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使い魔と契約
BOSS戦
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クオの森。
そこは野性の世界。
魔獣は勿論、森の守護者とまで言われるグリフィンが棲む森。
貴重な薬草は勿論だが、命の水とまで言われる湧き水もあって多くの錬金術士達が足を運んだ場所。
当然、冒険者等の護衛を雇ってである。
ただの女の子が、一人で足を踏み入れていいような所では決して無い。
「ちっ。あっちは間に合わなかったようだね。めんどくさいねぇ、まったく・・・・・・」
その森の前に立っていたのは、たった一人女性。
見た目は30前半だろうか?顔は整っているし、スタイルもいい。ボサボサしてる感はあるが艶やかで長めの黒髪だ。
少し筋肉質な感じがする点と、少し酒臭い気もする点を除けば美人で通るだろう。
ただし、その手に握られた人の背丈ほどもあるでかい包丁のような刀が、ただの女性ではない事を物語っていた。
「何しに来たんだい?もうピクニックをするような時間じゃないだろう。帰りな」
その女性は、目の前の女の子に帰るように告げる。
「全部~、知っていてそんな事言うんですね」
「知るわけ無いだろう。私がお前ならとっとと錬金術士なんて諦めてるよ。むしろ、分からないことだらけさね」
「通してはくれないんですか~?迷惑はかけないと約束します」
「お前はそうかもねぇ。でもね、ここで見逃したらあの猫スケに何言われるか分からないからね。無理ってもんさ」
女の子は猫スケって誰?と考えるも、すぐに止める。
今は関係の無い事だから。
「ここは、魔獣がうようよいる森だよ。お前なんてあっという間に晩ゴハンさ。覚悟・・・・・・あるのかい?」
「ありますよ~。でも、準備してきたので死ぬつもりもないです」
女は悟る何を言っても無駄だと。そもそもこういった説得に向いてるはずも無かった。
そして、結論として得意な力技でいくことにした。
「そういや、お前はあたしの二つ名は知ってるかい?」
女の子は唐突になぜ二つ名を聞いたのか疑問だったが、かつて両親に教えて貰った話をたよりに思い出す。
「えっと~、竜喰らいでしたっけ?」
「話が早いねぇ。私の事は今から性質の悪い魔獣だと思いな。なにせ竜喰らいだ!」
女の子はその女から出る迫力に飲まれかけた。
以前見たライガーウルフなんて目じゃなかった。
森の前に立つその姿はむしろ、その森の王者とまで思えた。
「ど、どういう事ですか・・・・・・?」
「ほんとに馬鹿な子だよ。出会った魔獣に質問するやつがあるかい。特別にヒントをやるならね、お前の準備した物とやらを使ってみな」
女の子はやっと理解する。
力ずくで通れという事に・・・・・・。
そして走り出す。相手の女を避けるように迂回して森を目指す。
「私には勝てないと踏んでの事かい?ま、勝てない点は正解さ。だが、足が遅すぎるねぇ」
あっという間に、間を詰められてしまう。
だが、その程度は想定の範囲だったようでその手には白いボールの様な物が握られていた。
女の子が『えいっ!』という掛け声と共にその白いボールを地面に叩きつけると大量の白い煙りが辺りに発生した。
その煙に紛れ、森に向かおうとするが・・・・・・。
「――うりゃっ!」
「うっ・・・・・・」
女は足音を頼りに正確な位置を割り出し、女の子を峰打ちで吹っ飛ばした。
ついでに、大きな刀の腹の部分をまるでうちわのようにして、周りの煙も吹き飛ばす。
女の子はふらつきながらもなんとか立ち上がる。
「ただの煙りでここを突破しようなんて、舐め過ぎてやしないかい?やるならこれくらいやってごらんよ」
女は火炎球と呼ばれる物で、ビー玉程度の大きさで使うと炎を出す使い捨ての魔道具を、滞留している煙に投げ入れた。
辺りに熱風が吹く。いわゆる粉塵爆発というやつだ。
「粉塵爆発ってやつさ。火が空気中の可燃性の物質とその周囲の空気を使って、一瞬のうちに燃え広がる現象さ。力が無いなら知恵をしぼりな。ただの煙り・・・・・・、匂いからして小麦粉かねぇ。舐め過ぎだよ」
女の子はふらついていた事もあり熱風に煽られ簡単にしりもちをついていた。
煙りの大半を散らしたからだろう、粉塵爆発に女の子が巻き込まれることは無かった。
だが諦める様子はなく背負っていた鞄から2本のロープを取り出す。
「ニョロちゃん、ウネちゃんお願い!」
女の子がそう叫ぶと2本のロープは蛇に変化し、とても早い速度で女に向かっていく。
女は手品でも見たかのように蛇を見やる。
確かに女には蛇に見えた。だが、先程まではただのロープだったのも確かだ。
「面白いねぇ」
女は舌なめずりをし蛇に集中する。
2匹の蛇は女の手前で上に向かって飛び上がる。
だが、それを待っていたのだろうあっさり刀の一振りで、両断されてしまい蛇は只のロープに戻った。
「手品みたいで、だけどね」
「ニョロちゃん、ウネちゃん・・・・・・」
「もう、終わりかい?」
女の子は女をにらむ。
まるで友達を殺されもしたかのような恨みがかったものだ。
「パタちゃんお願い!」
女の子は鞄から丸い泥団子のような物を出し地面に叩きつけた。
すると粘土は地面に溶けて消えたかと思うと、周囲の地面が大きく盛り上がり鳥の雛のようなゴーレムが姿を現した。
「こいつはすごいねぇ。簡易型のゴーレムとはね。両親が作ったのかい?」
「魔獣に~答えるつもりはないです!」
「ははっ、確かにそうだねぇ。理解したようでなによりさ」
そうやって笑いつつ、見たこともないゴーレムを見やる。
そして、ゴーレムを冷静に分析する。
「あの泥団子みたいなのを、核にして周囲の土を集めてるのか・・・・・・。あるいは泥団子と、必要な分の土が混ざってゴーレムになったかの2択だろうかねぇ。持ち運ぶのは泥団子の分でいいなら、相当使い勝手がよさそうだねぇ」
「パタちゃん~!行って!」
パタちゃんと呼ばれた雛鳥のようなゴーレムは、外見は可愛らしいがその大きさは女の背丈より大きく2mはありそうだった。
それが弾丸のようにまっすぐ向かっていく、普通の人なら恐怖を感じただろう。
「あとはその性能の程を見せて貰おうかねぇ」
女は恐怖どころか相手にもならない、そう感じさせる程の余裕が伺えた。
それは経験の差だった。
核があるならそれを壊せば終わるし、核がなければ体を切り崩していけば終わる。再生能力があるならやはり核に相当する弱点がどこかにある物だ。それを知っていた。
目の前まで来たパタちゃんが大きく足を振り上げ蹴ろうとする。それに対して女は大きな刀を盾にするように構えた。
そして、パタちゃんの足と刀がぶつかると、パタちゃんの足に亀裂が走った。
「脆いねぇ。ま、私の刀のほうが何倍も硬いはずだから仕方ないかも、ね!」
女は刀で押し返すと、あっさりパタちゃんはひっくり返り地面に転がった。
唖然とする女の子に再度忠告する。
「もう終わりかい?この程度じゃ森に入るだけ無駄ださ。諦めて帰えりな」
女の子は唇をかみ締め女をにらむ。
「・・・・・・諦める訳。・・・・・・無いじゃないですか」
「そうかい・・・・・・。私は面倒くさがりでさ。もう、とっ捕まえて帰ろうかと思ってるんだけどねぇ?」
「そういう訳にはいかないので~、パタちゃん!ごめんなさい!」
パタちゃんは起き上がり女に向かって再度走り出す。
女は刀を構え迎え撃つ体勢に入る。
女の子はパタちゃんが再び蹴る体勢に入ると同時に森の方へ走りだす。
「なるほどね。ゴーレムを囮兼、私の死角を作る壁にしたか。なかなか考えるじゃないさね」
さしもの女もゴーレムの攻撃をノーガードで受けるわけにはいかない。だが、相手の攻撃に対して対処をすればその間に女の子は森へ。
女は躊躇なく最速で女の子の方を止める為に行動する。
「まったく、本当に面倒な娘だよ!」
女は身軽になる為に、刀を投げ捨てるかのごとく目の前のゴーレムに投擲。女の子の方に駆け出し、あっさり捕まえて地面に押さえつけた。
「観念しな。終わりだよ」
「パタ、ちゃん・・・・・・」
女の子が出したゴーレムはお腹から刀を生やし、ボロボロと体全体が崩れかかっていた。
「なんだい?泣きそうな顔してゴーレムに名前までつけて。そんなに大事ならこんな所に連れて来るんじゃないよ。連れてくからには危険につき合わせる覚悟もしないとだめさね」
「じゃぁ、どうすればいいんですか・・・・・・。何もしなかったら、あのパタちゃん達も研究資料として連れてかれちゃうじゃないですか・・・・・・」
「ま、そうなるだろうねぇ」
女の子は、後ろから抑え付けられながらなんとかしようともがく。だが、足をバタつかせる程度しか出来なかった。
その女の子を後ろから押さえ付けた女の脳裏に猫スケの・・・・・・、黒猫が通訳した言葉がよぎる。
『身近な大人であろうご主人様が、別の生き方を考えてあげるべきだと』
女は猫スケならなんて言うだろうか?そう考えるが答えは出なかった。
私は既に説得に失敗してる。
いまさら考えても無駄・・・・・・、なんだろうさね。
やはり、猫スケの事は猫スケに任せるべきだという結論に至る。
「だが、どの道お前にグリフィンは無理ってもんさ。別の使い魔を探しな」
あたしのすべき事は、この娘にグリフィンを諦めさせること、かねぇ。
その後の事はあの猫スケに任せればいい。
「べつの・・・・・・?べつのって、なんですかぁ」
女の子の目から涙が流れた。
「どの動物達も私を避けていくのに・・・・・・。べつのってなんですか!」
「別のは別のさ。使い魔になってくれるやつは必ずいる。お前のそれは、錬金術士を諦めて自殺しに行くのと大差ないさ。諦めず現実に向き合いな」
「・・・・・・」
「信じられないかい?」
「・・・・・・はい」
無理もない。女の子はもう、一年も前からずっと使い魔を探しているのだ。
町にいる動物達とは、すでに全員と面識があると言っていい程だ。
「じゃぁ、どうする?お友達を全員犠牲にでもするかい?まだ、その鞄にいるんだろ?」
「それは・・・・・・」
「はぁ・・・・・・。なら予言してやるよ。お前は今日使い魔ができる絶対だ」
「なんで言い切れるんですか!」
「ぜ、絶対なもんはー・・・・・・、絶対だよ。それ以外ありゃしないさね」
女は言葉に詰まった。ここで猫スケの話をして素直に信じてもらえるか?下手に話したらむしろ契約に失敗するのではないか?そんな事が頭をよぎった。
「もし、ダメだったら~?」
まったくコレだからガキは・・・・・・、下手な約束すれば失敗した後が怖いんだよねぇ。
しかし、ここではぐらかすような事言おうものなら意地になって引かないだろうねぇ。
「絶対~・・・・・・。じゃないんですか?」
「う・・・・・・」
「やっぱり嘘なんですね・・・・・・」
見るからに落ち込む女の子を見て焦る女。
ね、猫スケ信じていいんだよな!?
猫スケ失敗したら恨むさね!
「だーーー!分かったよ!もし使い魔が出来なかったら、私が責任とって錬金術士になるまで一生面倒見てやるよ!」
猫スケ頼んだよ!面倒なのは勘弁だからね!
半ばヤケクソで約束をし、女の子は半信半疑で帰って行った。
それから、どこに隠していたのか用意していた酒で酒盛りしていると使い魔の黒猫がやって来た。
「はぁ、後は猫スケに任せるだけかねぇ・・・・・・」
ゴクゴクッ。
「ご主人様。やはり来ていたんですね」
「おー黒猫。猫スケは無事あの娘に会えたかい?」
ゴクゴクッ。
「いえ、私はあの娘をなんとか足止めする為。先行してきましたのでまだ出会えてないかと――」
「ブゥーー!!」
女は酒を思わず吹き出してしまった。
女の子との約束があったためだ。
「な、何やってんだい!しっかり合わせてやんなきゃダメじゃないかい!」
「えっと、もう大丈夫かと思いますよ・・・・・・?」
「もしそれですれ違っていて使い魔になれてなくて、私が一生面倒見ることになったらどうしてくれるんだいぃー!!」
「何の話でしょう・・・・・・?」
ゴクゴクッ。
もう女は酔っ払いと化していた。
黒猫はいつもの事かと、嘆息しながらも大人の対応をする。
「ご主人様、飲み過ぎですよ。もう帰りましょう」
「嫌だ!ここで飲む!猫スケが使い魔になるまで帰らないーーー!」
ゴクゴクッゴク。
「そんな我が儘・・・・・・。ご主人様!その腕はどうしたんですか!」
女の右腕は赤く倍くらいに腫れていた。
ゴーレムを倒すとき、相手の蹴りを素手でガードしていた為だった。でなければ間に合わなかったから。
だが、その腫れを痛がる事もなく平然としているあたり凄いと黒猫は改めて思ったのだった。
「こんなの酒ぶっかけときゃー、大丈夫だってーの!」
「ご主人様、それは擦り傷や切り傷の対処法ですよ!」
「酒のんどきゃ大丈夫ー!」
「そんなわけないでしょー!もう帰りましょう!」
「いーやー!!」
そんなこんなで酔いつぶれて、朝までクオの森の前で寝てましたとさ。
※良い子は決してマネしてはいけません!
そこは野性の世界。
魔獣は勿論、森の守護者とまで言われるグリフィンが棲む森。
貴重な薬草は勿論だが、命の水とまで言われる湧き水もあって多くの錬金術士達が足を運んだ場所。
当然、冒険者等の護衛を雇ってである。
ただの女の子が、一人で足を踏み入れていいような所では決して無い。
「ちっ。あっちは間に合わなかったようだね。めんどくさいねぇ、まったく・・・・・・」
その森の前に立っていたのは、たった一人女性。
見た目は30前半だろうか?顔は整っているし、スタイルもいい。ボサボサしてる感はあるが艶やかで長めの黒髪だ。
少し筋肉質な感じがする点と、少し酒臭い気もする点を除けば美人で通るだろう。
ただし、その手に握られた人の背丈ほどもあるでかい包丁のような刀が、ただの女性ではない事を物語っていた。
「何しに来たんだい?もうピクニックをするような時間じゃないだろう。帰りな」
その女性は、目の前の女の子に帰るように告げる。
「全部~、知っていてそんな事言うんですね」
「知るわけ無いだろう。私がお前ならとっとと錬金術士なんて諦めてるよ。むしろ、分からないことだらけさね」
「通してはくれないんですか~?迷惑はかけないと約束します」
「お前はそうかもねぇ。でもね、ここで見逃したらあの猫スケに何言われるか分からないからね。無理ってもんさ」
女の子は猫スケって誰?と考えるも、すぐに止める。
今は関係の無い事だから。
「ここは、魔獣がうようよいる森だよ。お前なんてあっという間に晩ゴハンさ。覚悟・・・・・・あるのかい?」
「ありますよ~。でも、準備してきたので死ぬつもりもないです」
女は悟る何を言っても無駄だと。そもそもこういった説得に向いてるはずも無かった。
そして、結論として得意な力技でいくことにした。
「そういや、お前はあたしの二つ名は知ってるかい?」
女の子は唐突になぜ二つ名を聞いたのか疑問だったが、かつて両親に教えて貰った話をたよりに思い出す。
「えっと~、竜喰らいでしたっけ?」
「話が早いねぇ。私の事は今から性質の悪い魔獣だと思いな。なにせ竜喰らいだ!」
女の子はその女から出る迫力に飲まれかけた。
以前見たライガーウルフなんて目じゃなかった。
森の前に立つその姿はむしろ、その森の王者とまで思えた。
「ど、どういう事ですか・・・・・・?」
「ほんとに馬鹿な子だよ。出会った魔獣に質問するやつがあるかい。特別にヒントをやるならね、お前の準備した物とやらを使ってみな」
女の子はやっと理解する。
力ずくで通れという事に・・・・・・。
そして走り出す。相手の女を避けるように迂回して森を目指す。
「私には勝てないと踏んでの事かい?ま、勝てない点は正解さ。だが、足が遅すぎるねぇ」
あっという間に、間を詰められてしまう。
だが、その程度は想定の範囲だったようでその手には白いボールの様な物が握られていた。
女の子が『えいっ!』という掛け声と共にその白いボールを地面に叩きつけると大量の白い煙りが辺りに発生した。
その煙に紛れ、森に向かおうとするが・・・・・・。
「――うりゃっ!」
「うっ・・・・・・」
女は足音を頼りに正確な位置を割り出し、女の子を峰打ちで吹っ飛ばした。
ついでに、大きな刀の腹の部分をまるでうちわのようにして、周りの煙も吹き飛ばす。
女の子はふらつきながらもなんとか立ち上がる。
「ただの煙りでここを突破しようなんて、舐め過ぎてやしないかい?やるならこれくらいやってごらんよ」
女は火炎球と呼ばれる物で、ビー玉程度の大きさで使うと炎を出す使い捨ての魔道具を、滞留している煙に投げ入れた。
辺りに熱風が吹く。いわゆる粉塵爆発というやつだ。
「粉塵爆発ってやつさ。火が空気中の可燃性の物質とその周囲の空気を使って、一瞬のうちに燃え広がる現象さ。力が無いなら知恵をしぼりな。ただの煙り・・・・・・、匂いからして小麦粉かねぇ。舐め過ぎだよ」
女の子はふらついていた事もあり熱風に煽られ簡単にしりもちをついていた。
煙りの大半を散らしたからだろう、粉塵爆発に女の子が巻き込まれることは無かった。
だが諦める様子はなく背負っていた鞄から2本のロープを取り出す。
「ニョロちゃん、ウネちゃんお願い!」
女の子がそう叫ぶと2本のロープは蛇に変化し、とても早い速度で女に向かっていく。
女は手品でも見たかのように蛇を見やる。
確かに女には蛇に見えた。だが、先程まではただのロープだったのも確かだ。
「面白いねぇ」
女は舌なめずりをし蛇に集中する。
2匹の蛇は女の手前で上に向かって飛び上がる。
だが、それを待っていたのだろうあっさり刀の一振りで、両断されてしまい蛇は只のロープに戻った。
「手品みたいで、だけどね」
「ニョロちゃん、ウネちゃん・・・・・・」
「もう、終わりかい?」
女の子は女をにらむ。
まるで友達を殺されもしたかのような恨みがかったものだ。
「パタちゃんお願い!」
女の子は鞄から丸い泥団子のような物を出し地面に叩きつけた。
すると粘土は地面に溶けて消えたかと思うと、周囲の地面が大きく盛り上がり鳥の雛のようなゴーレムが姿を現した。
「こいつはすごいねぇ。簡易型のゴーレムとはね。両親が作ったのかい?」
「魔獣に~答えるつもりはないです!」
「ははっ、確かにそうだねぇ。理解したようでなによりさ」
そうやって笑いつつ、見たこともないゴーレムを見やる。
そして、ゴーレムを冷静に分析する。
「あの泥団子みたいなのを、核にして周囲の土を集めてるのか・・・・・・。あるいは泥団子と、必要な分の土が混ざってゴーレムになったかの2択だろうかねぇ。持ち運ぶのは泥団子の分でいいなら、相当使い勝手がよさそうだねぇ」
「パタちゃん~!行って!」
パタちゃんと呼ばれた雛鳥のようなゴーレムは、外見は可愛らしいがその大きさは女の背丈より大きく2mはありそうだった。
それが弾丸のようにまっすぐ向かっていく、普通の人なら恐怖を感じただろう。
「あとはその性能の程を見せて貰おうかねぇ」
女は恐怖どころか相手にもならない、そう感じさせる程の余裕が伺えた。
それは経験の差だった。
核があるならそれを壊せば終わるし、核がなければ体を切り崩していけば終わる。再生能力があるならやはり核に相当する弱点がどこかにある物だ。それを知っていた。
目の前まで来たパタちゃんが大きく足を振り上げ蹴ろうとする。それに対して女は大きな刀を盾にするように構えた。
そして、パタちゃんの足と刀がぶつかると、パタちゃんの足に亀裂が走った。
「脆いねぇ。ま、私の刀のほうが何倍も硬いはずだから仕方ないかも、ね!」
女は刀で押し返すと、あっさりパタちゃんはひっくり返り地面に転がった。
唖然とする女の子に再度忠告する。
「もう終わりかい?この程度じゃ森に入るだけ無駄ださ。諦めて帰えりな」
女の子は唇をかみ締め女をにらむ。
「・・・・・・諦める訳。・・・・・・無いじゃないですか」
「そうかい・・・・・・。私は面倒くさがりでさ。もう、とっ捕まえて帰ろうかと思ってるんだけどねぇ?」
「そういう訳にはいかないので~、パタちゃん!ごめんなさい!」
パタちゃんは起き上がり女に向かって再度走り出す。
女は刀を構え迎え撃つ体勢に入る。
女の子はパタちゃんが再び蹴る体勢に入ると同時に森の方へ走りだす。
「なるほどね。ゴーレムを囮兼、私の死角を作る壁にしたか。なかなか考えるじゃないさね」
さしもの女もゴーレムの攻撃をノーガードで受けるわけにはいかない。だが、相手の攻撃に対して対処をすればその間に女の子は森へ。
女は躊躇なく最速で女の子の方を止める為に行動する。
「まったく、本当に面倒な娘だよ!」
女は身軽になる為に、刀を投げ捨てるかのごとく目の前のゴーレムに投擲。女の子の方に駆け出し、あっさり捕まえて地面に押さえつけた。
「観念しな。終わりだよ」
「パタ、ちゃん・・・・・・」
女の子が出したゴーレムはお腹から刀を生やし、ボロボロと体全体が崩れかかっていた。
「なんだい?泣きそうな顔してゴーレムに名前までつけて。そんなに大事ならこんな所に連れて来るんじゃないよ。連れてくからには危険につき合わせる覚悟もしないとだめさね」
「じゃぁ、どうすればいいんですか・・・・・・。何もしなかったら、あのパタちゃん達も研究資料として連れてかれちゃうじゃないですか・・・・・・」
「ま、そうなるだろうねぇ」
女の子は、後ろから抑え付けられながらなんとかしようともがく。だが、足をバタつかせる程度しか出来なかった。
その女の子を後ろから押さえ付けた女の脳裏に猫スケの・・・・・・、黒猫が通訳した言葉がよぎる。
『身近な大人であろうご主人様が、別の生き方を考えてあげるべきだと』
女は猫スケならなんて言うだろうか?そう考えるが答えは出なかった。
私は既に説得に失敗してる。
いまさら考えても無駄・・・・・・、なんだろうさね。
やはり、猫スケの事は猫スケに任せるべきだという結論に至る。
「だが、どの道お前にグリフィンは無理ってもんさ。別の使い魔を探しな」
あたしのすべき事は、この娘にグリフィンを諦めさせること、かねぇ。
その後の事はあの猫スケに任せればいい。
「べつの・・・・・・?べつのって、なんですかぁ」
女の子の目から涙が流れた。
「どの動物達も私を避けていくのに・・・・・・。べつのってなんですか!」
「別のは別のさ。使い魔になってくれるやつは必ずいる。お前のそれは、錬金術士を諦めて自殺しに行くのと大差ないさ。諦めず現実に向き合いな」
「・・・・・・」
「信じられないかい?」
「・・・・・・はい」
無理もない。女の子はもう、一年も前からずっと使い魔を探しているのだ。
町にいる動物達とは、すでに全員と面識があると言っていい程だ。
「じゃぁ、どうする?お友達を全員犠牲にでもするかい?まだ、その鞄にいるんだろ?」
「それは・・・・・・」
「はぁ・・・・・・。なら予言してやるよ。お前は今日使い魔ができる絶対だ」
「なんで言い切れるんですか!」
「ぜ、絶対なもんはー・・・・・・、絶対だよ。それ以外ありゃしないさね」
女は言葉に詰まった。ここで猫スケの話をして素直に信じてもらえるか?下手に話したらむしろ契約に失敗するのではないか?そんな事が頭をよぎった。
「もし、ダメだったら~?」
まったくコレだからガキは・・・・・・、下手な約束すれば失敗した後が怖いんだよねぇ。
しかし、ここではぐらかすような事言おうものなら意地になって引かないだろうねぇ。
「絶対~・・・・・・。じゃないんですか?」
「う・・・・・・」
「やっぱり嘘なんですね・・・・・・」
見るからに落ち込む女の子を見て焦る女。
ね、猫スケ信じていいんだよな!?
猫スケ失敗したら恨むさね!
「だーーー!分かったよ!もし使い魔が出来なかったら、私が責任とって錬金術士になるまで一生面倒見てやるよ!」
猫スケ頼んだよ!面倒なのは勘弁だからね!
半ばヤケクソで約束をし、女の子は半信半疑で帰って行った。
それから、どこに隠していたのか用意していた酒で酒盛りしていると使い魔の黒猫がやって来た。
「はぁ、後は猫スケに任せるだけかねぇ・・・・・・」
ゴクゴクッ。
「ご主人様。やはり来ていたんですね」
「おー黒猫。猫スケは無事あの娘に会えたかい?」
ゴクゴクッ。
「いえ、私はあの娘をなんとか足止めする為。先行してきましたのでまだ出会えてないかと――」
「ブゥーー!!」
女は酒を思わず吹き出してしまった。
女の子との約束があったためだ。
「な、何やってんだい!しっかり合わせてやんなきゃダメじゃないかい!」
「えっと、もう大丈夫かと思いますよ・・・・・・?」
「もしそれですれ違っていて使い魔になれてなくて、私が一生面倒見ることになったらどうしてくれるんだいぃー!!」
「何の話でしょう・・・・・・?」
ゴクゴクッ。
もう女は酔っ払いと化していた。
黒猫はいつもの事かと、嘆息しながらも大人の対応をする。
「ご主人様、飲み過ぎですよ。もう帰りましょう」
「嫌だ!ここで飲む!猫スケが使い魔になるまで帰らないーーー!」
ゴクゴクッゴク。
「そんな我が儘・・・・・・。ご主人様!その腕はどうしたんですか!」
女の右腕は赤く倍くらいに腫れていた。
ゴーレムを倒すとき、相手の蹴りを素手でガードしていた為だった。でなければ間に合わなかったから。
だが、その腫れを痛がる事もなく平然としているあたり凄いと黒猫は改めて思ったのだった。
「こんなの酒ぶっかけときゃー、大丈夫だってーの!」
「ご主人様、それは擦り傷や切り傷の対処法ですよ!」
「酒のんどきゃ大丈夫ー!」
「そんなわけないでしょー!もう帰りましょう!」
「いーやー!!」
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