きのまま錬金!1から錬金術士めざします!

ワイムムワイ

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使い魔と契約

首輪/休憩/梟じぃ

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  ほんとに・・・、こんな首輪で契約できるのか・・・?

 町中を走りながら男は、口に咥えた首輪に不安を感じついそんな事を考えてしまう。
 その首輪は、そのまま契約の首輪と呼ばれるものだった。
 見た目は黒い皮製で、朱色で植物の蔦みたいな模様が端から端まで伸びるように入っていた。
 不安を落ち着かせるように、目の前を走る黒猫の主人の言葉を思い出す。



「いいかい?一度しか説明しないからね」

 男は黙って頷いて見せた。

「契約の首輪の使い方はいたってシンプルさね。お互いが主従の関係を了承している状態で、主側が相手に首輪を付ける。これだけだ。注意すべきは互いに関係を了承している点だね。合意の上でなければ不発に終わるし、すでに他の使い魔になっている場合も不発に終わる」

 そう言って首輪を投げて寄こした。

「あの娘は馬鹿だが、さすがに何の準備もなしに同じ森に行こうとまでは考えてないはずさね。恐らくまだ家で森に入る準備をしてるはずさ。道は・・・・・・、すまないが黒猫頼めるかい?」
「大丈夫です。ご主人様」
「頼んだよ!」
「助かる!」

 黒猫の主人は邪魔だと言わんばかりに手で追い払うようなジェスチャーをした。

  とっとと行けって事か。

「私が先を行くからついて来なさい」

 黒猫は主人の考えを読みとっていたのだろう。
 既に部屋の入り口でこちらを待っていた。

「おう!」

 男は慌てて、首輪を咥え黒猫を追い部屋を出て行く。
 通路を、右へ左へと進み建物を出ようとした時だった。

「そこの猫とまれぇ!!」

 ここの職員と思われる男性が男に向かってそう叫んだ。
 これは仕方の無い事だ。
 この契約の首輪は、錬金術士の候補生の為に用意されたもので、ゴールドソーサラー(錬金術士の階級みたいなもの)以上の者が人数分しか作らない特注品だ。
 それを知らない猫が咥えていたら驚くし、止めようとするのも当然だ。
 反射的に止まろうとしてしまう男に黒猫が言った。
 少しもスピードを緩める事無く。

「大丈夫だから、止まらないで!」

 黒猫は立ち塞がろうとする職員の男を見て事態を察していた。
 だが、次の展開すら分かっていたのだろう。後ろから黒猫の主人の声がした。

「行かせてやりな!責任は私が取る!」

 俺は走りながら後ろにおじぎをしたつもりだが、会釈程度にしかなってなかった。 

「とっとと行ってきな!」

 その言葉を追い風にでもするように、男と黒猫は建物を出て今に至る。
 そして、これは黒猫と男が出て行った直後の出来事。

「いいんですか?」

 男性職員が非難するような目で聞いてくる。
 だが、それをまるで気にしないかのような態度で黒猫の主人が答える。

「何の事だい?」
「あの猫が咥えていた契約の首輪の事です!責任を取ると言ったでしょう!」
「問題は無いさ。いざとなりゃぁ、1ダースでも2ダースでも作ってやるよ」
「数が多すぎても問題ですよ!あれは、候補生の分だけ作られ支給されたものです!」

 黒猫の主人は不敵に笑ってみせて答えた。

「なら、たかが1個。楽勝だろう?」
「ら、楽勝って・・・・・・。分かっているんですか?ゴールドソーサラークラスの実力がいるんですよ?」

 この男性職員は目の前の相手、その実力の程を知らない。
 黒猫の主人は、酒好きで仕事を面倒くさがる事が多い事で知られ、周りから実力を低く見られていた。
 ここが首都から離れた辺境の町にある事も過小評価の一因だろう。
 だが黒猫の主人・・・・・・。その本当の実力はとんでもないものであるのだが、この町で知る者はほとんどいない。

「言っただろ?楽勝だよ。それに、あの首輪は最後の候補生に渡るはずさ」

 ちなみに契約の首輪が候補生の人数分しか作られないのは、錬金術士以外の使い魔を増やさない為だ。
 錬金術には使い魔が不可欠という点にも、錬金術士が亡くなると錬金術関連の持ち物をすべて没収する件にも絡むのだが、過去にある社会問題が起きた。
 それは不正規のならず者錬金術士の増加だ。
 彼らは賄賂を贈り首輪と融合液を手に入れ仲間を増やし、色んな事を手広くやり始めたのだ。
 練成の材料を手に入れるために希少動物の乱獲をし、国家転覆を図る組織へ武器を作り流したり、本来正規の錬金術士に回るはずだった依頼を奪ったり、それはやりたい放題だった。
 最後には小国を支配下にするまでになり、組合と他の国が殲滅に乗り出し、契約の首輪を余分に作る事を禁止し、正規の錬金術士以外の錬金術士を今も厳しく取り締まっている。
 もし使い魔を失った場合は、組合に新たにその申請をする必要がある。

「最後のって・・・・・・。そんなのあ――」
「ありえない、なんて言ったら許さないよ」

 男の職員は、黒猫の主人に気圧されそれ以上何も言えなかった。
 それだけ黒猫の主人は、あの猫に転生した男と女の子に期待をしていたのだ。

  私の反対を押し切って、ここまでさせたんだから頑張りなよあの・・・・・・。
  あー、そういや名前知らないねぇ、あの猫スケ。

 黒猫の主人は、戻って来たらあの猫の名前を聞く事にした。
 余談だが、名前に関係なく猫になった男は、黒猫の主人の中で猫スケに固定されたそうな。



 そして、組合を飛び出した男に話を戻そう。

 日が傾き空がオレンジになっていく。
 それがより一層不安にさせ男を焦らせた。

  まだなのか、まだ着かないのかよ!

 かなり走った。この男の感覚だとそうなっていた。
 なぜかと言えば、慣れない猫の体で走り、さらに病み上がりであったからだ。
 体のあちこちが痛みを男に容赦なく訴えてくる。
 それに呼応するように息も上がる。
 そこまでになると、たいした距離でなくとも長距離を走った感じがしてくるのも仕方ないだろう。

「ここの角を曲がれば、あとは一本道よ」

 男はその言葉を喜んだが、すぐに顔を青くした。
 それもそのはずだ。視界に家はなく町並みも消えていた。
 雑草達が茶色の地面を避けるように広がる坂、そんな道が続いていた。
 すでに疲れていたこの男からすれば、さしずめマラソンの心臓破りの坂にあたるだろう。

  マジかよ・・・・・・。

 田舎に相当する所に住む錬金術士の多くは、このように町から少し離れた所に住む傾向にあった。
 錬金術で何か失敗した時の被害を回りに出さない為でもあるし、なにより地価が安かった。
 錬金術士は儲けようと思えばそれなりに稼げる職業なのだが、錬金術の研究に重点を置く者は研究に稼ぎを・・・・・・、中には生活費を削ってまで研究する者までいた。
 先無し娘。あの女の子の両親はまさにその研究者で、稼ぎはあるのに割と貧乏・・・・・・。そんな生活をしていた。

「運動不足?だいぶ疲れてるようね。私が先に様子を見てきてあげるわ。だから少し休んでから来なさい」

  ただでさえ賢いのに、気配りまで完備とかパないな黒猫はホント・・・・・・。

「た、助かる」
「あと、運動できない雄はモテないからそこ注意しなさいね」

  前言撤回!

「モテないは余計だぁ!」

 相当加減して今まで走ってたのだろう。今までとは比べ物にならならない速さで黒猫が男から遠ざかっていく。

  もしかして、俺が遅すぎて間に合わないかもしれないから休ませた上で先に行ったのか?
  というのは考え過ぎか・・・・・・?

 少し癪ではあるが、気配りについてはあの猫には負けるそう思った。
 3分ほどだろうか?休憩をして再び腰を上げた所で黒猫が戻ってきた。

「遅かったわ。すでに家を出た後みたい」
「なっ!間に合わなかっただとっ!」

 反射的に首輪を咥え走りだそうとする男に黒猫が落ち着くように言った。

「あなた道分からないでしょう!いいから落ち着いて頂戴。すでに考えがあるから付いてきて」

 そう言うと近くにあった民家に歩いていき黒猫は叫んだ。

「チーズ泥棒が出たわーーー!」

 いきなり何を言い出すんだと思う男だったがすぐその理由は判明する。
 目の前に影が広がり、上を見上げると頭上から音もなく年の功を感じさせる梟が飛んできたのだ。

「ホホー!ホゥホゥ!」
「ごめんなさい。梟じぃ、チーズ泥棒は嘘よ」
「ホ?ホーゥホゥ・・・」

  この梟ホーホー言ってて話が分からんな。
  もしかしなくてもこいつも誰かの使い魔なのか?
  人と暮らしてる割には・・・・・・、どこか野生っつーか汚れた感じが・・・・・・。

「今は時間がないの協力して。町中だけでいい、例の先無し娘を探して欲しいの」
「ホッ!ホーホーホッホ、ホゥ?」
「そうね。そうして貰えると助かるわ。居場所が分かり次第私達に教えて、私達はクオの森に向かうから」
「ホホッ!ホーウ!!」
「分かってる。森には入らないわ安心して頂戴」
「ホゥ!ホホゥー!」

 梟は最後にそう鳴いてこちらを見た。
 男は反射的に会釈をし、梟は飛んでいった。

「なぁ、今のは・・・・・・」
「錬金術士になれなかった人・・・・・・、その使い魔よ。この家は近くの牧場をやっていた人の家なの。今は空き家だけれど」
「なぁ、空き家って・・・・・・」
「今は時間が惜しいわ。今度詳しく教えてあげるから、今は聞かないで頂戴。それと梟じぃから『がんばれ!』だそうよ」
「あ、ああ。ちゃんと教えてくれよ?」
「もちろんよ。アレはあなたの未来かもしれないのだから・・・・・・」

 少し寂しそうに、悲しそうでもある顔で黒猫が男を見た。

「変な顔すんな!悲しい結果になんて俺がさせねぇから!」
「そ、そう・・・・・・」

 そう言いながら背を向ける黒猫がこちらを見ずに一言。

「い、今のはちょっと、ちょっとだけかっこ良かったわ。頑張って」
「おう!」

 夕日のせいかは分からないが、男は黒猫の顔が赤くなったよう気がした。
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