまま放置するじゃない?普通なら、強がらないで、私を頼って!とか優しく声をかけるもんでしょ」
今までの私の遍歴を全て記憶している蓮美ちゃんもある意味すごい。
言い返せないでいる私を見て、大げさに溜め息をつく蓮美ちゃん。
「そのトパーズの彼の時も、きっと、受け取ったペンダントをそのまま突き返して、別れましょうって言ったんじゃないの」
「……」
図星を突かれ、言い返す言葉もなく沈黙する。
反論せずに、自分の膝を見つめている私をじっと凝視した後、蓮美ちゃんはやれやれ、と言うように苦笑した。
「反論してこないところを見ると、ドンピシャだったわけだ!」
「……降参」
私は苦笑いして両手を挙げた。
言い返す言葉もない。
確かに、やり方的には最低だ。
でも、その瞬間に自分の気持ちに気がつくと、自分を騙して付き合い続けることは出来ないのだから仕方がない。女友達連中には、それくらい我慢しろとか、そんなの、誰でも通る道だとか、いろんなことを説教されてきた。そんなことを繰り返しているうちに、もう彼氏なんて出来ないまま時だけが過ぎて行くかもしれないよ、とまで言われた。
「わかってる。わかってるんだけど、自分に、嘘をつけない。心がないのに、何食わぬ顔をしてデートなんか、出来ない。相手にも、悪いなって思っちゃうから」
「バカ正直っていうのかな。私も、そこは好きなんだけどね。でも、恋愛となると、時には耐えなきゃいけないことや、自分の気持ちを後回しにしないと、うまくいかないこともあると思うよ」
恋愛を成就させて、きちんと結婚、出産までしている先輩の言葉は説得力があって、私も神妙に頷く。言われていることは、最もだと思う。
大人しく説教を聞いていると、やがて蓮美ちゃんが沈黙した。
どうしたんだろうと思って彼女を見ると、何やら腕組みをして考え込んでいる。
ふと時計を見ると、もう、9時半になっていた。
そろそろ帰った方がいいだろう。
「蓮美ちゃん。そろそろ帰るよ」
私はソファから立ち上がった。
蓮美ちゃんは頷いて立ち上がり、そして私の肩を勢いよく2回叩き、機嫌よく笑顔を浮かべた。
「週末、庭でBBQするから!」
「庭?ここ、3階じゃない?」
「少し離れた所に、庭っていうか、畑みたいなとこ借りてて、そこに小さなガーデンハウスがあるの。日本で言う、家庭菜園みたいな感じで、誰でもレンタル出来るから、うちも小さいスペースを借りて、野菜や果物、花とか植えたりしてるんだ。泊まることは出来ないんだけど、天気のいい時はそこでBBQしたりするの」
「ふうん、すごいね!一階に住まなくてもお庭が別にあるなんて!」
「そう、だから週末にそこで」
蓮美ちゃんは、なにやら楽しそうに目をキラキラさせて私の顔を覗き込んだ。
「あんたのために、独身男を呼んであげるから」
「えっ」
びっくりして蓮美ちゃんを見ると、彼女はいつの間にか手にした携帯を見下ろし、コンタクトリストをスクロールしている。
「急だから、呼びつけてもせいぜい、1人、2人くらいしか来れないかもだけど、一応、フリーの独身に声かけとく」
「ちょっと、そこまでしなくてもいいんだけど……」
いきなり合コンまがいのBBQをセッティングされるとなると、流石に私も戸惑う。
「思いやりに欠ける理央相手でも、ひるまないような図太いヤツ、いたかなぁ……」
独り言のようにそう言いながら、コンタクトリストをチェックする蓮美ちゃん。
「そんな、無理しなくていいよ……」
せっかくの好意を踏みにじるようで断りにくいが、私もまさかベルリンに来てまで合コンするとは思っていなかったから、正直、そんな急に心の準備も出来ない。
「なに、弱気になってるのよ。別に、彼氏募集中の子ですって言わないから。単に、日本からシングルの友達が来てるよって、言うだけ」
「思いっきり言ってるじゃない!シングル、って修飾語を付ける時点で、彼氏募集中ですって言ってるようなものじゃない!」
「あ、そっか。じゃ、普通に、友達が来てる、だけにしとくから」
「もう……」
「理央に、拒否権はないからね。せいぜい、お洒落して来なさい。これは、命令」
「えー」
「返事は!」
ぎろりと強い眼力で睨まれる。
メガネごしでなく、大きな裸眼で凄まれるとかなり応える。
私はその迫力に負けて、しぶしぶ頷いた。
「……わかりました。ご好意に甘えて、お願いします……」
蓮美ちゃんは目を細めて、満足げな笑顔で頷いた。
「それでいいの!ものは試しってやつ、深く考えないこと!もっと気楽に!」
「あ」
蓮美ちゃんの言葉に、ふと、ヴィクターの言葉を思い出した。彼も、気楽に考えなよ、と繰り返し言っていたっけ。
私が何かを思い出したように黙ったので、蓮美ちゃんがそれに気がついて聞いて来た。
「なにか思い出したの?」
「あ、うん、そういえば」
私はすっかり食事の間に忘れてしまった、ヴィクターの件を説明した。朝、泥酔男だと思っていたヴィクターに転ばされ、午後には彼と一緒にカフェに行き、明日は夕方から観光を一緒にする約束をしてしまったこと。
その話をすると、蓮美ちゃんは面白そうに目を丸くして、笑い出した。
「いいじゃない、そうだよ、そのノリでいいと思う!」
「ノリっていうか、よくわからないんだけどね。初対面だけど、クラスメートか同僚みたいな感じで、緊張感もなにも感じない相手だし」
「あ、そうなんだ。ってことは、恋愛対象にはならないって感じ?」
ちょっとガッカリした様子で聞かれて、私は吹き出した。
「そんな目で見てないよ。最初に話したの、ゴミ箱の前だし。やっぱり、恋愛に発展するのって、そういうきっかけになる瞬間があるんじゃない?少なくとも、ゴミ箱の前で出会った相手にときめくことはなさそう」
「ゴミ箱ねぇ、、、確かに、出会いの場は、もう少しロマンティックでありたいかも」
蓮美ちゃんは肩をすくめて笑った。
「ま、とにかく、妙に難しく考えず、自然体で過ごしてみる事!BBQは土曜日にやるから、詳細が決まったらメールする。メールはチェック出来るんでしょ?」
「うん、iPad持って来てるから、アパートのWifiでメールはチェックしてる」
「オッケー。じゃ、土曜日!風邪引かないようにね、ほら」
蓮美ちゃんは、ソファにかけてあったオリーブグリーンのカシミヤスカーフを取って私の肩にかけてくれた。
「もう、外は寒いから、私のお気に入りを貸してあげる」
なんだかんだ言って、とっても思いやりのある蓮美ちゃん。
私はふんわりと私の肩を包み込む温かいスカーフに手を触れて、ちょっとだけ胸が苦しくなった。こんな優しさを、なんの戸惑いも無く人に見せてあげられる素晴らしさ。
私はどうしても、こういう時に怯んでしまう。
誰かに優しくしてあげたい、と思っても、それを実行する勇気がなかなか出て来ない。
どうしてなんだろう。
蓮美ちゃんは、こんなに自然に、誰にでも簡単に優しい心遣いをしてくれる。
私には、どうして難しいんだろう。
私だって、困っている人に、優しさを与えることは出来る。
勿論、友達や家族にも、いつだって優しくしてあげられる。
ただ、それが、彼氏になると……どうしても、優しくしてあげたいと思った時に、逆に突き放してしまう私。
蓮美ちゃんが言う、私の問題点。
彼氏に対する優しさの欠如、はきっとこのことだ。
私の本質が見えている彼女を、騙すことは出来ないだろう。
「さ、あまり遅くならないうちにね。女の夜の一人歩きは、せいぜい10時までってとこだから」
「うん、大丈夫!今日は、ご馳走様でした」
廊下のほうへ歩いて行くと、ベッドルームから目をこすりこすりペーターが出て来る。身長が190cmを超える長身のペーターの顔を見ようとするだけで首がおかしくなりそうだ。
「寝かしつけているうちに、自分まで寝てしまった」
欠伸をしながらそう言って笑うペーター。
くるくるカールしているブロンドの髪に、寝癖がついていて、私と蓮美ちゃんは顔を見合わせて笑ってしまったのだった。




水曜日は昼前から私は電車に乗り、シュプレー川沿いにあるイーストサイドギャラリーという、オープンギャラリーへ行った。ベルリンの壁が崩壊した後に、100人以上のドイツ内外のアーティストが描いた約1.3kmのベルリンの壁は、現在は文化財として保存されている。ユートピア、自由をテーマに描かれた作品の上に、心ない人の落書きがあったりして、がっかりした。
そして、この壁が西と東を分断して居た時に、多くの人々が命を落としたその場所だという重い事実と、今こうやって自由気ままに生きている自分を比較して、何故だかものすごく情けない気持ちになってしまった。
今は、交通量の激しい道路の隣に佇むその壁が見て来たもの。
生きるため、幸せになるために、命をかけてこの壁を乗り越えようとして亡くなって行った人々。
それに比べて、私はどうだろう。
よくわからないエゴに捕われて、自分の彼氏にさえ優しくできないという、ちっぽけな人間。
全然、一生懸命生きていないじゃないか!
平和な日本に生まれて、命がけ、なんてことを考えることもなく、平々凡々と生きて来た。
結婚して、子供を生んだら、きっと変わる。
子供の為なら死ねる、と家庭持ちの友達が言っている。
でも、子供云々の前に、自分と家庭を築いてくれる相手を見つけないとどうにもならない。
それに、命がけ、の意味を知るために子供を生みたい、なんてこと、許される発言じゃない。
私ってやっぱり、どこか変!
私には、何かが欠けているっていう蓮美ちゃんの言葉は、きっと間違っていない。
その欠けている何かを、私は見つけたいんだ。
ひとつだけ、この旅行に出た意味を発見する。
イーストサイドギャラリーで凹んだ気持ちの中、ひとつだけ大事なことに気がついたことを嬉しく思いながら、再び電車に乗ってアパートへと戻る。
約束したんだかどうだかはっきりと自覚はないけれど、4時に柵の前、と指定されたからには、やっぱり私も同意したことになっているだろう。
結局、どこに行きたいとか全然決まってない。
どうしよう?
アパートに戻ったら、ガイドブックをもう一度開いてみよう。
そんなことを考えながら、アパートの階段を上って行くと、昨日、ヴィクターが寝ていた階の踊り場が視線の先に見えて来た。そういえば、この3つある扉のどこが、ヴィクターの部屋だったんだろうか。
茶色の玄関マットを枕にしてたから、やっぱりこの、中央の部屋?
と、そう思ってその踊り場へ辿りついた時、ガチャと音がして、私が眺めていた扉が開いて、1人の女性が出て来た。彼女は私を見ると、にこっと微笑んで「ハロー」と言いながら扉を閉めて鍵をかける。私も、「ハロー」と言いながらその踊り場を通り過ぎて上へ続く階段へと向かう。
もしかして、彼女はヴィクターの彼女ではないだろうか?
見た感じ、どことなくスペインやイタリアの人に見える。長いダークブラウンの髪を後ろでひとつにきちっとまとめて、ランニングに行く様な、ホワイトの上下ジャージとピンクのナイキのスポーツシューズ姿だ。
なんとなく不思議な、狐につままれたような気分で、自分のウイークリーアパートへ戻る。なんだかよく分らないけれど、恐らく二人は同じアパートに住んでいるんだろう。
もし、あれが彼女だとしたら、ヴィクターが私の観光に付き合うとかいうの、変なんじゃないだろうか?
いや、でも、欧米だと、男女間でも普通に友人関係として、彼氏彼女とは関係なく出歩いたりすることもあるし?
私とヴィクターが友人という関係と呼んでいいのかも定かではないけれど。
ま、でも、あのアパートがヴィクターの住む部屋だと決まった訳でもないし。
考えたところで何も全く分らないので、そのことは本人に聞くことにして、ベッドに寝転んでガイドブックをめくる。
いろいろ見ているうちに、何が見たいのかますます分らなくなってしまった。
ガイドブックの本を閉じると、表紙の写真に目が留まる。
うん、コテコテの観光名所に行く事にしよう。
表紙に印刷されていたのは、ベルリンのランドマークと称される、地上368mとヨーロッパ随一の高さを誇るテレビ塔。飛行機は大丈夫だけどこういう高所は苦手という、ちょっと変な高所恐怖症の私には、その展望台に上る事は不可能だけど、せっかくだから実物をこの目で見て、写真を撮ってみたい。
ガイドブックにある写真だと、スティックにミラーボールが突き刺さったような、面白い形のようだ。
場所も、アレクサンダー広場という観光客が必ず訪れる場所らしいし、せっかくベルリンに来たなら、そういう所も見ておいた方がいいだろう。
行く場所を決めて少しほっとする。
時計を見ればもう後10分で4時になる。
私は慌ててキッチンへ行くと、ミネラルウォーターをグラスに入れ、駅のキヨスクで買って来た、クロワッサンをバッグから取り出す。お昼代わりに駅で買ったのだが、イーストサイドギャラリーで気分が降下して食欲を失い食べ損ねていた。夕食タイムまでまだ数時間あることを考えたら、空腹のまま出かけるのはよくないだろう。
ものの3、4分でそのクロワッサンを食べると、蓮美ちゃんに借りているオリーブグリーンのスカーフを首に巻いて、玄関へ行く。昼間はスニーカーだったけれど、少し肌寒い風が吹き始めたので、ブラウンのロングブーツを履く事にして、ジーンズを中に押し込みジッパーを上げた。ヒールが2cmくらいしかないので、長時間歩く時には便利でとても重宝している。
アパートを出て、ゆっくりと二つの鍵を締めて戸締まりの確認をすると、階段を下り始めた。この時間帯は人の出入りも少ないのか、他の誰の気配もなかった。
下に降りて中庭を通過し、誰ともすれ違うことなく表に出る。
柵のところへ来て、時計をみると、3時58分。
本当にヴィクターは現れるのだろうか?
いや、外国人は大概、日本人より時間にルーズだったりするから、遅れて来ても不思議はない。
基本的に待たされる、ということがとても苦手な私。
いや、正確には、彼氏に待たされる、というのがどうしても耐えられない。
デートの時に、10分待っても、連絡もないとか言うときは、もう待てずにその場を離れてしまう。そして、大抵、それをきっかけに別れてしまう。
女友達だったら、平気で1時間でも待ってしまうのに。
ちなみに、男でも、同僚とか、昔のクラスメイトであれば、平気で30分くらいは待てるし、怒ることもない。
付き合っている彼氏に対してだけ、忍耐力がない。
それは多分……不安になってしまうからだ。
相手の誠実さを、待ち合わせ時間を守るかどうかだけで判断してしまう私。
女友達にその話をすると皆、口を揃えて真逆のことを言う。
彼氏だったら、何時間でも待つ、と。
連絡がなければ、何か事故やトラブルに巻き込まれてないか、心配する、と。
やっぱり、私は感覚がおかしいのかもしれない。
そんなことを考えつつ、柵に寄りかかって空を見上げていると、少し遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。
「リオ!こっち」
声のするほうを見れば、駅の方面からこちらへ向かって来る途中で立ち止まり、私に手招きをしているヴィクター。
電車で出かけるならもう一度駅に戻る訳だから、彼がわざわざアパートまで戻るより、私があちらへ行くほうが理にかなっている。
私は柵から離れて立ち止まっているヴィクターのほうへ歩き出した。
ネイビーブルーのパーカーにブルージーンズと軽装のヴィクター。屈託の無い笑顔でこちらを見ている様子は、まるで大学のキャンパスに居る学生のようだ。人と会う必要のない仕事だと、こういうカジュアルな格好で仕事に行けていいなぁと思う。私は、たまに来客にお茶を出したりすることや、会議に参加することもあるから、スーツとまではいかずとも、それなりにきちんとした服装で仕事をしなくてはならない。
「ハロー」
近づいてそう声をかけると、やぁ、リオ、と返事をしながらすぐに駅のほうへ歩き始める。
「どっか行きたいところ、考えついた?」
すでに駅のほうへ歩きながら、ヴィクターが私に聞く。
「うん、せっかくだから、テレビ塔をこの目で見たいと思って」
「テレビ塔?」
ヴィクターが苦笑いした。
信号が赤になって立ち止まる。
「俺の職場、テレビ塔の近く」
「え、そうなの?なんか悪いね。それだと。同じ所に戻ることになるし……他の場所にしようか」
「いや、いい、気にしなくても。確かに、観光客は一度は目指す場所だし」
「でも」
「いいって!」
笑顔でそう言うと、ヴィクターはポケットに手を入れて何かを取り出した。私の目の前で手を開いてみせる。
「キャンディ?」
透明なセロハンに包まれた、赤、黄色、オレンジ色の小さなキャンディ。
「今日、ランチで日本の寿司屋に行ったんだ。支払をすると、いつもお釣りにキャンディが添えられてて。ひとつ、どう?」
「うん、ありがとう」
少し迷って、赤い色のキャンディを選んだ。
透明のセロハン紙からそのキャンディを取り出して口に入れると、柑橘系のすっぱい味がして、多分、これはアセロラとか、すももとか酸っぱいフルーツのキャンディだ。色合いからしててっきり、苺味だろうと思って甘ったるい味を予想していた自分が可笑しくなる。
レモン色のキャンディを口に入れながら、ヴィクターが通りの向こうを見て笑顔で片手をあげる。そちらを見れば、さっき踊り場で見た、スポーティな服装の女性がランニングしていて、こちらを見て笑顔で手をあげていた。
「あの人は?」
つい、質問がすぐに出て来て、言った後に、失礼だったかなと後悔する。
私の悪い所だ。
気になることや、疑問に思った事があると、その質問をしていいのかどうか考える以前に、勝手に口から出て来てしまう。
私の遠慮もない質問に特に不思議な顔をすることもなく、ヴィクターは笑顔で応える。
「サビーナ。もと彼女で、現ルームメイト」
「へぇっ」
思わず驚きの声が出てしまい、慌てて手で口を塞ぐ。
駅の階段を先に下りながら、ヴィクターが私を振り返って笑う。
「ま、変な感じなのは確かだけどね。アパートの契約と家賃の関係で、お互い仕方なく同居続行中って感じなんだ。でも、部屋も冷蔵庫も別々で、家賃もきっちり折半。年末をめどに、やっとそれぞれ別のアパートに引っ越す予定でさ」
「ふうん、複雑そうでも、結構うまくいくものなんだね!」
心底感心してそう言う。
別れた相手が現ルームメイトなんて、私から見たら奇跡みたいな状態だ。
でも見る限り、二人の関係は良好な友人関係らしい。
ってことは、二人の別れ方は平和なものだったということだろう。
ヴィクターが電車の電光掲示板を見上げた。
「あと、2分か」
そう呟いて、視線をこちらへ戻すと、興味深げにじっと私の顔を眺めた。
その顔立ちが、昔実家で飼っていたコリー犬のジョニーに似ているなと思って見ていると、ヴィクターが数回、瞬きをして笑う。
「君は日本人の割には物怖じしないね」
「あ、ごめんね。たまに、思慮に欠けるって言われる……気をつけるね」
「悪い意味じゃないから、気にする事ないって」
ヴィクターはクスクス笑いながら、反対側のプラットホームのほうに目を向ける。
「俺のオフィスにいる日本人、殆ど話した事ないんだ。挨拶くらいで、あまり話しかけると困った様な感じで逃げて行くし、あっちから話しかけて来ることないし、シャイなお国柄かと思ってた」
「うーん、私もそういうところは有るんだけど……単に、性格的な違いもあるし、日本人もいろいろだよ。地域によっても違って来るし」
「なるほどね。確かに、言えてる。ドイツ人もいろんなヤツがいるし、国籍が同じだからと言って、性格や考え方まで同じとは限らないね」
「そうだね」
私も納得して相づちを打った。
その時、お日様の光に反射して何か金色に光るものが目の前を飛び、その眩しさに左手で視界を覆う。そしてゆっくりと手を下ろすと、そこに何かを感じた。左手を見ると、小さなテントウ虫が甲に貼り付いて、透明なグレーの羽を、奇麗な赤に黒い斑点がついた甲羅の下に収納しながら、チマチマと歩いている。
「そういえば、金曜日」
隣で電車の来る方向を見ているヴィクターが言う。
「夜に、友達が集まってちょっとしたパーティをするから、顔だしなよ」
「パーティ?」
テントウ虫が一生懸命、私の手の甲を歩いているのを眺めつつ、聞き返した。
ヴィクターがこちらを振り返って、私の手の甲のテントウ虫に気がついて、笑いながらその虫が歩くのを見る。テントウ虫はチマチマと動いて、私の薬指あたりで立ち止まり、しっかりと踏ん張っている。まるで、真っ赤なルビーの指輪のように、ちょうどいい場所で止まっているのがかわいい。
「今日、ランチしたヤツ、日本語も喋るんだ。俺はそいつが日本語を喋るのを見た事ないから、是非とも君に会わせてみたい」
「へぇ、日本語をしゃべる人がいるんだ!」
驚いて思わず声を上げたら、その瞬間に私の手からテントウ虫が飛び立った。
見上げれば、夕暮れ色に染まり始めたお日様の光の中に消えて行くテントウ虫。
小さい影になって消えて行くそれを見ていたら、ガタンゴトンと音がしてプラットフォームへ電車が入って来たのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

思い出のチョコレートエッグ

ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。 慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。 秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。 主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。 * ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。 * 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。 * 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以
恋愛
 T&Nグループ改革から一年。  T&N観光の副社長である咲《さく》の第二秘書として働く伊織《いおり》は、自身の兄で咲の先輩でもある蓮《れん》が社長を務めるデザイン事務所『SIINA《しいな》』に潜入する。  潜入初日、伊織は幼馴染で初恋の相手・圭《けい》と四年振りに再会する。  圭もまたT&N開発の専務で咲の夫・蒼《そう》の指示でSIINAに潜入していた。  伊織は仕事《ミッション》の妨げにならないようにと圭を突き放すが、圭は執拗に伊織を求める。  「俺が欲しいのはお前だけだよ」  「もう身体だけじゃ満足できない--。今度こそお前の心を手に入れる」  互いの身分と目的を知らない二人は、近づけば近づくほどに互いを疑い、すれ違う。  極秘情報売買を調査する伊織。  横領事件を調査する圭。  互いの計画と、伊織と圭の関係を知った咲と蒼は、もう一つのミッションを仕掛ける――――。  咲と蒼、伊織と圭、それぞれのミッションの行方は……?

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

処理中です...