転生したら王だった

如月はるな

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手がかり

転生したら王だった

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   オードリーの怪我の様子を見ている俺の様子をレイ君が見つめている。
「歩けるか、オードリー」
「む、無理ですぅ~」
   涙目で訴えてくる。仕方ないので背負う事にした。
「あー、今日はこの辺で、また来るので・・・」
「二度と顔見せるなと言ったはずだけど」
   レイ君が俺を睨んでいる。
「あはは・・・」
   ヨイショと俺はオードリーを背負い、
「じゃあ、またね」
   と、つい言ってしまった。
「!」
   レイ君はキッと口を結び、大きな音を立てて離宮の扉を閉めた。
「はぁ~」

   門にたどり着き開けてもらう。
「ご無事でしたか」
   アンドルーが待っていた。その顔を見てオードリーの怒りが爆発する。
「何で最初に逃げるんだよ!」
「最初に逃げ出したのはオードリーだろう」
「うぐぐ。アンドルーは剣士なんだから虎なんか倒せるだろう?」
「いや、虎と戦った事無いんで」
「ムグググ!」
「まあまあ。早く医務室行こう」
   ヨイショと背負い直して、医務室へ向かう。

「あててて・・・痛いよ!」
「じっとして、今消毒を」
「ハヒィーーー!  し、しみるぅーー!!!」
   バタン
   大きな音がしてフィオナちゃんが入って来た。
「ワァァァーーーー!!」
   オードリーは慌ててズボンをあげる。
「やだぁ、大丈夫、オードリー」
「だ、大丈夫、いや、大丈夫じゃ無いよ」
「フィオナちゃん、今、治療中だから、出て出て」
「えー、残念」
   フィオナは本当に残念そうに唇を尖らせて出て言った。
   全く困ったお嬢様だ。オードリーのうろたえた顔を見たくてわざと入ってきたのだろう。
   オードリーの傷は見た目ほど深くはなかった。あの虎は本気で噛んでいなかった様だ。
「レイ君は何時もあそこに一人でいるのか・・、」
「まあ、陛下の顔見たく無い感じでしたからね」
「うん・・・」
   顔を見たからこそ、ずっと一人で居させる事が心配になってきた。もし、自分があそこにずっと一人で暮らしていけるかと聞かれたら、きっと無理だと答えるだろう。
(明日も訪ねてみよう)

「何しに来た!」
   ハイハイそう言われると思ってたけど、実際に言われるとへこむ。
「はじめまして、レイさん」
「誰?」
「あっ、妹のフィオナちゃん」
「!・・・ちゃん・・?」
   フィオナとレイは同じくらいの身長だった。ニコヤカな笑顔のフィオナに対して仏頂面のレイが、対峙している様に見える。
「可愛いだろう」
「・・・可愛い・・・」
  レイ君のまなじりがピクンと動いた。
「あっ、あれがレイさんが飼っているネコですか」
   いち早くレイチェルを見つけたフィオナが近づいて行く。フィオナが付いて来た理由はこれだった。オードリーに噛み付いたというレイチェルが見たいと言う野次馬根性だったのだ。
「おい、危ないぞ」
   アンドルーの注意もよそにフィオナはレイチェルに恐れもなく近寄っていく。
「やだぁ、、可愛い!」
  両手を広げレイチェルに抱きついた。グルッと少し唸って尻込みしたのはレイチェルだったが、逃げるよりも早くフィオナに抱きしめられた。
「きゃー、フワフワ柔らかい、可愛い!」
   どうやらフィオナは猛獣とは思わず、大きなネコのイメージらしい。知らないというのはある意味凄いのかも知れない。
「何でまた、来たんだよ。顔見たく無いんだけど」
「ははは。そうだけど、ちょっと捜査してて・・・」
「捜査?」
「はい。実は『王妃の首飾り』が、紛失しまして・・」
   アンドルーが首飾りの一件を話した。
「だから何?   俺が盗んだとでも?」
「いいえ。今手がかりを探してまして、レイ様が何か不審な物を見たり、聞いたりしてないかと思いまして伺いに来たのですが、その、飼い猫の出現にビックリして昨日はその・・・」
「逃げ足速かったね」
「ははは、恐れいります」
   アンドルーは説明しながら汗を拭う。
「レイ君は何か見てないかな」
「見てない」
   素っ気ない。俺とアンドルーはため息を吐いて肩を落とす。知っていても知らない振りをしているのか、本当に知らないのか。レイの表情からは分からない。
「お兄様、大変これ見て!」
   その時、レイチェルと遊んでいたフィオナが慌てた様子で隣の部屋から出てきた。
「な、何、どうしたの、フィオナちゃん」
「これよ、これ!」
   フィオナは俺の目の前に手のひらを差し出した。その上には赤い石が乗っていた。
「えーと、これが何か?」
「ルビーよ、これはルビー!」
   ルビーということは宝石のルビーの事かな?
   俺とアンドルーは訳が分からず首を傾げる。
「もうーー、これは『王妃の首飾り』の留め金につけていたスタールビーなんです!」
「「えええーーー!!」」
   俺とアンドルーは声を揃えて叫んでいた。
(と、言うことはレイ君が?)
「そ、そ、それはど、ど、ど、何処に?」
「レイチェルが遊んでいたの」
「レイチェルが?」
   フィオナは何かを俺に投げてよこした。
「えっ?  何?」
   良く見たら鳥の足だ。
「ギャーーー!」
   俺はそれをアンドルーに投げた。
   アンドルーはそれを慎重に摘み上げると観察した。
「足に何か付いたますね」
   良く見ると足に布の袋の様なものが付いている。
「えっ、これは?」
「ああ、それは先日弱っていた鳩の足かな」
「鳩?」
「ああ。ヒョコヒョコ歩いていたのをレイチェルが見つけてじゃれていた」
   猫科の生き物は獲物をいたぶる習性がある。レイチェルに悪気は無く、面白い遊び道具とした遊んでいたのだろう。
「鳥は食べてしまった様だが、食べ残した足を俺に持って来たんだ」
「褒めてほしかったのかな」
「それは分からん」
   俺は恐る恐る足を観察した。袋の中にはまだ何か入っている。
「バラした宝石の様だね」
   葉の形をしたの金の上にダイヤがはめ込まれたものが何枚か入っている。
「やはり『王妃の首飾り』の一部よ。『王妃の首飾り』は花をモチーフにした豪華な首飾りだったから」
(鳩か・・・)
   俺はある事を思いついた。
「伝書鳩か」
「伝書鳩?」
「そう、伝書鳩だよ」
   俺は外に出ると空を見上げた。空には何も飛んではいなかった。
「鳩ならあそこだよ」
   レイが城を指差した。何羽の鳩が張り出した窓に止まっているのが見えた。
「あそこは?」
「知らない。でも、何時も誰かがエサを撒いてるのを見たことはある」
「なるほど。でも、ここからでは良く見えないな」
「見えるのは差し出した手くらいだな」
「手か。手では人物を特定出来ませんね」
「あそこが何の部屋か分かるか、アンドルー」
「多分、使用人の休憩室でしょうか。食事したり、お茶を飲んだりしてます」
「休憩室・・・」
   俺はレイ君に振り向き手を握った。
「ありがとうレイ君!   手がかりが見つけられたよ」
「~~~」
   レイ君が複雑な表情で握った手を見ている。
「まぁ、役に立ったなら、まぁ、良いけどぉ~」
   その困った表情が可愛いくて思わず抱きしめたくなる。
「もう一つ手がかりならあるぞ」
「えっ?  本当?」
「ああ。何時も見えてたのは左手だった。その手首には多分金の鎖見たいのがあったな」
「ブレスレットかしら」
   装飾品には鋭い。流石は女の子。
「多分な。日の光でキラキラしてるのが見えたからな」
「レイ君!」
   俺は思わず抱きしめていた。殴られると思っていたがそれはなかった。
   左手でエサを撒いていたなら左利きの可能性がある。それにブレスレットを付けていたのなら女子という可能性が高い。
「ありがとう、レイチェル」
   フィオナはレイチェルの頭を撫でた。自分が手柄を立てたのが分かるのか、虎は頭をおとなしく撫でられた。
「何か分かったら報告しに来るからね」
「来なくて良い!」
   俺の言葉につれない返事だったが、その声音は昨日ほどきつくは無いと思ったのは気のせいか。
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