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使い魔と契約
正論/説教?/自問と覚悟
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女の子はひとしきり泣いた後『・・・・・・ごめんね』と謝り、続けて問題発言を投下していった。
「私ね・・・・・・。もう一度あの森に行ってグリフィン探してみるんだ。たとえ魔獣達のゴハンになるとしても・・・・・・」
女の子は涙で濡れた目元を袖で拭い、出掛かってた鼻水を空気ごと鼻で吸い決意をした様子だった。
「な!おい!それはダメだ!」
「ゴメンね~。覚悟できたから準備しなくちゃ!」
「覚悟すな!そして行くな!」
そう言って部屋を出て行ってしまった。
「死ぬ覚悟なんて馬鹿のする事だぞ!なんとか止めないと!!」
女の子を追いかけようとしたが、すぐさま他の猫に止められてしまう。
右に行こうとしても左に行こうとしても、行く道を邪魔された。
クソっ!この体に慣れてないうえに体の節々に痛みがありやがる!
これじゃ振り切れねぇ!
そんな男の状態では、本場の猫をかわす事も力で振り切る事もできる筈はなかった。
「そこをどけっ!」
「ダメ。新人・・・・・・、何する?不明。だが、病み上がり。お前、いつか来る、候補生の使い魔。逃げるな!」
くそっ!
カタコト石造ガーゴイルみたいになってたクセに正論を!!
「さっきの子が死ぬかもしれないんだぞ!」
「ダメにゃ!危険あるにゃら、もっとダメにゃ!」
くそっ!こいつもド正論を!!
力ずくで行こうとするも、男は2匹に簡単に押さえつけられてしまう。
「あれ、将来性ない。お前、助ける理由ない」
将来性だとぉ!まだ子供だぞ、未来の可能性なんて無限だろうが!
「そうにゃ。使い魔成れるの1度にゃ。一生ものにゃ。親もいにゃい、錬金術の才能にゃい、使い魔ににゃったら一生苦労にゃ!野良なら当然のっ弱肉強食にゃっ!」
この男は絶句した。錬金術の才能どころか両親すら亡くしてるのかと・・・・・・。
だが、それはこの男には余計だった。
平和な世界で暮らし続け出来上がった価値観と、この男の良心が悲鳴を上げてあの子を助けろと言ってしまっている。
「クソッ!はーなーせー!!」
「あきらめる!」
「そう、にゃっ!」
周りの他の動物達も騒ぎ出し、騒がしくなる中に一匹の黒猫と職員?らしき女性がやってきた。
大方、騒ぎを聞きつけやって来たという所だろう。
だが、これは男にとって渡りに船かもしれなかった。
動物サイドでは話にならないが、人間サイドに話が通じればどうにかしてくれるはずだ、と。
「こりゃぁ、なんの騒ぎだい?黒猫」
職員らしい女性が一言発すると『分かりました。ご主人様』と言い、黒猫が即座にこちらにやってくる。
なるほどな。この女が黒猫の・・・・・・。
「あなた達、なんの騒ぎなの?事情を説明して頂戴」
「新人、逃げて、先無しっ子の――」
「先無しっ子だとぉ!」
「あばれにゃい!使い魔、その候補、そう呼んでるにゃっ!」
クソっ!こいつらは俺の為に止めてるんだろうがな・・・。
一週回って腹が立つっ!
「なんとなく分かりましたご主人様。例の親無しの娘が遅れて来てどこかへ行き、この病み上がりが付いて行こうとしたそうです」
「どこかじゃない!グリフィンのいる森に行こうとしてる!頼むから助けてやってほしい!」
その言葉に怪訝な表情をする黒猫。
それもそのはずだ。本来人間の言葉は猫には理解できない筈なのだから、どこで知ったの?という感じだ。
「こいつはなんて言ったんだい?」
「そ、それが本当か怪しいのですが、その娘がグリフィンの森に行こうとしてるから助けて欲しいとの事です」
それを聞いたその女性は真剣な面持ちで、それを真実として捉え答えた。
「あの娘・・・・・・。本当に諦める気が無いんだねぇ。また行くなんて本当に馬鹿だね」
よし!同じ人間であるこの人が信じてくれたなら、きっと助けてくれるはず!
「だけどね。助ける事はしないよ」
「なっ、なぜだ!」
「えっ・・・・・・。どうしてご主人様の言葉が・・・・・・」
狼狽する黒猫の事は放置して言葉を続ける。
「あんた人間だろぉ!なぜ助けない!同じ人間だろうが!」
「黒猫!通訳しな」
「は、はい。あの娘もご主人様も同族なのになぜ助けないのか?と・・・・・・」
この黒猫すげぇ賢いな。
他の猫とは大違いだ・・・・・・。
「簡単さね。あの娘は出来もしない夢を追い、周りに迷惑をかけてる。自分から炎の中に飛び込もうとしてんだ、この際好きにさせたらいい。もうすでに家族もいやしないしね。あの娘も自分で飛び込んだんだ、どうなろうと本望ってやつさ」
「それが!大人のすることかぁぁ!!迷惑ならちゃんと説教して教えなきゃだろ!親もないんだろ?誰かが違う生き方を一緒に考えて教えてやらなくちゃだろ!知ってたならなぜそうしないんだ!」
「大人なら迷惑を教えてやるべきだと、親がいないのだから身近な大人であろうご主人様が、別の生き方を考えてあげるべきだ。そう言ってます」
「ちゃんと教えたさ。お前に才能はない。それを覆すならそれだけのすげー使い魔を得るしかない。諦めろってね」
お前が例のえらーい錬金術士ってやつか!
「お前か・・・・・・。お前があの子を追い詰めたのか・・・・・・」
「ご主人様があの娘を追い込んだのか、と」
すると、黒猫のご主人である女は不機嫌そうに言う。
「私が追い込んだ?馬鹿を言うもんじゃないさね。才能の無さと年齢で勝手に追い詰められただけだ。それに、アレを諦めれば済む話でもあるだろう」
「どういう事だ?」
「ど・・・・・・」
「黒猫いい」
この女の機嫌が悪くなってるのを察してか黒猫は少し怯え気味だ。
男と黒猫以外の猫二匹は、いつのまにか押さえつけるのをやめて固唾を見守っていた。
「これは態度だけで分かる。簡単な話さ、錬金術士ってのはねぇ人気こそあるが誰でもなれる物じゃないんだ。年齢制限だって設けられてる」
錬金術に欠かせない材料の一つに「融合液」というのがある。
これは、採取できる量が限られていて取れる場所はすべて錬金術士を束ねる組合とその国が協力して常に管理し、才能ありと認められ錬金術士になった者達に配布されている。
錬金術士の候補生だからといって別に配布されることは無く、試験中に候補生に渡される『融合液』は試験官やその師匠になる人物の懐から出されるくらいだ。
現在の採取量はそれなりだし、貴重という訳ではない。それでも錬金術士がわんさか増えては、1人あたりに回せる量が大幅に減ってしまう為に年齢制限を設けていた。
若いうちに才能を開花できれば、それなりの錬金術士になれると見込めるし、なれずとも若いうちなら別の職業に就くことも十分可能である事も理由だ。
むしろ、後者の理由が強い。
人気のあるだけに、錬金術士ばかり増えてしまっては他の仕事、例えば食糧生産や国を守る軍人。建築業もだが物流を担う売り歩く行商人のように無いと困る職業だって他にも普通にあるのだから。
「そして錬金術士が死ぬと、その持ち物・錬金術に使う材料・資料・道具すべて没収されて、他の錬金術士の手に渡る事になっているのさ。例外もある。跡を継ぐ錬金術士がいればそれらを引き継ぐことが出来る。例えばだ、共同研究者、専属の弟子、あとはその親の子供の錬金術士。それ等がいればね」
「つまりあの子は・・・・・・」
「親も親戚も無い。年齢制限ギリギリで親の持ち物没収寸前。他の錬金術士になれなかった子に比べても才能も無い。そりゃ使い魔候補から先無し言われるのも無理ないよ。私も散々諦めるように言ったし、それでも諦めないならもう止められやしない。・・・・・・可哀相とは思うけどねぇ」
「そうか。諦めるように言ってくれていたのか・・・・・・」
決してこの黒猫の主人は冷血ではなかった、むしろ他人なのにこの女なりに気を使ってくれていたのだった。
それに気が付き冷静になっていく男。
この女はこれまで色々説得しようとしてくれてた訳だ。
すごい使い魔の話も諦めるようにしむけてか・・・・・・。
「悪かった。俺はあんたを冷徹女だと勘違いしてたようだ・・・・・・」
「わる――」
「黒猫、いい」
態度で何を言ったか察したんだろう。
再度通訳しようとした黒猫を止める。
「私も言葉が足りなかったのは事実だし、どう言えばいいかもアレ以外出てこなかった。効率的な言い方をしたつもりでも、それをどう捉えるかまで理解してはやれなかったさね。それに、どうしても譲れない気持ちだけは分かるしねぇ。たとえ身を滅ぼすとしても、ね」
「ご主人様・・・・・・」
「あんたの譲れない物は知らん!だがな・・・・・・、譲れない物なら俺にだってできた!」
「黒猫っ!通訳」
「はっ、はい!ご主人様の譲れない物は分からない。けど、譲れない物ができた、と」
それを聞いて何の事かを察したのか声を荒げた。
「それは許さん!許可しない。あんたは私の・・・・・・。いや、人間の言葉を素で理解する極めて貴重な能力がある。黒猫から聞いたが、人に近い言葉遣いや理解力は使い魔として見れば優秀と言っていいだろう。元から人間の言葉を理解する一部のドラゴンやグリフィンにも相当するかもしれない。もっと優秀な候補生・・・・・・、それどころか使い魔を失ったベテラン錬金術士だって欲するだろう。それこそ相手は――」
「ならいけるだろ!俺がすごーい使い魔になれば、あの子を助けられるかもしれない!」
「俺がすごい使い魔になれば、あの娘を助けられるかもしれない。と言ってます・・・・・・」
黒猫の主人は男を睨んだ。
その気迫はまるで猛獣を前にしたかのような気さえさせた。
「覚悟はあるって?あの娘は本当に才能の欠片もないんだ!ただの一回の失敗で錬金術士になれずにどん底を一生付き合う事になるんだよ!」
本当に博打みたいな物だ。
可能性は五分もないか、三分・・・・・・いや二分かもしれない。そんなもんだろう。
それを理解しながら、男は自分の胸の当りにあるであろう、心に向かって問いかけをする。答えのない問いかけを。
なぁ、この体の前の持ち主。
お前はあの子を恨むか?
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
答えはやはりない。
お前は許せないかもしれない。
でもな、俺は助けてやりたいそう思ったんだ。
あんな泣いてる姿みてさ、それで死にに行こうとしてるなんて知っちまったらな。
だからさ・・・・・・。
「――許せぇ!許可しろぉ!俺にはその覚悟があるし、もしダメでもどん底にはさせないっ!俺にあるすべての知恵ぇ回してなんとかする!」
「俺には覚悟があると、それから・・・・・・」
「黒猫もういい。おつかれ」
覚悟があるそれだけ聞ければ黒猫の主人には十分だった。
「はい。ご主人様」
一礼して下がる黒猫。
「まったく、こんな言う事聞かない使い魔候補は見たことない。しかも、私でも持て余していた問題を引き受ける猫なんて前代未聞だよ、ほんと」
そう言って、睨むのをやめて晴れやかな笑顔でこう付け加えた『私が手を貸すんだ、その覚悟であの娘を救ってみせな!』と。
「私ね・・・・・・。もう一度あの森に行ってグリフィン探してみるんだ。たとえ魔獣達のゴハンになるとしても・・・・・・」
女の子は涙で濡れた目元を袖で拭い、出掛かってた鼻水を空気ごと鼻で吸い決意をした様子だった。
「な!おい!それはダメだ!」
「ゴメンね~。覚悟できたから準備しなくちゃ!」
「覚悟すな!そして行くな!」
そう言って部屋を出て行ってしまった。
「死ぬ覚悟なんて馬鹿のする事だぞ!なんとか止めないと!!」
女の子を追いかけようとしたが、すぐさま他の猫に止められてしまう。
右に行こうとしても左に行こうとしても、行く道を邪魔された。
クソっ!この体に慣れてないうえに体の節々に痛みがありやがる!
これじゃ振り切れねぇ!
そんな男の状態では、本場の猫をかわす事も力で振り切る事もできる筈はなかった。
「そこをどけっ!」
「ダメ。新人・・・・・・、何する?不明。だが、病み上がり。お前、いつか来る、候補生の使い魔。逃げるな!」
くそっ!
カタコト石造ガーゴイルみたいになってたクセに正論を!!
「さっきの子が死ぬかもしれないんだぞ!」
「ダメにゃ!危険あるにゃら、もっとダメにゃ!」
くそっ!こいつもド正論を!!
力ずくで行こうとするも、男は2匹に簡単に押さえつけられてしまう。
「あれ、将来性ない。お前、助ける理由ない」
将来性だとぉ!まだ子供だぞ、未来の可能性なんて無限だろうが!
「そうにゃ。使い魔成れるの1度にゃ。一生ものにゃ。親もいにゃい、錬金術の才能にゃい、使い魔ににゃったら一生苦労にゃ!野良なら当然のっ弱肉強食にゃっ!」
この男は絶句した。錬金術の才能どころか両親すら亡くしてるのかと・・・・・・。
だが、それはこの男には余計だった。
平和な世界で暮らし続け出来上がった価値観と、この男の良心が悲鳴を上げてあの子を助けろと言ってしまっている。
「クソッ!はーなーせー!!」
「あきらめる!」
「そう、にゃっ!」
周りの他の動物達も騒ぎ出し、騒がしくなる中に一匹の黒猫と職員?らしき女性がやってきた。
大方、騒ぎを聞きつけやって来たという所だろう。
だが、これは男にとって渡りに船かもしれなかった。
動物サイドでは話にならないが、人間サイドに話が通じればどうにかしてくれるはずだ、と。
「こりゃぁ、なんの騒ぎだい?黒猫」
職員らしい女性が一言発すると『分かりました。ご主人様』と言い、黒猫が即座にこちらにやってくる。
なるほどな。この女が黒猫の・・・・・・。
「あなた達、なんの騒ぎなの?事情を説明して頂戴」
「新人、逃げて、先無しっ子の――」
「先無しっ子だとぉ!」
「あばれにゃい!使い魔、その候補、そう呼んでるにゃっ!」
クソっ!こいつらは俺の為に止めてるんだろうがな・・・。
一週回って腹が立つっ!
「なんとなく分かりましたご主人様。例の親無しの娘が遅れて来てどこかへ行き、この病み上がりが付いて行こうとしたそうです」
「どこかじゃない!グリフィンのいる森に行こうとしてる!頼むから助けてやってほしい!」
その言葉に怪訝な表情をする黒猫。
それもそのはずだ。本来人間の言葉は猫には理解できない筈なのだから、どこで知ったの?という感じだ。
「こいつはなんて言ったんだい?」
「そ、それが本当か怪しいのですが、その娘がグリフィンの森に行こうとしてるから助けて欲しいとの事です」
それを聞いたその女性は真剣な面持ちで、それを真実として捉え答えた。
「あの娘・・・・・・。本当に諦める気が無いんだねぇ。また行くなんて本当に馬鹿だね」
よし!同じ人間であるこの人が信じてくれたなら、きっと助けてくれるはず!
「だけどね。助ける事はしないよ」
「なっ、なぜだ!」
「えっ・・・・・・。どうしてご主人様の言葉が・・・・・・」
狼狽する黒猫の事は放置して言葉を続ける。
「あんた人間だろぉ!なぜ助けない!同じ人間だろうが!」
「黒猫!通訳しな」
「は、はい。あの娘もご主人様も同族なのになぜ助けないのか?と・・・・・・」
この黒猫すげぇ賢いな。
他の猫とは大違いだ・・・・・・。
「簡単さね。あの娘は出来もしない夢を追い、周りに迷惑をかけてる。自分から炎の中に飛び込もうとしてんだ、この際好きにさせたらいい。もうすでに家族もいやしないしね。あの娘も自分で飛び込んだんだ、どうなろうと本望ってやつさ」
「それが!大人のすることかぁぁ!!迷惑ならちゃんと説教して教えなきゃだろ!親もないんだろ?誰かが違う生き方を一緒に考えて教えてやらなくちゃだろ!知ってたならなぜそうしないんだ!」
「大人なら迷惑を教えてやるべきだと、親がいないのだから身近な大人であろうご主人様が、別の生き方を考えてあげるべきだ。そう言ってます」
「ちゃんと教えたさ。お前に才能はない。それを覆すならそれだけのすげー使い魔を得るしかない。諦めろってね」
お前が例のえらーい錬金術士ってやつか!
「お前か・・・・・・。お前があの子を追い詰めたのか・・・・・・」
「ご主人様があの娘を追い込んだのか、と」
すると、黒猫のご主人である女は不機嫌そうに言う。
「私が追い込んだ?馬鹿を言うもんじゃないさね。才能の無さと年齢で勝手に追い詰められただけだ。それに、アレを諦めれば済む話でもあるだろう」
「どういう事だ?」
「ど・・・・・・」
「黒猫いい」
この女の機嫌が悪くなってるのを察してか黒猫は少し怯え気味だ。
男と黒猫以外の猫二匹は、いつのまにか押さえつけるのをやめて固唾を見守っていた。
「これは態度だけで分かる。簡単な話さ、錬金術士ってのはねぇ人気こそあるが誰でもなれる物じゃないんだ。年齢制限だって設けられてる」
錬金術に欠かせない材料の一つに「融合液」というのがある。
これは、採取できる量が限られていて取れる場所はすべて錬金術士を束ねる組合とその国が協力して常に管理し、才能ありと認められ錬金術士になった者達に配布されている。
錬金術士の候補生だからといって別に配布されることは無く、試験中に候補生に渡される『融合液』は試験官やその師匠になる人物の懐から出されるくらいだ。
現在の採取量はそれなりだし、貴重という訳ではない。それでも錬金術士がわんさか増えては、1人あたりに回せる量が大幅に減ってしまう為に年齢制限を設けていた。
若いうちに才能を開花できれば、それなりの錬金術士になれると見込めるし、なれずとも若いうちなら別の職業に就くことも十分可能である事も理由だ。
むしろ、後者の理由が強い。
人気のあるだけに、錬金術士ばかり増えてしまっては他の仕事、例えば食糧生産や国を守る軍人。建築業もだが物流を担う売り歩く行商人のように無いと困る職業だって他にも普通にあるのだから。
「そして錬金術士が死ぬと、その持ち物・錬金術に使う材料・資料・道具すべて没収されて、他の錬金術士の手に渡る事になっているのさ。例外もある。跡を継ぐ錬金術士がいればそれらを引き継ぐことが出来る。例えばだ、共同研究者、専属の弟子、あとはその親の子供の錬金術士。それ等がいればね」
「つまりあの子は・・・・・・」
「親も親戚も無い。年齢制限ギリギリで親の持ち物没収寸前。他の錬金術士になれなかった子に比べても才能も無い。そりゃ使い魔候補から先無し言われるのも無理ないよ。私も散々諦めるように言ったし、それでも諦めないならもう止められやしない。・・・・・・可哀相とは思うけどねぇ」
「そうか。諦めるように言ってくれていたのか・・・・・・」
決してこの黒猫の主人は冷血ではなかった、むしろ他人なのにこの女なりに気を使ってくれていたのだった。
それに気が付き冷静になっていく男。
この女はこれまで色々説得しようとしてくれてた訳だ。
すごい使い魔の話も諦めるようにしむけてか・・・・・・。
「悪かった。俺はあんたを冷徹女だと勘違いしてたようだ・・・・・・」
「わる――」
「黒猫、いい」
態度で何を言ったか察したんだろう。
再度通訳しようとした黒猫を止める。
「私も言葉が足りなかったのは事実だし、どう言えばいいかもアレ以外出てこなかった。効率的な言い方をしたつもりでも、それをどう捉えるかまで理解してはやれなかったさね。それに、どうしても譲れない気持ちだけは分かるしねぇ。たとえ身を滅ぼすとしても、ね」
「ご主人様・・・・・・」
「あんたの譲れない物は知らん!だがな・・・・・・、譲れない物なら俺にだってできた!」
「黒猫っ!通訳」
「はっ、はい!ご主人様の譲れない物は分からない。けど、譲れない物ができた、と」
それを聞いて何の事かを察したのか声を荒げた。
「それは許さん!許可しない。あんたは私の・・・・・・。いや、人間の言葉を素で理解する極めて貴重な能力がある。黒猫から聞いたが、人に近い言葉遣いや理解力は使い魔として見れば優秀と言っていいだろう。元から人間の言葉を理解する一部のドラゴンやグリフィンにも相当するかもしれない。もっと優秀な候補生・・・・・・、それどころか使い魔を失ったベテラン錬金術士だって欲するだろう。それこそ相手は――」
「ならいけるだろ!俺がすごーい使い魔になれば、あの子を助けられるかもしれない!」
「俺がすごい使い魔になれば、あの娘を助けられるかもしれない。と言ってます・・・・・・」
黒猫の主人は男を睨んだ。
その気迫はまるで猛獣を前にしたかのような気さえさせた。
「覚悟はあるって?あの娘は本当に才能の欠片もないんだ!ただの一回の失敗で錬金術士になれずにどん底を一生付き合う事になるんだよ!」
本当に博打みたいな物だ。
可能性は五分もないか、三分・・・・・・いや二分かもしれない。そんなもんだろう。
それを理解しながら、男は自分の胸の当りにあるであろう、心に向かって問いかけをする。答えのない問いかけを。
なぁ、この体の前の持ち主。
お前はあの子を恨むか?
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
答えはやはりない。
お前は許せないかもしれない。
でもな、俺は助けてやりたいそう思ったんだ。
あんな泣いてる姿みてさ、それで死にに行こうとしてるなんて知っちまったらな。
だからさ・・・・・・。
「――許せぇ!許可しろぉ!俺にはその覚悟があるし、もしダメでもどん底にはさせないっ!俺にあるすべての知恵ぇ回してなんとかする!」
「俺には覚悟があると、それから・・・・・・」
「黒猫もういい。おつかれ」
覚悟があるそれだけ聞ければ黒猫の主人には十分だった。
「はい。ご主人様」
一礼して下がる黒猫。
「まったく、こんな言う事聞かない使い魔候補は見たことない。しかも、私でも持て余していた問題を引き受ける猫なんて前代未聞だよ、ほんと」
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