悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜

見丘ユタ

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5章.妹君と辺境伯は時を刻む

179.ユリウスは時を待つ①

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 騎士団の詰所で仕事に没頭していたユリウスは、ふと一枚の羊皮紙を認めると微かに口端を上げた。

(仲良くやっているようだな……)

 羊皮紙に書かれているのはリーゼロッテからの近況だ。

 聖殿に上がってから聖女マリーと話したことやエルたちとの再会などが、優しげで慎ましさを感じさせるたおやかな文字で綴られていた。

 ユリウスの身体を気遣う言葉で締められたそれに、彼女の細やかな心遣いが感じられて読むたびに彼は目を細めずにいられない。

 リーゼロッテと離れてからというもの、彼は仕事にかかりきりだ。

 彼の姿を見た使用人は「リーゼを忘れようとされているのでは?」と憐れみの目を向けてくるが、そうではない。

 彼は辺境伯だ。

 領地を疎かにするわけにはいかない。

 彼女を助けに行くその時までに、二、三日は彼がいなくても良いような体制を整える──彼はそのために働いていた。

(仕事は粗方片付いてはいるが……あとはいつが来るか、だな)

「ユリウス様、馬の準備ができました」

 いつの間にそこにいたのか、騎士団長が扉の前で敬礼をしていた。

「ああ、今行く」

 ユリウスは羊皮紙を懐に入れると席を立った。

 団長の先導で薄暗い階段を降りる。

 詰所はいつ来ても少し埃っぽいな、と咳払いをすると、前を行く団長が軽く笑った。

「……なんだ」

「いえ、英雄ユリウス様でもあんな表情するんだなとね」

「あんな表情……?」

 首を傾げたユリウスに、団長は肩をすくめた。

「自覚ないならいいですよ。でも女子供の前であんな顔されたら仕事にならないんで集中してくださいね」

 気安い口調で返した団長は、騎士には珍しく平民出身だ。

 先の戦争でユリウスの実力に真っ先に目をつけ、それを利用した作戦を見事に嵌らせた経験がある。

 戦術に長けている点を買われただけの平民と罵られることもあるらしいが、それを全部実力で黙らせてきた豪傑でもある。

 そんな彼に表情を指摘され、ユリウスはたじろいだ。

「……そんなにだらしない顔はしてなかったつもりだが……」

 気を引き締めるように顔に力を込めるユリウスを、団長は苦笑しながら見つめた。

 ──逆ですよ、逆。あんな別嬪な顔で笑ってたら女子供に囲まれちまって仕事にならねぇってんだ。

 などと考えながら。
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