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第二十一章 令和二年版『レイコ・スペシャル』
第百十回 もう少し、このアトリエで。
しおりを挟む……でも、そもそも何故、この場所にアトリエがあるのか、あったのか?
その理由は、僕にはわからない。
それは梨花にも、如何に情報通な可奈でも、きっとわからないことだろう。……令子先生とは中学生以来の大親友の瑞希先生。この人が浮かび上がるが、書くと読むの此の人のPN、IMさんの線から思考したとしても……代表作の『五十五色のエッセイたち』を読んでも手掛かりとなる事項、その素振りも謎のまま……深読みならば、
う~んと、頭を抱えても、頭の中だけでは解決に至らず、……少なくとも、令子先生と瑞希先生が出会ってからのプロセス及び、ヒストリーを知らなければ、到底理解できるはずもなく、残りのハーフハーフのタイム、如何様にするか、……謎については次の機会への持越しが濃厚……もはや決定に近くて、見送ることになりそうだと、そんな思考が過り始めの頃、目の当たり……視界の中心に、描かれている五十号のキャンバスが二種類。
そこからの手掛かりは思考の対象には、
……非ずで、僕はそこに描かれている絵として作品として純粋に、ただ純粋に見惚れていた。各々に描かれている天使たち……すると、耳元で、
「僕ね、千佳さんのこと、描きたくなったなあ……」と囁かれ、
それに反応する、――自分のようで自分ではないような音声、
……思わず出ちゃった。以前にも述べさせて頂いたのですが、耳元……特に耳たぶの裏の辺りは、とっても弱くて……あのね、変な声まで出ちゃうの。
「ち、ちょっと千佳さん?
ぼ、僕、何かしたかな? 顔もそんなに赤くなって大丈夫?」
そんな具合で、初めて見る動揺しまくりの令子先生。同じ女性なのに、しかも年上の御方なのに、『元祖ボクッ娘』まで披露するその模様が……とっても可愛く思えて。
「あ、あの……すみません。僕、耳元で囁かれるの、とっても弱いから……」
と、やっと声にしたものの、顔の火照りは取れないまま、
……そうだから、って、あれれ? ぎゅっと、ぎゅっと?
「君、何て可愛いの? ますます描きたくなったよ、君のこと。……また、また来てくれるかな? モデルになってほしいの、それから絵も描いてみない?」
――って、この上ないクラブの勧誘? 確かに『美術部』は、まだ此の学園に存在してないって……何の時だったかな? 可奈から聞いたことがあった。
でも、その前に、
「あ……あの、ホントすみません。お気持ちは嬉しいのですが、僕には、どうしてもやりたいことがありまして、実のところ、そっちに専念したく、近日中に演劇部を辞めようと思っておりまして……」
令子先生の、あまりの必死さには申し訳ないとの半面……多分、勧誘に関しては瑞希先生よりも上で……というよりも押しの強さ。大富豪のお嬢様特有のわがままぶり……
だからこそ、ハッキリと。
そう思うのも束の間――スパーン! と気持ちの良い音色。この場面に、その様な字幕が現れてもおかしくないほどだ。これぞ関西名物の『ハリセンチョップ』が炸裂した。
それは一瞬の出来事。今、僕の目の当たりで起きたこと。
「な、何で?」と、驚きを隠せない。それが証拠に、その驚きのあまり囁く程度の音声しか出せなかったようで、誰もその声に気付くこともなくて、そのまま「痛~い」と後頭部を両手で押さえる令子先生のリアクションの方が目立って、
「瑞希ちゃん、何でいるの?」
そうなの。今は他所の学校にいるはずの瑞希先生が、どうしてか此処にいるのだ。もう少しで僕と令子先生だけの秘密の場所になると思って……って、ええっ?
そうか。……そうなのかも。
五十号のキャンバスに描かれている天使の一人……その一人と、瑞希先生の面影が重なるのを垣間見た。もう一人は、令子先生のようで。――何故か安心感を覚える。
でも刻々と……この間に於いても時は流れている。瑞希先生の傍らに太郎君。
その前に、瑞希先生の返しの言葉から、
「令ちゃんが、可愛い子に手を出さないかって心配になったからだよ」と――。
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