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第一章 風の谷“ミスティア”
第八話
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一方、林道でタイグルオーガが出たことを知らされた冒険者ギルドは、混乱に陥っていた。
「タイグルオーガ!?」
「なんでそんなところに!?」
今までそんな近くの街道にでることなどなかったのだ。脅威になる魔獣モンスターがそんなに近くにいるなど寝耳に水だ。
「諜報は何をしてたんだ!」
「そんなこと言われても仕方ないだろ!」
「止めなさい。みっともない」
言い争うギルド役員達を壮年の男性が凛とした声で遮った。こんな非常事態でも落ち着きを払っている彼はランド・マーク。このギルドのギルドマスターだ。
彼は貴族の家柄の出だが、家は長男に任せて冒険者になり成功した凄腕だ。今は引退したことにしているが、現役時代はSランクだった。
その腕はまだまだ鈍っておらず、現役の冒険者などに負けないと自負している。
「それより興味深いな。イアンと共にいる少年が倒したのだろう。しかもギルドに登録してないときた。会ってみたいものだな……」
「マスター! そんな簡単な話では……」
「そうです。結果論でしかない! 何者かもわからないのに」
「だがこの非常事態だ。仲間に欲しいところだな……」
黙り込む役員に、ランドは考え込む。
誰も気付いていないが、ここ1ヶ月の異常気象や異常事態が各地で頻発している。そして、各地で共通しているのが、大精霊の住処の異常だ。
総合して考えるなら、大精霊に何かがあったのだろう。ランドたちには把握できない最悪の事態が……。
そこに現れた謎の少年。どう考えてもなにかしらの関係性があるだろう。それが何かまではわからないが。
「さて、どんな少年が来るか……」
少し期待してしまっても罰は当たらないだろう。
ギルドの近くに来てもまだぼんやりしている彩斗に、イアンは現実を認識してもらうために声を掛けた。
「アヤト! 戻って来い!」
「……ああ」
生返事にいよいよおかしいと、詳しく話を聞こうと彩斗に近付いた時、騒ぎを聞きつけたギルドから職員が中から出て来た。
「イアン! タイグルオーガと闘ったんだって!?」
「ベル。俺は大丈夫だ」
「心配したのよ、イアン。……えっと、そこの綺麗な人は?」
ギルドの受付のベルとアイリーンに口々に声をかけられて口を開く。アイリーンは彩斗の外見に照れて頬を染めていた。
彩斗は外見的に中性的だが、それを引き立てる整いすぎた綺麗な顔が女性からも男性からも好意を持たれるものを持っている。
綺麗なヤツは特だよなぁ、と考えていると、ベルが恐る恐る聞いてきた。
「イアン。それよりタイグルオーガ倒したやつは?」
その言葉に周りに集まりつつあった冒険者たちの注目が集まる。
それにイアンは諦めのため息を吐いた。
「紹介するよ。タイグルオーガを倒したアヤト・カミシロ」
「「「…………え、ええ!?」」」
絶叫が響いて、彩斗は漸く現実へと帰ってきた。いきなりの大観衆と肩に置かれたイアンの手にびっくりしたのだ。
いつの間に街に入ったんだろう。
彩斗が現状を把握しようとしていると、ギルドらしき場所から人が出て来た。
「イアン様、お旅のお方。ギルドマスターがお待ちです。此方へお越し下さい」
一礼して背を向ける女性に、彩斗は何となくだが気付いた。何か面倒事に巻き込まれていると。
「どうしてこうなった」
「ぼーっとしてるのが悪い」
後悔の呟きに、イアンの的確なツッコミが痛かった。
「タイグルオーガ!?」
「なんでそんなところに!?」
今までそんな近くの街道にでることなどなかったのだ。脅威になる魔獣モンスターがそんなに近くにいるなど寝耳に水だ。
「諜報は何をしてたんだ!」
「そんなこと言われても仕方ないだろ!」
「止めなさい。みっともない」
言い争うギルド役員達を壮年の男性が凛とした声で遮った。こんな非常事態でも落ち着きを払っている彼はランド・マーク。このギルドのギルドマスターだ。
彼は貴族の家柄の出だが、家は長男に任せて冒険者になり成功した凄腕だ。今は引退したことにしているが、現役時代はSランクだった。
その腕はまだまだ鈍っておらず、現役の冒険者などに負けないと自負している。
「それより興味深いな。イアンと共にいる少年が倒したのだろう。しかもギルドに登録してないときた。会ってみたいものだな……」
「マスター! そんな簡単な話では……」
「そうです。結果論でしかない! 何者かもわからないのに」
「だがこの非常事態だ。仲間に欲しいところだな……」
黙り込む役員に、ランドは考え込む。
誰も気付いていないが、ここ1ヶ月の異常気象や異常事態が各地で頻発している。そして、各地で共通しているのが、大精霊の住処の異常だ。
総合して考えるなら、大精霊に何かがあったのだろう。ランドたちには把握できない最悪の事態が……。
そこに現れた謎の少年。どう考えてもなにかしらの関係性があるだろう。それが何かまではわからないが。
「さて、どんな少年が来るか……」
少し期待してしまっても罰は当たらないだろう。
ギルドの近くに来てもまだぼんやりしている彩斗に、イアンは現実を認識してもらうために声を掛けた。
「アヤト! 戻って来い!」
「……ああ」
生返事にいよいよおかしいと、詳しく話を聞こうと彩斗に近付いた時、騒ぎを聞きつけたギルドから職員が中から出て来た。
「イアン! タイグルオーガと闘ったんだって!?」
「ベル。俺は大丈夫だ」
「心配したのよ、イアン。……えっと、そこの綺麗な人は?」
ギルドの受付のベルとアイリーンに口々に声をかけられて口を開く。アイリーンは彩斗の外見に照れて頬を染めていた。
彩斗は外見的に中性的だが、それを引き立てる整いすぎた綺麗な顔が女性からも男性からも好意を持たれるものを持っている。
綺麗なヤツは特だよなぁ、と考えていると、ベルが恐る恐る聞いてきた。
「イアン。それよりタイグルオーガ倒したやつは?」
その言葉に周りに集まりつつあった冒険者たちの注目が集まる。
それにイアンは諦めのため息を吐いた。
「紹介するよ。タイグルオーガを倒したアヤト・カミシロ」
「「「…………え、ええ!?」」」
絶叫が響いて、彩斗は漸く現実へと帰ってきた。いきなりの大観衆と肩に置かれたイアンの手にびっくりしたのだ。
いつの間に街に入ったんだろう。
彩斗が現状を把握しようとしていると、ギルドらしき場所から人が出て来た。
「イアン様、お旅のお方。ギルドマスターがお待ちです。此方へお越し下さい」
一礼して背を向ける女性に、彩斗は何となくだが気付いた。何か面倒事に巻き込まれていると。
「どうしてこうなった」
「ぼーっとしてるのが悪い」
後悔の呟きに、イアンの的確なツッコミが痛かった。
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