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麻友の異世界探訪
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その日はベアトリーチェの十八歳の誕生日だが、祝う人は母一人の質素な誕生日会だ。
「ベア、お誕生日おめでとう」
「ありがとうございます、お母様」
二人はグラスを合わせた。カチンと小さな音が部屋中に響く。しかし、二人の心の中は複雑だ。今日は満月。月が欠け、細くなればなるほど新月が近づいて来る。そしたら、儀式がやって来るのだ。
コンコン。
ドアが叩かられる。ベアの心がざわつく。
(お兄様かな)
入って来たのは麻友だ。
「マユ!」
「お誕生日おめでとう、ベア」
「嬉しい。マユ、ありがとう!」
麻友は手作りの小さなケーキをテーブルの上に置いた。
「私達の国では、誕生日にはケーキを食べるんです」
ケーキなんて作った事ないが、厨房のお菓子作りが得意だと言うおばさんに教えてもらったのだ。ちょっと見映えは悪いが気持ちはこもっている。
「それからこれ」
麻友は後ろ手に隠し持って居た花束を差し出した。薔薇の花束だ。ちゃんと棘は取ってある。
「まあ、綺麗」
ベアトリーチェは花束を手に取り、顔を花に寄せて匂いを嗅ぐ。かぐわしい香りがベアトリーチェの鼻孔をくすぐる。
「アルベール王子からです」
その言葉にハッと顔を上げる。その瞬間、涙が頬を伝う。
「お兄様が・・・」
誕生日を覚えて居てくれた。その喜びが涙となって溢れ出る。
「良かったわね、ベア」
「はい・・・」
花を花瓶に挿し、三人は麻友の手作りケーキを食べた。
アルベール外に出て、月を見上げていた。
(あの月がかけたら・・・)
愛する妹のために何も出来ない自分に憤慨し、また諦めにも似たため息を吐いた。
細やかな誕生日会が終わり、ベアトリーチェも月を見つめていた。あの月が自分の運命を握っている。
「お兄様・・・」
花を見つめ、兄を思う。
「一目お会いしたかった」
もう会えないのかと思うと涙が止まらない。
月日は残酷だ。花が萎れて散り始めた頃、運命の儀式の日がやって来た。
城内は人で溢れ返っている。麻友も慌ただしく儀式の用意に追われていた。
(何人分用意すれば良いのよ!)
大広間には儀式の為の祭壇が用意されていた。祭壇と言うよりは豪華なベッドだ。松明が灯され、生け贄としての(?)虫達の籠が釣られている。
(どうかばれません様に)
心の中はヒヤヒヤしていたが、誰も気にしている者はいない様だ。
多くの獣人達の中に、あの教皇も最前列に鎮座して居る。
ベアトリーチェは朝から聖水で身体を拭き取られ、全身にシースルーのベールを掛けられた。薄いベールはベアトリーチェの裸体をクッキリと浮かび上がさせて居る。裸と大して変わりは無い。その側に母である王妃が付き添って居る。二人に笑顔は無い。
(王子は何処行っちゃったのよ)
麻友は儀式の準備をしながら王子を探していたが、見つけられない。
刻一刻と時間は過ぎて、儀式の時が迫る。
「居たぁー」
王子を見つけた時は、おもわず声を上げてしまった。
王子は花壇の側にに力なく立って花を見つめて居た。その花はベアの誕生日に自分か送った薔薇だ。
「王子! そこ動かないで!」
王子に向かって叫ぶと、部屋に戻り神剣を手にした。慌てて王子の元に走り寄ると、その手を掴み、城の裏側にある小屋を目指す。
「な、なんなんだ、マユ」
「良いから。王妃様に頼まれているんです!」
「母上に?」
小屋に入るとそこには見知らぬ人達が居た。
「お前達は?」
「お初にお目にかかります。私はアルフォンヌと申します。前王アルベルト様にお仕えしてた者です」
他の面々も同様でアルベルト王に仕えた居た者達だと言う。
「その前王の側近達が私に何様だ。復讐でもする気か?」
アルベールが身構えると、アルフォンヌ一行はひざまづいた。
「な、何の真似だ?」
「我らは亡き王の忘れ形見に忠誠を誓います」
「亡き王の忘れ形見?」
「そうです。貴方は亡き王の忘れ形見です」
その言葉をきいて、王子は声を上げて笑った。
「ハハハ、私が前王の忘れ形見だと?」
「そうです」
「冗談も休み休み言え! この姿を見て言っているのか。私は魔王の息子だ」
しかし、一行も引かない。
「真の姿を今こそ現すのです。マユ殿、剣を」
言われて麻友は神剣を見せた。王子の表情が変わる。剣の恐ろしさを知っているから。
「剣をお持ち下さい。そして、魔王を撃つのです」
「よせ、私には扱えない」
剣から王子は逃げようとする。
その時、麻友がはめて居た指輪から光が溢れて辺りを照らした。
(えっー?)
麻友は身体の中に何者かが入り込んで来たのを感じた。
(だ、誰?)
「ベア、お誕生日おめでとう」
「ありがとうございます、お母様」
二人はグラスを合わせた。カチンと小さな音が部屋中に響く。しかし、二人の心の中は複雑だ。今日は満月。月が欠け、細くなればなるほど新月が近づいて来る。そしたら、儀式がやって来るのだ。
コンコン。
ドアが叩かられる。ベアの心がざわつく。
(お兄様かな)
入って来たのは麻友だ。
「マユ!」
「お誕生日おめでとう、ベア」
「嬉しい。マユ、ありがとう!」
麻友は手作りの小さなケーキをテーブルの上に置いた。
「私達の国では、誕生日にはケーキを食べるんです」
ケーキなんて作った事ないが、厨房のお菓子作りが得意だと言うおばさんに教えてもらったのだ。ちょっと見映えは悪いが気持ちはこもっている。
「それからこれ」
麻友は後ろ手に隠し持って居た花束を差し出した。薔薇の花束だ。ちゃんと棘は取ってある。
「まあ、綺麗」
ベアトリーチェは花束を手に取り、顔を花に寄せて匂いを嗅ぐ。かぐわしい香りがベアトリーチェの鼻孔をくすぐる。
「アルベール王子からです」
その言葉にハッと顔を上げる。その瞬間、涙が頬を伝う。
「お兄様が・・・」
誕生日を覚えて居てくれた。その喜びが涙となって溢れ出る。
「良かったわね、ベア」
「はい・・・」
花を花瓶に挿し、三人は麻友の手作りケーキを食べた。
アルベール外に出て、月を見上げていた。
(あの月がかけたら・・・)
愛する妹のために何も出来ない自分に憤慨し、また諦めにも似たため息を吐いた。
細やかな誕生日会が終わり、ベアトリーチェも月を見つめていた。あの月が自分の運命を握っている。
「お兄様・・・」
花を見つめ、兄を思う。
「一目お会いしたかった」
もう会えないのかと思うと涙が止まらない。
月日は残酷だ。花が萎れて散り始めた頃、運命の儀式の日がやって来た。
城内は人で溢れ返っている。麻友も慌ただしく儀式の用意に追われていた。
(何人分用意すれば良いのよ!)
大広間には儀式の為の祭壇が用意されていた。祭壇と言うよりは豪華なベッドだ。松明が灯され、生け贄としての(?)虫達の籠が釣られている。
(どうかばれません様に)
心の中はヒヤヒヤしていたが、誰も気にしている者はいない様だ。
多くの獣人達の中に、あの教皇も最前列に鎮座して居る。
ベアトリーチェは朝から聖水で身体を拭き取られ、全身にシースルーのベールを掛けられた。薄いベールはベアトリーチェの裸体をクッキリと浮かび上がさせて居る。裸と大して変わりは無い。その側に母である王妃が付き添って居る。二人に笑顔は無い。
(王子は何処行っちゃったのよ)
麻友は儀式の準備をしながら王子を探していたが、見つけられない。
刻一刻と時間は過ぎて、儀式の時が迫る。
「居たぁー」
王子を見つけた時は、おもわず声を上げてしまった。
王子は花壇の側にに力なく立って花を見つめて居た。その花はベアの誕生日に自分か送った薔薇だ。
「王子! そこ動かないで!」
王子に向かって叫ぶと、部屋に戻り神剣を手にした。慌てて王子の元に走り寄ると、その手を掴み、城の裏側にある小屋を目指す。
「な、なんなんだ、マユ」
「良いから。王妃様に頼まれているんです!」
「母上に?」
小屋に入るとそこには見知らぬ人達が居た。
「お前達は?」
「お初にお目にかかります。私はアルフォンヌと申します。前王アルベルト様にお仕えしてた者です」
他の面々も同様でアルベルト王に仕えた居た者達だと言う。
「その前王の側近達が私に何様だ。復讐でもする気か?」
アルベールが身構えると、アルフォンヌ一行はひざまづいた。
「な、何の真似だ?」
「我らは亡き王の忘れ形見に忠誠を誓います」
「亡き王の忘れ形見?」
「そうです。貴方は亡き王の忘れ形見です」
その言葉をきいて、王子は声を上げて笑った。
「ハハハ、私が前王の忘れ形見だと?」
「そうです」
「冗談も休み休み言え! この姿を見て言っているのか。私は魔王の息子だ」
しかし、一行も引かない。
「真の姿を今こそ現すのです。マユ殿、剣を」
言われて麻友は神剣を見せた。王子の表情が変わる。剣の恐ろしさを知っているから。
「剣をお持ち下さい。そして、魔王を撃つのです」
「よせ、私には扱えない」
剣から王子は逃げようとする。
その時、麻友がはめて居た指輪から光が溢れて辺りを照らした。
(えっー?)
麻友は身体の中に何者かが入り込んで来たのを感じた。
(だ、誰?)
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