この世界に生まれた理由。

雨音露乃

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第一章

この日のために。

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この日のために今日まで頑張ってきた。
この日のために、辛いことを乗り越えてきた。
今から私は自殺する。
部屋の片付けをし、掃除をして、家族への手紙を書いた。
「楽しくない人生だったなぁ。」
そう呟いて、私は椅子に乗り、縄に首をかけた。
皆、今までありがとう。そう心の中で思い、椅子を倒そうとしたその時、
ドサッ
「いてて、」
誰かが私の背中を押し倒した。両親や妹は旅行で明日まで帰らないはずなのに…
見渡すとそこには白い服を着た翼の生えた女の子が居た。髪の毛やまつ毛は白く、目は綺麗な青。肌は透き通るような綺麗な白い肌だった。
「天使…?」
思わず声が出た。天使なんているはずないのに…
「そう!私は天使!」
女の子が笑った。
「私をからかってるの?そんなの誰が信じるもんですか、」
思わず口調が強くなってしまった。でも本当にそう。天使なんて居るはずない。
「本当なんだけどなぁ……あっ!」
女の子がひらめいた表情をした。
「そうだ!これなら信じてくれる?」
そう言って女の子は大きな翼を広げて飛ぼうとした。でも私の部屋が狭いせいで壁に翼がぶつかり、飛ぶことが出来なかった。
「ありゃ、飛べなかった!あー!羽が沢山落ちちゃった、ごめんね!」
そう言いながら女の子は慌てて落ちている羽を拾った。私は落ちている羽を1本拾ってよく見てみた。その真っ白の羽毛は、確かに本物だった。さっきの翼の動きもとても偽物とは思えない。
「本当に天使なの…?」
私が恐る恐る言うと大きく頷いて女の子が答えた。
「うん!」
その目はとてもキラキラしていた。きっと、信じてくれた事が嬉しいのだろう。
「信じてくれてありがとう!」
「それより、貴方の名前は?」
「私は皆からももって呼ばれてる!元々の名前は忘れちゃったんだけどね、」
そう言ってももがクスクスと笑った。
「ところで奈美ちゃん、なんで自殺しようとしてたの?」
ももが優しい顔でそう言った。
「どうして私の名前を知ってるの?」
「そりゃそうだよ!だって神様がここに行ってって言ったんだから!」
「そうなんだ。」
少し訳が分からなかったけど私はそう言った。そして死のうとした理由をももに話す事にした。
「小学生の時、私転校したんだけど、その時1番仲がいい幼馴染の子にそれを話したら、急に冷たく接さられるようになったの。無視されたり睨まれたり。そして、お別れの時にも一言も話してくれなかった。それに、私には妹が居るんだけどね、お母さんは妹の方が好きみたい…」
「どうして?」
ももが心配そうな表情で尋ねる。
「一度私、妹と大喧嘩した事があるの。妹がお母さんの悪口を言ってたからカチンときちゃって、思わず手を出しちゃった。そしたら妹が大声で泣きだして、そしたらお母さんが慌てて来た。お母さんは訳も聞かずに「妹を泣かせるな、お姉ちゃんでしょ?」って私に怒鳴ったの。結局お母さんは私達が喧嘩した理由も知らない。
中一の時の部活の顧問だって私にばっかり怒ってたの。もっと盛大に大きくとか、笑っちゃうよね、こんなのに必死になって。結局私は誰からも好かれなかったんだ。転校先でも友達が出来ずに孤立して、私、誰かに愛されたかった。」
私の長い愚痴に、ももは嫌な顔一つせず、ただ黙って聞いていた。
「辛かったね。頑張ったんだね。」
ももがそう言った途端に、私の目には自然と涙が溢れていた。それを見たももは優しく微笑んで、私の頭を撫でてくれた。
「あのね、私がここに来たのには理由があるの!」
「理由って?」
腫れぼったい目を開いて私が問いかけると、ももが分かりやすく教えてくれた。
「私がここに来た理由は、貴方を過去へ連れて行くため!」
「は?」
私は訳が分からなかった。
「私の力で奈美を過去へ連れて行ってあげる!」
「そんな事出来るの?」
「できるんだなぁ」
ももがニヤリと笑った。
「今日の夜6時まで奈美の行きたい時代と場所へ連れて行ってあげる!」
「待ってそれ本当!?最高じゃん!」
私は嬉しすぎて舞い上がった。過去でやり直したいと何度も思っていたからだ。
「ただし、過去の人や自分に接したり話したりする事は出来ない。もちろん他の人から貴方が見える事はないわ。」
「え、じゃあ何の為に行くの?」
「過去に嫌な事があったって言ったでしょ?見るだけでも違って見えるかもしれないじゃない!」
「そんなの、また嫌な気持ちになるだけでしょ!?」
私は思わず怒鳴ってしまった。それでもももは落ち着いた表情で優しい顔をしていた。
「いいの?こんな体験もう二度と出来ないよ?」
私は悩んだ。確かに、もうこんな奇跡みたいな出来事がこれから起こるのなんて考えられないし、ももとも、もう二度と会えないだろう。
「やっぱり行く。過去の世界。」
私は悩みに悩んで答えを出した。
「わかった!」
ももがにっこりと無邪気な顔で笑った。
「じゃあ、何月何日のどこに行きたいとか希望ある?」
私は戸惑った。何月何日に何をしたかなんて覚えてなかったからだ。
「あっ!」
私は、つい先週まで毎日日記を書いていた。机の上には、8つ日記帳が置いてある。それぞれ小学校1年生からの1年ずつの日記だ。私がまず手に取ったのは、小学校3年生の時の日記帳。私はページを1ページずつ読む。とても下手な日記の書き方だったが、何故だか涙が溢れて止まらなかった。
「何かその時代に嫌な思い出でもあったの?」
ももが心配そうな顔で問いかける。
「ううん、とても楽しかったの。昔は田舎に住んでたの。3年生の夏休みに近所の子達と皆で川で遊んだり、秘密基地を作ったりしたの。その時に戻りたくなっちゃって…」
「そっか。じゃあ3年生の時の夏休みに行くことにする?」
私は泣きながらこくりと頷いた。するとももが両手で私の手を握った。そして呪文を唱えた。
「夜桜奈美を美しき過去へ戻せよ。」
そうももが静かに唱えると、私達は光に包まれた。

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