悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜

見丘ユタ

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4章.妹君と辺境伯は揺れ動く

126.リーゼロッテは騙される②

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 食事後、リーゼロッテは屋敷に横付けされた馬車に乗り込んだ。

 言われた通り、彼女が準備した真紅のドレスに身を包んでいる。

 ディートリンデと一緒に乗ろうと待っていたのだが、「少し遅れるから先に乗ってて」と言われたため、仕方なく乗り込んだ。

 後から何故かコルドゥラが乗り込み、御者が扉を閉める。

「それでは出発いたします」

「え……?」

 呆然としているうちに馬車は動き出してしまった。

(……まさか!)

「と、止めてください……!」

「お嬢様……?」

 コルドゥラが不審そうに、しかし「またか」とげんなりするような表情を向けてくる。

「まだディートリンデが乗っていません。止めてください!」

「……どういうことですか?」

 必死の訴えに、コルドゥラはやはり眉をひそめるだけだ。

 どうやらコルドゥラはディートリンデだと思っているようだ。

 それもそのはず、今日の格好はディートリンデとほとんど一緒である。

 違うところといえば、ユリウスからもらったバレッタをつけているところだが、はたしてそれで信じてもらえるか。

「私は……リーゼロッテです」

「……」

「信じてください、コルドゥラ……」

「……!」

 名前を呼ばれてはっとしたように、コルドゥラは目を見開いた。

 未だ進み続ける馬車の中に沈黙が落ちる。

 リーゼロッテは喉を鳴らした。

「……分かりました。信じます」

「それでは……」

 表情を明るくさせたリーゼロッテを一瞥すると、コルドゥラは抑揚のない声で答える。

「いえ、このまま目的地に向かいます」

「そんな……」

(早く帰らないと……)

 ディートリンデの企みが一体何なのかは分からない。

 しかし、妙な胸騒ぎがする。

 目に見えて気落ちした彼女に、コルドゥラは申し訳なさそうに頭を下げた。

「申し訳ございません、リーゼロッテ様。ですが先方に取りやめを連絡するにも遅すぎます。このまま向かい、途中で体調が悪くなったと事情を説明するのがよろしいかと」

 コルドゥラの冷静な説明に、リーゼロッテはやや釈然としないものを感じる。

(……誰かと約束している……? その身代わりに私を……? でも、誰に……?)

「この馬車はどちらに向かわれているのでしょうか……?」

「王城でございます」

「……!」

 王城、の一言にリーゼロッテは固まった。

 今までもリーゼロッテが身代わりにされることはあった。

 しかしそれは全て悪事の肩代わりだ。

 他人と会う時に身代わりになったことは一度もない。

 加えて、ディートリンデはフリッツとの逢瀬を楽しみにしていた節がある。

 そろそろ結婚するという相手の元に、身代わりを送るなど意味がわからない。

 言葉が出ないリーゼロッテを気遣うように、コルドゥラは口を開いた。

「……なるべく早く、屋敷に帰れるように尽力いたします」

「……ありがとうございます……」

 彼女の気遣いもむなしく、無理やり笑顔を作ったリーゼロッテの心は沈んでいく。

 ディートリンデと話し合わなければ、向き合わなければ、と思っていた。

 一緒に出かけるというのも、何か含むものがあるだろうとも思っていた。

 すんなりはいかないだろう、とも。

 しかしどこかでディートリンデも同じように、自分と向き合わなければならないと思っているのではと期待してしまった。

(悔しい……迂闊……でした……)

 リーゼロッテの瞳が緩やかに潤んでいく。

 まだ泣くわけにいかない。

 誤魔化すように首を振ると、彼女は前を向いた。

(ユリウス様……なにもないとよろしいのですが……)

 リーゼロッテの脳裏に、ディートリンデの妖しくも危うい笑みが思い浮かんだ。
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