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黎明の革命
第4章 「恩義の代償 ― 揺れる長門
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第4章 「恩義の代償 ― 揺れる長門」
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◆ 宇部、秋吉台に突入す
2065年・晩秋。
長門国北部、秋吉台――。
かつて観光地として名を馳せたその石灰岩の台地は、いまや武装ゲリラ集団「白霞隊」の根城となっていた。住民は怯え、政府は無力。長門は内から崩れかけていた。
そのとき動いたのは宇部だった。
事前通告もないまま、宇部軍の偵察部隊が秋吉台に潜入し、続けて主力部隊がゲリラ拠点を包囲。情報戦と心理戦を駆使し、犠牲を最小限に抑えて、「白霞隊」主力を壊滅させることに成功した。
この作戦は宇部単独で遂行された。
長門に協力を求めることなく、しかも見返りも要求しないまま、宇部は一方的に「秩序回復」を実現してみせたのだった。
⸻
◆ 長門、政庁の衝撃
この報告が長門政庁に届いたとき、閣僚たちの反応は二つに割れた。
ある者は驚愕し、ある者は憤怒した。
⸻
桐山誠司(統領)
温厚な人格で知られる統領・桐山は、報告を受けたときしばらく沈黙していた。
彼の手元には、秋吉台の戦闘後に住民から寄せられた感謝の声が添えられていた。
「……我々が、なすべきことを、宇部がやったのか。国民は誰に感謝すべきか、もう分かってしまっている」
桐山は、自分の無力をかみしめていた。だがその表情は怒りではなく、深い苦悩と決断の色を帯びていた。
⸻
岩永芳武(軍務参謀)
激しい口調で会議室に怒声が飛ぶ。
「なぜ、我が軍を通さず勝手な軍事行動を!これは明確な越境行為だ!挑発と変わらん!」
岩永は一貫して宇部への警戒を訴えてきた。
彼にとってこれは、軍の威信を揺るがす屈辱だった。
「このままでは、宇部に“守られた”という印象だけが民に残る。軍の士気は地に堕ちたぞ」
⸻
南智子(外務局長)
一方、南智子は冷静に状況を読み取っていた。
「これは……“恩”を与えることで、こちらからの動きを封じた。つまり、“借り”を負わせる戦術です」
南は、宇部外務官・真山貞信のやり口を見抜いていた。直接的な支配ではなく、“救済者”として現れることで、長門の政治的主導権を掌握しようとする宇部の外交戦略――それが透けて見えた。
「だが、“恩義”という名の首輪を、我々が自らかけるわけにはいかない。ここからが外交の勝負です」
⸻
◆ 宇部からの提案と長門の回答
宇部共和国は正式な書簡にて、**「秋吉台掃討はあくまで国際公共善として行ったものであり、見返りは一切求めない」**との立場を示してきた。
だがそれこそが、長門にとっては最大の圧力となった。
「見返りを求めぬ施し」ほど、重いものはない。
⸻
会議における南智子の発言
「このまま放置すれば、民衆の心は宇部に傾く。恩に報いず、恥をかくのはこちら。ならば、我々から同盟を申し出るべきです」
「我々は“救われた”。だがそれは、決して屈したわけではない――この姿勢を示す必要がある」
桐山は深く頷き、静かに言った。
「真の外交とは、恥を忍び、誇りを守ることだ。智子――準備を進めてくれ」
⸻
◆ 長門から宇部への同盟申し入れ
数日後、長門国政府は正式に宇部共和国に対し、「対等な軍事・経済同盟」の締結を打診した。宇部の戦果を称えつつも、あくまで主権国家同士の対話を貫く文言が並べられていた。
この外交文書には、こう記されていた。
「我々長門国は、宇部共和国が示した勇気と行動力に深い敬意を表するとともに、貴国の善意に対して相応の礼節をもって応じたいと考える」
⸻
その頃、遥か東――
岩国連邦の情報部は、三国の接近に神経を尖らせていた。
「……下関、長門、宇部。なるほど、“西日本連合”か。戯言だ。叩けば潰れる」
だが、動き出した秩序の芽は、容易に摘めるものではなかった。
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◆ 宇部、秋吉台に突入す
2065年・晩秋。
長門国北部、秋吉台――。
かつて観光地として名を馳せたその石灰岩の台地は、いまや武装ゲリラ集団「白霞隊」の根城となっていた。住民は怯え、政府は無力。長門は内から崩れかけていた。
そのとき動いたのは宇部だった。
事前通告もないまま、宇部軍の偵察部隊が秋吉台に潜入し、続けて主力部隊がゲリラ拠点を包囲。情報戦と心理戦を駆使し、犠牲を最小限に抑えて、「白霞隊」主力を壊滅させることに成功した。
この作戦は宇部単独で遂行された。
長門に協力を求めることなく、しかも見返りも要求しないまま、宇部は一方的に「秩序回復」を実現してみせたのだった。
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◆ 長門、政庁の衝撃
この報告が長門政庁に届いたとき、閣僚たちの反応は二つに割れた。
ある者は驚愕し、ある者は憤怒した。
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桐山誠司(統領)
温厚な人格で知られる統領・桐山は、報告を受けたときしばらく沈黙していた。
彼の手元には、秋吉台の戦闘後に住民から寄せられた感謝の声が添えられていた。
「……我々が、なすべきことを、宇部がやったのか。国民は誰に感謝すべきか、もう分かってしまっている」
桐山は、自分の無力をかみしめていた。だがその表情は怒りではなく、深い苦悩と決断の色を帯びていた。
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岩永芳武(軍務参謀)
激しい口調で会議室に怒声が飛ぶ。
「なぜ、我が軍を通さず勝手な軍事行動を!これは明確な越境行為だ!挑発と変わらん!」
岩永は一貫して宇部への警戒を訴えてきた。
彼にとってこれは、軍の威信を揺るがす屈辱だった。
「このままでは、宇部に“守られた”という印象だけが民に残る。軍の士気は地に堕ちたぞ」
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南智子(外務局長)
一方、南智子は冷静に状況を読み取っていた。
「これは……“恩”を与えることで、こちらからの動きを封じた。つまり、“借り”を負わせる戦術です」
南は、宇部外務官・真山貞信のやり口を見抜いていた。直接的な支配ではなく、“救済者”として現れることで、長門の政治的主導権を掌握しようとする宇部の外交戦略――それが透けて見えた。
「だが、“恩義”という名の首輪を、我々が自らかけるわけにはいかない。ここからが外交の勝負です」
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◆ 宇部からの提案と長門の回答
宇部共和国は正式な書簡にて、**「秋吉台掃討はあくまで国際公共善として行ったものであり、見返りは一切求めない」**との立場を示してきた。
だがそれこそが、長門にとっては最大の圧力となった。
「見返りを求めぬ施し」ほど、重いものはない。
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会議における南智子の発言
「このまま放置すれば、民衆の心は宇部に傾く。恩に報いず、恥をかくのはこちら。ならば、我々から同盟を申し出るべきです」
「我々は“救われた”。だがそれは、決して屈したわけではない――この姿勢を示す必要がある」
桐山は深く頷き、静かに言った。
「真の外交とは、恥を忍び、誇りを守ることだ。智子――準備を進めてくれ」
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◆ 長門から宇部への同盟申し入れ
数日後、長門国政府は正式に宇部共和国に対し、「対等な軍事・経済同盟」の締結を打診した。宇部の戦果を称えつつも、あくまで主権国家同士の対話を貫く文言が並べられていた。
この外交文書には、こう記されていた。
「我々長門国は、宇部共和国が示した勇気と行動力に深い敬意を表するとともに、貴国の善意に対して相応の礼節をもって応じたいと考える」
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その頃、遥か東――
岩国連邦の情報部は、三国の接近に神経を尖らせていた。
「……下関、長門、宇部。なるほど、“西日本連合”か。戯言だ。叩けば潰れる」
だが、動き出した秩序の芽は、容易に摘めるものではなかった。
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