きのまま錬金!1から錬金術士めざします!

ワイムムワイ

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錬金術士の弟子になる

組合/英雄/暗躍する愚者

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 ルーベリスタ王国の第二の首都アベンツィア。
 その中心に構える大きく高い建物が、すべての錬金術士を統べ管理している組合の本拠地だ。
 通称クリエイト(尚、この物語に登場する人物・団体・建物はすべて架空のものであり以下略)。

「アーグライト長官!大変です!」
「なんだね。騒々しい。私はまだ耳が遠くなる歳ではないのだがね」

 このアーグライトと呼ばれた男こそ錬金術士組合のトップにして、この大陸に8人といない錬金術士の最高峰イマジナリーソーサラーの一人であり、アルマゲイド殲滅戦6人の英雄の一人でもある。

「これを見てください!私も正直信じられないのですが・・・・・・」
「ふむ・・・・・・」

 アーグライトは目を細め一枚の書類を見つめる。
 その書類には猫で主人のトラジと人間で使い魔のミィナ、それが酒飲みエリィの見習いになる旨が書かれていた。

「驚いたな。酒飲みエリィか・・・・・・」
「そこですか!そこは正直驚くところではないですよ!というか正式な書類でふざけた名を書くなんて非常識にも――」
「彼女は私と同じ英雄の一人。英雄エリミントだ、懐かしいな・・・・・・」
「えっ、英雄・・・・・・!?」

 この男が驚くのも無理は無い。エリィもまたアーグライトと同じアルマゲイド殲滅戦の英雄の一人であり、錬金術士の最高峰イマジナリーソーサラーの一人である。
 そんな人間が素性を隠し辺境の支部の下っ端として働いていたら驚きもする。素性さえ知れていればそれだけで、本部の上層部かどこかの都市の支部のトップに据えたっていいくらいなのだから。

「ば、ばかな!長官と同じ英雄がなぜわざわざ辺境の支部の下っ端に・・・・・・。きっと英雄の名を騙って――」
「君。この書類を見たものはどのくらいいるかね?」
「えっと、この本部でなら私を含め数人程度でしょう。あとは、この書類を送ってきたルルイエの町の支部ですが、そこの話ではエリィなる人物が一人で強引に本部に送るようにしたらしいので、こちらも数人程度かと」

 アーグライトはそれを聞き、数秒目を閉じて考えた後に真顔で答えた。

「ならばこの件については一切を伏せて、話が外に漏れないようにしたまえ」
「か、箝口令を敷くと?」
「事情は分からんが、人間が猫の使い魔になる等ありえん。世間に知れ渡れば混乱が起きる可能性がある」
「しかし、知れ渡るのも時間の問題ですよ?正式に錬金術士になれば公表しないわけには・・・・・・」

 錬金術士として認められた者は、組合の名簿に載り各国に公表される。
 なぜなら錬金術士を管理している組合とは言っても、錬金術士を組合に縛り付けたりはせずどう生活するかは錬金術士達の自由にさせているからだ。ある者は国の国家機関で働き、ある者は自分の店を持ち、ある者は旅をしながら各地で日銭を稼いだり、ある者は組合で働いたり、かなり自由である。
 錬金術士はどの国も必要な職業で、新たな錬金術士の情報はどの国も目を光らせている。

 組合はその状況を逆手に取っていた。

 それは、すべての国に対して新しい錬金術士の情報をすべて公開したのだ。公開することですべての国に対し公平である事を示し、そのすべての国にその代わりにと拠点を置く許可を得たのだ。
 国を問わず大陸中に拠点を持つ巨大な組織になった為、今の組合の発言力はどの国に対しても強く働くようになってしまっている。

「錬金術士になるには最低でも1年はかかる筈だ。その間に私自ら大きな混乱が起きぬよう、外堀を埋めれるだけ埋めよう。錬金術士になれずに終われば、我々組合とは無関係という事にもできる」
「英雄エリミントはどうしますか?正直このまま辺境に置いておくわけには――」
「そのまま何もせず、酒飲みエリィとして伏せておけ」
「よ、よろしいのですか!英雄ですよ!?イマジナリーソーサラーですよ!!」

 英雄でイマジナリーソーサラーが辺境の下っ端職員をさせられてるとなれば、世間から大きく叩かれかねない事案だ。
 それだけ英雄という肩書きは重い。例えそれが本人が望んだとしても、それを知らない者からすればいくらなんでも、と思うだろう。

「君は先程、正式な書類でふざけた名前をと言っていたね?彼女はふざけてなどいないさ、これは私へのメッセージだよ。この見習いは私が面倒みるから余計な事をするな!というね」

 まさに、それがエリィの狙いだった。
 トラジとミィナの件が世間にバレればどうなるかエリィにも正直分からなかった。だから手っ取り早く組合のトップであるアーグライトに書類が渡るよう仕組んだ。アーグライトにしか分からない呼び名を使って。
 これには自分の本名をバラすなと言う意味も含めている。

「それではまるで脅しではないですか・・・・・・。本当にそれでいいのですか?」
「余計な事をして英雄エリミントにまた姿を眩まされてはかなわん。もし、それで裏の組織のとこにでも行かれた方が厄介だ。下っ端とはいえ組合の管理下にいてくれた方が好都合というものだよ。優秀な錬金術士を遠慮なくコキ使えるからね」

 アーグライトは冗談気味にそう言った。

「・・・・・・分かりました」

 男は納得したのか、そう言って部屋を出て行く。
 アーグライトはエリミントが酒飲みエリィと仲間内で呼ばれていた頃を思い出し、懐かしんだ。
 酒をぐいぐい飲み、真顔で『アルマゲイドの所為で酒の値段が上がってやってられないさね!だから潰す!』そう言い切っていた。

 酒の為に英雄になったそんなふざけた者など、世界中探してもエリィだけだろう。

「ふむ。存外ふざけて書いたのかも知れんな・・・・・・。しかし、復讐心に駆られて姿を消したと思っていたが、見習いの面倒を見るとはな。それだけ面白い見習いなのか、それともただのきまぐれか?」

 アーグライトはエリミントに復讐など忘れ、そのまま酒飲みエリィでいて欲しいとそう強く思った。



 アルマゲイド殲滅戦と英雄とは。




 アルマゲイドと呼ばれる非公認の錬金術士と正規の錬金術士(数人)からなる裏組織で、自分の為に平気で非道な事もする集団だった。
 規模が大きくなると小国を支配下に置くまでになり、見過ごす事ができなくなった為に起きたのがアルマゲイド殲滅戦である。
 その小国が酒造りの聖地とまで言われた国で、アルマゲイドが利益を多く手に入れるために酒の値段を大幅に引き上げさせた。それがエリィの怒りを買う原因となった。

 殲滅戦の規模は小国を支配下に置くだけあって、戦争と言っていいレベルである。

 厄介な所が敵の全体像が不明な点で、正規の錬金術士・・・・・・、味方だと思われた中にも敵が紛れていたのだ。
 錬金術士組合が中心となり、ルーベリスタ王国やアルディオーテ国の助力も得て単純な戦力差だけなら早くに決着しても良かった筈だが、敵にこちらの作戦を読みに読まれ泥沼化した。
 その殲滅戦を終結に導いたのが、信頼できる少数精鋭の6人の部隊。のちに英雄と呼ばれる6人である。
 その英雄達は敵陣深く潜入し、敵の首魁の討伐。そのまま敵陣の内側から敵主力部隊を壊滅させた。
 首魁と主力部隊を壊滅させるに至りはしたが、すべてを仕留めたとはいえず、逃げ残った者が裏の組織を作り今も暗躍したりしている。



 ルーベリスタ王国のとある貴族の屋敷。
 その地下室。

「コイツにも飽きてきたな・・・・・・」

 男は足元にいた女?に蹴りをいれる。

「あ・・・・・・う」

 女?は声が枯れてるのか悲鳴すら出ない。

「半分魚なだけあってしっとり湿り気を帯びててさわり心地は悪くない」

 男は女?の胸を鷲づかみにし強く握る。

「抜かせるのにはいいが、体温が低くいし・・・・・・、やっぱり魚くせぇ!」

 男は女?を蹴り飛ばした。

「では、どうしますかな?」
「次の使い魔が手に入るまでの繋ぎにはする。回復薬の中にでも突っ込んでおけよ」
「承知しました。しかし、妖狐にハーピィ。そして人魚・・・・・・」

 使用人と思われる男は、先程蹴り飛ばされた人魚を見やる。
 下半身の鱗に覆われたいたと思われる部分はすでに鱗がボロボロだ。あちこち青あざが出来てて口の端も切れてしまったのか赤い血が流れていた。
 健康な状態であればこの使用人も性欲が疼いたかもしれない美人だったろうが、ボロボロの今の状態では生ゴミのように映った。

「次は、何になさるおつもりで?」

 男は悩む。本来なら人間の女が良かった。だが、使い魔に出来るのは別の生き物が混ざった魔獣に属する奴だけだ。
 妖狐もハーピィも、今の人魚も魔獣の中では人間に近い体付きをしていて顔もいい。
 だが、そんな魔獣はそう多くない・・・・・・。

「ケンタウロスやアラクネも上半身は好いが、ケンタは顔が、アラクネは肌の色がキショい。ドラゴン種のやつは難易度たけぇし他にいねぇものか・・・・・・」
「実は噂ですが、人間の少女と思われる使い魔がいるという話がありますよ」
「その話詳しく聞かせてくれよ」

 男はにやりと笑みを浮かべた。

 この男はルーベリスタ王国の貴族の一人で錬金術士。そしてどうしようもないクズだ。
 錬金術士になったのも実力ではない、金と権力を駆使して錬金術士になった。
 金も権力もあるなら人間の女のあてくらいありそうだが、そうはいかない。このクズは女を痛めつけるのも趣味としている。さすがに金と権力がある男といえど暴力を振るう男に近づく女などいないし、このクズはとてつもなく弱かった。
 金と権力に任せた生活を送るのが普通なため、体は太り気味で動きものろい。正々堂々の決闘であればそこらの町娘にも殴り負けるだろう。このクズは相手からの反撃が怖くて普通の女に手を出せないでいた。
 その代わりになったのが、主人の命令に逆らえない使い魔である。金を積み違法な方法で使い魔に出来そうな魔獣を手にいれ、部下に拷問させ弱ったところで使い魔の契約をする。そして、痛めつけて陵辱し満足感を得ていた。

 当然、飽きたら殺して次を・・・・・・、そんな事を繰り返す。
 元アルマゲイドの一人にして、最低の輩である。



 ルーベリスタ王国・首都アロンダイトの錬金術士専用の研究塔の一室。
 造りは強固で最新の素材を使った壁でかなり厚い。

「ああ!!我が聖女エリミント様。あなたは今どこにいるのか」

 彼はルーベリスタ王国が誇る武闘派の錬金術士で、新たなイマジナリーソーサラーになるのではないかと目される男。
 見た目は美形で国家機関で働く優秀な錬金術士で、ルーベリスタ王国でも有数の人気を誇る。

「あなたの残した芸術に、未だその足元にも及ぶ事が出来ない身が恥ずかしいっ!ああ、出来るならあなたの足元にすりより頭を垂れその教えを請いたい程だ」

 当のエリミント・・・・・・いや、エリィにそんな事すればあまりの気持ち悪さから、即座に首を切り落としたい衝動にエリィは駆られるだろう。
 この男は会った事すらないエリィを賞賛するあまり、聖女エリミントという偶像を崇めるまでに至っていた。
 聖女などと呼ばれた日にはエリィは卒倒し、エリィを知る人は腹を抱えて笑うだろう。

 だが、あえて言おうこの男はマジだ。

「もし可能なら、あなたを我が身に縛り付けたい。いや!縫い付けたい!聖女エリミント様万歳!」
「イカれてる最中で悪い。そろそろ普通に戻れないか?」

 イカれた錬金術士に声を掛けたのは、使い魔の大きな虎。白と黒の色でいわゆる白虎である。

「ん?なんだ?まだ聖女に祈りを捧げる時間なんだが?」
「あれが祈りか?面倒だ・・・・・・」

 白虎はいつもの事かと嘆息する。

「国王からの呼び出しだ。行くべきだろ?」
「仕方ないね。宮仕えのつらい所だ。すぐ戻って祈りの続きをするとしよう」
「まだやるのか」
「当然だ。むしろこの国の人間すべてがすべき事だと私は思う」

 この男は本気と書いてマジだ。

「マジ面倒くせぇやつ・・・・・・」

 前をスタスタ歩いてく主人に聞こえないように白虎は呟いた。
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