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5章.妹君と辺境伯は時を刻む
216.王太子は認めない②
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ぎくり、とフリッツは身体を強張らせた。
彼女の言いたいことが分かったのか、周囲の者の視線が徐々に怒りを含んだものになるのを痛いほどに感じる。
実際彼を押さえる近衛兵たちの力が強まっていくのを感じたフリッツは、抵抗しながらも必死に言い訳を考えていた。
「そ…………………それは……」
「まさかわざと虐めさせてたの? なんのために?」
追撃のように核心を突いたディートリンデの言葉に、フリッツは再び唸る。
まさか『お前との婚約を解消するためにマリー迫害を見て見ぬ振りをした』などと言えるはずがない。
本音を漏らしかけた彼はそれを隠すため、声を荒げた。
「そ、そんなわけないじゃないか! 何を言ってるんだ! 私はずっと、マリーのそばにいた! お前がマリーを迫害しているのもこの目で見ている! 父上、このような大罪人の言葉、信じるのですか!?」
呪術を解除し、聖女の癒しを得たとはいえ、病み上がりの国王は、フリッツの喚き声が煩わしいのか黙って目を瞑っている。
何も言うつもりがないと受け取ったテオは、わざとらしく戸惑った風の声を発した。
「うーん、困ったねぇ。ディートリンデさんの言い分ではフリッツ、君の聖女迫害を助長させるほどの職務怠慢だということになるし……彼女を信じないとなると、四六時中マリーに付き添う君の目を掻い潜って誰がどうやってマリー様を迫害してたかって話になるんだよねぇ……それとも、迫害は君の嘘かな?」
「嘘なわけないでしょう!? 何言ってるんですか! マリーはそこの女に迫害されたのです! 私はこの目で確かに見ました!」
カッとしたフリッツは、自分が何を口走ったのか理解せぬままテオを睨みつける。
テオはおどけたように目を見開いて見せた。
「ああ、そう。見たんだ」
「はい!」
「見ててなんで止めなかったのかな?」
「……っ……そ、それ……は……」
フリッツは何か反論せねばと口を動かすが、意味のない音を発するだけだ。
彼はディートリンデのことを過信していた。
彼女が本当のことを言うはずがないと思い込んでいたのだ。
本当のことを言えば罰せられることは確実だからだ。
利己的な彼女が、捕まったところでさらに罪を重くするような真似をするはずがない。
意味不明の言葉も全て、変な言い逃れをしているに過ぎない、とフリッツは思い込んでいた。
だからこそ、一番マリーとの結婚を盛り上げられる時期まで彼女を生かしておくと決めたのだ。
生かしておいたところで自分を脅かす存在にならないから。
それらが全て、間違いだったということか──フリッツは沸き立つ怒りで顔を強張らせる。
ここにきて彼は、何故テオがディートリンデをわざわざここに呼んだかやっと理解した。
「見過ごした君も同罪だねぇ。ああ、見過ごした、じゃなくて止めなかった、が正解かな? だって彼女がマリー様を虐めるのを見たことがあるんでしょ? どうして王太子の権限を使ってでもその場でやめさせずに、パーティーで暴露するような事をしたのかな?」
「う……ぅぅ……」
もはや弁解することも叶わず、フリッツは兄の顔を睨みつけるしかできない。
よく似た顔に、全く違う髪色と瞳の色──生まれたその時から継承権が低いことが確定している負け組の兄に、自分は負けるのか──。
王太子の自分が負ける現実から目を逸らすように、フリッツは低く呻きながら俯いた。
彼の嗚咽にも似た呻きが響く。
彼女の言いたいことが分かったのか、周囲の者の視線が徐々に怒りを含んだものになるのを痛いほどに感じる。
実際彼を押さえる近衛兵たちの力が強まっていくのを感じたフリッツは、抵抗しながらも必死に言い訳を考えていた。
「そ…………………それは……」
「まさかわざと虐めさせてたの? なんのために?」
追撃のように核心を突いたディートリンデの言葉に、フリッツは再び唸る。
まさか『お前との婚約を解消するためにマリー迫害を見て見ぬ振りをした』などと言えるはずがない。
本音を漏らしかけた彼はそれを隠すため、声を荒げた。
「そ、そんなわけないじゃないか! 何を言ってるんだ! 私はずっと、マリーのそばにいた! お前がマリーを迫害しているのもこの目で見ている! 父上、このような大罪人の言葉、信じるのですか!?」
呪術を解除し、聖女の癒しを得たとはいえ、病み上がりの国王は、フリッツの喚き声が煩わしいのか黙って目を瞑っている。
何も言うつもりがないと受け取ったテオは、わざとらしく戸惑った風の声を発した。
「うーん、困ったねぇ。ディートリンデさんの言い分ではフリッツ、君の聖女迫害を助長させるほどの職務怠慢だということになるし……彼女を信じないとなると、四六時中マリーに付き添う君の目を掻い潜って誰がどうやってマリー様を迫害してたかって話になるんだよねぇ……それとも、迫害は君の嘘かな?」
「嘘なわけないでしょう!? 何言ってるんですか! マリーはそこの女に迫害されたのです! 私はこの目で確かに見ました!」
カッとしたフリッツは、自分が何を口走ったのか理解せぬままテオを睨みつける。
テオはおどけたように目を見開いて見せた。
「ああ、そう。見たんだ」
「はい!」
「見ててなんで止めなかったのかな?」
「……っ……そ、それ……は……」
フリッツは何か反論せねばと口を動かすが、意味のない音を発するだけだ。
彼はディートリンデのことを過信していた。
彼女が本当のことを言うはずがないと思い込んでいたのだ。
本当のことを言えば罰せられることは確実だからだ。
利己的な彼女が、捕まったところでさらに罪を重くするような真似をするはずがない。
意味不明の言葉も全て、変な言い逃れをしているに過ぎない、とフリッツは思い込んでいた。
だからこそ、一番マリーとの結婚を盛り上げられる時期まで彼女を生かしておくと決めたのだ。
生かしておいたところで自分を脅かす存在にならないから。
それらが全て、間違いだったということか──フリッツは沸き立つ怒りで顔を強張らせる。
ここにきて彼は、何故テオがディートリンデをわざわざここに呼んだかやっと理解した。
「見過ごした君も同罪だねぇ。ああ、見過ごした、じゃなくて止めなかった、が正解かな? だって彼女がマリー様を虐めるのを見たことがあるんでしょ? どうして王太子の権限を使ってでもその場でやめさせずに、パーティーで暴露するような事をしたのかな?」
「う……ぅぅ……」
もはや弁解することも叶わず、フリッツは兄の顔を睨みつけるしかできない。
よく似た顔に、全く違う髪色と瞳の色──生まれたその時から継承権が低いことが確定している負け組の兄に、自分は負けるのか──。
王太子の自分が負ける現実から目を逸らすように、フリッツは低く呻きながら俯いた。
彼の嗚咽にも似た呻きが響く。
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