悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜

見丘ユタ

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5章.妹君と辺境伯は時を刻む

163.リーゼロッテの当惑②

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 湯浴みが済んだリーゼロッテは神官に聖殿の中を案内してもらっていた。

 彼女の前を行く神官はヘッダと名乗った。

 空色の法衣に映える真っ青な髪をおかっぱに揃え、他の神官たち同様に表情の動きが乏しい。

 この聖殿で中堅に当たるのだろうか、リーゼロッテだけでなく他の神官に対しても常にピリついた雰囲気を纏っている。

(なんだか気恥ずかしいわ……)

 身体が透けるほどの薄衣の上に、聖殿に溶け込むような純白の長い法衣を羽織らされたリーゼロッテは頬をほんのり赤く染めた。

 湯浴みから今の衣装に着替えるまでずっと彼女が全て担ってくれていたのだが、生まれてこの方、ここまで至れり尽くせりにされたことなど無かった。

 王族やリーゼロッテより位が高く裕福な貴族ならば、湯浴みの全てを従者に任せることなど普通のことなのだろう。

 が、今までそんな経験などない彼女にとっては、他人に身体を洗われるなど羞恥の極みだった。

 さすがに身体の隅々まで見られた相手と気軽に会話などできそうにない。

 端的に聖殿内を案内するヘッダに無言でついて行くだけだ。

 その彼女が、とある部屋だけは素通りした。

 真っ白な聖殿の中で唯一、黒く重厚な扉の部屋だ。

 他の部屋は神官が時折顔を出し機械的に礼をするだけだったが、その部屋だけは屈強そうな女性の兵が扉の前に仁王立ちし、物々しい雰囲気を醸し出している。

 緩やかに時が流れる聖殿の中で、その存在は明らかに異質だ。

「あの……あちらは……?」

 躊躇いがちに前を行くヘッダに声をかけると、彼女はぴたりと立ち止まった。

 動作の一つ一つを丁寧に行うようにゆっくりと振り返った彼女は、微かに眉間に皺が寄せられている。

「……あちらは歴代国王の廟所びょうしょとなります」

「廟所……」

(ということは、あれはお墓……)

 リーゼロッテの呟きに、ヘッダは小さく頷いた。

「穢れが濃い場所となりますので、聖女様はお近づきになりませんよう」

「……わかりました」

 リーゼロッテの返事を待って、ゆっくりと身体を戻したヘッダは再び歩き出す。

 まるでその場から早く立ち去りたいとばかりに無言で歩みを進める彼女に、リーゼロッテは違和感を感じつつもついて行くしかなかった。
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