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2章.妹君と少年伯は互いを知る
25.妹君は光に包まれた②
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眩い光が彼女から発せられた。
眩く、淡く金色に輝くそれは彼女を包み込んだかと思うと、古木へと放出される。ユリウスは思わず目を瞑った。
「リーゼ!」
ぼんやりと虚ろな瞳の彼女からは反応はない。
(これは……魔力……暴走……! このままでは……しかし金色の魔力など見たことが……)
ユリウスは首を振る。今は暴走を止めて彼女を助けることが先だ。
彼は意を決して、光の中に飛び込んだ。
必死に彼女の方へ手を伸ばすも、目も開けられない光の中では、どこに彼女がいるのか確認すらできない。
「リーゼ!……くそっ」
(他人を傷つける類の魔法ではない……それでもこの量の魔力を一気に放出したらリーゼの命が危ない)
腕を闇雲に動かす。
──思いがけず、何かに触れた。さらりとした絹糸のように細く、柔らかい──リーゼロッテの髪だ。
そう確信した彼は、髪が流れてくる方向へ一歩ずつ歩み寄り……その手を掴んだ。
「リーゼっ! 無事か!」
「……ユリ……ス……さま……」
とろん、とした表情の彼女を揺さぶるが、反応が薄い。その身体は熱く、譫言のように彼の名を呼び続けている。
胸から溢れた熱が彼女の全身を駆け巡る。
(ユリウス様の……ために)
ぼんやりとした意識の中、ユリウスの顔が浮かぶ。いつになく必死な形相の彼に、何故だかとても縋り付きたくなる。
(ユリウス様はお優しい方……)
だからこそ役に立ちたい。
これまでずっとユリウスたちの優しさに甘えてしまっていた。しかし彼女はそれを甘受していい立場でもない。
(甘やかされるだけでは……)
彼女はずっと受け身で生きてきた。
黙っててもらうためとはいえ、ディートリンデの不条理な要求を飲み続け、不遇な人生に声を上げることも諦めてしまった。流されるままに追放されて今に至る。
それらは全て、仕方がなかったわけではない。
自分が後ろ向きだったから成った結果なのだ、とリーゼロッテはここに来て考えるようになった。
ユリウスたちの好意にすら受け身でいるなど、今の彼女にはできなかった。
「ユリウス……さまの……ために……」
「……っ!」
彼は口をキュッと結んだ。今にも閉じられそうな青い眼に、いてもたってもいられずリーゼロッテを抱き寄せた。
ふわりと陽光のいい匂いが香る。
「ここに、……ここにいる」
(時間がない。私の魔力で押さえつけるしかない)
ユリウスは彼女を包むように魔力を発動させるが、うまくいかない。所々から金の光が漏れ、やがて完全に打ち破られる。
元の魔力さえあれば、と小さく舌打ちした。
(どうする……時間が……抑えられないなら身体から魔力を強制的に吸い出せれば……)
焦燥感に駆られながらも必死に考えを巡らせる。はたと、リーゼロッテの顔に目が止まった。
正確にはその、ふくよかそうな唇に。
(……いや、何を考えている)
一瞬掠めた考えを振り切ると、もう一度魔力で彼女を包み込むが、やはりすぐに破られてしまった。彼の額には汗がにじみ、呼吸が整わない。
「……リ……さ……」
「!」
彼女の力ない声が耳元に響く。瞳が閉じられ、その小さな身体から力が抜けた。
(まずい!)
とっさに抱きすくめる。熱を帯びた身体はくたり、と力なく落ちようとする。
(まだ息はある……)
しかしこうしてる間にも顔色が白く、生気が失われていく。
彼女の生命を削るように、彼らを囲む光が徐々に強さを増していった。
一刻の猶予もない。
ユリウスはその顔を暖めるように手を当てた。
逡巡するように眉間に皴を寄せると、大きく息を吐き出す。
「……すまない。こうするしかできない私を恨んでくれ」
彼は彼女の顔に影を落とすと、ゆっくりと躊躇いがちにその唇を重ねたのだった──。
眩く、淡く金色に輝くそれは彼女を包み込んだかと思うと、古木へと放出される。ユリウスは思わず目を瞑った。
「リーゼ!」
ぼんやりと虚ろな瞳の彼女からは反応はない。
(これは……魔力……暴走……! このままでは……しかし金色の魔力など見たことが……)
ユリウスは首を振る。今は暴走を止めて彼女を助けることが先だ。
彼は意を決して、光の中に飛び込んだ。
必死に彼女の方へ手を伸ばすも、目も開けられない光の中では、どこに彼女がいるのか確認すらできない。
「リーゼ!……くそっ」
(他人を傷つける類の魔法ではない……それでもこの量の魔力を一気に放出したらリーゼの命が危ない)
腕を闇雲に動かす。
──思いがけず、何かに触れた。さらりとした絹糸のように細く、柔らかい──リーゼロッテの髪だ。
そう確信した彼は、髪が流れてくる方向へ一歩ずつ歩み寄り……その手を掴んだ。
「リーゼっ! 無事か!」
「……ユリ……ス……さま……」
とろん、とした表情の彼女を揺さぶるが、反応が薄い。その身体は熱く、譫言のように彼の名を呼び続けている。
胸から溢れた熱が彼女の全身を駆け巡る。
(ユリウス様の……ために)
ぼんやりとした意識の中、ユリウスの顔が浮かぶ。いつになく必死な形相の彼に、何故だかとても縋り付きたくなる。
(ユリウス様はお優しい方……)
だからこそ役に立ちたい。
これまでずっとユリウスたちの優しさに甘えてしまっていた。しかし彼女はそれを甘受していい立場でもない。
(甘やかされるだけでは……)
彼女はずっと受け身で生きてきた。
黙っててもらうためとはいえ、ディートリンデの不条理な要求を飲み続け、不遇な人生に声を上げることも諦めてしまった。流されるままに追放されて今に至る。
それらは全て、仕方がなかったわけではない。
自分が後ろ向きだったから成った結果なのだ、とリーゼロッテはここに来て考えるようになった。
ユリウスたちの好意にすら受け身でいるなど、今の彼女にはできなかった。
「ユリウス……さまの……ために……」
「……っ!」
彼は口をキュッと結んだ。今にも閉じられそうな青い眼に、いてもたってもいられずリーゼロッテを抱き寄せた。
ふわりと陽光のいい匂いが香る。
「ここに、……ここにいる」
(時間がない。私の魔力で押さえつけるしかない)
ユリウスは彼女を包むように魔力を発動させるが、うまくいかない。所々から金の光が漏れ、やがて完全に打ち破られる。
元の魔力さえあれば、と小さく舌打ちした。
(どうする……時間が……抑えられないなら身体から魔力を強制的に吸い出せれば……)
焦燥感に駆られながらも必死に考えを巡らせる。はたと、リーゼロッテの顔に目が止まった。
正確にはその、ふくよかそうな唇に。
(……いや、何を考えている)
一瞬掠めた考えを振り切ると、もう一度魔力で彼女を包み込むが、やはりすぐに破られてしまった。彼の額には汗がにじみ、呼吸が整わない。
「……リ……さ……」
「!」
彼女の力ない声が耳元に響く。瞳が閉じられ、その小さな身体から力が抜けた。
(まずい!)
とっさに抱きすくめる。熱を帯びた身体はくたり、と力なく落ちようとする。
(まだ息はある……)
しかしこうしてる間にも顔色が白く、生気が失われていく。
彼女の生命を削るように、彼らを囲む光が徐々に強さを増していった。
一刻の猶予もない。
ユリウスはその顔を暖めるように手を当てた。
逡巡するように眉間に皴を寄せると、大きく息を吐き出す。
「……すまない。こうするしかできない私を恨んでくれ」
彼は彼女の顔に影を落とすと、ゆっくりと躊躇いがちにその唇を重ねたのだった──。
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